このページではフジフイルムXシリーズのミラーレス用交換レンズ「XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」のレビューを掲載しています。
Index
交換レンズレビュー 外観編
レンズのおさらい
2018年に登場したフジフイルムXシリーズ初の電動ズームレンズ。XCシリーズとしては最も新しいレンズであり、X-T30などのキットレンズとして同梱されることが多い。
単品で購入すると3万円前後とこの種のズームレンズとしてはやや割高だが、キットレンズとして購入すれば実質2万円前後でゲットできる。標準ズームレンズとしては珍しく、15mm(フルサイズ換算で22.5mm)の広い画角をカバーしているのが特徴。
型番 | XC15-45 | XC16-50 | XF18-55 |
---|---|---|---|
レンズ構成 | 9群10枚 | 10群12枚 | 10群14枚 |
画角 | 86.9° - 35.0° | 83.2°- 31.7° | 76.5°- 29° |
最大口径比 | F3.5 - 5.6 | F3.5-5.6 | F2.8?4.0 |
最小絞り | ?F22 | F22 | F22 |
絞り形式 |
|
||
撮影距離範囲 | 広角 13cm-∞ 望遠 35cm-∞ |
|
標準 0.6m?∞ マクロ 広角 30cm?10m 望遠 40cm?10m |
最大撮影倍率 | 0.24倍(ワイド側) | 0.2倍(ワイド端) | 0.15倍(テレ端) |
外形寸法:最大径×長さ | ?Φ62.6mm x44.2mm (収納時) ×65.2mm (ワイド端) ×62.1mm (テレ端) |
ø62.6mm ×65.2mm(ワイド端) ×98.3mm(テレ端) |
ø65.0mm ×70.4mm(ワイド端) ×97.9mm(テレ端) |
質量(約) | 135g | 195g | 310g |
フィルターサイズ | ?ø52mm | ø58mm | ø58mm |
手振れ補正 | ?3段分 | 不明 | 4段分 |
フォーカス駆動 | ?STM | 高精度モーター | リニアモーター |
特筆すべきは広角15mmにおける接写性能。広い画角を備えつつ、0.24倍と高い撮影倍率で広角マクロのように利用できるのは面白い。
さらに沈胴機構を採用しているため電源オフ時の全長は従来のXマウント用標準ズームレンズよりもかなり短い。汎用性と携帯性を兼ね備えたレンズです。
XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ ブラック | |||
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XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ シルバー | |||
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キットレンズとして安く手に入りますが、このレンズを使わず直接売り払ってしまうユーザーも多い。中古市場には「新品同様」「レンズキット同梱品」と言った中古レンズが出回っているので単品で安く手に入れる方法もあります。
外観
レンズの外装はプラスチック製。
よく言えば非常に軽量、悪く言えば非常にチープ。特にXFシリーズのレンズと比べると外装の質感は大きく見劣りする。
他社の電動ズームレンズと見比べても少し安っぽさが全面に出てしまっているなと感じます。
安っぽいですが非常に軽量でコンパクトサイズ。
「APS-C 15mm F3.5」のスペックを考慮すると健闘しているのではないかと。
フィルター径は52mmでXF18mm F2 RやXF35mm F1.4 Rと共用可能。どちらもXC15-45mmを補完する丁度いいレンズですね。
白文字でレンズ名が刻印されているため、フィルター装着時に逆光で白文字がフィルター面に反射しないか気を付けたいところ。
前玉はやや凸形状ですがレンズ名が刻印された面まで飛び出てはいません。
レンズマウントは4本のネジで固定されたプラスチック製。
他社で同価格帯の電動ズームが金属マウントであることを考慮すると割り切った感が強いですね。
マウント時にガタツキはありませんが、長期間の使用にどこまで耐えられるのかは不明。個人的には単品で3万円なのだから金属マウントにしてほしかったところ。
後玉はこの種のズームレンズとしてはやや大きめ。
当然ながら防塵防滴仕様ではありません。
手前の幅広いリングがズーム用、狭いリングがマニュアルフォーカス兼用。
ズーム用リングは左右に回転させることで電動ズームを操作することが出来ます。小さく回すと遅く、大きく回すと素早くズーミングが可能。ズーム以外に用途は無く、再生中やメニュー画面で操作してもズーミングが可能。
小さなリングはAF-C/AF-S時にズームの微調整用として機能、MF時にフォーカスリングとして機能します。ズーム操作時は小刻みなステップ駆動で動作します。滑らかな動作ではありませんが、画角調整用としては十分小刻み。
マニュアルフォーカス用としてはリングが緩すぎる上に無限遠側の移動量が小さすぎて微調整し辛いと感じます。MF機能はおまけ程度と考えておくべきでしょう。当然、フルタイムマニュアルには対応していません。
FUJIFILM X-T30に装着。
シルバーモデルと色が合い、サイズや外観のバランスは良好。
厚みが無いのでカメラバッグへの収納は容易。
電源を入れると15mm時に内筒が最も伸び、28mm付近で最も短くなる。
内筒展開時のガタツキは僅かで品質に問題は感じません。
レンズフードが存在しないので市販のねじ込み式メタルフードを購入。遮光性向上を狙ったと言うよりは前玉の保護目的で手に入れました。
15mmと画角が広いので購入時に注意が必要。
交換レンズレビュー 実写編
ズーム操作
ズーム速度はこの種のレンズとしては一般的で可もなく不可もなく。
問題は上の動画でもわかるように、ズーム操作時の焦点距離表示がないこと。
EXIF上では細かく距離情報が伝わっているにも関わらず、ズーミング時にそれを確認することができないのは残念。これはボディ側のファームウェアアップデートでなんとかしてほしいところ。
また、パナソニックのように主要な焦点距離を段階的にズームする機能もあればより便利となるはず。
フジフイルムXシリーズ初の電動ズームと言うこともあり、ボディ側のシステムはまだまだ改善が必要な印象。
オートフォーカス
ステッピングモーターのAFはとても静かで滑らかかつ高速。一部のレンズと比べて爆速とは言えないものの、大部分の状況で満足のいくスピードは確保されていると言えるでしょう。
ただしAF精度はやや難があり、1点AFで同じ被写体をフォーカスしても同じ位置にピントが来ないケースが多い。次はピント精度について検証してみましょう。
15mm ピント精度確認
三脚にカメラを固定して1点AFを使用。ピントをずらした後に再度1点AFでピント位置の再現性を確認してみたところ…。
ジャスピン率は約50%程度でちょいピンボケや明らかな前ピンがあったりと安定しない結果となった。今のところ原因は不明で、実写でもたまにピントを外してしまう。
これは特に無限遠側を使った場合に多く、近接時では発生しない現象。
23mm ピント精度確認
15mmと同様、微妙にピントがずれている作例が多い。XFシリーズのレンズではなかった症状なのでやや困惑しています。
45mm ピント精度確認
ズーム域に関係なく、無限遠側でピントを外す傾向がある。
これが私の個体だけの問題なのか、ボディ側のファームウェアの問題なのか、レンズの問題なのかは不明。
購入時は無限遠のピント精度・再現性を確認してみることをお勧めします。
動画で確認
確認方法は至って簡単。フジフイルムXシリーズはオートフォーカス作動時に「ピント位置がどこにあるか」を示すインジケーターがライブビューに表示できます。
これをじっくり観察しながら遠景に向けてAFを作動させると「10m?」に合うこともあれば「5m」付近に合う場合も多い。ボディ側の制御に問題があるのかもしれないし、レンズ側における精度の問題かもしれない。
御覧になると分かるように、遠景でもピント位置が「3.0m」近くまでズレる場合もある。
(このレンズの場合)測距時に被写界深度が深いためピント位置が「3.0m」でも無限遠にピントが合ってしまうのが問題なのかなと邪推。
遠景解像
15mm
開放からフレーム全域で立派な性能。
開放付近は若干コントラストが低いものの、1?2段絞ると改善します。解像性能は開放から安定しており、絞ることによる改善幅は小さい。
18mm
開放の四隅のみ少し甘いかな、と感じるものの1段絞るとまずまず安定。
全体のピークはF8-F11ですがF5.6との差は小さい。
35mm
18mmと同傾向ですが全体的に解像性能は少し低下する。
45mm
35mmと同傾向。
ボケ
15mm
超広角のため、接写しないと大きくボケを得ることはできません。接写時のボケは広角レンズとしてはまずまず良好で特に不満は感じない。
45mm
玉ボケの濃淡に少し乱れがあるものの、まずまず滑らかで悪くない。
歪曲収差
15mm
基本的にレンズプロファイルで自動的に補正されるものの、素の光学的な歪曲収差は顕著な樽型。
純正ソフトやレンズプロファイル対応の社外製ソフトなら問題ないはずですが、フリー現像ソフトなどでは樽型歪曲の補正が厄介と感じるかもしれません。
やはりレンズプロファイル依存。15mmとは反対に中程度の糸巻き型歪曲となっています。
45mm
周辺減光
15mm
Adobe Lightroom CCで現像する限り、開放から問題ない減光量。
45mm
15mmと同様。
コマ収差
15mm
四隅で僅かに変形があるものの、全体的に見ると良好に補正されています。
45mm
15mm側と比べると良好です。
光条
15mm
45mm
軸上色収差
15mm・45mmともに軸上色収差の問題はありません。
15mm
45mm
逆光耐性
フレア・ゴースト耐性は完璧ではなく、特に小絞り時はゴーストが発生しやすい。ただし、自然と描写に溶け込むレンズフレアやゴーストなのであまり気にならなかったりする。
レンズフードが付属していないものの、フード無しでも逆光耐性は良好。フレーム中央領域に強い光源を配置しない限り問題を感じるシーンはそう多くないはず。
15mm
45mm
実写体験・サンプルギャラリー
やはり無限遠側のオートフォーカスでピント精度がイマイチと感じる場面がある。いちいちピント位置のチェックが必要なのはイラっとする。いっそ風景写真はMFで撮影したほうが気が楽かもしれない。
ただし不満と感じるのはそれくらいで写りや近接性能・広角画角はレンズの価格を考慮するとパフォーマンスが高い。特にF5.6~F8まで絞ってしまえば解像性能に目立った弱点は存在せず、広い画角と相まって使いやすいお散歩風景レンズとなってくれるのは便利。このサイズ感で光学手ぶれ補正が搭載されているのもGood。
オリジナルデータはFlickrにて公開
今回のおさらい
- フジフイルム初の電動ズームレンズ
- ズーミング時の焦点距離表示が無い
- 小型軽量なプラスチック外装
- プラスチック製レンズマウント
- 広角側の接写性能が高い
- 静かで高速だが無限遠側の精度が悪いAF
- 無限遠側でMFが難しい
- 非常に良好な15mmの解像性能
- まずまず良好な15mm以降の解像性能
- 過度に騒がしくないボケ質
- デジタル補正依存の歪曲収差
- 目立たない周辺減光
- ほぼ無視できるコマ収差補正
- ほぼ皆無の軸上色収差
- 程よい逆光耐性
満足度は80点。
携帯性が良い沈胴ズームレンズで15?17mmの画角が利用できるのは非常に便利。特に家族や行楽、お散歩に最適。レンズ内手ぶれ補正を備えているので動画撮影でも使いやすい。
欠点はなんと言っても過度なプラスチック外装による脆そうな印象と無限遠側のピント精度。特にピント精度は帰宅してパソコンでチェックすると「あぁ、ピントずれてるよ…」という微妙な外し方が多いので厄介。
光学性能は申し分ないので、5万円程度で頑丈な外装と高精度なフォーカス駆動でリリースしていれば非難の余地が無かった。
X-T30に相応しいキットレンズか?
- 購入したら遠景でのピント精度確認できる
- ズーミング時に焦点距離が表示されないけど気にしない
- プラスチック外装・マウントだけど気にしない
と言うのであればおススメ。価格帯を考慮すると15mm F3.5の利便性と画質はこれら妥協点を甘んじて受け入れることができる。
購入早見表
XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ ブラック | |||
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