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タムロン 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビュー完全版

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このページではタムロン「90mm F/2.8 Di III MACRO VXD」のレビューを掲載しています。

90mm F/2.8 Di III MACRO VXDのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 比較的手頃
サイズ 比較的小型
重量 比較的軽量
操作性 絞りリングが無い以外は良好
AF性能 AF-Cが特に高速
解像性能 撮影距離全域で問題無し
ボケ 特にピント直後が柔らかい描写
色収差 とても良好な補正状態
歪曲収差 穏やかな糸巻き型
コマ収差・非点収差 問題無し
周辺減光 無限遠のF2.8で目立つ
逆光耐性 良好な結果
満足度 全てが高水準でまとまったマクロレンズ

評価:

全てが高水準でまとまったマクロレンズ

光学性能・ボケ・操作性・AF・携帯性、全てが高水準でまとまったうえ、手頃な価格を実現。マクロレンズ。マクロ・風景・動物・ポートレートなど、様々なシーンで使いやすく、比較的収納しやすいサイズであるのがGood。ソニーE・ニコンZどちらでもおススメしやすいマクロレンズです。

It has a high standard of optical performance, bokeh, operability, AF, and portability, and it is also reasonably priced. Macro lens. It is easy to use in various scenes such as macro
, landscape, animals, and portraits, and it is good that it is a relatively easy size to store. It is a macro lens that is easy to recommend for both Sony E and Nikon Z.

90mm F/2.8 Di III MACRO VXDのおさらい

2016年に登場した一眼レフ用レンズ「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(F017)」以来となるタムロンの90mmマクロレンズ。1979年の初代「SP 90mm F/2.5」から始まり、連綿と続くタムキューの系譜がF017で途絶えてしまったかと思いきや、ミラーレス用レンズとして復活。光学設計をミラーレス用に一新し、最新のAF駆動やUSB接続機能などを引っ提げて登場しました。

発売日 2024年10月24日
初値 97,020円 / 102,960円
レンズマウント E / Z
対応センサー フルサイズ
焦点距離 90mm
レンズ構成 12群15枚
開放絞り F2.8
最小絞り F16
絞り羽根 12枚 (円形絞り)
最短撮影距離 0.23m
最大撮影倍率 1:1
フィルター径 Φ67mm
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング BBAR-G2、防汚
サイズ Φ79.2mm×126.5mm
重量 630g
防塵防滴 対応
AF VXD
絞りリング -
その他のコントロール カスタムスイッチ
その他 TAMRON Lens Utility

12群15枚の光学系には4枚のLDレンズを使用。MTFはフレームの広い範囲で安定した高解像を示しており、メリジオナル成分とサジタル成分の分離も良く抑えられているようです。光学手振れ補正は非搭載ですが、最近のフルサイズミラーレス、特に対応するソニーE・ニコンZは全機種でボディ内手振れ補正を搭載しているため、大きな問題とはならないはず。

フォーカスの駆動方式はリニアモーターフォーカス機構VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)を採用。従来とは一線を画す高速性能を実現しつつ、高精度で滑らかなフォーカスを実現しています。他のVXD駆動のレンズを使った限りでは非常に良好。

価格のチェック

売り出し価格はソニーEとニコンZでそれぞれ97,020円 / 102,960円。従来のタムキューよりもやや高めですが、最近の物価上昇を考慮すると良く抑えられているように見えます。もちろん。ソニーやニコンの純正品より安価。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

従来通り白を基調としたDi IIIシリーズらしいデザインの箱。
装飾は底部にブランドカラーのルミナスゴールドを配色しているのみ。上部には封印用のシールが一か所張り付けられています。

レンズの緩衝材は入っておらず、段ボールによる間仕切りのみ。レンズケースなどは同梱していません。付属品は花形レンズフードに前後のキャップ、説明書・保証書・シリアルナンバーのシールなど。

外観

外装はプラスチック製ながらしっかりとした作り。サムヤンのような薄っぺらいプラスチック感は無く、頑丈。外装のつなぎ目はうまく隠されているように見えます。塗装はDi III初期モデルと比べて黒が強くなっており、一眼レフ用レンズ「SP」シリーズを彷彿とさせるカラーリング。もちろん、金属外装だったSPシリーズと比べると質感は劣ります。

全体的に過度な装飾は施されておらず、マウント付近のルミナスゴールドのリングのみ。相変わらず「日本設計」を大きく表示しており、製造国は非常に分かりづらく記載。製造国は中国。

フォーカスリングはゴム製でグリップは良好。とはいえ、ゴム製は塵や小ゴミを吸着しやすい点がマイナス。リングの抵抗は小さく、ソニー純正のように緩い。ストロークは十分に長いため、初期設定の状態でも微調整には十分。

側面にはUSBポートを搭載しており、パソコンと接続してカスタマイズが可能。ただし、USBポート用のカバーは付属していません(仕様的にはカバー無しでも問題なさそうですが)。

ハンズオン

サイズ Φ79.2mm×126.5mm
重量 630g

中望遠マクロとしては、(LUMIXほどではないものの)小型軽量。手振れ補正を搭載する100mm F2.8 マクロレンズと比べると、一回り小さくなっています。外装の質感は悪くないですが、部分的・広い範囲で金属パーツを使用している製品と比べると見劣ります。

前玉・後玉

前面には撥水・撥油性のある防汚コートを採用。水滴や油汚れに強く、現地でのメンテナンス性が良好。とは言え衝撃や傷が想定される撮影であれば、フィルターを装着しておいたほうが良さそう。特にマクロレンズは被写体に接近するシーンが多い。

フィルター径は大部分のDi IIIシリーズと同じく67mmで統一。他に タムロンレンズを使用しているのであれば、NDやC-PLなどを、67mmで揃えてしまうのは一つの手。

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レンズマウントは4本のビスで固定された金属製プレート。一般的なシルバーカラーのマウントと比べて、ルミナスゴールドのような色味となっています。周囲は防塵防滴用のシーリング。

フォーカスリング

ゴム製フォーカスリングは滑らかに回転。
リングの回転速度に応じてピント移動量は変化するものの、素早く回転しても1回転以上の長いストロークがあります。ゆっくり回転する際の微調整は簡単。リングのトルクが弱いものの(=緩い)、長いストロークでバランスは取れています。もしも不満を感じた場合は TAMRON Lens Utilityでカスタマイズ可能。

Fnボタン

従来モデルと異なり、鏡筒側面にFnボタンを搭載。初期設定は カメラ側の「レンズFn」で割り当てた機能に依存するものの、「TAMRON Lens Utility™」を使ったカスタマイズで「AF/MF切替」「A-Bフォーカス」「フォーカスプリセット」などに使用可能。

レンズフード

プラスチック製の円筒形レンズフードが付属。90mmのレンズとしては大きめで、逆さ付け時はフォーカスリングが完全に隠れてしまいます。遮光性は良好ですが、収納性が悪い。フィルター操作窓のある珍しいデザインで、C-PLなどを指で操作できる十分な広さの開口部があります。

装着例

α7R Vに装着。
中望遠としては長めのレンズですが、バランスは良好で快適に手持ち撮影が可能。グリップとレンズの間には余裕は無いものの十分なスペースがあります。厚手の手袋を装着すると窮屈かもしれません。

AF・MF

フォーカススピード

ボイスコイルモーター駆動のAFに対応。
サードパーティ製レンズはAF-S時にAF速度が低下するものの、AF-Cでは電光石火のAF速度。マクロ域から無限遠までのピント移動もほぼ一瞬で、条件が良ければハンチングの頻度が少なめ。ちょっとした動体撮影で安心して使えるくらいに信頼性が高い。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・1m・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

マクロレンズと言うこともあり、ピント移動時に大きな画角の変化を伴います。

精度

α7R Vと組み合わせた限りで大きな問題は無し。AF-S・AF-Cともに問題無く動作します。

MF

前述したように TAMRON Lens Utilityによるカスタマイズが可能。自身の好みに合わせてフォーカスリングの操作性を調整することが出来ます。

撮影倍率
最短撮影距離 0.23m
最大撮影倍率 1:1

公称しているように、等倍でのマクロ撮影が可能。最短撮影距離は0.23mですが、レンズ全長を考慮すると、ワーキングディスタンスは10cmくらい。寄りやすいレンズですが、等倍マクロでは自身の影が写りこまないように気を付ける必要があります。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:ILCE-7RM5
  • 交換レンズ:90mm F/2.8 Di III MACRO VXD
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズ補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

6100万画素のα7R Vでも絞り開放のF2.8から非常に優れた解像性能を発揮。F5.6くらいまで絞ると解像チャートの上限に突き当たります。周辺・隅もF2.8から非常に良好で、全体的に大きな欠点はありません。敢えて言えば、最小F値が「F16」となっているため、絞りによる被写界深度の調整能力は限定的。「F36」まで利用できるNIKKOR Zと比べると柔軟性は低い。

中央

絞り開放からシャープでコントラストの高い結果が得られています。絞りによる大幅な画質向上はありませんが、F2.8からピークの性能が得られます。

周辺

中央とほぼ同じで、絞り開放から非常に良好。画質の低下はほとんどありません。ただし、倍率色収差が残存しているため、細部のコントラストが僅かに低下しています。

四隅

周辺とほぼ同じ結果。やはり残存する倍率色収差の影響で中央と比べるとコントラストが少し低い。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F2.8 4488 4405 4092
F4.0 4632 4569 4175
F5.6 4703 4670 4258
F8.0 4653 4620 4339
F11 4571 4242 4486
F16 3750 3561 3521

実写確認

競合製品の比較

テスト機が異なるため参考までに。どのマクロレンズも非常に高性能ですが、比較的手頃な価格のタムロン90mmは見劣りしない結果が期待できます。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024.10.24 曇り 微風
  • カメラ:α7R V
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:
    ・Adobe Lightroom Classic CC 現像
    ・シャープネスオフ
    ・レンズ補正オフ

テスト結果

中央から広い範囲でF2.8からシャープな結果。6100万画素センサーを使った遠景撮影でも快適に利用可能。隅は若干甘く、最適な結果を得るにはF5.6-8まで絞る必要がありますが、基本的にはF2.8から非常に良好。

中央

F2.8から非常にシャープで、しぼりによる改善効果はほとんどありません。F4に絞ると若干のコントラスト改善があるくらいで、基本的にはF2.8からピークの結果が得られます。

周辺

周辺減光の影響が少しある以外は中央と同程度。絞りによる改善はほとんどなく、F2.8からピークの状態。

四隅

フレームの本当に隅は若干の低下が見られるものの、非常に良好。F5.6-8まで絞るとピークの結果が得られます。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

F2.8の絞り開放から大きな問題はありません。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り値全域で良好な補正状態です。コントラストの高い領域でも目立ちません。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

色収差の影響はほとんどありません。とても良好な補正状態です。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

ごく僅かな糸巻き型。ほぼゼロ。
ミラーレス用のマクロレンズはデジタル補正前提で歪曲収差が残っていることもありますが、このレンズは光学的にきちんと補正されています。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

絞り開放から大部分で問題ありません。

球面収差

ピント面の前後ボケ質感に違いはほとんど無く、球面収差が良好に補正されていることが分かります。また、軸上色収差のテストから、絞りによるピント位置の移動が少ないことも明らか。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

球面収差を良く補正したニュートラルなボケ質。滲むように柔らかい描写ではないものの、色収差は完璧に補正され、悪目立ちする要素がありません。

前ボケ

後ボケとほぼ同じ。質感に大きな違いはありません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

非球面レンズ未使用のため、玉ボケの内側は滑らかで綺麗。ボケの縁取りはほとんどなく、口径食以外に指摘するポイントは無し。倍率色収差も良く補正されているため、フレーム周辺部におけるボケの色づきも目立ちません。

タムロンとしては珍しい12枚絞りを採用。2段絞ってもボケは円形を維持しており、さらに絞ってもほとんど角ばりません。マクロ域で大幅に絞った撮影でも綺麗な玉ボケを得ることが出来そうです。

近距離における口径食は弱いものの、中距離では影響が強い。後述しますが、絞っても綺麗なボケを維持しているため、口径食が気になる場合は積極的に絞ればいいと思います。

ボケ実写

至近距離

柔らかいとは言えませんが、滑らかで綺麗なボケです。ピント面のシャープネスとコントラストと見事に両立。文句なしに綺麗。マクロレンズ、タムキューの真骨頂を見ているようです。

F11まで絞っても玉ボケに不快な描写はありません。

近距離

撮影距離が長くなると口径食が少し強めに影響します。2段絞ることでほぼ解消。滑らかで綺麗な描写は接写時と同様。

中距離

さらに撮影距離が長い場合でも、背景のボケは滑らかで綺麗。柔らかくはありませんが、悪目立ちする要素が一切なく、強いコントラストでも主張しすぎない背景となっています。

この撮影距離で絞っても、小さな玉ボケが悪目立ちしないのは凄い。(F8)

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れるような撮影距離でも、大部分は滑らかで綺麗なボケ。四隅は口径食の影響があるため、状況によっては少し絞ったほうが良い場合があります。とはいえ細かいことを抜きにして言えば、ポートレートレンズとしても普通に使うことが出来そうな描写。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

周辺減光はF2.8からほとんどありません。ただし、マクロ撮影時は得られる光量が低下するため、無限遠と比べて2段程度のシャッタースピード低下、もしくはISO感度が伴います。(同じ露出結果を得たい場合)

無限遠

F2.8の絞り開放では周辺に目立つ減光効果が発生。これを改善するためにはF5.6付近まで絞る必要があります。Adobe Lightroomで手動修正する場合、スライダーで+70-80の調整値が必要。

逆光耐性・光条

中央

光源付近のフレアは良く抑えています。ゴーストの抑制は完璧と言えないものの、まずまず良好。絞っても大きな変化はありません。

周辺

光源をフレーム隅に移動した場合、フレア・ゴーストの問題はほとんど発生しません。

光条

タムロンレンズとしては珍しく、偶数絞りの絞り羽根を採用。光条の数が少なく、すっきりとし、先細りする見栄えの良い描写。F8まではやや分散しているため、シャープな光条が得たい場合はF11まで絞ると良いでしょう。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 手頃な価格
  • 防塵防滴・フッ素コーティング
  • 小型軽量
  • ストロークの長いフォーカスリング
  • TLU経由でカスタマイズ可能
  • フィルター操作窓付きレンズフード
  • 高速AF(AF-C時)
  • 近距離におけるフレーム全域で一貫性のある解像性能
  • 遠景でも問題ない解像性能
  • 像面湾曲の問題無し
  • 色収差の良好な補正状態
  • 穏やかな歪曲収差
  • コマ収差の良好な補正状態
  • 球面収差の良好な補正状態
  • 滑らかなボケ
  • 綺麗な光条

高い光学性能とピント面直後の滑らかで柔らかいボケが特徴的なマクロレンズ。フレーム全域で均質で一貫性のある解像性能が撮影距離全域で得られます。後ボケは状況によって硬めですが、悪目立ちする要素のない綺麗なボケです。コントラストの強い背景では少し騒がしく見えるかもしれませんが、それで高性能なマクロレンズとしては健闘しているように見えます。

さらに手頃な価格と小型軽量な筐体、AF-Cで電光石火のAF速度を実現しているVXD駆動など、ビルドクオリティの観点からも高く評価できるレンズ。

悪かったところ

ココに注意

  • 口径食がやや目立つ
  • 周辺減光がやや目立つ
  • 手振れ補正非搭載

全体的に諸収差が良好な補正状態であり、強く批判すうべきポイントはありません。敢えて言えば周辺減光と口径食が目立つものの、これは他のマクロレンズも似たような傾向。手振れ補正が非搭載である点にも注意が必要ですが、ボディ内手振れ補正が一般的なソニーE・ニコンZのフルサイズモデルで扱い辛いと感じることは少ないはず。

結論

光学性能・ボケ・操作性・AF・携帯性、全てが高水準でまとまったうえ、手頃な価格を実現。マクロレンズ。マクロ・風景・動物・ポートレートなど、様々なシーンで使いやすく、比較的収納しやすいサイズであるのがGood。ソニーE・ニコンZどちらでもおススメしやすいマクロレンズです。

購入するを悩んでいる人

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

非常に高解像で細部までコントラストの高いマクロレンズ。単純に解像性能や解像感で言えばこちらのほうが良好。光学手振れ補正やコントロールリングを搭載しているうえ、情報パネルまで搭載しています。AFもまずまず良好ですが、VXD駆動のタムロンほどではない印象。また、タムロンと同じく口径食が目立つので、撮影距離によっては少し気になるかもしれません。

販売価格はNIKKOR S-Line レンズとしては安め。タムロンとの差額数万円をどう見るか。個人的にはそれでもタムロンを選ぶ理由があると思いますが、互換性が確かで高性能な純正品を選ぶのも一つの選択肢。

FE 90mm F2.8 Macro G OSS

未使用のためノーコメント。
スペック的なところで言うと、ピント距離指標のあるフォーカスリングが使いやすいと感じるかどうか。光学手振れ補正も搭載していますが、販売価格はタムロンと比べて高め。

105mm F2.8 DG DN MACRO

タムロンよりもさらに安く入手できるシグマ製のマクロレンズ。安価ながら光学性能はとても良好で、高解像かつ諸収差の補正状態は非常に良好。描写の傾向はどちらかと言えばニコンに近く、ボケ質はやや硬め(綺麗な描写に違いはありません)。口径食は比較的穏やか。

物理的な絞りリングを搭載している貴重な選択肢なので、絞りリングを重視するなら検討すべき選択肢。個人的には少しふんわりとしたタムロンの描写が好みですが、被写体をくっきりはっきり魅せたいのであればシグマ。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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