ニコン「Z50II」のレビュ第三弾 ドライブ編を公開。センサーが古く「スピード」では見劣りするものの、長時間の連続撮影では安定して大量のコマ数を稼ぐことができるカメラとなっているようです。
簡単なまとめ
Z50IIの優位性は連続撮影枚数が異様に多いこと。他社は高速撮影で30枚前後、10コマ秒の撮影でも100枚を超えません。その一方、Z50IIは10コマ秒の連続撮影で200枚以上も安定して撮影することが出来ます。撮影速度が10コマ秒もあれば十分で、安定してコマ数を稼ぐことが出来るカメラを探しているのであれば、Z50IIはコストパフォーマンスの高いカメラと言えそうです。
The Z50II's advantage is its ability to take an unusually large number of consecutive shots. Other companies' cameras can take around 30 shots at high speed, and even at 10 frames per second, they can't take more than 100 shots. However, the Z50II can take more than 200 shots at 10 frames per second. If you are looking for a camera that can take a stable number of shots at 10 frames per second, the Z50II is a camera with excellent cost performance.
Z50II のレビュー一覧
ドライブ
仕様の確認
シャッター
- シャッター方式:
・電子制御上下走行式フォーカルプレーンシャッター
・電子先幕シャッター
・電子シャッター- シャッタースピード:1/4000~30秒
- フラッシュ同調速度:1/250秒または1/200秒以
(1/200~1/250秒はガイドナンバーが減少)
基本性能は前世代のZ 50・Z 30・Z fcと同じ。EXPEED 6世代と異なる点は1/250秒までのフラッシュ同調速度に対応したこと。ただし、ガイドナンバーは減少するとしています。
前後メカニカルシャッターを搭載し、電子先幕シャッターや電子シャッターも利用可能。最大シャッタースピードは1/4000秒で、電子先幕シャッター時は1/2000秒まで利用可能。
初期設定のまま「シャッター方式」のメカニカルシャッターを選ぶことが出来ませんが、「シャッター方式:オート」で高速シャッター時に電子先幕からメカニカルに切り替わっているものと思われます。(キットレンズ装着時は1/250秒 前後で切り替わっています)
富士フイルムのように、「メカニカル」「電子先幕」「電子」を全てオートモードで切り換えることはできません。
上部に掲載した「シャッター方式」の画像を見るとわかるように、「電子シャッター」を選択することは出来ません。電子シャッターを利用するためには「レリーズモード C15 / C30」を利用するか、セットアップメニューから「サイレントモード」をオンにする必要があります。
Z50IIにおける「電子シャッター」はあくまでも「状況に応じてやむを得ず使う」というニコンのスタンスを垣間見ることが出来ます。EXPEED 7 搭載モデルとしては「Z f」と「Z50II」のみの傾向。
積層型・部分積層型CMOSセンサーを搭載している「Z 9」「Z 8」「Z6III」はシャッター方式から「電子シャッター」を選択することが可能。
レリーズモードと撮影速度
- 1コマ撮影
- 低速連続撮影:約1~5コマ/秒
- 高速連続撮影:約5.6コマ/秒
- 高速連続撮影(拡張):約11コマ/秒(サイレントモード時:約15コマ/秒)
- ハイスピードフレームキャプチャー+(C15):約15コマ/秒
(プリキャプチャー機能あり)- ハイスピードフレームキャプチャー+(C30):約30コマ/秒
(プリキャプチャー機能あり)- セルフタイマー撮影
従来どおりメカニカルシャッターで最大11コマ秒までの高速連続撮影に対応。Z50IIではさらに、サイレントモード時に15コマ秒の高速撮影が可能となっています。
(追記:後述するテストでJPEG出力のみ対応していることが判明)
また、EXPEED 7 搭載モデルらしく、JPEG限定で15/30コマの高速撮影にも対応。後述しますが、レリーズボタン全押し前の1秒まで遡って記録することができるモードも備えています。
前世代や一眼レフの時代を考慮すると高速性が大幅に強化されています。とはいえ、他社では数年前から20-30コマ秒のRAW対応連写を実現しているメーカーもあります。特に驚くべき性能ではありません。
連続撮影枚数
画質モード 連続撮影可能コマ数※2※3 RAW
(ロスレス圧縮RAW)200コマ以上 RAW
(高効率★)200コマ以上 RAW
(高効率)FINE 200コマ以上 NORMAL 200コマ以上 BASIC 200コマ以上
連続撮影速度はパッとしませんが、注目すべきは継続可能な連続撮影枚数。2000万画素と解像度が低くファイルサイズが小さいためか、それともバッファが非常に大きいのか、必要十分以上と思われる撮影枚数を実現しています。圧縮率の高い高効率RAWのみならず、ロスレス圧縮RAWでも200コマ以上の撮影が可能。
カスタマイズ
低速連続撮影速度
低速連続撮影のみ、撮影速度の調整が可能。レリーズ押しっぱなしで1秒間隔などの連続撮影をしたい場合に有効。この調子で高速連続撮影の設定変更もできるとよかったのですが、残念ながら不可。
連続撮影コマ数
高速連続撮影時に継続して撮影できる枚数を制限することが出来ます。実写テストでは200コマを超えて撮影できてしまったのですが(後述)、何が原因だったのか不明。
撮影タイミング表示
サイレントモードにおける連続撮影ではシャッター音に代わる電子音が発生しません。このため、レリーズを撮り手に知らせる手段として「撮影タイミング表示」という機能があります。初期設定はレリーズ時に画面上下左右に線を表示することでレリーズを通知。他にも画面を暗転したり、通知しないという選択肢もあります。
連写テスト
撮影環境
- Nikon Z50II
- NIKKOR Z DX 16-50mm F3.5-6.3 VR
- Mモード
- 16mm F3.5 / ISO 100 / 1/4000秒
- 各 RAW形式・シャッター形式・レリーズモードを使用
- 5/10/15秒の連続撮影で記録できた画像の数を計測
- Kingston SD UHS-II V90 32GB
- ノイズ低減・レンズ補正は全てオフ
- フリッカー低減 オフ
ロスレス圧縮RAW
メカニカルシャッター | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
H | 28 | ||
H+ | 50 | 101 | 151 |
電子シャッター | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
H | 34 | ||
H+ | 45 | 89 | 136 |
メカニカルシャッター時はほぼ仕様通りですが、拡張高速連続撮影時は11コマ秒に届きません。10コマ秒となっています。とはいえ、14bitと思われるロスレス圧縮 RAWの高速撮影で5秒50枚をコンスタントに撮影できるのは立派な性能。
少なくとも15秒の連続撮影で撮影速度の低下はありませんでした。それどころかSD UHS-IIの書き込みが瞬時に完了するため、かなり余裕がありそうに見えます。「200コマ以上」というスペックシートに偽りは無さそう。
その一方で電子シャッター(サイレントモード)使用時は撮影速度が低下します。拡張高速撮影で約9コマ秒と言ったところでしょうか。後述するローリングシャッターの遅さに起因するのか、別の何かが原因なのか詳細は不明。
高効率RAW★
メカニカルシャッター | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
H | 28 | ||
H+ | 50 | 100 | 151 |
電子シャッター | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
H | 36 | ||
H+ | 46 | 89 | 134 |
最も高画質で圧縮率の低いロスレス圧縮RAWに全く問題がなかったため、圧縮率の高い高効率★ RAWも問題無し。やはり電子シャッター時は撮影速度が低下するようです。
高効率RAW
メカニカルシャッター | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
H | 28 | ||
H+ | 50 | 101 | 149 |
電子シャッター | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
H | 35 | ||
H+ | 46 | 89 | 132 |
最も圧縮率の高い高効率RAWも同じ結果が得られました。
JPEG 電子シャッター
JPEG Fine | |||
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
H+ | 75 | 152 | 229 |
JPEG Normal | |||
C30 | 150 | 301 | 452 |
参考までにJPEG Fineのみ使用時のテスト結果を掲載。
この場合、サイレントモードの拡張高速撮影では15コマ秒の撮影速度が得られています。15秒の連続撮影でも撮影速度の低下は見られず、安定した結果を得ることが可能。
C30モードはJPEG Normal固定ですが、15秒 450枚(30コマ秒)を達成。JPEGで問題なければ安定して数百枚の連続撮影が可能なカメラとなっています。
プリキャプチャー
レリーズモード「C15」「C30」使用時に、レリーズボタン全押しまでの1秒前まで遡って画像を記録可能な撮影モード(レリーズボタン半押しでバッファに記録開始)。オリンパス/OM SYSTEMほど柔軟性のあるプリキャプチャー機能ではないものの、瞬間的に訪れるシャッターチャンスに強い機能。
JPEG限定である点が悩ましいところ。諧調モードが「SDR」で固定されるため、HIEF出力を使うこともできません。
ローリングシャッター
ローリングシャッターとは
イメージセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的ですが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から(民生用カメラでは)ほぼ実現に至っていません。現在はイメージセンサーの上から下まで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的。言葉で説明しても難しいので、下部の動画を参考にしてください。
コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分が動画のようなローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用。海外企業で「PIXII」、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは「α9 III」のみ。(もしくはキヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)
実際にZ50IIの電子シャッターを使用して、ローリングシャッター歪の影響を調べた結果が以下の通り。
RAW
前世代のモデルと同じイメージセンサーであり、これと言った改善はありません。前モデルの14bit RAWと同程度。より高速なローリングシャッターの12bit RAWが利用できないぶん性能が低下していると言えます。
Z fcの12bit RAWと同程度の競合他社 2600万画素センサーや、キヤノンの3000万画素センサーよりも見劣りする結果。
電子シャッター(サイレントモード)使用時の動体撮影では若干の歪みが目立ちやすい。基本的にはメカニカルシャッター推奨。
連写時
JPEG出力のみの高速撮影(15fps・C15・C30)で読み出し速度が少し改善しています。Z fc テスト時の12bit RAWと同程度の結果であり、Z50IIも内部で12bitモードになっていると予測。12bit RAWでも良いのでRAW出力が欲しいところですが…。
まとめ
古いイメージセンサーだからと言って画質が極端に見劣りするわけではありません。しかし、センサーの”遅さ”が連続撮影速度や電子シャッター有用性の足かせとなっているのは事実。
メカニカルシャッターで10コマ秒撮れれば十分と言えますが、競合他社と比べた際に電子シャッターの性能は見劣りします。例えば、同価格帯のEOS R10は23コマ秒、X-M5は20コマ秒、×1.25クロップで30コマ秒の撮影に対応しています。
Z50IIの優位性は連続撮影枚数が異様に多いこと。他社は高速撮影で30枚前後、10コマ秒の撮影でも100枚を超えません。その一方、Z50IIは10コマ秒の連続撮影で200枚以上も安定して撮影することが出来ます。撮影速度が10コマ秒もあれば十分で、安定してコマ数を稼ぐことが出来るカメラを探しているのであれば、Z50IIはコストパフォーマンスの高いカメラと言えそうです。
参考情報
購入早見表
Z50II ボディ | |||
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Z50II ダブルズームキット | |||
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