このページではオリンパスの交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO」の描写性能をボケ・解像・色収差・逆光の点でチェックしたレビューを掲載しています。
外観チェック
化粧箱はいつも通りのPROレンズ。
キャッシュバックキャンペーンに応募するためには底面のバーコードを切り抜く必要がある。カッター刃を突き立てる前に中のレンズは取り出しておこう。
中にはレンズ本体のほか、フード、ソフトケース、説明書、保証書が付属している。
鏡筒やフォーカスリングは金属製のしっかりとした造り。
エンジニアリングプラスチックを採用するメーカーが多い中でこの質感は非常に良好。
ただし、冬場はとても冷たくなるのがネック。
個人的に、もう少しL-Fnボタンを左側面に配置してくれていたら推しやすいのにと感じる。
オリンパスのF1.2 PROシリーズはデザインやサイズが驚くほど統一されている。
フィルター径は62mmに統一され、フードは互換性があるのでどのレンズにも装着可能だ。このため、フィルターやフードを1セット持っておけば残りフード二つは家に置いて行っても良い。
ここまで統一されたハイグレードレンズシリーズは他に類を見ない。
PROレンズらしくフォーカスクラッチ機能を搭載。
フォーカスリングを前後するだけでAFとMFを切り替えることが可能。これを知らないと「MFになってAFに戻らない!」と勘違いしてしまうかもしれない。
回転角はおよそ90度。17mmの画角であれば必要十分な回転角だが、マクロ撮影時はもう少し回転角が欲しいと感じる。
レンズを前後から眺めると25mm F1.2 PROとそっくり。日本製の25mm F1.2 PROと違い、17mm F1.2 PROはベトナム製。しかし、二つのレンズに品質の差は存在しない。
レンズ後玉はマウント面で固定されているため、レンズ内部に粉塵が入り込む隙間は無い。実に頼もしい防塵防滴構造。
しかし、オリンパスのレンズには他社で言うところの「フッ素コーティング」を導入していると言う記述が無い。海水や水しぶきが飛び散る環境での撮影が多いならば保護フィルターの導入は検討しておくべき。
OM-D E-M1 Mark IIとの組み合わせではバランスが良好。同じくLUMIX G9 PROと組み合わせても問題無し。
グリップの小さいE-M5 Mark IIやPEN-Fにはレンズが少し大きすぎると感じるかもしれません。
実質的に競合レンズとなるシグマ16mm F1.4 DC DNとはサイズがドッコイ。
質感はどちらも良好。正直に言うと、予算的に10万も出せないならシグマ16mmで満足できると思います。ただし、シグマは防塵防滴仕様では無いので撮影環境に注意(簡易防滴仕様)。
レンズ構成はPROレンズらしく複雑で特殊レンズを贅沢に使用。透過率や逆光耐性が気になるものの、解像性能やボケ描写は期待できそうですね。
描写チェック
ボケ
チェックポイント
- 後ボケは絞り開放からとても滑らかで極上のボケ味。一方で前ボケはやや硬調でさわがしくなる領域が部分的に発生。
- 1/3~2/3段も絞れば前ボケもマイルドとなり使いやすくなる。
- 1段?2段ほど絞ると「レンズの味」が薄れて前後とも並のボケ質(普通に良いボケ)へ変化。
このレンズの持ち味を生かすのであればF1.4~F2がスウィートスポット。
F1.2
F1.4
F1.6
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6
ボケ2
チェックポイント
前回と同様、やはり小ボケ領域で前ボケが僅かに硬調。
前景がごちゃごちゃしている状況ならば2/3?1段絞ると良いかもしれません。
F1.2
F1.4
F1.6
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6
軸上色収差
チェックポイント
- 絞り開放付近は後ボケが滲むためかハイコントラストな状況でも色収差が目立たない。
- 絞り開放の前ボケは硬調なので、ボケのエッジに色づきを確認できる。これは状況によってパープルフリンジとなるかもしれない。
- 絞り過ぎると後ボケが硬くなるのでF1.4~F1.6が良い感じ。
全体的に見ると色収差は少なく厳しいコントラストでもなければ気にしなくていいかも。
F1.2
F1.4
F1.6
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6
近接解像
チェックポイント
- 絞り開放からピークと言うわけでは無く、絞ればそれなりに向上する。中央はF2.8で、端はF4あたりで解像のピーク性能。
- 端は絞っても中央に追いつかず、比較してやや甘い。とは言え、50Mハイレゾではなく2000万画素で普通に撮影する限りでは問題無いはず。
F1.2
F1.4
F1.6
F1.8
F2.0
F2.8
F4.0
F5.6
逆光
チェックポイント
フレア耐性はそこそこ良好。と言ってもレンズ構成枚数が多いのでゴーストが飛びやすいかも?
個人的な観点から言うと、この画角は10枚羽根で偶数の光芒が良かったのです。
今回のおさらい
個人的な見解
- 頑丈で質感の良い金属鏡筒
- 防塵防滴の貴重な広角単焦点
- 滑らかでレスポンスが良く使いやすいフォーカスリング
- L-Fnボタンの位置は左側面が良かった
- 他のF1.2 PROシリーズとサイズ・フード・フィルターの互換性が高い
- レンズの持ち味を活かすならF1.2~F2がベスト
- 持ち味を活かしつつ軽快に撮影するのであればF1.4~F1.6
- 全体的に軸上色収差は僅か
- 近接で解像性能を高めたいのであればF2.8~F4まで絞る
- フレア耐性は良好だが小さなゴーストは飛びやすいかもしれない
味気ないほど使いやすい描写と極上のボケ味。まさに”すげえ美味い素うどん”状態。
目の前の状況を写し撮るに都合が良く、例えば「家族写真」や「環境を整えたポートレート」、「後処理前提の撮影」と相性が良い感じ。PEN-Fのモノクロプロファイルやカラープロファイルと併用するのも面白そう。
全体的に見るとF1.2 PROシリーズらしい描写。描写傾向が統一されている点もF1.2 PROの強みと言えるかもしれない。
ただし、コストパフォーマンスを考慮すると万人におススメするのは難しい。
解像性能と小ボケ領域の滲むボケ味の両立、防塵防滴仕様に価値を見いだせるのであれば買い。「高価なレンズだから性能が良いかもしれない」と単純に思っているのであれば以下に紹介するレンズで十分に満足できるはず。
追記:北陸は大雪の影響で状況が悪いので屋外の遠景解像チェックは後日実施予定。
追記2:そういえば25PRO・45PROと比べて絞り羽根の動作音が大きい気がする。特にF1.8を超えたあたりから動作音が大きくなる印象。
競合レンズ考察
17mm前後のレンズには強力なライバルが多く…
- LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH.(約4万円)
- 16mm F1.4 DC DN(約4万円)
- M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8(約2万円)
- M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8(約4万円)
- 19mm F2.8 DN(約1.5万円)
と安価で魅力的なレンズが多い。LEICA 15mmは特に人気が高く、16mm DC DNはスペック的に17PROと非常に似ている。
- この中で防塵防滴仕様のレンズは17PROだけ。過酷な環境で使う前提ならば迷う必要は無いでしょう。
- 描写性能にコストパフォーマンスを求めるのであればLEICA DG 15mmや16mm DC DN。
- コンパクトさを重視するならばLEICA15mm・17mm F1.8、F2.8・19mm DN。
- とことん安さを求めるのであれば19mm DN。
と言った感じ。特にこだわりが無ければ「LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH.」がおススメ。
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