ニコン「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」のレビュー諸収差編を公開。これと言った欠点が無く、様々なシーンや用途で快適に利用できる85mmとなっています。
NIKKOR Z 85mm f/1.8 Sのレビュー一覧
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S レンズレビュー Vol.5 ボケ編
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S レンズレビュー Vol.4 諸収差編
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S レンズレビュー Vol.3 遠景解像編
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S レンズレビュー Vol.2 解像チャート編
- NIKKOR Z 85mm f/1.8 S レンズレビュー Vol.1 外観・操作・AF編
今回のまとめ
ほとんど欠点が無く、非常に綺麗な描写のレンズです。大部分のシーンで絞り開放から色収差は良く抑えられ、色ずれが目立つと感じた場面は皆無。絞り開放から快適に利用可能。色収差以外の補正状態も良く、大口径レンズとしての明るさが必要なシーンで使いやすい。
This lens has almost no flaws and produces extremely clean images. Chromatic aberration is well controlled from wide open aperture in most scenes, and there are no scenes where chromatic aberration is noticeable. It can be used comfortably from wide open aperture. The correction state other than chromatic aberration is also good, and it is easy to use in scenes where the brightness of a large-aperture lens is needed.
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
無限遠側ではF1.8から目立つ像面湾曲はありません。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
Adobe Lightroom Classic CCでRAWの倍率色収差に補正が適用されていないか確認することは出来ません。少なくともレンズ補正をオフの状態で確認してみたところ、絞り全域で大きな問題はありませんでした。補正時に現れるコントラストの低下もないため、光学的に良好な補正状態だと思われます。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
完璧では無いものの、F1.8からほとんど目立たない程度に抑えられています。高輝度の領域では状況によって目につくかもしれませんが、それでも軽微な問題と感じるはず。
軸上宇色収差以外の問題点として、F1.8から絞り込んだ際にピントの山が遠側へ移動していることが分かります。これは球面収差の影響ですが、ニコンZシステムはF5.6まで実絞り測距(絞った状態でAF)を導入しているため、基本的にフォーカスシフトの影響は心配せずとも良いでしょう。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
直線的な被写体をフレーム端に配置しても歪みの影響は目立ちません。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
フレーム隅で極わずかな影響のみ。特に心配する必要はありません。
球面収差
前後のボケ質にほとんど変化がありません。良好な補正状態を実現しています。ただし、軸上色収差のテストから、近距離時はフォーカスシフトの影響がいくらか発生するようです。
まとめ
ほとんど欠点が無く、非常に綺麗な描写のレンズです。大部分のシーンで絞り開放から色収差は良く抑えられ、色ずれが目立つと感じた場面は皆無。絞り開放から快適に利用可能。色収差以外の補正状態も良く、大口径レンズとしての明るさが必要なシーンで使いやすい。
歪曲収差が良く抑えられているため、直線的な人工物をフレームに入れても違和感なし。倍率色収差の影響も少なく、フレーム隅までコントラストの高い結果を期待できます。
今のところ、本レンズが苦手とするシーンに遭遇したことがありません。ポートレートをはじめ、何にでも使っていける85mmとなっているように見えます。85mm F1.8としてはやや高めですが、それだけの価値はあるのかなと(見た目以外は)。
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作例
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