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これからRICOH GR IIIを買う人のための使って感じたGood & Bad

満を持して登場したリコーイメージングのコンパクトデジタルカメラ「RICOH GR III」が発売されて1か月ほど経とうとしていますね。

このページでは発売日よりじっくり使ってきたレビューの総集編です。

RICOH GR IIIのおさらい

RICOH GR IIIの見どころ

  • 一新されたボディデザイン(小型化・シンプルな操作体系)
  • 2400万画素 APS-C CMOS ローパスフィルターレス
  • アクセラレータユニットによる高感度耐性強化
  • 3軸4.0段 ボディ内手ぶれ補正
  • 新設計の18.3mm F2.8 GRレンズ(接写性能向上)
  • 除塵機能「ダストリムーバブル II」
  • 像面位相差AF対応
  • タッチパネル対応モニタ
  • 一新されたメニューシステム・カラープロファイル
  • USB-C端子経由の充電・給電対応
  • Bluetoothによる常時通信接続機能

外観こそ従来のGRですが、ハードからソフトまでフルリニューアルされた新モデル。GR/GR IIとは全く別物と考えて良いでしょう。

価格は10万円を少し超える初値となり、GR IIの実勢価格と比べるとかなり高価。とは言え、同じAPS-Cセンサーカメラの「X100F」や「G1 X Mark III」と同程度の価格設定。以上のアップグレード内容を考慮すると安いくらいと言うことも出来ます。

それでは、実際にアップグレードされたポイントがおススメに値するものなのかどうか見ていきましょう。

良いところ

小型軽量ボディ

文句ナシの小型軽量ボディ。ちょっと小さすぎるくらい。

前モデル「GR II」もポケッタブルなカメラでしたが、GR IIIはさらに横幅を狭めて小型軽量化を実現。小さくなったにも関わらず、ボディ内手ぶれ補正ユニットを搭載しているのは驚きを禁じ得ない。

その携帯性ゆえに「Tシャツの胸ポケットにもすっぽり収まってしまう」コンパクトさ。APS-C 28mm F2.8を胸ポケットにしまい込めるカメラはGRの他に存在しないはず。色々と不満な点もありますが、このポイントだけでGR以外に選択肢が無くなってしまう人もいることでしょう。

一方で、小型軽量の代償として内蔵フラッシュやフォーカスモードレバーが省略されてしまっている点には気を付けたいポイント。

起動時間が超速

とても高速、とても快適。

ポケットから取り出すタイミングで起動ボタンを押せばGR IIIを構えるころには撮影待機状態となっています。スナップモードと組み合わせると、1秒以内に起動と撮影をこなすことが出来てしまうのは凄い。

電源オフ時に再生ボタンを長押しするだけでレンズを展開せずにカメラを起動することがで可能。

右手に集約された操作性

 

動画ボタン以外の操作が右手に集約。小さすぎて片手での操作が難しいなど、色々と不満はあるものの、ADJレバーやボタンカスタマイズでまずまず満足のいく使い勝手となる。

スナップ撮影に特化したフォーカスモード

もともとスナップカメラとして人気の高いモデルらしく、その筋のフォーカスシステムは類を見ない充実っぷり。

ゾーンフォーカスのスナップを始め、フルプレススナップや撮影距離の変更方法、Fnボタンでの切替や変更、無限遠固定などパンフォーカス前提の機能が盛りだくさん。

後述する残念なAFパフォーマンスの穴埋めは可能

高性能のレンズ

GRレンズは伊達じゃない。とてもシャープなレンズ。

GR IIよりレンズ構成枚数が一枚減っているにも関わらず、四隅まで安定した描写で色収差などの乱れは少ない。2400万画素の高解像センサーを持ってしても、モアレが発生してしまうくらいの解像性能を発揮するのは色々な欠点を抜きにして凄いと感じるポイント。

専用のワイドコンバージョンレンズ「GW-4」装着時は21mmの超広角となるが、それでも安定した描写性能を発揮。

唯一気にする部分があるとすれば周辺減光。これはF8まで絞っても目に付く程度まで残存している。

マクロ性能の向上

最短撮影距離が短くなり、小さな被写体をより大きく、そして背景をグッとボカすことが出来るようになりました。自然風景の広角マクロとしてサブカメラに検討する人も中にはいるはず。

絞り開放は中央以外やや甘い描写ですが、絞ればまずまずしっかりとした解像性能を発揮する。間違いなく実用的なマクロ性能。

注意すべきはオートフォーカスでピントを合わせづらいこと。中央ならまだしも四隅はかなり厳しい。仏のような心の人でも、マクロAFを使いづ付けているうちに助走を付けてGR IIIを放り投げると思われる。

ここは是非ともファームウェアアップデートで改善して欲しい。

高性能なイメージセンサー

イメージセンサーベースの画質は非常に良好。フルサイズには敵わないものの、コンパクトデジタルカメラとしてはかなり良好。

少なくとも競合するFUJIFILM X100Fとは同程度、1型センサーよりも高感度性能で優れている。

ただし、JPEG出力時のノイズリダクションはフジフイルムよりもディテール再現性で劣っている印象。オフか弱設定くらいでちょうど良い感じ。カラープロファイルのボリューム感はX100Fのほうがかなりイイ。

GR IIIの画質は海外サイトで客観的な比較ができるようになっています。DPReviewやPhotons to Photosなどのテスト結果を確認するとX100Fなど最新の2400万画素APS-Cらしいパフォーマンスであることが分かります。

内蔵NDフィルター

約2段分の減光効果のあるNDフィルターを内蔵。

明るいシチュエーションでも絞り値とNDフィルターを駆使することでスローシャッターに持っていくことが可能。

逆光時に使うとフレアっぽくなってしまう可能性があるので注意。順光ではシャッタースピードや絞り値の調節に役立ってくれるはず。

DNG形式のRAW出力・ボディ内RAW現像

圧縮率は悪い気がするものの、古い現像ソフトでも読み取ることが可能。

専用フォーマットを使ったRAW形式のファイルを編集・現像するより処理が軽い印象。

地味にメリットと感じるポイント。

さらにRAW現像でプロファイルを再設定できる他、シャープネスなど細かい微調整も可能。おまけに現像中に拡大確認まで可能となっているため細かい追い込みが出来るのはありがたい。

レスポンス抜群のタッチパネル

 

今後の成長株。

リコーイメージングとしては初となるタッチパネル対応カメラにも関わらず、レスポンスはトップクラス。ほぼ遅延無しで動作するのは感動すら覚える。

使い勝手でもう少し改善が必要かなと感じる部分はあるものの、少なくともソニーやニコンよりもだいぶ良好なシステムとなっています。

イメージコントロール

画像設定とエフェクトが融合して誕生した新しいプロファイル。

一部のプロファイルが使えなくなってしまったものの、どのプロファイルもコントラストやシャープネスを微調整することが可能となっています。

どのプロファイルも比較的コントラスト強め(ソフトモノクロ以外)となっているので、カスタム枠で人物や植物用に低コントラストな設定を用意しておくと良いかも。

ボディ内手ぶれ補正

3軸ではあるものの、そこそこ補正効果のあるボディ内手ぶれ補正を搭載。

屋内や日陰でガッツリ絞ってもISO感度を低く抑えることが出来るのはかなり有難い。この点でX100Fや旧GRを大きく引き離す画質を得ることができる。

さらにNDフィルターの減光効果と組み合わせることで手持ちでスローシャッターを実現することも可能。

体感的には1/2秒前後までは安定してできるため、川や滝はもちろん歩行中の人物の動きを表現する場合にも有効と言えるでしょう。新しい撮影領域を手にしたと言っても良い。

ダストリムーバブル II

旧GRの欠点であったセンサーへのゴミ付着を低減するために実装された除塵ユニット。

既にPENTAXで実績を作った「ダストリムーバブル II」を搭載しているので信頼性は高い。そして今のところ小ゴミの問題は無し。

USB充電・給電に対応

後述しますが、バッテリー性能が非常に悪い。バッテリーが悪いのか、カメラの消費電力が激しいのか定かではありませんが、予備バッテリーは必須。

幸いにも、USB-C端子経由での充電に対応。モバイルバッテリーで小まめに充電することでまずまず気にならない程度でバッテリーが持ちます。(それでも密度の濃い1時間の撮影で半分以下となる)

驚いたことに、USB-PD対応モバイルバッテリーを繋げるとバッテリー無しでもカメラが起動します。ケーブルが邪魔にならなければモバイルバッテリーの容量次第で非常に長時間の撮影にも耐えることが出来るはず。

悪いところ

オートフォーカス

追記ファームウェアアップデートで改善しました

最も気を付けるべきポイント。日中で中距離以上の被写体では特に問題を感じないものの、それ以外では所々でイラっとする場合がある。

  • オートエリア時の測距点数が少ない
  • レンズ繰出式フォーカス機構がボトルネックとなるAF速度
  • ピント移動に伴う画角の変化で四隅の測距性能が不安定
  • 低照度における測距性能の低下
  • レスポンスの悪いコンティニュアスAF・追尾AF

などなど、様々な要素が絡み合って使い辛いオートフォーカスシステムとなっています。

特にマクロ領域から1m前後の近距離では背景にピントが抜けやすかったり、なんどやっても被写体にピントが合わないなどストレスフルな場面もぼちぼち発生する。

スナップ系フォーカス機能が充実しているので、使いこなせばなんとかなるものの、少なくとも像面位相差AFの恩恵は微塵も感じられません。

競合他社のコンパクトデジタルカメラや1型センサーカメラと比べてかなり厳しい評価を付けざるを得ない。

GR IIIで最も足を引っ張っていると感じる部分。ここがファームウェアアップデートで改善されたなら向かうところ敵なし。

周辺減光が強い

前述した通り、長所であるGRレンズにおいて唯一気になるポイント。レンズサイズからして仕方のないポイントですが、購入前に頭に入れておくべき。

使いやすい減光量ではあるものの、F8まで絞っても目に付く程度は残存しています。フラットな光状況にしたいのであればRAW現像からの後処理は必須。

逆に晴天では周辺減光が功を奏して空を程よく減光してダイナミックレンジ内に収めてくれるので編集しやすかったりする。

露出補正がADJレバー固定

GR IIにあった露出補正ボタンが無くなってしまった代わりに、ADJレバーへ機能が移動しています。割当機能をカスタマイズすることが出来ないので露出補正固定。

これが勿体無い。

ADJボタン押し込みと同じようにカスタマイズに対応して欲しかった。個人的には露出補正よりもイメージコントロールやアウトドアモニタを使う機会が多いので、ココに割り当てることが出来たらどれほど便利だったことか…。

他にも「撮影距離」「MF」なども割り当てることができると便利なはず。

操作し辛く低機能の背面ホイール

他社でも多くのカメラで採用している十字ボタン周囲の背面ホイールを導入。現段階の仕様でこのホイールを導入しようと決定したのか謎が深まる。

まず第一に操作性が悪い。指の掛かりが悪い形状でとにかく回し辛い。以前のレビューでも指摘しましたが、パナソニックのLUMIX GFシリーズのホイール形状が最も使いやすいので見習ってほしい。

さらにカスタマイズに対応しておらず、ホイールが利用できるのは一部のメニュー項目やMFのピント操作のみ。なぜここに露出補正やISO感度と言った良く使う要素を割り当てることが出来ないのかは理解に苦しむ。ファームウェアアップデートで改善できそうな項目なので是非とも対応して欲しいところ。

マイメニューがない

レスポンスの良いタッチパネルで操作できるのはメリットですが、メニューの項目数が多く探すのが面倒。特にショートカット機能の無い項目をいちいちメニュー画面から変更するのは骨が折れる作業です。

他社ではマイメニューが一般的となりつつありますが、GR IIIでは導入されていません。

雅・クロスプロセスがない

GR IIにはあったのに、何故か無くなってしまった「雅」「クロスプロセス」「人物」「かすか」は是非とも復活して欲しいところ。

前述した通り、GR IIIには低コントラストなプロファイルが少ないのでカスタム枠を消費して用意しなければならないのは残念。

アプリが間に合ってない

GR IIIからスマートフォンへ画像を転送しようと思ったら、まさかの未対応。

THETAのアプリといい、スマホアプリの開発スピードがかなり遅い。このあたりにリコイメのリソース不足を感じてしまう。

せっかくBluetoothとWiFiを搭載して便利そうなのだからゴールデンウィークまでにはなんとかして欲しい。

バッテリー消費が激しい

密度の濃い撮影では半日も経たずにバッテリーが空となるはず。

大動脈から出血しているような減り方をする。ここ最近使っていたカメラの中では最もバッテリー消費が激しい。

予備バッテリーかモバイルバッテリーは必須と言っても過言では無い。一眼レフやミラーレスのサブカメラとして携帯するのではなく、あくまでもメインカメラとして使うつもりなら予備バッテリーは1?2つは買っておいたほうが良し。

まとめ

GR IIIは”買い”のカメラか?

GR III購入のポイント

  • APS-C 28mmとしては比類なき携帯性
  • 小型軽量28mmなのにボディ内手ぶれ補正を搭載
  • 2400万画素センサー+アクセラレータユニットの高画質
  • ボディ内手ぶれ補正とNDフィルターの相乗効果
  • 柔軟性のあるRAW現像と互換性の高いDNG出力
  • 抜群のレスポンスを持つタッチパネル
  • ダストリムーバブル IIによる除塵機能
  • USB充電・USB給電対応
  • オートフォーカスが場合によって大きくパフォーマンスが低下する
  • バッテリー消費が激しい

諸手を挙げておススメするのは難しいものの、刺さる人にはとことん刺さるカメラ。「10万円」と言う値付けは安くないものの、高すぎるという相場でも無いはず。ただし、予備バッテリー・モバイルバッテリーに追加投資するくらいの余裕はあったほうが良い。

欠点はファームウェアアップデートで改善されそうなポイントばかりなので是非とも対応して頂きたい。

ネックはオートフォーカス

主なマイナスポイントはオートフォーカスとバッテリー消費。バッテリー消費は対応策があるとして、オートフォーカスがダメな時はもう諦めるしかない。

コンセプト通り、スナップやストリート、旅先風景で使うにはメリットが前面に出るものの…、カジュアルユースや家族行楽などでAFを利用すると面白いくらいピントが合わない。

特に一眼レフやミラーレスのサブカメラとして携帯するとオートフォーカスの拙さが目立ってしまう。低照度でのイルミネーション、動く被写体への追従AFなどは絶望的ですらある。「像面位相差AF対応」と言う売り文句に過信は禁物。オートフォーカスはおまけ程度に考えておいた方が気が楽。

追記ファームウェアアップデートで改善されました!やるなリコーイメージング!

万人にはおススメできないが…間違いなく良いレンズ

マイナスポイントを考慮してもポケッタブルで高性能なGRレンズやボディ内手ぶれ補正は非常に魅力的。

なんと言ってもGRレンズの出来が良い。そこらへんのミラーレスや一眼レフ用の28mmよりも携帯性と画質のバランスが間違いなく素晴らしい。

さらに、内蔵NDフィルターを使ったスローシャッター、USB給電を利用したインターバル撮影、柔軟性のあるボディ内RAW現像、などなど細かい点でおススメできるポイントは多い。

万人受けするカメラではありませんが、GR IIIの短所を撮影スタイルなどでカバーできるのであれば頼もしい28mmとなってくれるはず。

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