フルサイズを使い始めて大きなボケも堪能できたし、次は何を試してみようかなと模索して見つけたのが「長時間露光」というジャンル。
通常であれば被写体のブレを抑えるためにシャッタースピードはできるだけ稼ぐようにするが、これは逆にシャッタースピードを伸ばして被写体にブレを加える表現。
レンズをがっつり絞ったり、ISO感度を極力低めに設定する事でスローシャターを可能にするが、晴天下では限界がある。そこで必須なアイテムがNDフィルターというレンズに入る光量を落とすフィルター。
少しだけ光量を落とすものから、10段もシャッタースピードを落とせるもの、太陽を撮るためのNDフィルターなど様々な種類が存在する。問題なのは、種類が豊富なので「一体どれを買えばいいのか?」「色々買うと費用がかさむ」という点。
これを一挙に解決するのが激安角型フィルター。国産のフィルターを考えると非常にリーズナブルで、国産高級フィルターを買うお金でフィルター数種類と複数のフィルター径に対応するアダプターが付いてくる。
今回はそんな激安フィルターは国産フィルターと比べてパフォーマンスはどうなのか?という点。
買ったもの
Rangers 角型フィルター8枚セット
Amazonでよく見る「Rangers」というブランドの角型フィルター。
思いのほかしっかりとしたフィルターケースに加えて、アダプターリングにより49mm~82mmまでのフィルター径に対応する9種類のアダプタ、ND2?16・グラデーションND2?16の計8枚のフィルターが入っている。
これで3,000円程度(2016年10月現在)
特にグラデーションフィルターは角型フィルターとして市販されている事が多く、しっかりしたメーカーから買おうとすると1枚で1万円とかする。通常のND8や16のフィルターも数千円はする。
それと比べれば激安と言って間違いない価格設定だ。
装着してみる
レンズのフィルターネジに対応する径のアダプターをセット。そのアダプターにフィルターホルダーを装着。
フィルターはホルダーの溝に差し込む方式で、通常のNDフィルターのように重ね掛けが出来るようになっている。
当初の目的であった「安くグラデーションフィルターを試したい」という事からまずはGNDを装着。
フィルターホルダーは回転可能なので、装着後にもホルダーを回転させることでグラデーションの方向を変化させることができる。高級角型ホルダーと比べて違和感なく使える。
なぜ安いのか?
プラスチック素材
有名どころの角型フィルターはガラスを素材とするしっかりとしたもの。フィルターホルダーは頑丈な金属製であることが多い。
反面、このフィルターセットはフィルターもホルダーもプラスチック製。強度的に言えばかなり不安で、携行時に強い負荷をかけることで破損するかもしれない。
とは言え、専用のケースが案外しっかりとしているので、それに入れておけばそうそう携行時に壊れる事はなさそうだ。使用時は三脚使用が予想され、手持ちによるラフな使い方からは程遠い。と考えると、プラスチックでもそう問題ないかもしれない。
登山などに持って行って道中で破損していた、となると目も当てられないのでそういうロケーションでは要検討。
実写
コンディション
今回は福井県の名勝である東尋坊に訪れてトライ。
条件は以下の通り
- 三脚使用(SIRUIの軽量モデル)、三脚を展開せずにブレを抑制
- 解像度を高めるためリアレゾを使用(波のドット柄は今回は無視するものとする)
- リアレゾ動体補正オン
- ISO 100固定
- 絞り優先でF11固定
- カスタムイメージはナチュラル
- ホワイトバランスは太陽光
- ピント面は全て固定
- D FA 28-105mm F3.5-5.6 ED DC WR
- PENTAX K-1
- 比較対象としてKenko PRO ND500・ND8
コンディションはやや悪く、曇天・北風が強い環境下だった。ブレは抑えられていると思うが、素人道具なのでその辺を加味して読み進めてください。
通常撮影 RRS
トリミング
しかしリアレゾはすごいな…。
この解像度をベースとして以下を見ていきたい。
Kenko ND500 RRS
ND500を使用するとF11、ISO100で8秒の露光時間を稼ぐことが出来た。曇天でこの程度のシャッタースピードなので、もう少し時間を稼ぐつもりならND1000が必要。もしくは回折現象(絞り過ぎて解像度が低下する)を気にせずさらに絞り込むか。
トリミング
今回比較するフィルターの中では最も暗くなる9段分の減光効果を持つKenkoのND500.
適正露出よりもやや暗くなってしまったが、解像力に大きな低下は見られない。僅かに「線」の描写が弱い気がする。とはいえ、等倍の上で目を凝らさないとわからない程度で無視できる範囲とハッキリ言える。
真っ暗でライブビューAFできるかできないかと言う暗さだったが、減光量が解像度に影響することはなさそうだ。(カメラブレはもちろん抑え込まなければならないが…)
Kenko ND8 RRS
3段分の減光で1/4秒。ND500と違って露出は正確だった。と言うか今回の検証をするにあたって、マニュアル露出モードをなぜ使わなかったのか猛省。
海のさざ波や川のせせらぎを柔らかくするには物足りない減光量。F1.4の大口径単焦点を減光して使う分には便利そうなところ。
トリミング
解像度はフィルター無と遜色ない。まず問題無く使える。日中で大口径レンズを使うのであれば、あらかじめセットしておいても良い感じ。そのくらい解像力に関して気になるところはない。
Rangers 角型フィルター ND16
一見してわかるホワイトバランスの荒れっぷり。
これが激安フィルターにおける最大のデメリット。ただし、RAW形式で保存しておけばホワイトバランスは後から調整できる。また、オートホワイトバランスに設定しておけば、かなり緩和される。
トリミング
極僅かながら岩肌の質感おちたかな?と思うような思わないような。
ホワイトバランスが崩れているのでブラシーボかもしれない。中央の草を見る限りでは大きく低下はなさそうだ。これだけ解像するなら十分と言える。
Rangers 角型フィルター ND4
間違えてND4を使っていたようだ。このフィルターの難点はどこにも減光量が記載されていないので、見た目の黒さで判断するしかない。
ホワイトバランスは太陽光固定だが、ND16のような崩れ方はしなかった。岩肌がやや硬質な印象に。
トリミング
Rangers NDフィルター ND16
実は角型フィルター以外にも62mmのRangersフィルターセットも持っていたのでそちらもついでに試写。
角型ND16とは違ったホワイトバランスの転び方。これもオートホワイトバランスで対応可能。むしろ転び方にバラつきがあるのでマニュアルホワイバランスで調整しない方が良い。
トリミング
こちらも安いフィルターながらガラス製だからだろうか。
Raneger NDフィルター ND8
ホワイトバランスは大きく崩れていない。ND8まではWB固定でも実用範囲。ND16以降は要チェックと言った感じだ。
トリミング
まとめ:激安フィルターは使える(ただし条件あり)
曇天の時はOK!
解像力は1枚ずつ使うのであれば全く問題無し。重ね掛けも試せばよかった…。
注意点はやはりホワイトバランスの転び方くらいだと思う。
とは言え、今回は曇天の中で試したので晴天下ではまた違った影響うけるかもしれない。例えば、強い光源である太陽や水銀灯と言った人工点光源の直射を受けるとまた違った結果がでるかもしれない。
しかし、太陽光のような強い光が直接差し込みにくい渓流などを長時間露光で撮影する際には十分実用できる範囲のものであるのは確か。
角型は交換が楽ちん
実際に角型を使ってみて感じたのはNDフィルターの交換が手軽な事。フィルター板をスライドして外すだけなので、一般フィルターのようにねじ込む必要がない。一度ホルダーを装着してしまえばあとは簡単だ。
例えばND16の減光フィルター+GND8の減光フィルターで部分的に追加減光なんて芸当も出来る。抜き差しで調整しやすいのはGood。
それぞれのフィルターも安いので気楽に扱えるというのも結構大事なポイントかもしれない。「角型フィルターとはなんぞや」の人が始めるにはとても取っつきやすい値段だ。
海での使用注意点
今回最も失敗したのが風の強い海をロケーションとしたこと。
海水がしぶきとなってカメラにかかるわレンズにかかるわ…。余裕ぶっこいてるとあっという間に錆びるので(防水カメラで実績あり)すぐに帰って水洗い・塩抜き。
K-1はDFA28-105を付けたままシャワーを浴びてもらった。
次の課題
今回は実験できなかった強い光源をフレームに入れて撮ってみたり、実際にグラデーションフィルターを使いたい風景写真。
解像度が問題なさそうなので、あとは逆光耐性ですなあ…。
検証という事で本日はページを作成したものの、次はフェイスブックでさらっと写真をアップするだけに留まるかもしれません。
追記:太陽光下での撮影は厳しい
久しぶりに晴れ間が見えたのでテスト。
やはりND16のホワイトバランスの転び方が気になる上に、全体的に靄がかかったような写りになる。コントラストが大きく低下するので、ちょうどデジタルフィルターでレトロ感を出した写真と似ている印象。
ホワイトバランスはどう頑張ってもND16では再現できなかった。これはND8やND4のように効果を弱める事でだいぶ抑える事が出来る。ND16はちょっと使えないレベル。
KenkoのPRO NDではホワイトバランスは正確に作動。問題無く使える
と言うことで、当初の記事通り「曇天下では使える」という感じ。また彩度が高いカラフルな被写体も色再現が難し可能性がある(ND16や重ね掛けの場合)
詳細は後日
激安フィルター紹介
注意点は前述したとおり「ホワイトバランスの転び方」とまだ検証が終わっていない「逆光耐性」。とはいえ、有名ブランドを買ったからと言って逆光に悩まされずに済むかと言えばそうでもなく。
Rangers 角型8枚セット
しっかりとしたケース+フィルター8枚+アダプター9種類(49?82mm)
NDフィルターをまずは使ってみたいという方には優しい価格設定。これにND500やND1000を別途用意すれば一通りなんでも出来そう。
注意点はフルサイズの24mm付近からケラれてしまうそう。今回は28mmで試写したので問題なかったようだ。同様の理由で、APS-Cでも超広角レンズに装着するのであれば下のねじ込み式フィルターを購入をおススメする。
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Rangers NDフィルターセット
角型フィルターは装着状態が嵩張るというのであればコチラ。角型よりも解像度低下が少ない印象。
77mmという大きなフィルター径でも2300円くらいで4枚入り。今回の解像度検証を終えて77mmを買い足そうか思案中。
注意点として付属のレンズペン(のようなもの)は使わない方がいい。使うと逆に埃のような汚れが付く。これはハクバの本物「レンズペン」を購入して使った方が良いかも。
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