キヤノン「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」のレビュー第六弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
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RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STMのレビュー一覧
- RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー完全版
- RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー Vol.6 ボケ編
- RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー Vol.5 周辺減光・逆光編
- RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー Vol.4 諸収差編
- RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー Vol.3 解像チャート編
- RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー Vol.2 遠景解像編
- RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー Vol.1 外観・操作性・AF編
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
明らかに後ボケ重視の描写傾向が見られる。ピント面直後の後ボケは滲むように柔らかくボケ始めるが、前ボケは縁取りが硬く2線ボケの兆候が見られる。軸上色収差の影響も残っているので、状況によっては前ボケが騒がしく感じるかもしれない。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
18mm
口径食の影響は穏やかだが、玉ボケには強い縁取りがあり、色収差の影響も見られる。状況によっては少し騒がしく感じるかもしれない。
28mm
基本的に18mmと同傾向の描写が続く。極端に悪目立ちはしないものの、積極的に使いたい描写とは感じない。
45mm
18mmと28mmと同様の傾向が続く。
ボケ実写
18mm
大部分で滑らかな後ボケが得られるものの、周辺部から隅にかけてボケが騒がしくなる。今回の作例では無補正のRAWを使用しているので、通常であればクロップしている部分が荒れている。歪曲収差補正後は概ね問題のない描写だ。
撮影距離が長くなると全体的にボケが少し騒がしくなる。ボケのアウトラインが強くなり、軸上色収差の影響も見られる。ただしボケが小さいので欠点が目立つことも少ない。
45mm
接写時はなかなか良好なボケが得られる。少なくともいつものテストショットで大きな欠点は見られない。色収差の影響が発生する場合もあるだろうが、45mmの接写時は問題を感じない。
18mmと同じく撮影距離が長くなると、後ボケが少し騒がしくなる。極端に悪目立ちするわけではないので、手ごろな価格のキットズームレンズと考えると許容範囲内の描写性能だ。
撮影距離
全高170cmの三脚を人物に見立てて、18mmと45mmの絞り開放で撮影距離を変えながら作例を集めたのが以下の写真群だ。
18mm
フレームに全身を入れようとすると、被写体を背景から分離するのは難しい。上半身くらいまで近寄ると、少しボケが大きくなるものの、それでもまだ弱い。背景から被写体が分離し始めるのはバストアップからで、十分なボケ量を得るには顔のクローズアップくらいに近寄りたい。
45mm
焦点距離が長いとは言え、フレームに全身を入れるほど撮影距離が長い状態で後ボケを入れるのは難しい。膝上でも不十分で、上半身くらいまでに近寄ると背景がボケ始める。バストアップや顔のクローズアップまで近寄ると十分なボケ量に見える。
まとめ
玉ボケが主張し始めると少し騒がしく感じるかもしれないが、基本的には扱いやすいボケ描写である。接写時はアウトラインが目立たず滑らかで綺麗。口径食の影響が少なく隅まで安定感のある描写を得ることができる。キットレンズとして入手した場合は1万円ちょっとの低価格ズームと考えると立派なパフォーマンスに見える。
まずまず良好な撮影倍率を備えているので、接写性能を活かすことでボケを大きくすることが可能。この際のボケは癖が少しあるものの(アウトラインが強く、色収差も目に付く)、被写体を背景から分離したい場合は有効な一手となる。
基本的には大きなボケが得られるレンズでは無いものの、気軽にボケを楽しめるレンズに仕上がっているように感じる。
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