シグマ「50mm F2 DG DN」のレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
50mm F2 DG DN のレビュー一覧
- シグマ 50mm F2 DG DN レンズレビュー完全版 2023年6月5日
- シグマ 50mm F2 DG DN レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編 2023年5月28日
- シグマ 50mm F2 DG DN レンズレビューVol.5 諸収差編 2023年5月23日
- シグマ 50mm F2 DG DN レンズレビューVol.4 ボケ編 2023年5月14日
- シグマ 50mm F2 DG DN レンズレビューVol.3 近距離解像チャート編 2023年5月5日
- シグマ 50mm F2 DG DN レンズレビューVol.2 遠景解像編 2023年5月4日
- シグマ 50mm F2 DG DN レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編 2023年4月23日
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
実写で確認
滲むように柔らかい後ボケと、縁取りが硬く2線ボケのような前ボケ。他のI Seriesと同じ傾向であり、重要な後ボケが柔らかくなっているので肯定的に評価。一つ残念な点があるとすれば軸上色収差の影響であり、コントラストが高いシーンではボケに色がつくことで悪目立ちするかもしれません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
隅に向かって口径食の影響による変形が見られるものの、このクラスとして特に目立つわけでもありません。F2.8まで絞ると口径食の影響はほとんど回避可能。非球面レンズを使用していますが、玉ボケの内側は滑らかで綺麗。同心円状のムラはほとんどありません。
ボケ実写
接写
接写時は球面収差の影響もあってか滲むように滑らかな後ボケが得られます。縁取りが弱く、背景がよけるようにボケるため、「F2.0」の数値以上に背景が溶けているように見えます。
近距離
撮影距離が少し長くなっても滑らかで柔らかい描写が続きます。色収差や非点収差・コマ収差による悪影響も目立たず、全体的な質感は上位の「Art」「G Master」に近い印象。
中距離
撮影距離がさらに長い場合もフレーム隅まで質感が良好。
撮影距離ごと
全高170cmの三脚を人物に見立てて、F2で撮影した写真が以下の通り。
フレームに全身を入れても被写体を背景から分離するくらいにはボケが得られます。この際の微ボケは50mm F2クラスとしては滑らかで綺麗。周辺部の描写は多少荒れるものの、低価格の50mm F1.8と比べると良好です。ArtやG MasterのようなF1.4レンズと比べても中央の描写は健闘。ただし、周辺部は収差の影響が少し強めに出るように見えます。
まとめ
接写時は球面収差が残ったI Seriesらしいボケが得られます。ピントが遠側に移動すると収差が収束して徐々に硬くなりますが、それでも2線ボケなど騒がしい描写の兆候はありません。F1.4 Art・G Masterと見比べても健闘。
価格や開放F値で競合するとしたら「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」でしょうか。甲乙つけがたいレンズですが、ソニーZAのほうが口径食の影響が強く、隅に向かってボケが歪みやすい。さらに軸上色収差の影響も少し目立ちます。「55mm F1.8」は「50mm F2」よりもボケが大きくなるものの、全身ポートレートの撮影距離でF1.8を使用するとボケの縁取りが強めで騒がしい描写。F2まで絞ると改善しますが、それでもシグマ I Seriesのほうが心地よい描写に見えます。
ソニーZAのようにどこか艶っぽく、パンチのある描写(おそらく、ヌケが良くてコントラストが高い描写)ではありませんが、使い勝手がよく、主張しすぎない綺麗なボケが得られます。このあたりは好みの問題だと思いますが…。
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作例
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