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ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビューVol.4 諸収差編

ソニー「E PZ 10-20mm F4 G」のレビュー第四弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェック。

E PZ 10-20mm F4 Gのレビュー一覧

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

10mm

絞り開放付近で倍率色収差がいくらか残存しているが、特に目立つ色ずれではない。コントラストが強いシーンではより悪化する可能性はあるが、ソフトウェア補正で対処可能な影響に抑えられている。

15mm

10mmと比べると倍率色収差の影響は僅かで、無補正でも無視できる程度に抑えられている。絞るとほぼ完璧だ。

20mm

ソフトウェア補正無しでF4から完璧な補正状態だ。ケチのつけようがない結果である。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

10mm

絞り開放から軸上色収差による影響は見られない。

15mm

10mmと同じく問題は皆無だ。

20mm

他のズームレンジと同じ問題は全くない。

球面収差

完璧な補正状態とは言えず、前後のボケ質に違いが見られる。10mm・20mmどちらも後ボケが比較的滑らかな描写で、前ボケには強い縁取りが発生している。特に20mmでの違いが目立つ。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

10mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

ミラーレスの広角レンズらしく、歪曲収差の補正はソフトウェアに依存している。補正が無い状態では強めの樽型歪曲が残っているので、これを現像ソフトのプロファイルやカメラ内で補正する必要がある。残念ながら、Lightroomにはまだ補正用のプロファイルが存在しない。また、陣笠状の歪みを伴うので、手動で補正するのは難しい。

15mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

10mmと比べると遥かに穏やかな樽型歪曲だ。無補正でも目立たないが、直線をフレーム周辺に入れる場合は補正を適用しておきたい。

20mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

穏やかな糸巻き型で、大部分の撮影では歪みを感じないと思われる。ただし、直線をフレーム周辺に入れる場合は補正を適用しておきたい。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

10mm

コマ収差と言うよりは放射方向の非点収差が少し残っているように見える。コマ収差の問題はあまり無いように見える。F8付近まで絞ると非点収差を抑えることが可能だ。

15mm

10mmと比べると非点収差の影響が目立たなくなる。完璧ではないが、フレーム隅の端でも問題はほとんど無い。

20mm

15mmと同じく、絞り開放のF4から(完璧では無いが)良く抑えられているように見える。

まとめ

色収差は10mmの倍率色収差以外は良好な補正状態で、10mmの収差にしても実写で特に目立つことは無く、ソフトウェアで簡単に補正することも出来る。基本的に、このレンズで色収差に悩まされることは無いだろう。

歪曲収差は10mmで目立つ樽型が残っているものの、これは(競合他社を含めて)ミラーレス用広角レンズでは一般的な設計だ。ソフトウェアで補正しやすい歪曲収差の優先度を下げ、後処理が難しい問題を優先的に対処する設計にしたのだと思われる。小型軽量で高品質なインナーズームを実現するにあたり、歪曲収差のソフトウェア補正は避けて通れない。幸いにも、この方針が実を結んでいるように見える。

F4と明るくないズームレンズであり、このレンズで積極的に夜景や星景を撮影することは無いと思われる。しかし、どうしてもF4ズームで撮影する必要がある場合、このレンズはF4からまずまず良好な結果を得られることが分かった。

全体的に見て、小型軽量なインナーズームの広角レンズとしては良好な補正状態だ。2022年7月時点でLightroomに歪曲収差の補正用プロファイルが存在していない点には留意する必要があるものの、本レンズに対応するまでそう時間はかからないと思われる。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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