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NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.4 ボケ 編

ニコン「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」のレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。

NIKKOR Z 70-180mm f/2.8のレビュー一覧

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

70mm

球面収差が残存しているためか、前後のボケ質には目に見える差があります。後景は滲むように柔らかくボケる一方、前景は縁取りの硬いボケ質。一般的な撮影では後景のボケが入る機会が多いため、これは肯定的な描写の傾きと言えるでしょう。

180mm

70mmと比べると前後の質感差が小さくなっています。ニュートラルとまでは言えませんが、差は僅か。70mmのような滲むボケは期待しないほうが良いでしょう。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

70mm

ボケの縁取りは僅かで、色収差も目立ちません。ただし、隅における口径食の影響が強めで、非球面レンズと思われる同心円状のムラも若干ですが目に付きます。口径食はF4まで絞るとほぼ解消。円形絞りのため、過度に絞っても玉ボケの角ばりは目立ちません。

105mm

全体的な傾向は70mmと同じ。やはり口径食が強めで、特に隅の質感が損なわれているように見えます。F4まで絞ると問題は解消。

180mm

同心円状のムラは目立たなくなりましたが、口径食の影響は最も強い。数段絞っても影響はしつこく残ります。バランスを取るならF4~F5.6の間。

360mm(×2.0装着)

180mm時よりも口径食の影響が穏やか。微ボケは描写が騒がしくなるものの、玉ボケが大きい場合は特に問題ないように見えます。

ボケ実写

70mm

至近距離

70mm時の接写は球面収差の影響でじわりと滲むような柔らかいボケが得られます。シャープなピント面が必要であればF4くらいまで絞ったほうが良いでしょう。この撮影距離であれば、強めに絞っても後ボケは綺麗な状態を維持しています。

近距離

接写から距離が開いたとしても、柔らかい描写を維持しています。ボケの縁取りが弱いため、背景が溶けるようにボケています。絞ると少し硬くなるものの、F5.6くらいまでは快適な描写。F8まで絞ると少し騒がしくなります。

中距離

さらに撮影距離が長くなると、ボケ質が少し変化します。ボケの縁取りが強くなり、特に口径食が強くなるフレーム端や隅のボケが目立つように。それでも、問題視するほどではありません。

105mm

至近距離

接写時はボケが非常に大きく、被写体が背景から完全に分離しています。微ボケの部分は柔らかい描写。

近距離

滲むようなボケではありませんが、大きくボケるので質感の心配は無用。多少絞っても背景が悪目立ちすることはありません。

180mm

近距離

ボケが大きすぎるため、質感は不明。ピント面は非常にシャープです。

近距離

滲むようなボケではありませんが、滑らかで綺麗なボケです。特に大きな問題はありません。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて、70/105/180mmの焦点距離で撮影した結果が以下の通り。

70mm

フレームに全身を入れる撮影距離の場合、ピント面が滲むようなボケは得られません。どちらかというとコントラストが高く、シャープな結果が得られます。後景のボケ質は柔らかいと表現するほどではないものの、滑らかで綺麗な描写。ただし、よく見ると縁取りの強いボケが発生しているように見えます。膝上、バストアップの距離感でもシャープなピント面と滑らかなボケ質。顔のクローズアップまで近寄ると、滲むようなボケが得られます。

105m

70mmと同じ傾向。フレームに全身を入れても後景から被写体を分離する程度にはボケを得ることができます。やや硬めですが、特に悪目立ちする兆候はありません。この焦点距離では顔のクローズアップでも滲むようなボケはほとんど得られません。

180mm

全身をフレームに入れる場合でも、90mm F1.4と同程度の浅い被写界深度が得られます。ピント面はシャープで、後ボケは滑らかで綺麗。

まとめ

状況によって玉ボケが少し気になる程度で、 その他は全体的に良好なボケ描写を実現しているように見えます。特に70mmの接写時は球面収差の影響が強く、滲むように柔らかい描写が得られるのが特徴的。
180mmの長焦点とF2.8の組み合わせによって、大きな被写体でも背景から簡単に分離することができるのも大口径望遠ズームの醍醐味。この際のボケは口径食の影響が若干目立つものの、広い範囲は滑らかで綺麗な描写と言えるでしょう。

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作例

オリジナルデータはFlickrで公開

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