このページではタムロンのミラーレス用交換レンズ「17-28mm F/2.8 Di III RXD」のレビューを公開しています。
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17-28mm F/2.8 Di III RXDレビュー
外観
外装は28-75mm F2.8 RXDと同じプラスチック製。金属鏡筒のSPシリーズと比べると安っぽく感じますが、レンズの作りに問題があるとは感じません。表面はマットな仕上がりで指紋が付きにくいのがGood。
焦点距離やレンズ名の印字は刻印では無くプリント。製造国はベトナム、設計は日本と印字されています。
最大径 73mm、質量420g。
サイズは350mlの飲料缶を想像してもらうと近いかも。それより少し小さい。
F2.8広角ズームと考えると非常に小さく、同社のSP15-30mm F2.8 Di VC USDと比べると雲泥の差。ズームレンジは15-30mmや16-35mmよりずっと狭いですが、このコンパクトさは魅力的と言えるでしょう。
ズーミングによるレンズの移動は鏡筒内で完結しており、実質的にインナーズーム。
17mmでも28mmでもレンズ全長に変化は無いので取り回しが良い。小型軽量な超広角ズームらしからぬ特性。
さらに前面を67mmプロテクトフィルターで蓋をしてしまえばバッチリ。防塵防滴の面でもプラスと言えるでしょう。
レンズマウントは金蔵製で外周部には防塵防滴用のシールが施されています。
マウントは4本のネジで固定されています。
ズームリング・フォーカスリングはどちらも滑らかい動作します。
ズームリングの回転角は90度未満なので、片手で素早く操作可能。ロックスイッチはありませんが、適度な抵抗感があるのでズレる心配はありません。前述の通り実質インナーズームとなっているので自重落下やバックから取り出す際に内筒が伸びる心配もありません。
約1cm幅のフォーカスリングも適度な抵抗感で滑らかに動作します。他のEマウントレンズと同じくフォーカスバイワイヤ方式。
α7 IIIに装着するとまるで標準ズームやF4ズームであるかのようなサイズ感で扱うことが出来ます。バランスはとても良好で常用もやぶさかではない広角ズーム。
全長は28-75mm F2.8 RXDよりも短く、カメラバッグなどへの収まりも良い。
オートフォーカス
ステッピングモーター駆動のフォーカスモーターはとても静かで高速に動作。敢えて言えば絞り羽根の動作音が聞こえるくらいです。
AF-S・AF-Cともに快適、瞳AFは正常に機能します。
フォーカスブリージングの抑制は完璧では無く、接写性能が高いこともあって近接と無限遠では目に見る画角変化が発生します。ただ、SP15-30mm F2.8ほど画角変化が大きい訳ではありません。
解像力テストチャート
17mm
中央領域は絞り開放から非常に良好。単焦点レンズと比べて遜色無いレベルの解像性能で絞っても改善しません。ピークはF2.8~F8までで、F11以降は回折の影響で徐々に数値が低下します。
中央と比べると周辺や四隅は平凡。決して悪くは無いものの、絞り開放は良像の最低値スレスレと言った印象。幸いにも絞ると急速に改善し、F4で良好な性能を発揮し、F5.6まで絞れば中央と同程度のパフォーマンスを発揮します。
近接の解像力チャートを使った広角レンズの結果としては十分良好と言えるでしょう。
20mm
基本的には17mmとほぼ同じ傾向を示しています。
やはり中央は絞り開放からピークのパフォーマンスでF11までこれを維持。周辺部は17mmの絞り開放より悪化しているものの、絞ると同じように改善します。ただし、中央のパフォーマンスに追いつくのはF5.6では無くF8まで絞った時。とは言え、「3000本」前後の数値が出ていれば非常に良好なのでF5.6でもOK。
24mm
20mmとほぼ同じ傾向です。
敢えて言えばF4での改善が小さく、F8でフレーム全域がピークに至るまで周辺や四隅は緩やかに改善しています。
28mm
絞り開放付近における「中央領域と四隅領域の解像性能差」が最も大きくなる焦点距離。
中央は以前としては非常に良好なパフォーマンスを発揮するものの、特に四隅が「2000本」を切る解像性能の低さ。パンフォーカスで撮影するなら、2段絞ってF5.6を使いたいところ。
他の焦点距離と違い、F8まで絞っても四隅領域が中央に追いつくことはありません。とは言っても「3000本」に達する解像性能を発揮するため、絞ればまったく不満無し。
遠景解像
17mm
中央も四隅も絞り開放から非常に良好。
近接解像力チャートと違い、周辺・四隅の解像性能は中央に近く見えますね。正直に言うと2400万画素では役不足と感じるほど良好なパフォーマンスだと感じます。
F8まで同じパフォーマンスを維持し、F11?F16で徐々に低下、F22で回折の影響が強くなります。
20mm
基本的に17mmと同様。敢えて言えば、四隅でもモアレが発生するくらいに解像しているようです。
絞っても解像性能は大きく改善せず、F11まで似たようなパフォーマンスを維持しています。
24mm
広角側と比べると四隅の絞り開放が少し甘いように感じます。と言っても描写が乱れている印象は無く、ディテールの再現が若干甘いかな、という程度。絞った際の改善速度は遅く、F8?F11まで絞るとピークに達します。
28mm
全体的な印象は24mmと同じ。広角側より四隅が甘いものの、全体的に見るとかなり安定しています。
望遠側の四隅で僅かに解像性能が低下するものの、全体的に良好なパフォーマンスを発揮しています。2400万画素のα7 IIIなら何の問題もなくF2.8を活用することが出来るでしょう。
ボケ
17mm
口径食の影響は小さいものの、非球面レンズの影響が多少見られます。場合によって玉ボケが騒がしくなるかもしれません。
感覚的には28-75mm F2.8 RXDと同じ傾向。もしくはそれより多少いい感じ。
28mm
17mmと同じ。
口径食は小さめで後ボケは綺麗。
逆光・光条
大口径広角ズームレンズとしては非常に良好。これは素直におススメできるポイント。
レンズフレアやゴーストは良く抑えられています。特に出目金レンズの同社SP15-30mm F2.8 Di VC USDと比べると驚くほど良好。
ただし、フィルター面とレンズ面の空間が広いので、フィルター装着時はゴーストに注意したいところ。
F11までは平凡な光条ですが、F16?F22まで絞ると綺麗な光条へと変化します。この描写は個人的に好み。
コマ収差
17mm
完璧ではありませんが非常に良好な補正結果だと思います
イルミネーションでこの結果なので天体撮影では特に問題と感じないはず。絞っても点光源の再現はあまり改善しません。
28mm
17mmと比べると少し点光源の変形が大きくなっています。やはり絞ってもあまり変化がありません。
歪曲収差
17mm
超広角レンズとしては目立たない程度の歪曲収差ですが、中央が陣笠状歪曲となっているため手動補正が難しい。幸いにもレンズプロファイルが格納されているのでカメラ出力のJPEGで問題無く補正可能。
28mm
僅かな糸巻き型歪曲。レンズプロファイルに依存するミラーレス用広角レンズが多い中にあって、思っていたより光学的に収差を抑えているように感じます。
今回のおさらい+α
Points
- プラスチック外装だが小型軽量・防塵防滴仕様
- インナーズーム機構
- 高速・静音なオートフォーカス
- 広角レンズとしては良好な近接解像
- 広角レンズとしては非常に良好な遠景
(広角側に重心がおかれ、望遠側の四隅が僅かに甘い) - 綺麗な後ボケだが非球面レンズの影響あり
- 口径食の影響は少ない
- 非常に良好な逆光耐性
- F16?F22で綺麗な光条
- 目立たないコマ収差
- 超広角ズームとしては控えめな歪曲収差
(ただし17mm側では陣笠状の変形が見られる)
フルサイズミラーレス用広角レンズとしては安価にも関わらず、画質を妥協している印象は全くありません。付け加えると、マイクロフォーサーズやAPS-Cミラーレスの大口径広角ズームと比べても安い。
解像性能は非常に良好で2400万画素では隅から隅まで粗の目立たない描写。色収差は綺麗に補正され、逆光耐性は問題無く、周辺減光やコマ収差はきちんと抑えられています。
このパフォーマンスが小型軽量な鏡筒に詰め込まれているのだから文句ナシ。
ズームレンジの狭さに注意
注意すべきはズームレンジ。一般的な広角ズームよりもレンジが狭く、実際に使ってみると想像以上に狭い。
16-35mmや15-30mmを「広角ズームレンズ」として認識していると、17-28mmは「単焦点レンズに毛が生えた程度」のように感じます。特に望遠側28mmが思ったよりも難しい。
被写体に合わせたズーミングに対応しきれない場合も多く、どちらか問えば単焦点レンズを交換無しに切替て使えると割り切ったほうが良いかも。
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