2023年10月4日付けでキヤノンの気になる特許出願が公開。電動ティルトシフトレンズに関するカメラシステムで、タッチ操作による被写体の指定や、手持ち撮影時の防振に関しても言及しています。
概要(気になる部分を太字で表示しています)
- 【公開番号】特開2023-140195(P2023-140195A)
- 【公開日】令和5年10月4日(2023.10.4)
- 【発明の名称】制御装置、レンズ装置、撮像装置、カメラシステム、制御方法、及びプログラム
- 【出願日】令和4年3月22日(2022.3.22)
- 【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社- 【課題】手持ち撮影において、所望のティルト効果によって、所望の被写体や物体面に対して、所望のピント面を構築可能な制御装置を提供すること。
- 【背景技術】
【0002】
従来、撮像光学系の光軸に対して傾いた物体面に対して全面的に良好にピントを合わせるようにピント面を傾けるティルト効果を有する光学系が提案されている。特許文献1には、ティルト効果を有するレンズユニット及びカメラ装置を備え、撮影範囲に設定された特定の領域ごとにティルト量を決め、所望のピント面によって被写体に合焦する監視カメラシステムが開示されている。- 【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のカメラシステムでは、カメラ装置の位置が変化すると、特定の領域ごとにティルト量を設定する必要がある。そのため、特許文献1のカメラシステムを用いて手持ち撮影を行う場合、所望のティルト効果を得られない恐れがある。- 【0005】
本発明は、手持ち撮影において、所望のティルト効果によって、所望の被写体や物体面に対して、所望のピント面を構築可能な制御装置を提供すること目的とする。- 【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての制御装置は、撮像素子を備える撮像装置、及び撮像素子の撮像面に対してピント面を傾けるための少なくとも一つの光学部材を含む光学系を備えるレンズ装置を有するカメラシステムに用いられる制御装置であって、指示された被写体に関する情報を取得する取得部と、指示された被写体に関する情報に基づくピント面を構築するための被写体の位置に関する情報を取得する制御部とを有することを特徴とする。- 【0012】
レンズ鏡筒2は、光学系、ズーム操作環6、案内筒7、カム筒8、レンズ側CPU9、及び絞り機構11を有する。光学系は、1群レンズ21、2群レンズ22、3群レンズ23、4群レンズ24、5群レンズ25、6群レンズ26、7群レンズ27、8群レンズ28、9群レンズ29、及び10群レンズ30を備える。本実施形態では、光学系に含まれる少なくとも一つのレンズ(光学部材)を移動させることで、撮像素子1106の撮像面に対してピント面を傾けるティルト効果と撮影範囲を移動させるシフト効果との少なくとも一方を得ることができる。各レンズは、カムフォロアを有する鏡筒により保持される。カムフォロアは、案内筒7に設けられた光軸Oに平行な直進溝とカム筒8に設けられた光軸Oに対して傾きを持つカム溝に係合する。ズーム操作環6が回転すると、カム筒8が回転し、各レンズのZ軸方向の位置関係が変化する。これにより、レンズ鏡筒2の焦点距離が変化する。レンズ鏡筒2の焦点距離は、ズーム操作環6の回転量を検出する不図示のズーム位置検出部によって検出可能である。レンズ側CPU009は、絞り機構11を制御することで、光学系の開口径を変化させる。- 【0014】
本実施形態では、6群レンズ26と8群レンズ28を光軸Oと直交する方向へ移動させることで、ティルト効果やシフト効果を得ることができる。具体的には、6群レンズ26と8群レンズ28を反対方向へ移動させると、ティルト効果を得ることができ、同じ方向へ移動させるとシフト効果を得ることができる。レンズ側CPU9は、6群レンズ26の移動量を検出する不図示の検出部からの信号を用いて、駆動部を介して6群レンズ26を制御する。また、レンズ側CPU9は、8群レンズ28の移動量を検出する不図示の検出部からの信号を用いて、駆動部を介して8群レンズ28を制御する。6群レンズ26と8群レンズ28を移動させる駆動部は例えば、ステッピングモータやボイスコイルモータ(VCM)である。なお、レンズを倒す(回転させる)ことでティルト効果を得ることも可能である。
- 【0041】
本実施形態のカメラシステム1では、ピントを合わせる3点が指示されれば、前述のように被写体面500を構築し、所望の被写体にピントを合わせた撮影が可能である。しかしながら、例えば、写真の上下をぼかして街並みや人物を撮影する、いわゆる「逆あおり撮影(ミニチュア撮影)」では、どこにピントを合わせ、どこをぼかすかが撮影者により決定される場合がある。その場合、撮影者が指示した空間座標点O,BによってベクトルOBが定義される。撮影者は、ベクトルOBを回転軸として面501が角度θctrlだけ回転するよう指示する。撮影者は例えば、表示部1108上を指で往復スライドするタッチ操作を行うことで、面501を角度θctrlだけ回転するよう指示することができる。また、EVFを用いた視線入力、絞り操作環20の回転操作、及び不図示のボタンやダイヤルを用いて指示を行ってもよい。また、設定されたカメラ3の撮影モードに応じて自動で決定されてもよい。撮影者は、所望の被写体(空間座標点O,B)のピントを維持しながら、所望のボケ具合となる、面501に被写体面500を合わせる。
(ティルトシフトレンズに関する説明は割愛)
従来のTSレンズはマニュアル操作が基本ですが、この特許によるとティルト部を電子制御で駆動し、自動的に調整してくれる機能のようです。さらに、手持ち撮影への対応にも言及しています(今回のシステムで防振はレンズ側と記載)。これが実現するとティルトシフトの撮影では画期的な製品となりそうですね。ゲームチェンジャーと言っても過言では無いでしょう。今回の特許で電動ティルトシフトについては詳しく説明されていませんが、関連すると思われる特許がいくつか存在しているようです。
これらの技術を活かした製品が近いうちに登場するとは限りませんが、キヤノンが何らかの方法でティルトシフト撮影をより簡単なものにしようと研究開発している可能性は高そう。実現すると良いですねえ。ちなみに、特許内で示されているカメラシステムにはズームリングも搭載しているようです。
(過去にティルトシフトズームレンズに関する特許出願があるので、可能性はゼロではない?)
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