Laowa 7.5 MFTレビュー
LaowaはAnhui ChangGeng Optical Technology (Venus Optics)が製造する交換レンズのシリーズ名称。一眼レフカメラ用をメインにリリースしており、マイクロフォーサーズ用はこのレンズが初となる。
アポダイゼーション光学エレメントを使った「Laowa 105mm F2 STF」や広角マクロとシフト機能を両立した「Laowa 15mm F4.0 WIDE MACRO 1:1」など個性的なレンズが多い。
7.5mm F2は一見すると没個性的な外観に見えるが、超広角レンズにしてF2と明るく、何より個性的なのはそのサイズ。C-Dreamerと謳うように超コンパクトなレンズデザインとなっている。
開封
マイクロフォーサーズ用超広角単焦点という珍しいレンズで、かつ開放絞り値がF2.0と明るい。そんな珍しいスペックを持ったレンズに興味が沸き、発売日に迷わずゲット。
化粧箱はしっかりとしてチープさは感じない。箱の蓋にはマグネットが仕込まれている面白い造り。
開封すると真空パックされた珍しいスタイルの梱包で本体が出てくる。
これは「しっかりと品質管理してます」というアピールでしょうか?中国製造で空輸することを考えると真空パックというのはある意味理にかなっている(結露などの防止?)かもしれませんね。
ちなみに初回購入キャンペーン(C-PL/ND1000/UVフィルターセット)の申し込みハガキが付いていた。国内メーカーのキャンペーンよりも合理的でユーザフレンドリーな方法。しかし、このハガキをコピーして複製されたらどうするのだろう?
中身を確認。本体・レンズキャップ・レンズフードのみで、ケースなどは付属しません。
サイズは事前に確認していたものの、実際に手に取ると想像以上に小さい。全体的に金属製の素材が使われて、チープさは全くない、小さいわりに造りがしっかりとしているので好印象だ。
ピントリングは電子制御式に慣れていると硬く感じる。一般的なヘリコイド式と比べても硬い。しかし、ポートレートレンズよりもピントを操作する機会が少ないので、これくらいの硬さで丁度良いと思える程度。
絞りリングは1段ごとにクリックストップがある。F2~F2.8の間くらい1/3段でもよかったんじゃ?と感じる。絞り値間は無段階調節が可能で動画撮影には良いかもしれません。
金属製のレンズフードは脱着可能で逆付けもできる。もともと小さいフードなので逆付けする必要性はあまりない。ロック機構は無いが、締め付け感のあるバヨネット式で脱落することは無いと思われる。
パナソニックの「LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH.」を横に並べるとサイズが同程度であると分かる。レンズ全長はLaowaが僅かに大きいが、レンズの直径はLeicaの方が僅かに大きい。造りはどちらも金属製で良好な質感だが、デザイン的にLaowaが好み。
カメラに装着
E-M1 Mark IIと組み合わせると、明らかにレンズが小さすぎる。軽くて小さいので取り回しが良いのは確かだが、ボディサイズが大きいのでピントリングに指をかけづらい。バッテリーグリップを装着するとさらにピントリングを操作し辛くなる。しかし、マイクロフォーサーズ機の中ではダイナミックレンジが優れたカメラなのでE-M1 IIで使いたい。
PEN-Fとの組み合わせは抜群。おそらく使い勝手の良さからメインで使うのはこのボディとなる。特に操作で困ることもなく、レンズ情報を登録できる機種でEXIF情報に「Laowa 7.5mm」と記載できる点は素晴らしい。
GM1Sとの相性もバッチリ。ただし、この組み合わせの場合は手ぶれ補正を利かせることができないので暗いシーンを撮影するのはPEN-Fと比べて不利。お散歩カメラとして使うならPEN-Fと迷う。
memo
オリンパスでピーキングを利用する
電子接点の無いレンズを使う場合、オリンパス機は初期設定でピーキングを利用できない。これはカスタム設定で「ピーキングon」にするだけでは適用されない。
「ピーキング機能」をカスタムボタンに割り当てて、そこからオンオフを切り替えなければピーキング表示が出来ないので注意。
EXIF情報を登録する
オリンパスの一部カメラではレンズ情報を登録する機能を持っている。これを使えば電子接点の無いレンズでも焦点距離とレンズ名を残すことが可能だ。ただし絞り値は反映されない。
絞り優先モードで問題無く動作
少なくとも手持ちのマイクロフォーサーズ機では絞り優先モードで問題無く作動する。露出も問題ない。
ただし、電子接点が無いのでピントリングを回転しても拡大機能やピーキング機能が自動で作動しない点には気を付けたい。拡大機能かピーキング機能はFnボタンに割り当てておきたいところ。
解像力
E-M1 Mark IIに装着して50Mハイレゾショット撮影を実施しクロップして確認。
F2
中央は絞り開放からキレのある描写で特に絞る必要を感じないレベル。ハイレゾショット(5000万画素)でこれだけ解像すれば通常撮影ではまず問題無い。
一方で隅はやや甘い描写。海外のレビューでは像面湾曲が指摘されているので、そもそもピントが合っていないかもしれません。顕著な像の流れは感じないのでピクセルピーパーでも無ければ許容範囲かと。
もっとも留意すべきは周辺減光。四隅で数段の減光が発生しているので、場合によってソフトウェアでの補正が欲しくなる。
F2.8
中央はさらにコントラストが高まりキレが増す。
隅は甘かった描写が収束方向に動き出しているのが分かる。しかし、無限遠を使った風景撮影ではまだ甘く感じるかもしれません。
F4.0
中央はF2.8からあまり変化なし。ちょっとキレが増したかもしれない。
隅の解像力は明らかに改善しているが、倍率色収差が残存してる。ただし、ハイレゾショットを使った場合に拾う程度の色収差量で通常撮影ではあまり目につかないかも。
周辺減光がしぶとく残存している。ただし、これはプロテクトフィルターのフレームによるケラレじゃないかと考えています。
F5.6
隅の描写を含めた画質のピークはこの絞り値。
やはり倍率色収差が残存しているので、細かく見ればモヤっとしているかもしれません。
F8.0
周辺部の安定感はより高まるものの、中央は回折の影響をうけて僅かに解像力が低下している。
正直に言えばここまで絞る必要性はあまりないかもしれません。被写界深度の調整のみで利用したいところ。
F11
F8と同様。
これ以降の絞り値は全体的に回折の影響でちょい甘な描写ですので省略します。
(追記)解像力後日談
PEN-Fにて色々と撮影したところ、四隅の解像力は2000万画素までなら良好でした。
おそらく5000万画素分の解像力は持ち合わせていませんが、1600?2000万画素の現行機であれば解像力で特に不満は出ないはず。
やはりスウィートスポットはF4~F5.6。
周辺減光・歪曲
おそらくこのレンズにおける唯一のウィークポイント。
これだけコンパクトで明るいレンズなのだから仕方のないことでしょう。さらに言えば、プロテクトフィルターを装着したまま撮影していたので、余計に減光が発生していたかもしれません。
解像力の項目でもご覧になったように、F5.6まで絞らないと周辺減光がやや目立ちます。後処理でどうとでもなりますが、JPEG撮って出しで使う場合にはやや気になるポイント。
歪曲はこのクラスとしては並。デジタル補正が適用されていないので、こちらも後処理次第。とは言え直線の被写体を撮らないのなら、特に修正の必要もなさそうです。
ボケ
近接性能が高いため超広角レンズながら大きくボケを演出することが可能。そして思っていたよりもボケ質が悪くない。後ボケはとても滑らかで嫌味のない自然な印象。玉ボケには縁取りが少なく妙に主張するようなレンズではなさそうだ。
ピント面前後のボケ初めの部分は幾分か騒がしく感じる場合があるものの、大きく拡大しない限りは特に目立たない。ボケの色づきは皆無と言っていいくらい良好で、日中でも気にせずF2.0の絞り開放を楽しめる。
なかなか良いレンズですぞ。
その他作例
四隅には僅かだが倍率色収差が確認できる。デジタル補正が適用されていないにしては上出来と言ったところでしょう。非点収差が極僅かに残存しているものの、しっかりと絞れば像の流れは感じない。
中央は言うに及ばずキレッキレ。
最短撮影距離が0.12mと接写性能はトップエンドな広角ズームとドッコイ。
兎に角フレーム中央の切れ味が凄まじい。球面収差っぽさは微塵も感じないキレのある描写。
さらにF2.0の絞り値を使えばピント面がとても浅くなるのでピントの山を掴みやすいのはグッド。ピント面のキレが良いのもピーキングのし易さに作用しているように感じます。
難しいな、と感じたのはそよ風に揺れる葉っぱを撮影するとき。
C-AFで葉っぱに食らいつきながら撮影できるAFレンズに慣れすぎると難しい。
倍率色収差はあるものの、軸上色収差や影響をうけたであろうパープルフリンジの発生は確認できない。
接写時のボケはやはり綺麗。
まとめ
解像力 | ~ |
表現力 | |
操作性 | |
外観 | |
価格 | |
総合評価 |
コンパクトでキレのある描写、ボケも良好でF2と明るい。マニュアルフォーカスに抵抗感がなければオススメの一本。PEN系やGM/GF系との相性は抜群です。軍資金に余裕があるなら手を出してみては如何でしょうか?
一方で、本格的な風景写真や天体写真(隅から隅までの画質を重視するなら)トップエンドな広角ズームの方が良い選択肢。安くて明るいと思ってLaowaに手を出すと後悔するかもしれません。
適正価格なのか検討しようにも、今のところ競合レンズが存在しない。敢えて挙げるとするならば、サムヤンの魚眼「7.5mm 1:3.5 UMC Fish-eye MFT」がこのレンズの半値で購入可能。さらに価格帯の超広角ズームならオリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6」が存在します。
購入早見表
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