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SG-image AF 85mm F1.8 STM レンズレビューVol.4 諸収差編

「SG-image AF 85mm F1.8 STM」のレビュー第四弾 諸収差編を公開しました。

おことわり

E&Iクリエイション株式会社より無償貸与の製品を使用しています。
金銭の授受やレビュー内容の指示は一切ないことを最初に明言しておきます。購入した製品ではないことに対する無意識のバイアスは否定できませんが、できるだけ客観的な評価を心がけています。

今回テストした初期個体に問題があったため、解像チャート編から二つ目の個体を利用しています。

簡易的なまとめ

像面湾曲が目立つので、F1.8を使った遠景のパンフォーカスには不向きなレンズです。ただし、ピントを合わせた部分はシャープな結果が得られるので、パンフォーカスである必要が無ければ気にする必要はありません。

F1.8の大口径レンズとしては色収差が良く補正され、大部分のシーンで快適に利用することができます。ボケも滑らかで綺麗なので、ポートレート用としては使い勝手の良いレンズと感じるかもしれません。

球面収差が影響していると思われるフォーカスシフトも気を付けたいポイントですが、ニコンZマウントは(基本的には)実絞り測距なので心配する必要がありません。

This lens is unsuitable for pan-focus shots of distant subjects at F1.8 due to noticeable image field curvature. However, the in-focus area produces sharp results, so it's not a concern if pan-focus isn't required.
For a large-aperture F1.8 lens, chromatic aberration is well-corrected, allowing comfortable use in most scenes. The bokeh is also smooth and beautiful, so you might find it a very usable lens for portraits.
Focus shift, likely influenced by spherical aberration, is another point to watch out for. However, since the Nikon Z mount (basically) uses actual aperture focusing, there's no need to worry about it.

SG-image AF 85mm F1.8 STMのレビュー一覧

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

  • 左:中央でピント合わせ
  • 右:隅でピント合わせ

遠景でピントを合わせる場所を変えると、ピントの合う遠景に変化があることがわかります。ピントを合わせた部分はシャープな結果が得られますが、ピント面は平坦とは言い難く、F1.8の絞り開放でパンフォーカスは得られません。遠景を撮影する場合はF8くらいまで絞ることをおススメします。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り値全域で良好に補正されています。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

完璧とは言えませんが、F1.8のレンズとしては良く抑えられています。F2.8まで絞ると、厳しいシーンでもほぼ抑えることが可能。軸上色収差ではありませんが、ピント固定で撮影するとF2からF2.8/4.0でピント位置が遠側で移動するフォーカスシフトが発生していることが分かります。

ニコンZマウントではF5.6まで実絞りAFとなるので心配無用ですが、他社で絞り開放AFを利用する場合は注意が必要です。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

ほぼ無視できる程度の収差に抑えられています。Lightroomに補正用プロファイルがあるものの、適用する必要性は低い。(適用してもほとんど変化しません)

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

隅にピントを合わせた状態でチェックしてみると、明らかに点光源が変形しています。全体からすると穏やかな影響ですが、抑えるためにはF2.8くらいまで絞る必要があります。

前述したとおり、像面湾曲の影響が強いため、そもそもF1.8での夜景や星空には不向きです。

球面収差

前後の玉ボケで質感が異なっていることが分かります。収差が完璧な補正状態ではなく、(軸上色収差の項で言及したように)フォーカスシフトの影響もあります。

まとめ

像面湾曲が目立つので、F1.8を使った遠景のパンフォーカスには不向きなレンズです。ただし、ピントを合わせた部分はシャープな結果が得られるので、パンフォーカスである必要が無ければ気にする必要はありません。

F1.8の大口径レンズとしては色収差が良く補正され、大部分のシーンで快適に利用することができます。ボケも滑らかで綺麗なので、ポートレート用としては使い勝手の良いレンズと感じるかもしれません。

球面収差が影響していると思われるフォーカスシフトも気を付けたいポイントですが、ニコンZマウントは(基本的には)実絞り測距なので心配する必要がありません。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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