「VILTROX AF 13mm F1.4 STM」のレビュー第四弾 諸収差編を公開。影響が残る収差があるものの、大口径の広角レンズとしては健闘している補正状態のようです。
簡易的なまとめ
フレーム隅のコマ収差とフォーカスシフトの影響がある球面収差について注意が必要。色収差や歪曲収差、像面湾曲などは良好に補正されています。
Note that there is a risk of coma aberration and focus shift at the corners of the frame. Chromatic aberration, distortion, and field curvature are well corrected.
VILTROX AF 13mm F1.4 STMのレビュー一覧
- VILTROX AF 13mm F1.4 STM レンズレビューVol.4 諸収差編
- VILTROX AF 13mm F1.4 STM レンズレビューVol.3 遠景解像編
- VILTROX AF 13mm F1.4 STM レンズレビューVol.2 解像チャート編
- VILTROX AF 13mm F1.4 STM レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
(カメラ側の設定で露出が若干異なるものの)ピント位置による解像性能の変化はほとんどありません。像面湾曲は良好に補正されています。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
絞り値全域で非常に良好な補正状態。追加補正の必要は全くありません。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
絞り開放付近で色収差が僅かに発生。しかし、F1.4の大口径レンズとしては良好な補正状態。実写で目立つシーンはほとんどありません。
軸上色収差ではありませんが、F1.4からF2まで絞ることでピント位置が遠側へ移動するフォーカスシフトが発生しています。開放測距後に絞りを調整する撮影で注意が必要。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
良好な補正状態です。追加補正の必要性はほぼありません。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
F1.4付近で点光源の変形が見られます。絞り開放付近でフレーム隅のコントラストが低下している原因の一つ。これを改善するにはF2.8まで絞るのが効果的。
球面収差
補正状態は完璧と言えず、軸上色収差の項で言及したようにフォーカスシフトの原因となっています。玉ボケの見栄えにも影響するほどの補正状態で、このレンズにおける欠点の一つ。
まとめ
極端なシーンでも色収差は良く補正されています。収差がゼロではないものの、目立つ機会は限定的。F1.4の絞り開放を快適に利用することができます。
気を付けるとしたら球面収差とコマ収差。F1.4からF2で大きなフォーカスシフトが発生します。撮影距離によって影響度合いは異なるかもしれませんが、F1.4の大口径でピントを合わせた後に絞るようなシーンでは注意が必要。自身の環境でフォーカスシフトが発生するかどうか事前に確認しておくことをおススメします。
コマ収差はF1.4-F2.0でフレーム隅に影響あり。極端に目立つわけではないものの、点光源が多い場合、隅まで良好なコントラストを得たい場合はF2.8まで絞ることをおススメします。
歪曲収差の補正状態はとても良好。追加補正の必要性は低く、そのまま利用することができます。電子アダプター経由で別マウントのシステム装着時に使いやすいレンズ。(例えばE → Z・X → Z アダプター)
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