キヤノン「EOS R7」のレビュー第三弾を公開。今回はカメラのメニューシステムに一通り目を通しつつ、新機能や操作性について評価しています。
EOS R7のレビュー一覧
- キヤノン EOS R7 徹底レビュー 完全版
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.8 カスタマイズ編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.7 AF・MF編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.6 解像性能編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.5 ISO感度編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.4 ダイナミックレンジ編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.3 メニュー編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.2 ドライブ編
- キヤノン「EOS R7」徹底レビューVol.1 外観・操作性編
- キヤノン EOS R7 ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
メニューシステム編
動画で確認
まずはざっとメニュー一覧を動画を使ってみてみよう。
基本的にキヤノンではお馴染みのメニュー構成だ。前ダイヤルでタブの切替、後ダイヤルで上下カーソル移動が割り当てられているほか、ジョイスティック、マルチコントローラーを使った操作も可能である。APS-C一眼レフ「EOS 90D」と比べると項目が非常に多く、さらにAFが独立したカテゴリとなっている点は注目に値する。90Dのようなミドル機から乗り換えた場合は、その機能性に驚くことだろう。それではカテゴリごとにメニューシステムをチェックする。
撮影メニュー
撮影メニューは10ページ52項目だ。一昔前のメニューシステムと比べると随分と複雑になっている。1~6ページくらいまではお馴染みの項目となるが、7~10ページには目新しい機能が数多くある。
特徴的な機能として「RAWバーストモード」がある。このモード中は連続撮影中のRAWが一つの画像データに格納されるので管理が非常に簡単となる。撮影後は再生モードで結果を確認しながらRAWやHEIFなどを切り出すことが可能だ。注意点として、RAWバーストモードのファイルはひとまとまりの「.CR3」として出力されているので、そのままLightroomなどで読み取ることができない。カメラやDPPでRAWバーストモードから単一のRAWを出力する必要がある。少し面倒くさい。ちなみに、RAWバーストモード中はプリ撮影に対応している。プリ撮影をオンにすることで、シャッター全押し前の最大0.5秒から記録することが可能だ。決定的瞬間をとらえやすくなっている。
以前は「ソフトシャッター」や「静音撮影モード」だったシャッター方式が他社と同じ具体的なネーミングに変更されている。初期設定は「電子先幕」だが、このモードのまま大口径レンズで高速シャッター(1/2000秒くらいと言われている)を使用すると露出ムラが発生してしまうので気を付けたい。そのような場合はメカニカルシャッターや電子シャッターに切り替えよう。電子シャッターは「サイレントシャッター機能」でも切り替わるが、電子音や電源オフ時のシャッター閉幕機能などがオフとなってしまう。あくまでも電子シャッターを使いたいだけなら「シャッター方式」ぁら電子シャッターを選ぶのがおススメだ。
手ぶれ補正の設定も細かく調整できるようになった。静止画や動画で手ぶれ補正のオンオフを設定できるほか、静止画撮影時のみ手ぶれ補正が効くように調整できる設定項目もある。
目新しい機能として、手ぶれ補正を活用した自動水平補正機能を搭載している。これは回転ブレに対応したボディ内手ぶれ補正を利用して水平を調整してくれる機能だ。画像処理ではなく物理的にセンサーを回転して調整するのでフレームのクロップなどは発生しない。ただし、電子先幕時の高速連続撮影時は無効となる。
詳しくはカスタマイズ編で解説するが、EOS R7はクイック設定メニューをカスタマイズ可能だ。これはEOS R3から導入した機能であり、EOS R5やEOS R6では利用できない。従来までクイック設定メニューの項目は固定され使い辛かったが、他社のFnメニューのようにカスタマイズ可能となり、多用する機能を割り当てて使うことが出来る。
登録できる機能は11枠あり、計28の機能がある。ただし、「画質」機能のみ2枠使う必要があり。素早く設定変更できる機能が多いが、中には設定メニューへのショートカットでしかない項目もあるので要確認だ。被写体検出や背面モニターの輝度調整などこれまで使いそうで割り当てスペースが無かった機能を複数登録できるのは便利と感じる。
従来の「露出シミュレーション」が「表示シミュレーション」へと進化している。従来はライブビュー中に露出をシミュレーションするかどうかシンプルな機能だったが、EOS R7ではライブビュー中に絞りが設定値まで動作する、いわゆる「実絞り」動作に対応している。これまでは「絞りプレビュー」機能を使用して確認する必要があり、その際にMF操作が利用不可となるのが不便だったが、これで解決した。是非ともEOS R5やEOS R6にもファームウェアアップデートで導入して欲しいものである。
EOS R3で初登場した機能だ。ミラーレスのファインダーは露出や仕上がり設定をシミュレーションしながらライブビュー像を確認することが出来る。「OVFビューアシスト」は敢えてミラーレスの利便性を排除して、光学ファインダーのような見栄えを得ることが出来る機能だ。あくまでもOVFに似せたファインダー像であり、光学ファインダーを期待しているとがっかりするかもしれない。クイック設定メニューに登録することが出来ないので、活用したいのであればボタンカスタマイズでショートカットを配置するのがおススメだ。
AFメニュー
AFエリアのシステムは基本的に従来通りだが、EOS R3と同じようにゾーンAFがカスタマイズに対応している。縦幅と横幅を自由に変更可能で、3枠まで利用することが出来る。使用しないAfエリアは表示から外すこともできるので、3枠あっても邪魔とは感じないはずだ。
フレキシブルゾーンで少し残念なのは範囲をカスタマイズできる設定項目がクイック設定メニューにしかないことだ。通常のメニューやボタンカスタマイズに対応しておらず、クイック設定メニューからフレキシブルゾーンのカスタマイズモードへ移行する必要がある。もしもフレキシブルゾーンを活用したいのであれば、クイック設定メニューとセットになることを覚えておこう。フレキシブルゾーンはEOS R3から導入された新しい機能なので、将来的にインターフェースが改善することを期待したい。
追記
以下の手段でもカスタマイズモードへ移行できることを確認
- AFフレーム選択ボタン
- M-Fnボタン
- カスタマイズするフレキシブルゾーンAFを選ぶ
- AFフレーム選択ボタン
- カスタマイズモード
追尾AFはシステムが一新されているので注意が必要だ。以前のカメラはライブビューのトラッキング(追尾)AFはオートエリアのみの機能だったが、EOS R7ではすべてのAFエリアでトラッキングが可能となっている。トラッキングのオン・オフは専用の設定項目があり、ボタンカスタマイズでも割り当てることが出来る。
EOS R7はフルサイズ機と同じように被写体検出に対応。売り出し価格が10万円台のカメラで被写体検出に対応しているのは非常に珍しい。様々な被写体に対応しているが、大別して「人物」「動物」「乗り物」の3種類に分けられている。詳しくは「AF編」で解説するが、カジュアルに撮影する際は非常に便利な機能である。
従来通り「被写体追従特性」「速度変化に対する追従性」をカスタマイズすることができ、被写体に合わせたプリセットが4種類用意されている。
AFフレーム選択の敏感度を調整することで、ジョイスティック操作時の移動速度を調節可能だ。個人的に初期設定がバランス良いと感じるが、気に入らなければ前後に調整することができる。と言っても細かい設定は出来ず、標準と比べて前後に1目盛り動かすことが出来るだけだ。
EOS Rより実装しているフォーカスガイドをEOS R7でも利用可能だ。詳しくはEOS Rで紹介した記事を参考にして欲しい。フォーカスガイド中も検出機能は有効であり、瞳を追いかけながらフォーカスガイドも利用できる。
初期設定で電子式フルタイムMFはオフとなっている。もしも一眼レフのような操作性のフルタイムマニュアルを使いたければオンにしておくといいだろう。
フルタイムMFの設定項目とは別に、ワンショットAFのMFに対応の有無を変更することができる。
一眼レフとは異なり、フォーカスリングの回転方向を切り替えることが可能だ。
RFレンズのMFリングはレスポンスを変更することができる。回転量に連動したほうが直感的な操作が可能となっているが、場合によってストロークが短いと感じるかもしれない。微調整が必要であれば回転速度に連動させたほうが良いだろう。
再生メニュー
再生メニューは従来通りだ。APS-C機として珍しいのはHEIF→JPEG変換があること。
通信メニュー
通信メニューは1ページ7項目のみ。スマートフォンとの連携は非常に簡単で、複数のカメラとペアリングした状態でも動作は安定している。使い勝手は良好だが、ニコンSnapbridgeのようにBluetooth接続で自動的に縮小画像を転送できる機能があると良かった。
セットアップメニュー
セットアップメニューは6ページ35項目で構成されている。大部分は従来通りだが、一部には変更点や追加機能があるので補足したい。
EOS R5までの節電機能に加えて「モニター低輝度表示」の時間を設定することが出来るようになった。設定時間は0秒から30秒まで5秒刻みで調整可能だ。
EOS R5などフルサイズ機と同じく、電源オフ時のシャッター閉幕機能に対応している。10万円台のカメラに実装される機能としては珍しく、特にAPS-Cミラーレスとしては初めてだと思われる。レンズ交換時にセンサーのごみ付着を予防できる素晴らしい機能だが、繊細なメカニカルシャッターを利用している点を忘れてはならない。
キヤノンとしては珍しくカメラ前面にAF/MFスイッチを搭載しているが、これを使わないと思ったらセットアップメニューから機能をオフにすることが出来る。出来ればオリンパスやパナソニックのような「Fnレバー」として使えるように変更出来ると良かった。
カスタム撮影モード3枠はカスタムモードで設定を随時変更できる「登録内容の自動更新」に対応している。電源オン/オフでカスタムモードの設定がリセットされるのを嫌うのであれば「更新する」に設定してみよう。
カスタマイズメニュー
カスタマイズメニューは5ページ23項目で構成されている。基本的には従来通りで、特筆すべき項目はない。カスタマイズに関する詳細は文字量は多くなるため、特集記事にて紹介したい。
マイメニュー
従来通りのマイメニューシステムを利用可能である。利用できる機能が増えているので、ボタンカスタマイズやクイックメニューで対応しきれない項目を積極的に登録しておきたい。登録したい設定項目を選ぶ際は大量のページから探す必要があるのは残念だ。できればオリンパス・OMデジタルのような操作性が好ましい。
まとめ
これまでは「一眼レフっぽさ」が残っていたが、いよいよミラーレスらしい機能性のEOSカメラとなってきた。数多くの撮影機能に対応し、豊富なカスタマイズを利用でき、機能を利用するためのショートカットも充実している。少し前に登場したEOS R5やR6にも導入して欲しい感じる部分が多々あるので、ファームウェアアップデートに期待したい。
豊富な機能にアクセスできるのは良いことだが、メニューシステムのページ数が多くなり、カテゴリの細分化や再配置が必要な時期となっているように感じる。特に10ページもある撮影メニューは少し煩雑な印象を受ける。マイメニューへの登録手段も改善が必要だ。
APS-CのEOSカメラとしては珍しくAFメニューが独立しているのは歓迎できる。トラッキングや被写体検出、フレキシブルゾーンなど、AFシステムの仕組みに変更点があるので、EOS 90DやEOS M6 Mark IIなど従来のAPS-Cカメラから乗り換える際は慣れが必要になる。これと言って不満は無いが、フレキシブルゾーンAFのカスタマイズモードへ移行する手段を増やして欲しいところ。
参考情報
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