このページではキヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R」にタムロンの交換レンズ「SP 85mm F/1.8 Di VC USD (Model F016)」を装着しての動作確認とレンズのパフォーマンスチェックを掲載しています。
Index
異質な85mm
管理人の評価
Good
- 金属鏡筒・防塵防滴仕様の堅牢な鏡筒
- フッ素コーティング
- F1.8から四隅までシャープな光学性能
- 光学手振れ補正
- EOS Rとの組み合わせで問題の無いAF
- EOS Rとの組み合わせで問題の無い補正機能
- ボケが綺麗
Bad
- 比較的大きく重い
- やや高価
- アダプター経由でフロントヘビーとなる
- ボケが官能的では無い
よそ様の85mm F1.8と比べるとプレミアムなレンズ。光学性能にしかり、レンズの堅牢性にしかり、AFや手振れ補正にしかり。
その価値がレンズサイズと価格に反映されていると納得できるのであればおススメの一本。
EOS R×Model F016レビュー
レンズの確認
サイズ・重量・質感
最大径84.8mm、長さ91.3mmと従来の85mmと比べて少し鏡筒が太く大きなレンズ。
そして重量は700g(キヤノンEF版)。
これはEF85mm F1.8(425g)、AF-S85mm F1.8(350g)、FE85mm F1.8(371g)などと比べると顕著な重量差であることが分かる。
レンズ構成枚数+金属鏡筒+防塵防滴仕様+手振れ補正内蔵と要素が重なっており、他の85mm F1.8とは全く別物と考えるのが宜しいでしょう。
お陰様で質感はとても良く、堅牢性は非常に頼もしい。
外観
新SPシリーズらしい外観。従来の金環モデルと比べて垢抜けたように感じるモダンデザイン。
操作部材は「AF/MF切替」「VCオン/オフ」「フォーカスリング」の3カ所。
フォーカスリング
回転角は約90°。近接側で45°、中距離?無限遠で45°ほど確保されている。85mm F1.8の被写界深度を考えると近接側の回転角が小さく感じるものの、EOS Rとの組み合わせならばオートフォーカスで事足りるシーンが多い。
純正のフォーカスバイワイヤ式と比べて直感的なフルタイムマニュアル操作が可能。ただし、AFモードではフォーカスガイドやピーキングが利用できないので注意が必要。(MFモードへの切り替えが必須)
前玉・後玉
前玉には撥水・撥油性のあるフッ素コーティングが施されている。防塵防滴に加えてメンテナンスしやすいのは他の85mm F1.8には無い特徴。
インナーフォーカス式のため前玉も後玉もフォーカシングによる移動は発生しない。このため、レンズ内部へ小ゴミが混入する可能性はとても低いと思われる。
EOS Rとのバランス
ソニーFE85mm F1.8のようにフルサイズミラーレス専用設計の小型レンズと比べると遥かに大きい。アダプター経由で利用することもあり、携帯性はあまりよろしくない。
感覚的には85mm F1.4をマウントしているような印象。
ボディ並のレンズ重量があるため、当然のようにフロントヘビー。特にアダプター経由で重心が前方へ移動してしまうため左手でレンズを支えなければ安定しない。
SP90mm F2.8 F017のレビューで感じた様に、一眼レフにマウント時と比べてレンズが長く感じる。
このためF017ではフォーカスリングに指をかけ辛かったのだが、本レンズではカメラを支えた状態でなんとか指を掛けることが可能。
フロントヘビーではあるが、コントロールリングアダプターを経由することで絞り値などを操作できるリングを取り付けることが出来るメリットは大きい。
動作の確認
- レンズを正確に認識する
- レンズ補正データは無い(補正オン設定でも不具合は発生しない)
- AFは正常に動作する
- ピーキング・フォーカスガイド利用可能(レンズ側でMF設定が必要)
- AF時のフルタイムマニュアルではフォーカスガイド等は動作しない
- 電源オフ時にピントが無限遠まで移動する(レンズ格納設定の場合)
レンズを正確に認識する
なんとレンズ名まで正確に表示される。新SPシリーズはことごとく弾かれたNikon Zと比べるとなんと寛容なことよ…。
レンズ補正データは無し
レンズ補正にレンズ名は表示されるものの補正データは入っていない。
従来であれば、「レンズ補正」をオフに設定しないと不具合(特に周辺減光)が発生したものですが、「補正データ無し」とカメラ側が認識するため「レンズ補正」がオンの状態でも特に問題は無い模様。
つまり、よほどの理由がない限りいちいちオフにする必要は無い。
補足:回折補正をオンにする
JPEGデータを見るとデジタルレンズオプティマイザは作動していないものの、回折補正はオンとなっているのでおそらく適用されている。
AFは正常に動作する
全く問題無し。
ワンショットAFでもサーボAFでも普通に動作する。
ピーキング・フォーカスガイド利用可能
レンズ側スイッチで「MF」に設定しておけば利用可能。
特に大口径中望遠レンズでピーキングやフォーカスガイドは非常に便利な機能。この機能を利用できるキヤノンのフルサイズ一眼はEOS Rが初めてかもしれない。
フォーカスリングの回転角を変速的に調節できるRFレンズと異なり、90度固定のF016ではフォーカスガイドの使い勝手がややシビア。(特に回転角の小さい無限遠側)
AF時のフルタイムマニュアルではフォーカスガイド等は動作しない
純正RFレンズのようにAF後からのフルタイムマニュアルでこれら機能を利用することは出来ない。
ちなみにピント距離表示も不可。
電源オフ時にピントが無限遠まで移動する(レンズ格納設定の場合)
せっかく合わせたピントはEOS Rが初期設定のままだと電源オフ時に無限遠へ戻される。
このため、カスタム設定メニューから「電源オフ時のレンズ格納」をオフにしておきたいところ。
レンズ繰り出し式フォーカスの場合はレンズ保護の観点から「オン」にしておくべきですが、インナーフォーカスの本レンズでは特に問題は無いはず。
OK!問題無く使える
注意点だけまとめると以下の通り。
EOS Rとの組み合わせ注意点
- レンズが長くなる(フォーカスリングまでの距離が変わる・フロントヘビー)
- フルタイムマニュアルでのフォーカスガイド・ピーキング利用不可
- レンズ補正データ無(回折補正オンにしたい場合は要設定変更)
風景や子供の撮影で特に問題と感じる場面はありませんでした。
EOS Rのために新SPシリーズを買い足すのはアリでしょう。購入前にEOS Rでの動作状況をタムロン公式がアナウンスしているのでチェックしておくべき。
レンズパフォーマンス
遠景解像
中央
解像性能はF1.8からとても良好。1段絞るとわずかにコントラストが改善する。
F2.8~F11までは同じようなパフォーマンスを発揮し、F16で僅かに回折の影響を受けているものの全く問題の無い画質。
四隅
F1.8からとてもシャープで絞り値による変化は感じられない。手振れ補正搭載モデルかつ大口径単焦点であることを考えると非常に良好なパフォーマンス。
僅かに倍率色収差の影響を感じるものの、特に目立つものでは無く問題無い。
像面湾曲の心配は全くなく、ピント位置が中央でも四隅でも画質の変化は感じられない。
近景解像
遠景と比べると周辺部はF1.8でやや甘い。とは言え、予想したよりも小さな収差変動なので1段絞れば全く問題が無くなる。
軸上色収差・ボケ質
軸上色収差はゼロでは無いがとても良く抑えられている。実写でボケの色づきが気になるシーンはそこまで多く無いはず。
前後のボケ質はニュートラル寄りだが、僅かに後ボケが柔らかい。
歪曲・周辺減光
僅かな糸巻き型で実写で目に付く機会は稀だが、このクラスの単焦点レンズとしては比較的大きめ。
周辺減光は開放でやや目立つものの半段も絞れば大きく改善し、1段絞れば解消する。
ボケ
滲みを伴わないため少し硬調と感じるボケだが諸収差による悪目立ちが少なく、結果的に綺麗なボケと感じる。
特にボケ質を重視しなければ使いやすい描写。
玉ボケ
F1.8では口径食の影響を大きく受ける。このため、コントラストの高い玉ボケが四隅に多く点在していると騒がしく感じる場合があるかもしれない。
F2.8まで絞ると緩和し、F4では円形となる。2段絞りまでは円形が保たれているので四隅の玉ボケが目に付く場合は少し絞って調整すると良いでしょう。
手振れ補正
一般的なズームレンズの手振れ補正と比べると効き目はやや低め。レンズが大きいので致し方無いところか…。
とは言え、85mm F1.8で手振れ補正を搭載しているレンズが他に無い(一眼レフ用)ため、F1.8と手振れ補正を組み合わせた優位性は確か。
オートフォーカス
EOS Rとの組み合わせで全く問題無し。
ワンショットAFでもサーボAFでも良好に動作し、サーボAF時は飛翔している鳥を捕捉できる程度には上手く動作する。
基本的なフォーカス速度もかなり速いので軽快なポートレートレンズとして活躍できると思われる。あとはEOS Rシリーズで瞳サーボAFが実装されれば…。
まとめ
現状でEOS R専用の85mmレンズが無い、そしてEOS Rにボディ内手振れ補正が搭載されていないこと考えると、このレンズの存在意義は大きい。
85mm F1.8としてはやや高価でサイズが大きく、そして重いレンズではあるもおの、高い光学性能と堅牢性や防塵防滴仕様、そして光学手振れ補正を考えると妥当では無いかなと思われる。
値付けがまた絶妙で、古い85mm F1.8よりも高く、85mm F1.4よりも安い。EF85mm F1.8 USMとの差額分の価値があると感じるならば買いなレンズ。
個人的にはおススメ。
しかし、現状で他社(ソニー・ニコン)はボディ内手振れ補正を搭載し、実際にソニーはコンパクトな専用85mm F1.8をリリースしている。将来的にEOS Rシリーズがボディ内手振れ補正を搭載してくると本レンズの価値が激変するかもしれないという可能性は頭に入れておく必要があるでしょう。
Points
- 金属鏡筒・防塵防滴・フッ素コーティングの頼もしい鏡筒
- EOS Rで問題無く動作するがレンズ補正データは無い
- 3,000万画素センサーで高い光学性能を発揮する
- まずまずの効き目がある光学手振れ補正
- EOS Rとの組み合わせで良好な動作のAF
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