このページではニコン「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」のレビューを掲載しています。
NIKKOR Z DX 24mm f/1.7のレビュー一覧
- ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 交換レンズレビュー 完全版 2023年7月23日
- ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光 編 2023年7月16日
- ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レンズレビューVol.5 諸収差 編 2023年7月3日
- ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レンズレビューVol.4 遠景解像 編 2023年6月30日
- ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レンズレビューVol.3 ボケ 編 2023年6月28日
- ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レンズレビューVol.2 解像チャート 編 2023年6月24日
- ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF 編 2023年6月23日
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 手ごろな価格 | |
サイズ | コンパクト | |
重量 | 軽量 | |
操作性 | MFリングのみ | |
AF性能 | 非常に高速 | |
解像性能 | 周辺部/隅がやや低め | |
ボケ | 接写時は良好な描写 | |
色収差 | まずまず良好 | |
歪曲収差 | 糸巻き型、補正必須 | |
コマ収差・非点収差 | 過度に目立たない程度 | |
周辺減光 | かなり目立つ、補正必須 | |
逆光耐性 | 完璧ではないが良好 | |
満足度 | 低価格ながら良くまとまったレンズ |
評価:
サイズとコストを抑えたバランスの良いレンズ
小型軽量で手ごろな価格の準広角 F1.7レンズ。光学性能に過度な期待は禁物ながら、全体的にバランス良くまとまっています。APS-C Zユーザー初の単焦点レンズとしておススメしやすい選択肢。
被写体の適正
被写体 | 適正 | 備考 |
人物 | ||
子供・動物 | ||
風景 | ||
星景・夜景 | ||
旅行 | ||
マクロ | ||
建築物 |
Index
まえがき
2023年6月発売。ニコン Z DX用としては初の単焦点レンズで、35mm判換算で36mmの使いやすい画角をカバーしています。このクラスの純正レンズとしては手ごろな価格を実現しており、Z DXカメラで日常的に装着できる単焦点レンズを検討しているのであれば面白い選択肢となるでしょう。
概要 | |||
---|---|---|---|
レンズの仕様 | |||
発売日 | 2023年6月 | 初値 | 36,630円 |
マウント | Z | 最短撮影距離 | 0.18m |
フォーマット | APS-C | 最大撮影倍率 | 0.19倍 |
焦点距離 | 24mm | フィルター径 | 46mm |
レンズ構成 | 8群9枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F1.7 | テレコン | - |
最小絞り | F11 | コーティング | SIC |
絞り羽根 | 7枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ70×40mm | 防塵防滴 | 対応 |
重量 | 135g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
キャップ・フード |
8群9枚のレンズ構成でうち2枚は非球面レンズを使用。MTF曲線は中央から周辺部にかけて低下が見られ、フルサイズの「NIKKOR Z 24mm f/1.8 S」におけるAPS-C領域の結果はかなり見劣りします。とは言え、半値以下の価格設定に加えて小型軽量なレンズサイズを考慮すると妥協すべきポイント。また、本レンズも非点収差はよく抑えられており、絞るとことでどの程度の画質向上が期待できるのか気になるところ。
価格のチェック
売り出し価格は3.6万円。世界情勢や物価上昇を考慮すると良心的な価格設定。他社を見渡しても、この価格で購入できる純正のAPS-C 24mmは他に無いはず。鏡筒の質感には妥協が必要ですが、この価格で耐候性のシーリングまで備わっているのだから驚き。
NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 | |||
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レンズフード HN-42 | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
NIKKOR Zらしい、黒と黄色を基調としたデザインの箱です。2018年のZシステム始動時から変化はありません。
レンズ本体のほかに、レンズフードと通常のキャップ、説明書・保証書が付属します。S-Lineのレンズと異なり、レンズポーチは付属していません。
外観
外装はレンズマウントを含めてプラスチック製。金属パーツと比べて質感は見劣るものの、手に取った際の感触はとても良好で、安っぽいプラスチック感はありません。フォーカスリングは硬質ゴム製で、プラスチック製リングよりも質感は良好。
全体的に装飾が少なく、ニコンZレンズらしい飾り気のないデザイン。部分的に古いZレンズと比べて意匠に変更があり、従来は側面に配置されていた「NIKKOR」のロゴが正面のレンズ名上部に移動しています。その他にはCEマークやシリアル番号、製造国などがあります。ちなみに製造国は中国。
ハンズオン
APS-C用の24mm F1.7レンズとしては小型軽量。全長は40.0mmと抑えられているものの、直径は大口径ニコンZマウントらしくφ70mmと大きめ。とは言え、重量は135gと軽量で、携帯性・収納性の良いレンズに違いありません。前述した通り、プラスチック製レンズながらビルドクオリティはとても良好。
前玉・後玉
小さな前玉の周囲には4mmのフィルターソケットを配置。前玉にフッ素コーティング処理が施されている記述は確認できないので、水滴や汚れが付着する撮影シーンではプロテクトフィルターを装着しておきたいところ。フィルターを装着しない場合、遮光性や保護性を高めるためにも付属のレンズフードを装着しておくと良いでしょう。
レンズマウントはプラスチック製。しっかりとした作りで堅牢性に不安は感じないものの、長期的な使用でどれほど摩耗するのかは使ってみないと分かりません。防塵防滴に配慮した設計となっていますが、マウント周囲にシーリングはありません。その代わりに、水滴やゴミの侵入を防ぐための硬質カバーが備わっています。後玉はマウント面ギリギリに配置、周囲は後玉を保護するためなのか若干盛り上がっています。
フォーカスリング
硬質ゴム製フォーカスリングは適度な抵抗で滑らかに回転。価格を考慮すると心地よい操作性です。移動量はリングの回転量に依存しており、リニアな操作性を実現しています。従来のレンズは回転速度に依存している製品が多かったので、少し慣れが必要かもしれません。ピント全域のストロークは約90度で、素早く操作するには十分ですが微調整にはストロークが短く感じます。
レンズフード
本体の46mmフィルターソケットにねじ込むドーム型のフードが付属。逆さ付けはできませんが、コンパクトなフードで、装着したままでも収納性を損なうことはありません。
本体用のレンズキャップはフードの先端にも装着可能です。
本体にフィルターを装着した状態で上からフードを装着しようとすると不格好です。それにフードのねじ込みとフィルターのソケットが上手くかみ合わないため、しっかりと固定することができません。フードとフィルターをどちらも使用したい場合、フードの先端に装着する必要があります。
装着例
手持ちのAPS-C機がないのでZ 8に装着。サイズが同程度のZ 40mm F2と同じように利用することができます。カメラ装着時のフォーカスリングの操作は特に問題なし。
AF・MF
フォーカススピード
本レンズのAFはインナーフォーカス構造でステッピングモーター駆動。非常に高速なフォーカス速度を実現しています。接写性能が高いのでピント全域を移動する際は合焦速度が少し低下するものの、一般的な撮影距離では電光石火のフォーカス速度を実現しています。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
公式では「フォーカスブリージングを最小限に抑えている」と記載されていますが、実際にはかなり目立ちます(これでも抑えているほうなのかもしれませんが)。画角変化が大きいため、特に周辺部にピントを合わせる際にピント位置が不安定となる傾向あり。
精度
中央では再現性の高いピント合わせが可能ですが、周辺部にピントを合わせる際は精度が若干低下します(フォーカスブリージングの影響?)。
MF
前述したようにリニア(リニアライク)な操作性でストロークは90度と短め。接写時は微妙はピント合わせが求められますが、フォーカスリングが滑らかで適度なトルクとなっているので難易度は低め。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Z 8(DXクロップ)
- 交換レンズ:NIKKOR Z DX 24mm f/1.7
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイルオフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
中央は絞り開放から良好な解像性能を発揮し、F1.7からF11の絞り全域で安定した結果が得られます。周辺部や隅は開放付近でワンランク低い結果となるものの、F2.8~F4まで絞ることで中央に近い性能まで向上。全体的なピークはF4からF11で達成。
面白いことに、本レンズの最小絞りは「F11」と小さく、それ以上に絞り込むことはできません。APS-Cにおける回折の限界を考慮すると妥当な数値にも見えますが、光量を抑えたい時にF11では力不足と感じるかもしれません。
中央
よく見るとF1.7からF4まで絞るとコントラストが改善。球面収差や軸上色収差はF1.7から良好な補正状態。数値上の結果はほとんど変化ありませんが、F2.8以降は2000万画素以上のセンサーで伸びしろがあるように見えます。(ローパスフィルターレスと思われるZ 8では偽色が発生しており、解像感を損なっているように見えます)
周辺
中央と比べると絞り開放がソフトなものの、F2.8~F4で徐々に改善します。絞れるなら絞ったほうが良く、F5.6-8でピークとなる。
四隅
周辺部と同程度か若干甘い画質。とは言え、低価格の準広角レンズとしては健闘しています。良好な結果を得たい場合はF4くらいまで絞るのがおススメ。全体的な均質性を重視するならF8くらいまで絞るのもアリ。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F1.7 | 3074 | 2211 | 2136 |
F2.0 | 3186 | 2120 | 1849 |
F2.8 | 3369 | 2881 | 1981 |
F4.0 | 3352 | 2919 | 2861 |
F5.6 | 3366 | 3003 | 2802 |
F8.0 | 3125 | 2973 | 2831 |
F11 | 2950 | 2851 | 2715 |
実写確認
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2023-06-26 快晴 微風
- カメラ:Nikon Z 8(DX)
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
- 露出:絞り優先AE ISO 64
- RAW:高効率RAW
・Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・レンズ補正 オフ
テスト結果
中央はF1.7から良好ですが、周辺部から隅にかけて大幅な低下が見られます。F2.8まで絞ることで全体的に改善し、F4あたりでピークに到達。大部分は良好な結果が得られるものの、フレーム隅が中央や周辺に追いつくことはありません。
中央
F1.7から良好な結果が得られますが、僅かにコントラストが低下しています。これはF2まで絞ることで改善します。以降の絞り値で画質に大きな変化はなし。ただし、F8~ F11で回折の影響が発生しています。
周辺
F1.7は中央と比べるとかなりソフトで、F2まで絞っても同傾向。F2.8まで絞ると改善傾向が見られ、F4でシャープな結果となる。F5.6までピークが続き、F8からF11で低下します。
四隅
周辺部と同じくソフトな結果。F2.8まで絞ると改善しますが、さらに絞っても周辺部ほど改善はしません。ただし、この傾向は四隅の端だけであり、大部分は周辺部のようにF4付近でシャープな結果が得られます。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。
実写で確認
F1.7を使った撮影で、ピントを中央と隅に合わせた場合で結果を比較。すると、ピント位置によって結果が少し異なっていることが分かります。このレンズは像面湾曲を完全には補正しておらず、遠景でパンフォーカスを得るには絞る必要があるようです。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
Adobe Camera RAWで現像時にレンズプロファイルの補正を外した状態でも色収差は目立ちません。内部で補正されている可能性もありますが、玉ボケレビュー時に周辺部の色づきが少ないことから、光学的に良好な補正状態だと思われます。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
F1.7で残存する色収差による色づきを確認できます。過度な色づきではないので実写で問題となる状況は少ないと思います。F2.0まで絞っても改善せず、F2.8でほぼ解消。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
実写で確認
前後にボケ質の差が少ないニュートラル寄りの描写ですが、よく見ると後ボケのほうが少し柔らかい描写に見えます。準広角レンズで前ボケを重視するシチュエーションは少ないと思われ、後ボケ寄りのボケ質は肯定的に評価できるポイント。残念ながら軸上色収差の影響は皆無ではなく、ボケに色づきが発生する場合があります。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
小型軽量なレンズですが、少なくともボケが大きい場合に顕著な口径食の影響はありません。F2までは玉ボケの形状が円形を維持していますが、F2.8まで絞ると角ばり始める。
F1.7とF2.0
F1.7とF2.0でボケのサイズを同程度にして撮影した作例が以下の通り。
F1.7のほうがボケを大きくしやすいですが、隅に向かってボケが騒がしくなり、特にピント位置が遠側にあるほど目立ちます。大口径の準広角レンズではよくある傾向であり、このレンズに限った話ではありません。もしも騒がしいボケが気になる場合はF2まで絞ると安定します。(気になる場合はさらに絞る必要あり)
ボケ実写
最短撮影距離
接写性能を活かすことで準広角ながら大きなボケを得ることができます。この際はF1.7から隅まで柔らかく滑らかなボケを得ることができ、色収差による影響は目立ちません。低価格のレンズとしては文句なしの結果。
至近距離
撮影距離が少し開くと、隅のハイライトにおいて騒がしくなる兆候が見られます。F2まで絞ると角が取れてマイルドな描写となる。F2.8も似たような傾向ですが、F4まで絞るとボケのアウトラインが再び目立ち始め得ます。
近距離
さらに撮影距離が長くなると、ボケが騒がしいと感じる領域が広がります。中央の狭いエリアを除いて、ボケの縁取りが強く、背景の状況によってはかなり騒がしくなりそう。F2まで絞ると広い範囲で改善しますが、四隅やその周辺部はもう少し絞る必要あり。F2.8まで絞ると、全体的に見栄えの良いボケが得られます。
中距離
さらに撮影距離が長くなると、24mm F1.7と言えどもボケが小さくなります。よく見ると全体的に騒がしいボケ質ですが、ボケが小さいのでプリントサイズによってはF1.7でも問題なし。気になる場合はF2くらいまで絞るとのがおススメです。
ポートレート距離
全高170cmの三脚を人物に見立てて、F1.7を使って撮影した結果が以下の通り。
全身をフレームに入れると被写界深度だけで被写体を分離するのは難しい。光やパースなどなんらかの手段を併せて講じる必要がありそうです。膝上・上半身くらいまで近寄るとボケが大きくなりますが、この撮影距離ではボケが少し騒がしいのでF2まで絞って使うのがおススメ。バストアップまで近寄ると良好なボケ質で被写体を分離することが可能。顔のクローズアップではさらにボケが大きくなります。
球面収差
前後のボケ質に大きな差はなく、球面収差は良好に補正されているように見えます。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
Adobe Camera RAWの補正を外すと、残存する糸巻き型の歪曲収差が現れます。直線的な被写体をフレームに入れると目立つかもしれませんが、影響は軽微。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
最短撮影距離
コンパクトな広角単焦点レンズらしく、APS-C用のレンズとしては少し目立つ。絞ると改善しますが、F2以降はほぼ同じ状況が続きます。
無限遠
無限遠では状況が悪化。F1.7で非常に目立つ光量の低下が発生し、絞っても完全には解消しません。これはこれでアリと感じるかもしれませんが、フレーム全体でフラットな露出が求められるシーンではカメラ・ソフトでの補正が必須。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
フレーム隅を確認すると、F1.7で点光源が変形していることが分かります。大幅にクロップ、拡大をしなければ目立たない程度ですが、点像の再現性を重視するのであれば絞ったほうが良いでしょう。絞るとコマフレアは解消するものの、非点収差のような放射方向の変形が残存します。
逆光耐性・光条
中央
絞り開放付近では、全体的なコントラストの低下がよく抑えられています。強い光源の影響は、光源付近のフレアとわずかなゴーストのみ。絞ると隠れていたゴーストが少し目立つようになります。レンズ構成枚数が少ないため、間面反射と思われるフレアの発生はよく抑えられている模様。
隅
光源を隅に配置した場合は絞り値全域で良好な状態を維持しています。
光条
F5.6から光条が発生しはじめ、F8-F11でしっかりとした形状へと変化。F5.6まではイマイチな描写ですが、F11までしっかりと絞るとシャープな結果が得られます。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 小型軽量
- 防塵防滴
- 手ごろな価格
- レンズフード付属
- リニアレスポンスライクなMF
- 倍率色収差の補正状態
- 軸上色収差の補正状態
- 滑らかな後ボケ
- 滑らかな玉ボケ
- 逆光耐性
手ごろな価格で小型軽量な広角単焦点レンズとしては良好な作り。しっかりとしたプラスチック製の鏡筒は防塵防滴仕様で、リニアレスポンスのようなゴム製フォーカスリングは滑らかに操作可能。光学性能は完璧とは言い難いものの、多くの撮影で十分に満足のいく結果を得ることが可能。一芸に秀でたレンズではありませんが、コストパフォーマンス良好。
悪かったところ
ココに注意
- ねじ込み式レンズフード
- 絞り開放付近で周辺部の解像性能低下
- 像面湾曲の影響が残っている
- 周辺部のボケが騒がしい場合あり
- やや目に付く糸巻き型の歪曲収差
- 周辺減光が目立つ
特筆すべきほどの弱点はありませんが、高価なレンズのように「絞り開放から抜群の光学性能」を期待するとがっかりするかもしれません。敢えて言えば、競合他社の「XF23mmF2 R WR」と比べると、鏡筒の作り、光学性能は1グレード低い印象(そのぶん価格にも差がありますが)。
総合評価
APS-C Zカメラを楽しむための小型軽量な単焦点レンズとして最適な一本。手ごろな価格で防塵防滴、そこそこの光学性能を備え、大口径の単焦点レンズらしい描写を楽しむことが出来ます。APS-C Zユーザーで単焦点レンズを探しているのであれば、最初に考慮すべき一本と言えるでしょう。
併せて検討したいレンズ
上に挙げた2本はフルサイズ対応で本レンズよりも手ごろな価格の選択肢。もしもフルサイズへのアップグレードを検討しているのであれば、28mm F2.8か40mm F2を選ぶのも面白いと思います。フルサイズをカバーするイメージサークルを備えているため、APS-Cでは余裕のある画質で楽しむことが出来ます。ただし、広い画角で大口径レンズを楽しみたい場合は「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」を要検討。
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作例
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