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LUMIX S 100mm F2.8 Macro レンズレビューVol.5 諸収差編

パナソニック「LUMIX S 100mm F2.8 Macro」のレビュー第五弾を公開。小型軽量化をものともしない良好な諸収差の補正状態についてレビューしています。

LUMIX S 100mm F2.8 Macroのレビュー一覧

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

像面湾曲の影響はほとんどありません。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り値全域で良好な補正状態です。追加の補正はほぼ必要ないように見えます。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

完璧な補正状態ではなく、絞り開放付近のF値ではピント面の前後に色づきが発生しています。とは言え、過度な影響ではなく、大部分の撮影で目立たない程度の収差。2段絞るとほぼ完全に抑えることができます。

NIKKOR Z 105mm F2.8 S VRなどと比べると、このカテゴリは少し見劣りします。しかし、小型軽量化の代償だとしたら許容範囲内。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

マクロレンズとしてはやや強めの糸巻き型歪曲が残っています。直線的な被写体を周辺に配置しなければ気にならない程度ですが、状況によっては補正必須と感じるかもしれません。画質に影響が出ない程度にプロファイルを使った補正が可能。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

F2.8からほぼ気にならない程度に良く抑えられています。

球面収差

前後のボケ質に大きな違いはありません。少なくとも画質に影響を及ぼす範囲の球面収差はないと言えるでしょう。また、軸上色収差のテスト結果から分かるように、フォーカスシフトの影響もほぼありません。

まとめ

小型軽量化の代償として光学性能の低下を予想していましたが、諸収差にこれと言って大きな欠点はありません。それぞれがパーフェクトとは言えませんが、実写で問題のない程度に良く抑えられています。ニコンやシグマの「アポクロマートか」と思うほどの色収差補正ではないかもしれませんが、これはこれでアリ。マクロレンズとしてはやや強めの糸巻き型歪曲が残っていますが、カメラ内やソフトウェアでの修正は簡単。画質への影響もほとんどありません。それにミラーレス用のマクロレンズは他社も歪曲収差を残す場合があります。球面収差は接写時まで綺麗に補正されているため、ピント面が滲むことはありません。ボケはニュートラルで「溶けるような柔らかい描写」ではないものの、使い勝手の良い綺麗なボケだと思います。

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