タムロン「90mm F/2.8 Di III MACRO VXD」のレビュー第一弾 外観・操作・AF編を公開。中望遠マクロとしては携帯性が良く、さらに良好な操作と高速AFで汎用性の高いレンズに仕上がっています。
今回のまとめ
中望遠マクロとしては適度に小型軽量で防塵防滴。フッ素コーティング処理も施され、携帯性・耐候性に優れた一本。さらにAFは非常に高速で、マクロから近距離の動体撮影まで利用できるパフォーマンス。フォーカスリングはマクロ撮影に適したストロークが確保されており、フォーカスリミッターやAFLボタンは使いやすい位置に分かりやすく配置されています。AF/MFスイッチはないものの、カスタマイズでAFLボタンをそれっぽく使うことが可能。
As a medium telephoto macro lens, it is reasonably compact and lightweight, and is dustproof and splashproof. It also has a fluorine coating, making it a compact, weatherproof lens. In addition, the AF is extremely fast, and it can be used for macro photography and close-range moving object photography. The focus ring has a stroke that is suitable for macro photography, and the focus limiter and AFL button are positioned in an easy-to-use location. Although there is no AF/MF switch, it is possible to use the AFL button in a similar way through customization.
90mm F/2.8 Di III MACRO VXDのレビュー一覧
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.5 諸収差編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.4 ボケ編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.3 解像チャート編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.2 遠景解像編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
90mm F/2.8 Di III MACRO VXDのおさらい
2016年に登場した一眼レフ用レンズ「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(F017)」以来となるタムロンの90mmマクロレンズ。1979年の初代「SP 90mm F/2.5」から始まり、連綿と続くタムキューの系譜がF017で途絶えてしまったかと思いきや、ミラーレス用レンズとして復活。光学設計をミラーレス用に一新し、最新のAF駆動やUSB接続機能などを引っ提げて登場しました。
発売日 | 2024年10月24日 |
初値 | 97,020円 / 102,960円 |
レンズマウント | E / Z |
対応センサー | フルサイズ |
焦点距離 | 90mm |
レンズ構成 | 12群15枚 |
開放絞り | F2.8 |
最小絞り | F16 |
絞り羽根 | 12枚 (円形絞り) |
最短撮影距離 | 0.23m |
最大撮影倍率 | 1:1 |
フィルター径 | Φ67mm |
手振れ補正 | - |
テレコン | - |
コーティング | BBAR-G2、防汚 |
サイズ | Φ79.2mm×126.5mm |
重量 | 630g |
防塵防滴 | 対応 |
AF | VXD |
絞りリング | - |
その他のコントロール | カスタムスイッチ |
その他 | TAMRON Lens Utility |
12群15枚の光学系には4枚のLDレンズを使用。MTFはフレームの広い範囲で安定した高解像を示しており、メリジオナル成分とサジタル成分の分離も良く抑えられているようです。光学手振れ補正は非搭載ですが、最近のフルサイズミラーレス、特に対応するソニーE・ニコンZは全機種でボディ内手振れ補正を搭載しているため、大きな問題とはならないはず。
フォーカスの駆動方式はリニアモーターフォーカス機構VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)を採用。従来とは一線を画す高速性能を実現しつつ、高精度で滑らかなフォーカスを実現しています。他のVXD駆動のレンズを使った限りでは非常に良好。
価格のチェック
売り出し価格はソニーEとニコンZでそれぞれ97,020円 / 102,960円。従来のタムキューよりもやや高めですが、最近の物価上昇を考慮すると良く抑えられているように見えます。もちろん。ソニーやニコンの純正品より安価。
90mm F/2.8 Di III MACRO VXD Sony E | |||
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外観・操作性
箱・付属品
従来通り白を基調としたDi IIIシリーズらしいデザインの箱。
装飾は底部にブランドカラーのルミナスゴールドを配色しているのみ。上部には封印用のシールが一か所張り付けられています。
レンズの緩衝材は入っておらず、段ボールによる間仕切りのみ。レンズケースなどは同梱していません。付属品は花形レンズフードに前後のキャップ、説明書・保証書・シリアルナンバーのシールなど。
外観
外装はプラスチック製ながらしっかりとした作り。サムヤンのような薄っぺらいプラスチック感は無く、頑丈。外装のつなぎ目はうまく隠されているように見えます。塗装はDi III初期モデルと比べて黒が強くなっており、一眼レフ用レンズ「SP」シリーズを彷彿とさせるカラーリング。もちろん、金属外装だったSPシリーズと比べると質感は劣ります。
全体的に過度な装飾は施されておらず、マウント付近のルミナスゴールドのリングのみ。相変わらず「日本設計」を大きく表示しており、製造国は非常に分かりづらく記載。製造国は中国。
フォーカスリングはゴム製でグリップは良好。とはいえ、ゴム製は塵や小ゴミを吸着しやすい点がマイナス。リングの抵抗は小さく、ソニー純正のように緩い。ストロークは十分に長いため、初期設定の状態でも微調整には十分。
側面にはUSBポートを搭載しており、パソコンと接続してカスタマイズが可能。ただし、USBポート用のカバーは付属していません(仕様的にはカバー無しでも問題なさそうですが)。
ハンズオン
サイズ | Φ79.2mm×126.5mm |
重量 | 630g |
一眼レフ用レンズと比べると大きく重くなりましたが、ミラーレスの中望遠マクロとしては(LUMIXほどではないものの)小型軽量。手振れ補正を搭載する100mm F2.8 マクロレンズと比べると、一回り小さくなっています。外装の質感は悪くないものの、部分的・広い範囲で金属パーツを使用している製品と比べると見劣ります。
前玉・後玉
前面には撥水・撥油性のある防汚コートを採用。水滴や油汚れに強く、現地でのメンテナンス性が良好。とは言え衝撃や傷が想定される撮影であれば、フィルターを装着しておいたほうが良さそう。特にマクロレンズは被写体に接近するシーンが多い。
フィルター径は大部分のDi IIIシリーズと同じく67mmで統一。他に タムロンレンズを使用しているのであれば、NDやC-PLなどを、67mmで揃えてしまうのは一つの手。
レンズマウントは4本のビスで固定された金属製プレート。一般的なシルバーカラーのマウントと比べて、ルミナスゴールドのような色味となっています。周囲は防塵防滴用のシーリング。
フォーカスリング
ゴム製フォーカスリングは滑らかに回転。
リングの回転速度に応じてピント移動量は変化するものの、素早く回転しても1回転以上の長いストロークがあります。ゆっくり回転する際の微調整は簡単。リングのトルクが弱いものの(=緩い)、長いストロークでバランスは取れています。もしも不満を感じた場合は TAMRON Lens Utilityでカスタマイズ可能。
Fnボタン
従来モデルと異なり、鏡筒側面にFnボタンを搭載。初期設定は カメラ側の「レンズFn」で割り当てた機能に依存するものの、「TAMRON Lens Utility™」を使ったカスタマイズで「AF/MF切替」「A-Bフォーカス」「フォーカスプリセット」などに使用可能。
レンズフード
プラスチック製の円筒形レンズフードが付属。90mmのレンズとしては大きめで、逆さ付け時はフォーカスリングが完全に隠れてしまいます。遮光性は良好ですが、収納性が悪い。フィルター操作窓のある珍しいデザインで、C-PLなどを指で操作できる十分な広さの開口部があります。
装着例
α7R Vに装着。
中望遠としては長めのレンズですが、バランスは良好で快適に手持ち撮影が可能。グリップとレンズの間には余裕は無いものの十分なスペースがあります。厚手の手袋を装着すると窮屈かもしれません。
AF・MF
フォーカススピード
ボイスコイルモーター駆動のAFに対応。
サードパーティ製レンズはAF-S時にAF速度が低下するものの、AF-Cでは電光石火のAF速度。マクロ域から無限遠までのピント移動もほぼ一瞬で、条件が良ければハンチングの頻度が少なめ。ちょっとした動体撮影で安心して使えるくらいに信頼性が高い。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・1m・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
マクロレンズと言うこともあり、ピント移動時に大きな画角の変化を伴います。
精度
α7R Vと組み合わせた限りで大きな問題は無し。AF-S・AF-Cともに問題無く動作します。
MF
前述したように TAMRON Lens Utilityによるカスタマイズが可能。自身の好みに合わせてフォーカスリングの操作性を調整することが出来ます。
撮影倍率
最短撮影距離 | 0.23m |
最大撮影倍率 | 1:1 |
公称しているように、等倍でのマクロ撮影が可能。最短撮影距離は0.23mですが、レンズ全長を考慮すると、ワーキングディスタンスは10cmくらい。寄りやすいレンズですが、等倍マクロでは自身の影が写りこまないように気を付ける必要があります。
まとめ
中望遠マクロとしては適度に小型軽量で防塵防滴。フッ素コーティング処理も施され、携帯性・耐候性に優れた一本。さらにAFは非常に高速で、マクロから近距離の動体撮影まで利用できるパフォーマンス。フォーカスリングはマクロ撮影に適したストロークが確保されており、フォーカスリミッターやAFLボタンは使いやすい位置に分かりやすく配置されています。AF/MFスイッチはないものの、カスタマイズでAFLボタンをそれっぽく使うことが可能。
光学性能は現在テスト中ですが「タムキュー」の名に恥じない立派な描写性能。広い範囲でシャープな結果を得ることができ、マクロや近距離では柔らかい後ボケが得られます。
手頃な価格で携帯性が良く、良好な光学性能。これまでのタムロンDi IIIシリーズと同じく、コストパフォーマンスの高いレンズと言えそうです。
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作例
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