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28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 Z-mount レンズレビュー完全版

このページでは「28-75mm F/2.8 Di III VXD G2」ニコンZマウントのレビューを掲載しています。

28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 ニコン用のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 Z 28-75mm F2.8と同程度
サイズ このクラスでは小型
重量 このクラスでは軽量
操作性 カスタマイズ可能なリング・ボタン
AF性能 非常に高速・接写時に周辺の再現性低下
解像性能 概ね良好だが接写時に周辺が低下
ボケ 後ボケが少し硬め、悪目立ちしない
色収差 自動補正込みで良好な結果
歪曲収差 標準/望遠で強い糸巻き型
コマ収差 全体的に良好な補正状態
周辺減光 ズーム両端で少し目立つ
逆光耐性 この価格帯としては良好
満足度 完成度の高い社外製大口径ズーム

評価:

完成度の高い社外製大口径ズーム

完成度の高いサードパーティ製F2.8ズームレンズ。デジタル補正に依存している部分を除くと弱点はほとんどありません。良好な光学性能に加え、様々なカスタマイズに対応したボタンやリングを搭載し、24-70mm F2.8クラスよりも小型軽量で、それなりに手ごろな価格設定を実現。全体的にバランスが良く、優等生的な描写が好みであればおススメしやすいレンズ。

互換性が気になるところですが、精度に関してZ 8との組み合わせで問題無し。接写時に画質が低下する周辺や隅のピント再現性が不安定となるものの、それはこのレンズに限った話ではないはず。互換性の問題が顕著に表れるとしたらズーム操作中のAF-Cで、これは純正品と比べて目に見える差があります。このあたりを重視する場合は純正品がおススメです。

A highly refined third-party F2.8 zoom lens. Apart from the parts that rely on digital correction, it has almost no weak points. In addition to its good optical performance, it has buttons and rings that support various customizations, and it is smaller and lighter than the 24-70mm F2.8 class, and has a reasonably affordable price. It is a lens that is easy to recommend if you like well-balanced, honor student-like depictions overall.

Compatibility is a concern, but there are no problems with accuracy when used in combination with the Z 8. Although the image quality deteriorates in the periphery and corners when shooting close-ups, and the focus reproducibility becomes unstable, this is not limited to this lens. If compatibility issues are prominent, it is noticeable in AF-C during zoom operation, and there is a visible difference compared to genuine products. If you place importance on this area, we recommend genuine products.

まえがき

2024年に発売した4本目のタムロン製Zマウントレンズ。Zマウントのサードパーティ製F2.8ズームとして最初の一本であり、手頃な価格で携帯性の良いレンズに仕上がっています。

ニコンは2022年に「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」を発売しています。このレンズはタムロン旧製品である「28-75mm F/2.8 Di III RXD」の光学系をベースにしていると思われます。まさか2年後にタムロンから(実質的なリニューアル製品である)本レンズがZマウントで登場するとは予想していなかった人も多いはず。

純正品の「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」か、サードパーティ製ながらリニューアルされた「28-75mm F/2.8 Di III VXD G2」にするか悩むひとは多いのではないしょうか。

  • 商品ページ
  • 仕様表
  • 公式サンプル
  • データベース(Eマウント版 兼用)
  • 発売日:2024年4月18日
  • 希望小売価格:143,000円(税込)
  • カメラのキタムラ:112,860円(税込)
  • フォーマット:フルサイズ
  • マウント:Z
  • 焦点距離:28-75mm
  • 絞り値:F2.8~F22
  • 絞り羽根:9枚
  • レンズ構成:15群17枚
  • 最短撮影距離:0.18-0.38m
  • 最大撮影倍率:1:2.7-1:4.1
  • フィルター径:φ67mm
  • サイズ:φ75.8×119.8mm
  • 重量:550g
  • 防塵防滴:対応
  • AF:VXD
  • 手ぶれ補正:-
  • その他機能:
    ・USB-Cポート
    ・TAMRON Lens Utility

価格のチェック

売り出し価格は112,860円(税込)。
現在は10.5万円くらいで、面白いことに販売価格は「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」とほぼ同じ。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

従来通り白を基調としたDi IIIシリーズらしいデザインの箱。装飾は底部にブランドカラーのルミナスゴールドを配色しているのみ。上部には封印用のシールが一か所張り付けられているものの、今回は販売店側で封切られ、保証書に日付が記載されていました。

レンズの緩衝材は入っておらず、段ボールによる間仕切りのみ。レンズケースなどは同梱していません。付属品は花形レンズフードに前後のキャップ、説明書・保証書・シリアルナンバーのシールなど。

外観

外装はプラスチック製ながらしっかりとした作り。サムヤンのような薄っぺらいプラスチック感は無く、頑丈な作り。外装のつなぎ目はソニーEマウント版よりもうまく隠されているように見えます。塗装はDi III初期モデルと比べて黒が強くなっており、一眼レフ用レンズ「SP」シリーズを彷彿とさせるカラーリング。もちろん、金属外装だったSPシリーズと比べると質感は劣ります。

全体的に過度な装飾は施されておらず、マウント付近のルミナスゴールドのリングのみ。相変わらず「日本設計」を大きく表示しており、製造国は非常に分かりづらく記載。ただし、このレンズに関しては製造国も日本。

ズームリングとフォーカスリングはゴム製で、グリップは良好。ただし、ゴム製グリップは塵や小ゴミを吸着しやすい点がマイナス。側面にはUSBポートを搭載しており、パソコンと接続してカスタマイズが可能。ただし、USBポート用のカバーは付属していません(仕様的にはカバー無しでも問題なさそうですが)。焦点距離 75mmにに向けて内筒が伸び続けます。素材はプラスチック製でしが、しっかりとした作りで、特にがたつきはありません。

ハンズオン

全長119.8mm、重量550gの大口径標準ズームレンズ。このクラスとしては非常に軽量ですが、シグマ「28-70mm F2.8 DG DN」が登場した現在は最軽量・最小ではありません。とはいえ、シグマ28-70mm F2.8はニコンZ版が未発売。見た目はタムロンのほうがしっかりとしていますが、実際に手に取ってみるとどちらも良好。

前玉・後玉

前面には撥水・撥油性のある防汚コートを採用。水滴や油汚れに強く、現地でのメンテナンス性が良好。とは言え衝撃や傷が想定される撮影であれば、フィルターを装着しておいたほうが良さそう。フィルター径は大部分のDi IIIシリーズと同じく67mmで統一。他にタムロンレンズを使用しているのであれば、NDやC-PLなどを、67mmで揃えてしまうのは一つの手。

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レンズマウントは4本のビスで固定された金属製プレート。一般的なシルバーカラーのマウントと比べて、ルミナスゴールドのような色味となっています。周囲は防塵防滴用のシーリング。後玉は球状となっており、フレアカッターを搭載。

フォーカスリング

幅15mm程度のゴム製フォーカスリングは滑らかに回転。
リングの回転速度に応じてピント移動量は変化し、ゆっくり回転させた場合はピント全域を移動する際に1回転ほどの操作が必要となる。逆に素早く回転した場合は90度弱でピント全域を操作可能。リングのトルクは程よく、操作しやすい。ストロークや応答性に不満を感じた場合はTAMRON Lens Utilityでカスタマイズ可能。

ズームリング

35mm幅のゴム製フォーカスリングを搭載。ズーム全域で滑らかに回転し、ほぼ均質的なトルク。静止画で細やかな画角の調整ができるほか、動画撮影でも滑らかなズーム操作が可能。リングは28mmの広角端から75mmの望遠端まで、ストロークは90度弱と短く、一度の操作で素早くズームすることが可能。

レンズは28mmで最も短くなり、75mmに向かって徐々に内筒が前方へ伸びる。

 

ボタンなど

従来モデルと異なり、今回のモデルは側面に一つのFnボタンを搭載。初期設定はカメラ側の「レンズFn」で割り当てた機能に依存するものの、「TAMRON Lens Utility™」を使ったカスタマイズで「AF/MF切替」「A-Bフォーカス」「フォーカスプリセット」などに使用可能。

レンズフード

プラスチック製の花形レンズフードが付属。ロック機構が無ければフィルター操作窓もないシンプルなフードで、シグマの競合製品と比べると少し安っぽい。とは言え、フードとしての役割は果たしており、特に問題はありません。

ケラレ耐性

薄枠2枚重ねが限界で3枚目装着で28mmにケラレが発生します。

装着例

Z 8に装着。大きいレンズに違いはないものの、バランスは良好で快適に手持ち撮影が可能。24-120mm F4ズームレンズを使っている感覚とそう変わりません。

AF・MF

フォーカススピード

前モデルはステッピングモーター駆動で、正直に言うとAF速度はソコソコ。今回のレンズはボイスコイルモーター駆動にアップグレードされ、AFスピードが格段に向上。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

画角の変化はゼロと言えないものの、広角端・望遠端どちらも良く抑えられています。少なくとも最短撮影距離と無限遠を行き来するような使い方以外でブリージングが問題となる可能性は低い。

28mm

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35mm

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50mm

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75mm

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精度

Z 8と組み合わせた限りで大きな問題は無し。注意点として、接写時は周辺から隅が甘くなるため、合焦精度や速度が低下する可能性あり。ピントが迷い気味であれば、少し絞ってAFしたほうが良いでしょう。

MF

前述したようにTAMRON Lens Utilityによるカスタマイズが可能。自身の好みに合わせてフォーカスリングの操作性を調整することが出来ます。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 8
  • 交換レンズ:28-75mm F/2.8 Di III VXD G2
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

28mm

中央

絞り開放から非常に高い解像性能を発揮。少なくとも、この解像力チャートでは絞りによる改善効果は見られず、開放からピークの状態。パフォーマンスはF8まで維持し、F11で回折の影響により少し低下。F16~F22はさらに性能が低下するので、必要なければ避けて通りたい絞り値。

周辺

中央と比べると大幅に低下し、絞り開放はかなりソフト。これを改善するには3段絞る必要あり。ただし、広角レンズは定型解像力チャートは相性が悪い(かなり接写する必要がある)点には注意する必要があります。F8まで絞ると中央に近い結果を得ることが可能。

四隅

周辺よりもさらに悪化し、F2.8では測定可能ギリギリの性能。ただし絞ると性能が向上し、F8付近で周辺に近い結果となる。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4449 2947 2020
F4.0 4568 3309 2942
F5.6 4521 3408 3621
F8.0 4268 4059 3751
F11 4178 3738 3306
F16 3935 3387 3179
F22 2733 2536 2436

35mm

中央

中央は28mmと同じく、絞り開放から非常にシャープな結果。F5.6までをピークとして、それ以降は回折の影響で徐々に低下します。

周辺

28mmと同じく、絞り開放が甘い。ただし改善速度が速く、F5.6まで絞ると4000を超え、F8でピークに到達。

四隅

周辺部と同じく、隅も絞った際の改善速度は28mmよりも良好。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4570 2759 1390
F4.0 4693 3052 2881
F5.6 4757 4133 3852
F8.0 4479 4286 3675
F11 4208 3968 3501
F16 3823 3187 3217
F22 2975 2724 2527

50mm

中央

広角側と同じく、非常に良好な性能を維持。パフォーマンスの低下が全く見られないのは正直に言って凄い。F11までは4500を超える非常に良好な結果ですが、F11以降で急速にパフォーマンスが低下。

周辺

広角側と比べると絞り開放の数値が高い。ただし、中央比で1~2グレード低下するうえ、絞りによる改善効果がほとんど無い。均質性が高まるのは小絞り時。

四隅

まだソフトですが広角側と比べると安定感がある。絞ると徐々に改善し、F8付近でピークの性能。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4556 3267 2697
F4.0 4591 3776 2807
F5.6 4695 3988 3286
F8.0 4556 3885 3710
F11 4620 3495 3541
F16 3778 3256 3159
F22 2927 2759 2671

75mm

中央

他の焦点距離と比べると中央の結果が低下。ただし、絞ることで急速に改善します。

周辺

絞り開放から良好ですが、非点収差の影響か絞っても大幅な改善はありません。

四隅

周辺と同じ傾向。ただし、均質性は高い。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 3907 3020 2622
F4.0 4500 3202 2799
F5.6 4868 3465 3068
F8.0 4757 3027 3082
F11 4259 2975 2584
F16 3700 2744 2340
F22 2922 2474 2394

Z 24-120mm F4との比較

広角側は健闘しているものの、35mm以降の均質性は24-120mmが圧倒的。もしもF2.8の明るさやボケが必要なければ24-120mmが無難な選択肢。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024.4.18 曇り 微風
  • カメラ:Z 8
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

28mm

単焦点ほどの解像性能は期待できないものの、設計が難しいと言われる大口径標準ズームとしては満足のいく性能。競合レンズ(シグマ)と比べて大幅に優れた性能とは言えないものの、見劣りする性能でもなし。競争力のある画質。

中央

絞り開放から良好なシャープネスとコントラスト。絞ると僅かにコントラストが改善しているものの、(少なくとも4500万画素のZ 8では)F2.8からピークの状態。パフォーマンスはF8まで一貫しており、F8以降は回折の影響により徐々にソフトな画質。

周辺

中央と比べると少し甘い。非点収差のような像の流れが僅かにあり、コントラストも僅かに低下。絞ると徐々に改善し、F5.6やF8でピークの解像性能を得ることができる。F8以降は回折の影響により徐々にソフトな画質。

四隅

極端な描写の乱れはないものの、周辺と同じくF2.8で像の流れがわずかに発生。絞ると若干の改善が見られ、F5.6-8で像の流れを抑えたピークの画質。手頃な価格の大口径ズームにおける広角端隅の結果としては良好。

35mm

フレームの大部分は良好に見えるが、細部を見ると周辺部から隅にかけて画質が低下。ピークの結果はF5.6前後。

中央

28mmと同じく絞り開放からシャープでコントラストも良好。絞ると極僅かにコントラストが改善したようにも見えますが、基本的には同じ画質。

周辺

中央と比べると描写がわずかに甘く、コントラストも少し低下。F4で改善し、F5.6~F8まで絞ると細部のコントラストが上昇。もしも風景撮影でベストを尽くすならF5.6-8。

四隅

28mmと同じく、極端な描写の乱れはなく、細部を気にしなければF2.8から良好。細部が甘いと感じる場合はF5.6付近まで絞ると改善します。

50mm

広角側と比べると描写の甘さが無くなり、全体的に使いやすい画質。

中央

広角側と同じくシャープでコントラストの豊富な画質。絞っても改善することは無く、F8までそのパフォーマンスを維持。

周辺

28mmや35mmと比べると描写が安定しており、コントラストが少し強い。F4-5.6で細部の結果が改善し、F8までピークが続く。

四隅

28mmや35mmと比べるとずっと良好で、絞り開放から安定感のある画質。絞ると周辺減光と共に画質が少し改善。やはりベストを尽くすのであればF5.6~F8がおススメ。

75mm

安定感のある望遠端の画質。

中央

他のズームレンジと同じく良好な画質ですが、コントラストが僅かに低下。諸収差のテストでは望遠側で軸上色収差の影響が残っているため、ひょっとしたら色収差の影響があるかもしれません。絞ると少し改善します。

周辺

シャープネスとコントラストは十分良好。F4まで絞ると画質がワンランク向上。

四隅

大口径ズームの望遠端としては安定感のある画質。絞っても画質に大きな改善は見られないものの、欠点となるような画質低下はありません。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

接写時は広角側で像面湾曲の影響が見られるものの、遠景の撮影ではズーム全域で大きな問題がありません。参考までに各焦点距離におけるF2.8を使った中央・周辺・隅のクロップ画像を掲載。

28mm
35mm
50mm
75mm

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

Z 8のRAWをAdobe Lightroomで現像(レンズ補正オフ)でしたところ良好に補正されているように見えます。ただし、ソニーEマウント版をテストした際はより大きな倍率色収差を確認しています。これは組み込みのレンズプロファイルにより強制的に補正されていると思われ、実際には僅かな色ずれが発生していると思われます。

28mm
35mm
50mm
75mm

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

28mm

絞り開放から全く問題ありません。完璧な補正状態です。

50mm

28mmと比べると僅かな色収差が発生していることが分かります。ただし、このように軽微な問題が実写で影響する状況はごく僅か。心配するような問題ではありません。無視できる程度。

75mm

50mmと同程度の軽微な影響。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

28mm

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28mmとしては少し目に付く樽型歪曲ですが、驚くほどの収差量ではありません。特にミラーレス用の標準ズーム広角側としては非常に穏やか。

35mm

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35mmの段階で糸巻き型歪曲へと変化。収差は穏やかで、大部分の状況では無視できる範囲内。

50mm

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35mmと比べて強めの糸巻き型歪曲が発生。場合によっては不自然に見えるので補正が必要。

75mm

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50mmと同じく強めの糸巻き型歪曲が発生。かなり目立つので注意が必要。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

28mm

絞り開放から良好な補正状態で大きな問題はありません。

35mm

引き続き良好で、絞り開放から顕著な影響はありません。

50mm

引き続き良好な補正状態。

75mm

僅かに影響があるものの、大きな問題はありません。

球面収差

28mm

非常に良好な補正状態です。

50mm

非常に良好な補正状態です。

75mm

非常に良好な補正状態です。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

ニュートラル寄りで若干硬めの描写。個人的には前ボケと逆の描写が好みでしたが、残念ながら状況によって少しざわつくかもしれません。ただし、色収差や非点収差は良く抑えられており、悪目立ちする要素は多くありません。

前ボケ

後ボケと比べて少し滑らかで柔らかい描写。ボケの輪郭が残りにくく、アウトフォーカスに向かって前景に溶け込んでいます。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

28mm

フレーム隅に口径食の影響があるものの、広い範囲で円形を維持しています。玉ボケの縁取りは弱く、色収差も目立ちません。いわゆる「玉ねぎボケ」となる非球面レンズの研磨ムラも目立たず、全体的に良好な描写。

35mm

28mmよりも口径食が抑えられています。

50mm

35mmと同じ傾向ですが、軸上色収差・倍率色収差と思われる影響が若干強くなっています。

75mm

50mmと同じく、全体的には良好ですが色収差の影響が少し強くなっています。

ボケ実写

28mm

接写時は全体的に滑らかですが、撮影距離が伸びるとボケに縁取りが発生。若干硬めの描写。ただし、色収差や軸外収差が良く抑えられており、悪目立ちする要素は良く抑えられています。使いやすいボケ。

50mm

28mmや75mmと同じ。使い勝手の良い描写。

75mm

撮影距離が離れた際の硬いボケは他の焦点距離と同じ。75mm F2.8でボケが大きくなるぶん、硬い描写が目立つ可能性はあります。ただし、色収差は良く抑えられているため、過度に悪目立ちすることはありません。

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

28mm

撮影距離に関わらず、F2.8の四隅で若干の影響あり。F4まで絞ると改善しますが影響は少し残ります。F5.6まで絞るとさらに少し良くなります。

35mm

接写時のほうがやや強めですが、基本的には28mmと同じ傾向で効果は少し弱い。

50mm

このズームレンズで周辺減光の影響が最も軽微な焦点距離。F4まで絞るとほぼ解消します。

75mm

中間域と比べると減光効果が強く、特に無限遠側の四隅が暗くなります。F4まで絞っても影響は残るため、カメラや現像ソフトでの補正が必要と感じるかもしれません。

逆光耐性・光条

28mm

強い光源を正面から受けてもフレアの影響は良く抑えられています。15群17枚の複雑なレンズ構成のためレンズ間面反射によるゴーストの発生は避けられないものの、それでもF2.8の絞り開放付近は良好。

75mm

28mmとほぼ同じ傾向ですが、比較してゴーストは良く抑えられています。特に光源を中央から外すと悪影響はほとんどありません。良好な逆光耐性。

光条

回折とのバランスをとりやすいF8やF11でシャープな描写。F16やF22でさらに目立つ光条となりますが、中程度の絞りで綺麗な描写が得られるのは嬉しいポイント。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 大口径ズームとしては小型軽量
  • まだまだ手ごろな価格設定
  • 洗練されたレンズデザイン
  • 防塵防滴・防汚コート
  • 統一された67mmフィルター径
  • 使い勝手の良いズームリング・フォーカスリング
  • 追加アクセサリ無しでレンズのカスタマイズに対応
  • 高速AF
  • 良好なフォーカスブリージング耐性
  • ピント距離を選ばず良好な中央解像性能
  • 絞り開放から良好な遠景解像
  • 高い撮影倍率
  • 軸上色収差が無視できる程度
  • 球面収差の問題はほとんど無し
  • 均質なボケ
  • 良好なコマ収差補正
  • 逆光時のフレアが良く抑えられている

前モデル「28-75mm F/2.8 Di III RXD」を全体的にブラッシュアップした新モデル。全体的に「ずば抜けて優れている」とまでは言わないものの、高水準にまとまっている使い勝手の良いレンズ。実用性重視で安定した光学性能が必要であれば面白い選択肢となるはず。周辺部や隅の解像性能が向上しているのも一つのポイントですが、VXD駆動の超高速AFや(やや硬いものの)綺麗なボケ質がポイント。

悪かったところ

ココに注意

  • 28mm始まり
  • プラスチックな外装
  • ズームリングのロック構造なし
  • レンズフードが少し安っぽい
  • RAWで歪曲収差が目立つ
  • ズーム中のAF-Cは純正ほどではない

光学的に注意したいのは歪曲収差と倍率色収差・周辺減光ですが、これらは全てソフト的に補正が可能で特に心配する必要はありません。倍率色収差はボケの色づきとして目立つ可能性がありますが、そのようなシチュエーションは多くないはず。さらに重箱の隅を楊枝でほじくると、ズームリングのロック機構不在やシンプルなレンズフードが若干のマイナスポイント。

最大の妥協点は「28mm」始まり。24mmと比べると画角が狭く、広大な風景写真を撮影しようと思うと、たまに広角ズームが必要と感じるかもしれません(そのような場合は24mmでも不足すると思いますが…)。また、純正品と比べるとズーム中のAF-Cがあまり良くありません。

結論

満足度は95点。
完成度の高いサードパーティ製F2.8ズームレンズ。デジタル補正に依存している部分を除くと弱点はほとんどありません。良好な光学性能に加え、様々なカスタマイズに対応したボタンやリングを搭載し、24-70mm F2.8クラスよりも小型軽量で、それなりに手ごろな価格設定を実現。全体的にバランスが良く、優等生的な描写が好みであればおススメしやすいレンズ。

互換性が気になるところですが、精度に関してZ 8との組み合わせで問題無し。接写時に画質が低下する周辺や隅のピント再現性が不安定となるものの、それはこのレンズに限った話ではないはず。互換性の問題が顕著に表れるとしたらズーム操作中のAF-Cで、これは純正品と比べて目に見える差があります。このあたりを重視する場合は純正品がおススメです。

購入を悩んでいる人

NIKKOR Z 28-75mm f/2.8

タムロン旧製品の光学系を採用したと思われるニコン「純正品」。広角側の周辺画質やステッピングモーター駆動である点で本レンズに見劣りしますが、それでもNIKKORレンズとしての互換性や動作を信頼するのであればコチラ。前述したように、ズーム中のAFを重視する場合は要検討。価格は本レンズと同程度。

NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

開放F値は本レンズより1段大きいものの、より良好な光学性能(主に標準・望遠)を備え、120mmまでを利用でき、接写性能も高め。F2.8にこだわらなければ利便性の良いコチラがおススメ。ただ、低照度におけるAFは大口径のF2.8が役に立ち、VXD駆動による瞬発力の高いフォーカス速度はタムロン有利。ただし、ズーム中のAF-Cはコチラが良好でした。

28-70mm F2.8 DG DN

ニコンZマウント版は未発売なので参考までに。
タムロンG2よりも小型軽量な大口径標準ズームレンズ。基本的な光学設計は24-70mm F2.8 DG DNと同じらしく、描写の傾向も確かに似ています。軸上色収差が望遠側で発生する傾向も同じ。タムロンと同じく接近時に周辺部のパフォーマンスが低下しやすい。また、タムロン以上に28mm時の口径食や周辺減光が目立ち、逆光耐性も若干悪い。小型軽量を追求するならシグマ、安定感が必要ならタムロンがおススメ。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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