AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gの描写性能チェック
ボケ
F1.4
後ボケは滲みを伴う非常に滑らかなボケ質。おそらくこのレンズをお買い求める理由の一つに挙げられるはず。
ピント面も球面収差の影響のためか少しモヤっとしている。よく言えば柔らかく、わるく言えば描写が甘い。これは好みが分かれるところ。コントラストが低い訳では無く、色ノリもしっかりとしているので思ったより使い辛くない。
前ボケは後ボケと比べて硬調。ボケの色づきも手伝って、線が多い物体を前ボケにフレーミングすると騒がしくなるかもしれない。
F2.0
1段絞っても後ボケは上品にボケるが前ボケは相変わらず騒がしさが残る。
F2.8
2段絞ると後ボケの滲みが減少し普通の単焦点に近いボケ質となる。しかし、依然として大ボケの部分では気持ちの良い滲みが継続中。背景の物体を表現しつつも、柔らかいボケ味で包み込みたい場合には良い。
前ボケは色づきが解消、ボケ質も使いやすいものへと変化する。前ボケを積極的に入れる場合はここまで絞った方が使いやすいかもしれない。
F4.0
3段絞るとさらに前ボケは使いやすくなる。
F5.6
ここまで絞ると前後のボケ質はニュートラル。
ポイントとしてピント面の解像感が絞っても向上しない。これについては次の項で。
ボケの色づき・フォーカスシフト
F1.4~F2.0までの絞り値では滲みのあるボケにハッキリとした色づきを確認できる。
色づきが強いものの、ボケは柔らくそこまで主張していない印象を受ける。
F2.8まで絞ることで色づきはほぼ収束する。完全に除去したいのであればF4.0~F5.6まで絞るとスッキリ。
それ以上に気になったのは絞ることで無限遠側にピントの山がシフトしていること。移動量はかなり大きく、初期のピント位置から手前側は絞っても被写界深度が深くならない。
実絞り式AFとなるライブビューAFを使えばフォーカスシフトの影響を回避する事が出来る。しかし、絞り開放でAFをするファインダー(位相差AF)で至近距離の被写体を絞って撮影する場合には注意が必要だ。
遠景解像
F1.4
近接時とは打って変わって球面収差の影響がとても少ない。
軸上色収差が僅かに発生しているものの、ピント面はしっかりと解像している。
F2.0
1段絞ると色収差が低減し引き締まり始める。
この絞り値までは周辺減光が目立つので端の画像は少し暗めに写っている。
F2.8
ここまで絞ると中央フレームはとてもパキっとした写り。
隅は周辺減光が解消した上に、F1.4~F2までと比べて一回り解像感が向上している。
F4.0
中央はF2とF2.8の違いほど向上はしていないものの、絞るほどに解像度が増している。
端はあまり変化がない。
F5.6
F4とほぼ同じ画質。
画像を張り間違えたかな?と感じるほど。
F8.0
端の解像感がF5.6と比べてかなり改善している。超高画素機で遠景撮影に使うのであれば、最低でもここまで絞りたい。
F11
中央は回折の影響を受け始めているのか少しソフトな描写となる。しかし、画質はまだまだ及第点以上。
端の解像感はF8よりも安定している。
F16
中央はさらに回折の影響を受けるが、端はF11と比べて大きな変化はない。
D850を使った風景撮影で隅から隅までシャープに写したいのであれば、F11~F16まで絞って使うのがベスト。
無限遠の像面湾曲
ネット上でこのレンズにて像面湾曲のワードが散見したので、無限遠でF1.4を使った場合のチェック。
4600万画素のNikon D850を用いてもそこまで目立つ像面湾曲は確認できなかった。
2400万画素クラスのカメラならまず問題ないはず。
まとめ
このレンズの使い勝手
- 滲みを伴う後ボケは近接時にF1.4~F2.8の間で特に大きい。
- F4.0以上の絞り値では滲みが少なくピント面や前ボケが使いやすい傾向。
- ボケの色づきはF2.8で緩和、F4?F5.6でほぼ解消。
- 近接撮影時は絞り値によるフォーカスシフトが大きい。近接時に絞ってAFを使う場合にはライブビューAF推奨。遠景ではフォーカスシフトの影響が少ないor確認できない。
- 遠景解像は絞り開放から球面収差の少ないシャープな画質。色収差を抑えるならばやはりF2.8までは絞りたい。隅から隅まで遠景を解像させるつもりならF11?F16推奨。
- 無限遠の像面湾曲は問題無し。
近接撮影は開けてフワッと、遠景撮影は絞ってカリっとを地で行くレンズ。ピント距離に応じて使い勝手が変化するのは実に面白い。
近接撮影でボケ描写とピント面のシャープさ・ヌケの良さを求める場合は最低でもF4まで絞って撮影したい。さらにこの場合はフォーカスシフトの影響でピント面が奥方向へシフトする点に注意。
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