DPReviewがソニー「α7S III」と「α7S II」の違いを紹介。5年間の空白期間に、内外ともに大きく進化したと評価。α7S IIの時とは異なり、高度な動画機能がシリーズ全体へ簡単に普及することはないだろうと言及しています。
スペシャリスト向けのフルサイズミラーレス
DPReview:Sony a7S II vs a7S III: What's new and why it matters
- α7S IIからα7S IIIまでには5年間の空白があり、中にはソニーが動画向けα7を断念したのかと疑問に思った人もいるだろう。α7のスタンダードラインの動画が強化されたことでそれはもっともらしく思えた。しかし、α7S IIIはこれまで見た中で最も重要な動画機能を備えたカメラとして登場した。
- 最大の変更点は動画仕様だ。α7S IIは4K 30pまで、最高画質はXAVC S形式の100Mbpsで4:2:0 8Bitである。α7S IIIはフル画角で4K 60pに対応し、僅かにトリミングされるが4K 120pにも対応している。
- α7S IIIは発熱対策が施され、4K 60p動画を60分以上撮影可能と言われている。
- α7シリーズとしては初めて4:2:2 10Bitの内部記録に対応したカメラだ。ログ撮影ではるかに柔軟性が高く、優れた色解像度を備えている。
- XAVC S形式に加え、H.265ベースのXAVC HSに対応。さらに編集する際にマシンの負担が少ないXAVC SI形式・ALL-I出力も可能だ。
- さらにHDMI出力でRAW動画にも対応している。この際は16Bitの4K 60pに対応しており、色空間を選択可能だ。そして内部記録に対応するフォーマットで同時記録もできる。
- ジャイロセンサーの情報も記録しており、後処理で効果的な手ぶれ補正を適用することもできる。
- もう一つ大きな変更は像面位相差AFの対応だ。α7S IIのコントラスト検出AFよりも遥かに便利なものである。顔・瞳・頭部を検出して追従できる位相差AFシステムに対応し、一般的な撮影で非常に信頼性が高い。静的な被写体でリフォーカスする場合もあるが、その際はカメラの設定を調整することでリスクを低減できる。
- 増加したビットレートに対応するため、カードスロットも強化されている。α7S IIはSD UHS-Iのシングルスロットだったが、最大出力が100Mbpsだったので十分だ。α7S IIIはデュアルカードスロットを備え、どちらもSD UHS-IIとCFexpress Aカードに対応している。これにより、最大600Mbpsまでの撮影が可能となっている。
- α7S IIIは完全に作り直されたメニューシステムを備えている。基本的な順序と分類はよく似ているので、慣れる必要はない。とは言え、水平構成から垂直構成へ切り替わっているので、構造を理解するのに時間がかかるかもしれない。
- カスタマイズ可能なFnメニューは基本的に同じだが、静止画・動画で別々に構成可能だ。これはα7S IIでは出来なかったことである。
- エルゴノミクスに基づいたデザインはα7S II登場から5年を経て大きく改善した。グリップ形状が良くなり、ダイヤルの位置が良くなり、ボタンが押しやすくなった。さらにAFジョイスティックと大きなAF-ONボタンを搭載している。
- ファインダーは944万ドットと過去最高の解像度を備えている。α7S IIの236万ドットをはるかに上回るものだ。実際には再生モードでこれが最大限活用される。
- ファインダーよりも、バリアングルモニタに切り替わったことのほうが目立つと思う。この可動方式は多くのビデオグラファーに馴染みがあり、好まれるレイアウトだ。さらに包括的なタッチ機能を備え、メニューのナビゲートにも対応している。
- バッテリーは大容量NP-FZ100を使用している。これによりカメラの記録時間は大幅に長くなっている。どちらもUSB給電に対応しているが、ジンバルやドローンなどでスタンドアローンで機能させる場合はバッテリーライフが重要となる。
- 静止画用カメラとしても、エルゴノミクスやAFの改善、新しいメニューシステムの恩恵は感じると思う。ただし、超高感度ISO以外で低照度性能に大きな違いはないと思われる。
a7S IIIが前のバージョンよりもはるかに優れたカメラであることは驚くべきことではない。一般的な技術レベルは過去5年間でかなり進歩しており、特に動画の面で進歩している。α7S IIの時とは異なり、4K 120pや16BitRAW、10Bitなど高度な動画機能がα7シリーズ全体へ簡単に普及するとは考えていない。ビデオグラファー以外の人でこれら機能を必要とはしていないからだ。フルサイズセンサーが魅力的なスタンダードな動画カメラというよりも、完成度の高い動画クリエイター向けのコンパクトカメラのようだ。
とのこと。
コアとなるイメージセンサー・プロセッサが一新され、外装も第4世代のエルゴノミクスに加えてバリアングルモニタまで実装した2020年最新モデルですね。従来通りの低画素センサーですが、裏面照射型CMOSセンサーの採用で高感度性能が向上。さらに像面位相差AFと最新のAFシステムに対応しており、競合他社と見比べてもアドバンテージのあるAF性能を備えています。
地味ですが、個人的には超音波式の除塵ユニットを搭載したのが大きいと思っています。従来のセンサーシフト式ではゴミが付きやすいのですよね(しかも、手動でクリーニング機能を使う必要がある)。さらに新型プロセッサーの導入でカメラの全体的なレスポンス向上にも注目しています。α7S III以外だとタッチパネルを含めて、各種操作のレスポンスがイマイチだったりするので…。動画機能は普及しないにしても、BIONZ XRプロセッサーの普及は急いで欲しいところ。
DPReviewでは言及していませんが、「クリエイティブルック」を含めた新しいカラーサイエンスにも注目したいところ。従来機と色を合わせるのが難しいと思いますが、プロ用カムコーダーとの相性は良好と言われています。個人的には非常に好みの描写であり、シリーズ全体に普及して欲しいなと。
撮影する静止画、動画を思い通りの雰囲気に仕上げることができる「クリエイティブルック」を新搭載。全10種類のモードがカメラ内にプリセットされており、ユーザーの好みに合わせた画づくりを選べるほか、選択したモードをベースにさらに独自の画づくりを楽しむこともできます。コントラストがありながら落ち着いた発色と印象的な色味の[FL]や、マットで柔らかな質感の[IN]など、色合い、色の濃さ、明るさ、コントラスト、シャープさなど、多くの要素を組み合わせた多彩なモードを搭載。細やかな調整を行う場合には、画面を見ながら(*)コントラスト、彩度、シャドウなど最大8項目による画像の微調整が可能です。また、自分好みの設定をカスタムルックとして登録することもできます。
画像微調整の項目が増えたのは有難いですねえ。従来はシャープ・彩度・コントラストの3種類だったので、JPEGで煮詰めるのは諦めていたのですが、これならJPEG出力でも色々と楽しめそう。もちろん後処理が大変な動画を、事前にクリエイティブルックで煮詰めて撮って出しで使う人も多くなることでしょう。
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