このページではオリンパス製ミラーレスカメラ「OM-D E-M1 Mark III」のレビューを掲載しています。
連載10回目はカメラを実際に使ってみて感じたポイントを色々と書き連ねています。
星空AF
まずは動画で星空AFの動作をチェック。
使い方は至って簡単。
AFモードを「星空AF」に設定して「AFL/AEL」ボタンを押すだけ。
AFモードの1種となっているので、露出モードに制限は無し。動作の開始に「AEL/AFL」を使用するのでボタンカスタマイズでこの機能を外している場合には注意が必要。
動作速度は超低照度時のコントラストAFと言った印象。日中の高速AFと比べると遥かに遅いフォーカス速度ですが、ピント精度は非常に良好。参考動画では「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」を使用しており、開放F値「F4」でも快適な動作であることが分かると思います。
手持ちにも使える「速度優先」、三脚使用時に適した「精度優先」でフォーカス速度にそこまで大きな差は無い感じ。
「LVブースト」を使えばMFでピント合わせが出来なくもないですが、ボタン一発で星空にピントが合うのは便利。特に場所やレンズを変えながら撮影する人は重宝するはず。
深度合成
従来機と同じく、3?15枚合成。合成時間の大きな改善は見られません。
合成結果も従来通り。まずまず良好に合成出来る時もあれば、不自然な合成結果となってしまう場合もあり。特に中望遠以上のマクロ撮影ではコマ数が足らない印象。
本格的な深度合成であれば、フォーカスブラケットで大量の写真をPhotoshopなどで合成するのがおススメ(上限999枚)。
深度合成時に使用したカットはグループ化して欲しいと思う今日この頃。気軽に使う深度合成では必要な機能だと思うのですよね。
ライブND
前回のライブND記事より抜粋
手持ちハイレゾショットと同じくE-M1Xから移植された新機能。
基本的にはライブコンポジットですが、疑似的にNDフィルターを使ったような撮影体験が出来る機能です。主な特徴は以下の通り。
- シャッタースピード優先AE
- 設定数値は60?1/2秒
- ライブビューで仕上がりを確認可能
- ND2?32で効果の調整が可能(合成枚数の増減)
海や川・滝などの撮影で真価を発揮する機能。合成画像なので、光跡を写すとコマ切れとなってしまうので注意が必要です。
また、ND効果やシャッタースピードには上限があるので屋外晴天での使用は厳しい。本物のNDフィルターと組み合わせて使うのがおススメ。
(上の写真はND500とライブND32相当を組み合わせて撮影しています)
屋外晴天ならND500?ND1000、日陰・曇天ならND16?64のNDフィルターと組み合わせると良い感じです。
ライブコンポジットと同じくRAW出力に対応。撮影後に柔軟性のある画像編集が可能となっているので、とても実用的な撮影モードと言えるでしょう。特にコンポジットによるノイズ低減効果を見込めるのでシャドウの回復や高感度の使用時に良好な画質を期待できます。
「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」と組み合わせることで手持ち撮影でも1秒のライブNDで安定した成果を期待できます。流石に2秒の手持ち撮影だと不安定となりますが、壁や柵に体を預けることが出来れば4?5秒の撮影も可能。
プロキャプチャー
あまり鳥類を撮影しない私でも簡単にメジロの飛翔シーンを撮ることができる機能。
それがプリ連写機能であるプロキャプチャー。シャッター半押し状態でカメラ内部での連写が始まり、全押しする直前の数十枚を保存することが出来ます。
深度合成と同じく、基本的な仕様は従来通り。最大35コマのプリ連写に対応しています。
富士フイルムもX-T3などでプリ連写機能を実装していますが、60fpsでフル解像のRAW出力に対応しているのはオリンパスとパナソニックの一部モデルのみ。
プリ連写枚数は富士フイルムと同じ最大35枚。十分なコマ数に見えますが、60fpsのプロキャプチャーHモードではタイムラグ0.5秒の猶予しかありません(18fpsのプロキャプチャーLモードでは2秒ほど)。
プリ連写とは言え、0.5秒以内は気が抜けないタイムラグ。やはりバッファを強化して欲しかったと思うのですが、60fpsを最大限活用しなければ十分なパフォーマンスだと思います。
0.5秒以内のタイムラグに抑える必要はあるものの、60fpsプロキャプチャーは素早く動く被写体でもカットの自由度が非常に高い。もはや60pのRAW動画と言えるでしょう。
掲載した写真は娘と花見に行ったついでに「お!」と思う瞬間をプロキャプチャーで撮影したもの。撮影に要した時間は5?10分、というか本当に花見の隙間を縫った撮影でした。
シャッターチャンスさえあれば熟練した技術やレスポンスが無くても撮影出来るのがプロキャプチャーモード。まさにPRO。
プロキャプチャーモードが無いカメラでも撮影できると思いますが、狙った構図・狙ったタイミングの写真を撮影するのは時間がかかり苦労するはず。
個人的にOM-D E-M1シリーズでおススメの機能。これがあるからこそオリンパスを止められない。富士フイルムやパナソニックと違い、プリ連写枚数や連写速度を細かく調整できる点がGood。ただし、メニュー画面でいちいち操作するのは面倒ですが…。
便利なプロキャプチャーですが、欠点もあります。それはデータ量。
プリ連写35枚に設定すると、ミスショットを含めて35枚(加えてプリ連写後のカット)が保存されます。一瞬にしてバッファを使い切るので、SD UHS-II対応カードを使ってもバッファクリアに時間がかかります。連続してプロキャプチャーモードを使うとバッファが詰まってしまうので注意が必要。
バッファクリア速度が十分だったとしても、ワンカットで35枚のデータが保存され、数十分撮影しただけで千枚以上のデータとなってしまいます。撮影後のチェックや編集が大変なことに…(当たりが多すぎて、どれを編集しようか迷う嬉しい悲鳴もあり)。
幸いにもプリ連写枚数やその後の連写枚数に制限をかけることが出来るので設定は煮詰めておきたいところ。
プロキャプチャーの使い方はコチラで解説しています。
「オリンパスのプロキャプチャーモードを使ってみよう!(OM-D E-M1 Mark II)」
画質
曇り空の下、動く野鳥撮影はシャッタースピードを上げる必要があり、自然と高感度ISOを使うことに。上の写真は「1/2000秒」で撮影していますが、もう少しシャッタースピードを上げても良かったかも。
日中でも曇天だとF2.8 1/2000秒でISO感度は1000?2000を多用することになります。クロップ前提の撮影ならばギリギリの画質。クロップ無しの撮影であればISO3200までは余裕。
上の写真はクロップ無し「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」+「MC-20」の300mm F6.3・1/2000秒(飛翔シーンを撮りたかったのでシャッタースピードは速めに設定)。この際のISO感度は「2500」。
Flickrにオリジナルデータを掲載しています。RAW現像時に多少増感しているのでノイズは混じりますが、解像性能とコントラストを十分維持しているように見えます。
ダイナミックレンジはやはり場合によって厳しいかなと。
特にサンセットのような逆光シーンでハイライトとシャドウのバランスを取るのは難しい。ある程度ハイライトを犠牲にしてシャドウ寄りの露出にしないと、復元時にノイズで使い物にならなくなります。
フルサイズでも完璧に諧調をカバーできるわけではありませんが、シャドウ復元に差がある印象。ハイレゾショットやコンポジットRAWで多少のノイズ低減効果が見込めるものの、4?5EVの復元は厳しい。
どのみちフルサイズでもカバーしきれないので、あきらめてハーフNDなどで対応するのがおススメ。(程度の差こそあれ、シャドウ復元時はフルサイズもノイズが目立ちます)
Amazonで売っている激安ハーフNDでは色被りすると思いますが、まずは使って体験してみるべし。手ごたえを感じることが出来れば、KANIやNISIの高価なガラス角形フィルターに手を出すと良いでしょう。
JPEG出力の色とコントラストはE-M1 Mark IIと比べて控えめとなっている印象。劇的な変化では無いけど、口当たりがよくなっている気がする。ブラシーボかもしれない。
少なくとも、E-M1 Mark IIよりJPEGをそのまま使うことが多くなっているのは確か。
サンプルギャラリー
撮影体験その2の雑感
満足度:90点
良くも悪くもいつも通りのOM-D。
画質はマイクロフォーサーズなので頭打ち感はあるものの、E-M1 Mark IIIの豊富な機能や外部アクセサリーを駆使することで不満を解消できる可能性あり。
低照度における動体は流石に厳しい。高画素フルサイズにはちょっと太刀打ちできないかと思うのですが、じゃあ「フルサイズ+バズーカ」を持ち歩くのか?と言うと悩ましいところ。
クローズアップしなければISO 3200でもなんとかなりそうな画質なので、「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」で正確にフレーミングする技術を体得すれば割と頑張れるはず。そのうち300mm F4は使ってみたい。
それに、ブログやSNSで使う程度の画質ならマイクロフォーサーズの高感度でも十分有能と感じるのです。パソコンで編集中に拡大するとアレですが…。
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