パナソニック「LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3」のレビュー第四弾 諸収差編を公開。小型軽量な広角ズームレンズということで妥協点もありますが、目立つ問題とならない程度に抑えられています。
今回のまとめ
歪曲収差とコマ収差は状況によって目立つシーンがあるものの、それ以外は目立つ問題とならない程度に良く抑えられています。
While there are some scenes where distortion and coma are noticeable depending on the situation, they are otherwise well controlled to the extent that they do not become a noticeable problem.
LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3のレビュー一覧
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.5 ボケ編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.4 諸収差編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.3 解像チャート編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.2 遠景解像編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
18mm
絞り開放から全域で被写界深度内に収まっています。像面湾曲の目立つ影響はありません。
24mm
広角端と同じく、ズーム中間域も問題無し。
40mm
望遠端でも問題ありません。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
18mm
絞り全域で倍率色収差は良く抑えられています。完全ではありませんが、残存する収差はカメラや現像ソフトで補正可能。
24mm
18mmと同程度。
40mm
広角や中間域よりも良好な補正状態です。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
18mm
絞り開放から問題無し。
24mm
細部を確認しても色ずれはありません。
40mm
ピント面前後に極わずかな色収差が発生しているものの、実写でこれが問題となるシーンは非常に限られています。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
18mm
小型軽量な広角ズームレンズとして過度ではないものの、陣笠状の複雑な樽型歪曲。これを手動で補正するのは難しいため、レンズプロファイルによる細かな修正が必要。歪曲が問題とならない場合、通常よりも少し画角の広い結果を得ることが出来ます。
20mm
18mmと同じく、強めの樽型歪曲。
24mm
広角側と比べると穏やかな収差ですが、それでも修正時に四隅の引き延ばしあり。
28mm
これまでと比べると非常に穏やかな収差。補正無しでも問題ありませんが、よく見ると陣笠状の歪曲あり。
40mm
若干の糸巻き型。特に大きな問題はありません。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
焦点距離全域で外向性のコマ収差が発生。これを抑えるためには2段ほど絞る必要があります。絞り開放F値が大きいことを考慮すると夜景・イルミネーション向けのレンズとは言えません。
球面収差
完璧な補正状態ではないものの、実写で目立つ影響はありません。
まとめ
2種類の色収差はどちらも良好に補正されています。後ボケで色づく場合があるものの、このようなレンズでボケが目立つほど大きくなるシーンはそう多くありません。過度の心配は無用。
歪曲収差は広い範囲で(複雑な陣笠状の)樽型であるため、基本的に補正必須。35mmや40mmでは無視できる程度ですが、常時補正を適用するのがおススメ。と言ってもカメラ出力では強制的に補正が適用されるため、気を付けるとしたら社外製現像ソフト使用時。
その他の収差は完璧と言えないものの、実写で目立たない程度に抑えられています。イルミネーションシーンのコマ収差は少し気になるかもしれませんが、木漏れ日などの点光源で問題となることは少ないはず。
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