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ニコン NIKKOR Z DX 24mm f/1.7 レンズレビューVol.5 諸収差 編

ニコン「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7のレビュー一覧

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

F1.7を使った撮影で、ピントを中央と隅に合わせた場合で結果を比較。すると、ピント位置によって結果が少し異なっていることが分かります。このレンズは像面湾曲を完全には補正しておらず、遠景でパンフォーカスを得るには絞る必要があるようです。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

Adobe Camera RAWで現像時にレンズプロファイルの補正を外した状態でも色収差は目立ちません。内部で補正されている可能性もありますが、玉ボケレビュー時に周辺部の色づきが少ないことから、光学的に良好な補正状態だと思われます。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

F1.7で残存する色収差による色づきを確認できます。過度な色づきではないので実写で問題となる状況は少ないと思います。F2.0まで絞っても改善せず、F2.8でほぼ解消。

球面収差

前後のボケ質に大きな差はなく、球面収差は良好に補正されているように見えます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

Adobe Camera RAWの補正を外すと、残存する糸巻き型の歪曲収差が現れます。直線的な被写体をフレームに入れると目立つかもしれませんが、影響は軽微。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

フレーム隅を確認すると、F1.7で点光源が変形していることが分かります。大幅にクロップ、拡大をしなければ目立たない程度ですが、点像の再現性を重視するのであれば絞ったほうが良いでしょう。絞るとコマフレアは解消するものの、非点収差のような放射方向の変形が残存します。

まとめ

大口径レンズで特に気になる軸上色収差は良好に補正されています。日中にF1.7の絞り開放を使用したとしても、パープルフリンジなどが目立つ機会は多く無いはず。F1.7でボケを大きくしたい時、暗い場所でシャッタースピードを稼ぎたい時など、快適にF1.7を使うことが出来ます。

点光源の再現性は完璧とはいかないものの、3万円台のレンズに隅までパーフェクトな点像を求めるのはお門違いというもの。むしろ、この価格帯のレンズとしては健闘していると思います。ただし、像面湾曲の影響があるため、夜景や星空の撮影には適していないと感じるかもしれません。

歪曲収差も少し残っていますが、基本的に大きな問題とはならないはず。また、カメラ・現像ソフトでプロファイルを使った修正も可能となっているので心配無用。

完璧からは程遠いものの、価格とサイズを考慮すると全体的に良くまとめられています。どのようなジャンルの撮影でも大きな不満なく使うことができるでしょう。これ以上を求めると、今のところフルサイズ用のS-Lineを検討するしかありません。

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