マイクロフォーサーズ用のAF対応標準単焦点としては最も明るい「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」。
「こりゃあ買うっきゃないでしょう」と思いながら、先に手を出した12-100 PROに満足してしまい手を出すのが遅れました。眠っていたオーディオ機器に処分命令(我が家の大蔵省)が下ったので、そのお金で密かに購入。
それでは、さっそくレンズを見ていきましょう。今回は写真が掲載数をかなり多め、全体的にページが重くなっているので覚悟してください。
外観レビュー
マイクロフォーサーズ用の標準単焦点としてはNOKTON F0.95 IIの次に重いレンズ。それなりにサイズも大きい。
大きめな単焦点ですが、フルサイズやAPS-Cの”イマドキな”大口径単焦点を考えると小ぶりでカワイイレベル。シグマの「50mm F1.4 DG HSM(フルサイズ用)」が800gほど重量がある事を考えると軽いレンズと言えるでしょう。(もちろんボケ量など違いますが)実を言えば当初はα7IIにMC-11を介した50mm Artを考えていた。色々と調べるうちにボディとレンズを合体した写真を発見し、デカさに驚愕してそっとページを閉じました。
質感は従来のPROシリーズ同様のもので、ハードなコンディションにも耐えてくれそうな信頼あるものです。フードはプラスチック製で12-100 PROと同系統のロック機構を備えています。
L-Fnボタンは微妙に押しにくい位置にある。PEN系では気にならないかもしれませんが、OM-D系のボディサイズだと指が微妙に届かない。
マウントは金属製。なんと「Made in Japan」の印字があるではないですか。いつものS社がふっと浮かんできたので特許情報を調べてみましたが、今のところ見つかりませんでした。オリンパスで日本製と言ったら8mm魚眼や25mm F1.8など、特許情報がS社から公開されていましたね。
フィルター径は62mm。12-40 PROと一緒ですので、併用できるのはGood。12-100 PROや40-150 PROは72mmです。
レンズを手に取って見ると、F1.2とは思えない軽さ。PENやGMにくっつけるのもやぶさかではない感じ。
金属鏡筒・金属フードのM.ZUIKO ED 75mm F1.8よりも100g重いですが、手に取って見ると重量感に差はあまりない。シグマ 30mm F1.4 DC DNはさらに100g軽いですので、僅かに軽く感じます。
手持ちの機材をPROレンズで揃えている場合にはサイズ感はあまり気にならないかもしれません。
ピントリングは通常状態でやや軽く、フォーカスクラッチによるMFモードではやや重くなります。回転の抵抗感が程よい。
色収差・周辺描写
VS:30mm F1.4 DC DN|Contemporary
F1.2(全体像:クロップ)
この絞り値は25 PROのみなので全体像と比較。ピント面は一律でGM1Sにくっつけたレンズ前面に固定。
クロップすると軸上色収差(の影響を受けたであろうパープルフリンジ)が皆無では無いことが分かります。とは言え、F1.2の大口径レンズとしては非常に良く補正されている。大きくクロップしない限り問題無いレベル。後処理してもディテールを損なわない程度のほんのりした色づき方。
この軸上色収差の少なさこそ、このレンズの醍醐味と言えるもの。買ってよかったなぁと思うポイント。
F1.4
シグマ30mm DC DN参戦。
シグマ30は高いコントラストの部分においてパープルフリンジが発生しています。これは等倍鑑賞せずとも確認できるレベルであり、場合によっては後処理で色を抜く必要があります。被写体の距離によっては全体的に色収差の影響を受けて後処理が難しい場合もあるでしょう。
一方で25 PROは半段絞った状態であり、僅かなながら軸上色収差(の影響を受けたであろうパープルフリンジ)が収束してきているのが分かります。差は歴然としたもの。
さらに同一のポジションで撮影しているので、画角の広い25 PROの方がより大きくクロップしているにも拘わらずいい結果を出している。被写体へ色収差の影響はより出やすいはずですが、シグマ30mmよりも良好な結果となっています。
F2.0
シグマ30はまだ高コントラストな部分において強い色づきが残存。ピント面の直後の「LUMIX」の部分のボケに色づきが目立っています。
25 PROはほぼ解消。しかしこれは「25 PROの方が焦点距離的に被写界深度が深くなり、軸上色収差の影響範囲から抜け出したため」という点を否定できない。しかし、ボケ量が同程度に見える25 PROのF1.4とシグマ30のF2.0を見比べても25 PROの方が色収差の補正が良好と感じる。
F2.8
ここまで絞るとシグマ30のパープルフリンジもほぼ収束しました。ボケの色づきも目立ちませんね。
F4.0
どちらもあまり変わらない印象。重箱の隅を楊枝でほじくるようなチェックをすると、シグマ30の方が被写体にハロが出ている。とは言え光線状況が一定ではないので言及は出来ません。
F5.6
F4.0同様、遜色ないレベル。
F8.0
回折の影響で大きくクロップしている25 PROの解像力低下の方が目立つ。
パープルフリンジ
25 PROのみ別作例を用意。今回も大きくクロップしてパープルフリンジを見やすくしました。
パープルフリンジが出やすい被写体ですが、半段絞ったF1.4でも改善傾向がありあすね。F2まで絞ればほぼ解消と言ってもいいでしょう。スッキリと写すにはF4.0程度。
周辺描写
海外レビューサイトで指摘される周辺解像力のチェック。遠景用の作例も撮影しておいたのですがハイレゾショット中にぶれてしまったみたいで、正確な参考にならず省きました。
F1.2
球面収差によるハロっぽさや色収差の影響は少ない。しかし、像が流れるコマ収差というか非点収差と言うか…がやや目立つ。
よって細部の解像力は落ちるが、全体的な解像感は良好。
F2.0
1段半絞ると色収差は収束。レビューサイトでは倍率色収差が目立つというコメントが多かったものの、確認できない。ひょっとしてデジタル補正入っているかもしれない。
像の流れは依然として健在。コマ収差ではなく非点収差の影響が強いか?
F2.8
被写界深度が深くなってきた恩恵もあってか大分落ち着いてきた。それでも”流れている”感はなおも健在。
F4.0
依然として像が流れている。
絞ってもなかなか周辺解像力を得られないあたりに「クセ玉」と評される部分があるかもしれません。「ぐるぐるボケ」のような極端な非点収差では無く、「完璧な補正では無い」と言う感じ。
F5.6
「お!納まってきたかな?」と感じる収束感がある。ハイレゾ使った細かい話で言うと、まだ僅かに収差が残っている。
遠景の風景を撮影するならF5.6までは絞っておきたい感じ。
F8.0
ここまで来たら像の流れはかなり納まっている。ハイレゾショットで周辺まで高解像を求めるのであればF8まで絞りたい。ただし、回折で中央の解像力が低下してしまうのが悩みの種。
遠景
ハイレゾショットに失敗していたので通常ショット(2000万画素)を数枚掲載。
F1.2
絞り開放F1.2でこの中央描写。四隅はやや流れていますが、解像力は高い。
開放でこれだけ写れば十分、十分ですが遠景をF1.2では撮らないだろうなあ…。
F2.8
絞ると徐々に四隅の描写が安定してきます。
F8.0
回折現象が出てるような出ていないような…。影響はごく僅かで、それよりも四隅の描写を考慮すると絞り込んで使いたいですね。ここまで絞ると四隅はかなり安定します。
実写
S-AFでも十分フォーカス速度は速いですが、C-AFは爆速の域。浅い被写界深度でここまで高速ピント合わせが出来ると一眼レフ使えなくなりそうです。
絞り開放のディテールチェック
最短撮影距離で撮影。撮影倍率は35mm判換算で0.22倍までクローズアップ可能。そして近接の絞り開放からくっきりすっきり写る。
これだけ写れば十分で、ブログでの使用ならガッツリクロップしても使える。
高コントラストの色づきチェック。このシーンではほぼ完ぺき。
並みのレンズでは前ボケに色づきが出そうなシチュエーションですが、全く問題ない。解像力は及第点。と言いますか、F1.2の絞り開放でこれなら十分過ぎる。
逆光チェック
よく言われる”逆光に弱い”という一面は今のところ確認できず。
激しいゴーストもなければフレアが強烈ということもなし。イルミネーションでも撮って見ないとわからないかもしれません。d
逆光でも絞り開放F1.2をNDフィルター無で使えてしまうのは高速電子シャッターを搭載しているミラーレス一眼の良いところ。一眼レフでこの芸当が出来るのはPENTAX KPのみ。
さらにローリングシャッターによる歪み現象が少ない高速センサーは今のところE-M1 Mark II(10ms)とGH5(14ms)がミラーレス一眼でツートップ。センサーサイズの小さいマイクロフォーサーズの利点となっているようです。
とは言えF1.2の割にはシャッタースピードが上がらない気がする。ひょっとしたらレンズ構成枚数が多いのでT値(ボケ量ではなく光の取り込み量の指標)が高いのかもしれません。
参考:M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
GM1Sでパチリ。
マイクロフォーサーズ用レンズとしては最高峰の描写を誇る75mm F1.8。さすがの写り。
単純に大ボケと高解像を得たいのであれば、こちらの方がおススメできるかもしれません。
まとめ
フットワークの軽いボケ表現におススメのレンズ
ごついカメラで使うよりは「PEN-F」や「DMC-GX8」などのクリエイティブなスチルカメラで使ったほうがしっくりくると思います。サイズもそこまで大きくないので、ぶらっとお散歩レンズとして、作品作りのレンズとして持ち歩くにはとても便利。
色収差の補正は良好なので2000万画素でも収差が悪目立ちはしないでしょう。むしろ2000万画素で使いたいレベル。
一方、”万能レンズ”と思って使うと不満が出てくるかもしれません。特に中景・遠景の自然風景や建築物では絞り値を選ぶでしょう。
私なら風景写真には12-100 PROや12-40 PRO、ボケ表現や心象風景、お散歩カメラには25 PROという使い分けをすると思う。「小型で絞って高解像」というレンズであれば「LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH. H-X025」「30mm F1.4 DC DN|Contemporary」の方が適役かもしれません。
AFは極めて高速で正確。絞り開放の光学性能の良さとF1.2の被写界深度の浅さが功を奏している。よほど暗所で撮影でもしない限りピントを外すミスショットはなかった。中央のピント精度はもとより、フレーム隅のAFポイントでも高速・高精度。
シグマ 30 F1.4と比べてどうか?
安いしボケるし解像力もグッド。コストパフォーマンスを考慮するとマイクロフォーサーズの標準単としてはベストな選択肢。
ただし、絞り開放における軸上色収差が気になる時があり、ついついF2くらいまで絞って撮ってしまう。ポートレートで柔らかい表現を好む場合には一つの味付けとして使えそうですが、自然風景や街撮りでは気難し一面を見せるかも。
安心して絞り開放で撮りたいなら25 PROは標準単で唯一の選択肢。初めはPROレンズらしくないな、とも思ったのですが使い込むほどに「ああ、やはりPROレンズだな」と思うようになりました。
「既に大口径レンズを所有しており、そのレンズの軸上色収差やパープルフリンジに悩まされている方」に25mm F1.2 PROはどストライクなレンズとなるでしょう。私もこの手の一人だったりしたので、ズキューンとハートを打たれた気分です。
官能表現は苦手だが、撮り手についてくるレンズ
被写体を柔らかく表現しようと気難しい一面をのぞかせる場合があり、ファンタジックフォーカスなどのソフト系デジタルフィルターを通しても固さが残る場合もある。
絞り開放のスッキリとした描写は、言い換えると色収差を使った官能表現が出来ない無個性なレンズ。レンズの味で撮影を好む方からすると戸惑う描写である一方、撮影シーンや被写体を選べない場合に表現の自由度が高い。確かにPROシリーズらしいコンセプトで、己の技量を試されているような感じがします。
う??む…、なんて言った良いのか難しいレンズだ。
「考えなくても凄い写りをするレンズ」ではなく、「自分の考えを忠実に反映してくれるレンズ」と表現するのがしっくりくかも。何も考えずに撮ると「サッパリ絵にならないな(笑)」と後で思い知らされます。
一言で言えば「安定感のあるレンズ」。
解像力重視のレンズでは無いことを念頭におくべき。「解像感を損なわない必要十分な解像力を維持しつつ、ボケ味と描写の安定性を重視した超バランス型」なレンズです。
おススメ?
価格が気にならないならおススメ。確かに「やや高いな」とは感じます。
上で述べたように色収差補正とF1.2の明るさ、防塵防滴によるコンディションを選ばないスペックにグッときたら買いでしょう。
画角が問題無ければ75mm F1.8の方が満足度は高い
防塵防滴と画角が気にならなければ75mm F1.8の方がボケ量に対するコスパは良い。25 PRO並みの色収差補正と画角によるボケの大きさはデカい。
フルサイズ並みのボケを演出したいなら75mmの方がそれっぽくなる。画角は換算150mmの望遠ですけども
「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」の総合評価
解像力 | |
表現力 | |
機能性 | |
携帯性 | |
価格 | |
総合評価 |
- 絞り開放の描写が全体的に良好
- 防塵防滴
- 深度合成対応
- フォーカスクラッチ・L-Fn
- 接写性能が高い
- スペックの割には小型
価格はもう数万円安かったら適正だったかも。とは言え、絞り開放の描写で競合レンズがないのでなんとも言えません。
個人的には非常に満足しています。これと75mm F1.8のためにPEN-FかGX8を買い足そうか本気で検討中。
フルサイズのボケと比べて
同じ被写体を同じ画角・F値で撮るとどうしてもボケ量は小さくなります。25mm F1.2 PROの場合、同じ使い勝手ではフルサイズでは50mm F2.4くらいでしょうか。個人的にはボケの大きさはF2?F2.4もあれば十分です。400gで防塵防滴、高速AFまで備えた50mm F2.4があれば検討したいところですが、実際問題そんなレンズないのですよねえ…。AFが遅いか、画質がまあまあか、防塵防滴仕様ではないか。
上記を考慮すると本レンズのポジショニングは絶妙。「小型・大口径・防塵防滴・高速AF・絞り開放での安定性」これらを両立いているレンズはフルサイズやAPS-Cを見てもそう多くない。新しいレンズは軒並み巨大で高性能、小さいレンズは昔ながらのガウスタイプでAFが微妙。K-1+FA50mm F1.4の組み合わせの場合、絞り開放では諸収差が悪目立ちして安心して使える性能ではありませんでした。せめてF2.0までは絞って使いたい。そうすると25 PROとあまり変わらないのですよね。
フルサイズの「収差を抑えた圧倒的なボケ表現」もたまに使いたくなりますが、使いたい頻度とサイズのバランスが合わないのが悩ましいところ。マイクロフォーサーズを使っているとたまに「もっとボケが欲しい」時がありますが、前述したように75mm F1.8のような小ぶりでボケ量が多いレンズを使えば不満はあまり感じません。
ガチンコで競合するのはAPS-Cの「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」くらいでしょうか、25 PROよりちょっとボケ量小さくなりますけど安価。私もX-Pro2と組み合わせて使った事がありますが、軸上色収差の補正がやや甘ので場合によって絞らないといけません。
やっぱりサイズ・重量は大事だよなぁと痛感した。無理して持ち出すサイズでは無いので、これは出動回数が増えるレンズとなるでしょう。
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