ニコン「NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR」のレビュー第四弾を公開。全体的に良好な補正状態で、これと言って大きな問題点はないように見えます。
NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VRのレビュー一覧
- NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR レンズレビュー完全版
- NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR レンズレビューVol.5 ボケ編
- NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR レンズレビューVol.4 諸収差編
- NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR レンズレビューVol.3 解像チャート編
- NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR レンズレビューVol.2 遠景解像編
- NIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VR レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
28mm(絞り開放:小絞り)
カメラ出力・Adobe Camera RAWの現像で、倍率色収差は絞り値全域良好に補正。(電子補正が適用されない)RAW Therapeeで現像してみたところ、同様の結果が得られました。海外のレビューサイトでは「目立つ」という評価もあり、現像環境によっては色収差の補正が適用されないのかもしれません。
少なくとも、一般的な現像環境で問題となることは少ないはず。少なくとも私の環境では、倍率色収差を確認することが出来ませんでした。
50mm(絞り開放:小絞り)
28mmと同じく良好な結果。
100mm(絞り開放:小絞り)
28mmや50mmと同じ。
300mm(絞り開放:小絞り)
細部を確認すると、わずかな色収差が残存しています。しかし大きな問題ではなく、無視できる程度。現像ソフトでの色収差補正で簡単に修正することができます。
400mm(絞り開放:小絞り)
300mmと同じく、非常に軽微。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
28mm
倍率色収差とは異なり、絞り開放付近で若干の色ずれを確認できます。非常にコントラストの高いシーンで僅かに色づく可能性があります。しかし、大部分のシチュエーションで問題はありません。
50mm
28mmと同じ傾向。
100mm
広角・標準と比べると影響は軽微。ほとんど目立ちません。
400mm
とても良好な補正状態であり、絞り開放から全く問題ありません。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
28mm
やや目立つ樽型歪曲ですが、カメラ側で綺麗に補正可能。処理されたJPEGは全く問題ありません。ミラーレス用の倍率ズームとしては比較的良好な結果。像高が不足している(隅がケラレる)こともなし。歪曲収差の電子補正は必須ですが、致命的な弱点ではありません。
50mm
歪曲収差がほとんどありません。50mm以降の焦点距離は穏やかな糸巻き型歪曲へと変化。
400mm
ほぼ無視できるて程度のわずかな糸巻き型。高い光学倍率を考慮すると、ここまで良好な補正状態を期待していませんでした。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
28mm
完璧とは言えませんが、F4の絞り開放から問題はほぼ無し。
50mm
28mmと同程度。
100mm
点像がサジタル方向に変形しており、状況によっては少し目立つかもしれません。
400mm
撮ってはみたものの、この環境だと収差の有無を識別できません。
球面収差
前後のボケ質に大きな変化はなく、球面収差はズーム全域で良好な補正状態。
まとめ
広角~標準域の焦点距離で軸上色収差が少し目立つ場合があるものの、大部分のシチュエーションで問題はありませんでした。よく観察するとハイライトに色づきが発生しているかもしれませんが、1段絞るとほぼ改善します。倍率色収差は(光学・電子)補正を含めて良好な結果を得ることが可能。フレーム端付近の高コントラストで色づく可能性があるものの、大きく拡大しない限り問題はありません。歪曲収差はミラーレスの高倍率ズームレンズとしては良好な補正状態。電子的な追加補正が必要と感じるのは広角付近のみで、標準域や望遠では無補正でも問題ないと感じるシーンが多い。カメラ出力のJPEGやAdobe Camera RAWを使う場合は強制的に適用されます。球面収差が問題となることはありません。ズーム全域で良好な補正状態であり、後ボケがわずかに硬調となる程度。フォーカスシフトなどの厄介な影響もありません。
全体的に見て、超高倍率ズームレンズとしては良くまとまっています。大きな欠点が無く「これだけは避けたほうが良い」という問題に遭遇しません。
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