「LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S.」のレビュー第四弾を公開。開放のコントラストはやや低めですが、ズームとしては驚くほど滑らかな後ボケを得ることができるレンズに仕上がっています。
LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S.のレビュー一覧
- LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. レンズレビュー完全版
- LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. レンズレビューVol.5 諸収差編
- LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. レンズレビューVol.4 ボケ編
- LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. レンズレビューVol.3 解像チャート編
- LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. レンズレビューVol.2 遠景解像編
- LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. レンズレビューVol.1 外観・操作・AF
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
球面収差の影響が残っているためか、後ボケが縁取りのない柔らかい描写。残存する収差はピント面の画質を極端に損なうものではなく、絶妙なさじ加減で残っています。ここ最近見てきたズームレンズの中では極上と言っても過言ではない柔らかさ。
前ボケ
後ボケとは打って変わって縁取りの強い、2線ボケのような兆候があります。色収差がよく補正されているので悪目立ちしにくいものの、状況によっては少し気になるかもしれません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
28mm
「28mm F4」ですが、最短撮影距離が短いのでボケを大きくすることが可能。この際の玉ボケはレンズ構成枚数の多い高倍率ズームレンズとしては滑らかで綺麗。縁取りやフレーム隅の倍率色収差を考慮するとべた褒めは出来ませんが、全体的に見ると悪くない結果と得るでしょう。小型軽量レンズであることを考慮すると口径食も最小限。
50mm
広角側と比べて縁取りが弱く、色収差が少ない。非常に使い勝手の良い描写。
200mm
フレーム隅における口径食が目立つものの、それ以外にこれと言った欠点はありません。
ボケ実写
28mm
接写時は全体的に滑らかで、フレーム隅まで安定した結果を得ることができます。特に絞る必要なし。撮影距離が長い場合でも、まずまず快適な結果。正直に言うと、高倍率ズームでこのような結果が得られるとは予想していませんでした。よく見るとハイライトの玉ボケが少し騒がしくなる要素を持ちますが、ボケのサイズを考慮すると無視できる範囲内。
50mm
撮影時の環境もありますが、絞り開放はコントラストがわずかに低下します。ボケの観点で言えば良く作用しているように見えます。このあたりの焦点距離から絞り開放に球面収差が少し残存しており、ピント面から背景に向かって滲むようなグラデーションを描くボケが得られます。少し味を残した単焦点レンズと言っても過言ではないでしょう。撮影距離が長い場合でも背景の輪郭が自然に溶けています。
100mm
50mmと同じく、とても滑らかな後ボケが得られます。開放F値は大きめですが、小動物や近距離のポートレートであれば十分。
200mm
100mmと同様。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。
28mm
「28mm F4」という性質上、フレームに全身を入れると背景をぼかすには不十分。上半身くらいまで近寄ると背景が少しボケ始めますが、あまり褒められた描写ではありません(ボケが小さいので無視できますが)。バストアップや顔のクローズアップまで近寄ると、一転して柔らかく滑らかな描写。
100mm
「100mm F4.9」となるので、この焦点距離でも全身をフレームに入れた場合のボケ量は不十分。ただし、滲むような描写で、騒がしさはありません。上半身・バストアップと近寄るごとに、柔らかい描写を維持したままボケが大きくなります。
200mm
「200mm F7.1」も被写体の全身を背景から分離するには不十分に見えます。多少のボケは得られますが、200mmの焦点距離を考慮すると使い勝手が悪い。ただし、ボケの質感は撮影距離全域で良好。ボケは大きくないものの、輪郭のない滑らかなボケが被写体を浮き上がらせるのに役立っています。
まとめ
ズームレンズでも綺麗なボケの製品が増えてきましたが、それは「収差を抑えた綺麗なボケ」であって「収差を活かした個性的なボケ」ではありません。本レンズは貴重な個性をもった高倍率ズームと言えるでしょう。50mm以降で適度に残存する球面収差が後ボケに良く作用しています。撮影距離による収差変動が少なく、ピント位置が遠側にある場合でも滑らかな後ボケを得ることが可能。これが出来る高倍率ズームは非常に少なく、特に小型軽量な28-200mmとしては印象的な性能。注意点は望遠端付近における口径食がやや強めであることくらい。これは絞ると改善しますが、同時に球面収差の味付けもなくなってしまうのが悩ましいところ。個性的な描写の代償として、絞り開放のコントラストが若干低め。とはいえ、カメラ側のカラーセッティングやRAW現像次第で気にならない程度。回復が難しいほどの低コントラストではありません。家族写真多めなので作例としてアップロードできませんが、ボケの量にこだわらなければポートレートとしても役に立つレンズだと感じました。手頃な価格の単焦点ほど大きなボケは得られませんが、後ボケの質感は一級品。
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作例
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