タムロン「50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」のレビュー第四弾を公開。倍率色収差や歪曲収差の補正状態が完璧ではないものの、全体的にまずまず良好な補正状態を実現しているように見えます。
簡易的なまとめ
これと言って大きな弱点はありませんが、敢えて言えばカメラ側の補正で倍率色収差や歪曲収差に改善の余地あり。とはいえ、価格やレンズサイズを考慮するとトレードオフと言えるポイントであり、許容範囲内。個人的には、もっと酷い結果を予想していました。
There are no major weaknesses to speak of, but I dare say that there is room for improvement in magnification chromatic aberration and distortion with correction on the camera side. Nevertheless, considering the price and lens size, this is a trade-off point and within acceptable limits. Personally, I expected much worse results.
50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDのレビュー一覧
- タムロン 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビュー完全版
- 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.5 ボケ編
- 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.4 諸収差編
- 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.3 解像チャート編
- 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.2 遠景解像編
- 50-300mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
50mm
僅かに色づきがあるものの、大きな問題はありません。
100mm
50mmよりも目立ちますが軽微。
200mm
さらに色収差が強くなり、状況によっては色づきが気になる可能性あり。ただし、カメラ側の補正が簡単に修正可能。
300mm
200mmと同程度。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
50mm
完璧な補正状態ではなく、絞り開放付近で若干の色収差が発生しています。大部分の状況で無視できる程度の収差であり、特に心配する必要はありません。
135mm
広角端と異なり、色収差は全く発生していません。
300mm
ズーム中間域と同じく全く問題無し。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
このレンズはカメラ側で自動補正され、Adobe Lightroom Classic CC現像でレンズプロファイルが自動的に適用されます。補正オフの状態を目にする機会は少ないと思われます。敢えて補正がオフとなるニコンZマウント装着(アダプター経由)で撮影した作例が以下の通り。
50mmは未補正でも非常に良好。ただし、100mmや300mmでは僅かに目立つ糸巻き型歪曲が発生しています。大きな問題ではありませんが、気になる場合は補正の常時適用がおススメ。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
若干の影響は見られるものの、ズーム全域で点光源の顕著な変形はありません。
球面収差
ズーム中間域の接写でフォーカスシフトの影響が見られる以外は問題なし。
まとめ
これと言って大きな弱点はありませんが、敢えて言えばカメラ側の補正で倍率色収差や歪曲収差に改善の余地あり。とはいえ、価格やレンズサイズを考慮するとトレードオフと言えるポイントであり、許容範囲内。個人的には、もっと酷い結果を予想していました。広角側の軸上色収差は補正が難しい収差ですが、幸いにも弱点と言えるほど目立つ場面は多くありません。イルミネーションなどのシーンで少し色づきが発生する可能性があるものの、それ以外で大きな問題はありません。
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作例
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