このページではOMDS「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8」のレビューを掲載しています。
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | やや高価だが品質良好 | |
サイズ | とても小さい | |
重量 | とても軽い | |
操作性 | 必要最低限 | |
AF性能 | 十分高速 | |
解像性能 | F1.8から安定感がある | |
ボケ | この価格帯としては良好 | |
色収差 | 軸上色収差が目に付く | |
歪曲収差 | 良好な補正状態 | |
コマ収差・非点収差 | 開放隅で目立つ | |
周辺減光 | このクラスとしては良好 | |
逆光耐性 | 大きな問題なし | |
満足度 | 安定感のある使いやすいレンズ |
決定打に欠けるが安定感のあるレンズ
- 小型軽量なF1.8レンズ
- 癖が無く使いやすい描写
- きちんとしたAF性能
- 標準F1.8レンズとしては少し高め
標準F1.8のいわゆる「撒き餌レンズ」としては高いものの、しっかりとした光学性能でこれと言って目立つ欠点が無いのが特徴。使いやすいぶん没個性的となるものの、キットレンズの次に購入する「初めての交換レンズ」としてはおススメしやすい一本。
Index
まえがき
2014年に登場したマイクロフォーサーズ用の明るい標準単焦点レンズ。売り出し価格が3万円超で、このクラスとしては少し高めながら比較的人気のあるレンズ。非球面レンズを含む7群9枚の光学設計で周辺部まで収差の少ない画質と、ステッピングモーター駆動のAFで動画撮影にも適した静かで滑らかなAFを実現しています。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | MFT | 最短撮影距離 | 0.25m |
フォーマット | 4/3 | 最大撮影倍率 | 0.12倍 |
焦点距離 | 25mm | フィルター径 | 46mm |
レンズ構成 | 7群9枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F1.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | ZEROc |
絞り羽根 | 7枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | Ø57.8mm x 42mm | 防塵防滴 | - |
重量 | 137g | AF | STM |
その他 | |||
付属品 | |||
レンズフード・キャップ・デコリング・説明書・保証書 |
価格のチェック
売り出し価格は3万円超。同クラスで比較的安い「LUMIX G 25mm/F1.7 ASPH.」や、少し高価ながら開放F値が小さく防塵防滴の「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.」、さらに似たような価格で購入できる「30mm F1.4 DC DN」に囲まれて激しい競争の中にあるのは間違いない。最終兵器として「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」も控えています。
M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 ブラック | |||
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M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 シルバー | |||
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そんな中でこのレンズをこの価格で買う価値があるのか?それを今からじっくりと見ていきたいと思います。
レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
PREMIUMシリーズも「30mm F3.5 Macro」から黒を基調としたデザインの箱に切り替わりましたが、2014年に登場したこのレンズは2021年に新品を購入してもこのデザインのようです。箱にブラックカラーのレンズが描かれていますが、シルバーを購入しても箱にはブラックカラーのレンズが描かれています。カラーを間違えて発送する小売業者も多かったはず。
レンズの本体の他に、レンズフード、説明書、保証書が付属しています。オリンパスとしては珍しくレンズフードが付属しています。
外観
外装はプラスチック製でレンズマウントのみ金属製。金属外装のレンズと比べると、質感はグッと低下しますが、過度に安っぽいと感じることはありません。表面には艶消しの塗装が施されています。
全体的に黒を基調としたデザインで、オーナメントリングにオリンパスらしいブルーのラインを使用しています。
製造国は「日本」と記載。オリンパス映像事業(現OMデジタルソリューションズ)は数年前にカメラ・レンズの工場をベトナムに集約しています。手ごろな価格のこのレンズがなぜ「日本製」なのか?過去にこのレンズと似たようなレンズ構成の特許がS社から出願されており、ひょっとしたら「会津製」なのかもしれませんね。
コントロールはフォーカスリングのみ。AF/MFスイッチなどはありません。
レンズ先端はデコレーションリングとなっており、レンズフード装着時に使用するバヨネットが隠れています。
ハンズオン
137gと非常に軽量なレンズであり、手に取っても重量感はまったくありません。どのようなマイクロフォーサーズカメラに装着してもバランスは取りやすいはず。やはりプラスチッキーな質感ですが、残念な印象は受けません。
前玉・後玉
前面は46mmの円形フィルターに対応。マイクロフォーサーズ用レンズで46mmに対応するモデルは多く、C-PL・NDなど一通り用意しておくのも良いでしょう。フッ素コーティングは施されていないので、水や汚れが付着する可能性があるならプロテクトフィルターの装着がおススメ。汚れてしまったとしても、前玉はとてもフラットでメンテナンスしやすい。
後玉はマウント面に合わせて固定されています。バックフォーカスの短いミラーレスらしい光学設計ですね。
フォーカスリング
15mm幅のプラスチック製フォーカスリングは滑らかに回転します。このクラスのレンズとしては予想していたよりも良好で、気持ちの悪い引っかかりや潤滑不足はありません。
フォーカス位置の移動速度はリングの回転速度に応じて変化します。素早く回転させると至近距離から無限遠まで約100度ほど、ゆっくり回転させると1回転以上が必要となる。
レンズフード
プラスチック製の円形レンズフードが付属。内側に反射防止用の切り込みが無い非常にシンプルな作り。25mm用のフードとしては少し浅く、どれほど遮光用として効果があるのか不明。レンズが小さいので逆さ付け時はフォーカスリングが隠れてしまいます。
ちなみにエツミのLUMIX 20mm F1.7用レンズフードを装着してもケラレることがありません。携帯性を考えるとコチラを使用するのも一つの手。(残念ながら、ブラックは現在売り切れ)
装着例
コンパクトサイズのレンズであるため、E-M1 Mark IIIに装着しても、LUMIX GF9に装着してもバランスは良好。携帯性を活かすのであればLUMIX GMやGF、OLYMPUS PENがおススメ。レンズ直径はマウントよりも小さいため、GFやGMに装着しても問題ナシ。
AF・MF
フォーカススピード
フォーカスレンズの駆動にはステッピングモーターを使用。高速かつ静かで滑らかに動作します。一部のPROレンズほど電光石火のAF速度ではありませんが、F1.8レンズのAF速度としては十分以上。非常に快適。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
最短撮影距離で僅かに画角が狭くなるものの、良く抑えられています。一般的な撮影距離であればフォーカス時に画角の変化を感じません。
精度
LUMIX・OM-Dどちらに装着しても精度の問題はありません。
MF
前述した通り、素早く回転させると至近距離から無限遠まで約100度ほど、ゆっくり回転させると1回転以上が必要です。ゆっくり回転した時には高精度で滑らかな操作が可能となりますが、少し早く回転させるとぎこちない挙動が目に付きます。この境目の操作が難しく、MF操作の撮影体験として完璧とは言い難い。
解像力チャート
撮影環境
イメージ図です。マイクロフォーサーズのRAWアスペクト比は「4:3」であり、測定時は4:3に合わせてフレーミングしています。このため、「3:2」イメージセンサーよりも四隅領域の判定が厳しめとなる傾向があります
テスト環境
- カメラボディ:OM-D E-M1 Mark III
- 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- OM-D E-M1 Mark IIIのRAWファイルを使用
- ISO 64 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
中央
絞り開放からピークに近い良好な解像性能を発揮。F1.8では軸上色収差と思われる影響でコントラストがわずかに低下しているものの、F2まで少し絞ると改善します。改善するのはコントラストで、解像性能はF1.8から回折の影響が始まるF8までほぼ一定。F8以降は回折の影響でパフォーマンスが急速に低下するので、被写界深度が必要な場合を除いて小絞りは避けるのがおすすめ。
周辺
基本的に中央とほぼ同じパフォーマンス・傾向。わずかに解像性能が低下するものの、絞り開放から良好な性能を発揮し、回折が始まるF8まで一定です。非常に安定感のある絞り開放の画質であり、面白みは無いかもしれませんが、使いやすい画質であるのは確か。
四隅
F1.8は中央や周辺と比べて少しソフトとなるものの、性能が極端に低下することはありません。さらに絞ると急速に改善し、F2.8までには中央や周辺と同じ水準に到達。以降はF8で回折の影響が始まるまでピークの性能を維持しています。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F1.8 | 3094 | 2953 | 2249 |
F2.0 | 3173 | 2953 | 2577 |
F2.8 | 3147 | 2926 | 2878 |
F4.0 | 3410 | 3034 | 2988 |
F5.6 | 3094 | 3007 | 3124 |
F8.0 | 3252 | 2971 | 3051 |
F11 | 2732 | 2796 | 2523 |
F16 | 2439 | 2251 | 2116 |
F22 | 1834 | 1819 | 1756 |
実写確認
絞りによる変化が少なく、単焦点レンズに何を求めるかによって印象は変わるかもしれません。人によっては使いやすいレンズ、人によっては面白みのないレンズと感じることでしょう。
ハイレゾショット
ハイレゾショットで伸びるのは主に中央から周辺にかけて。8000万画素の解像性能をフルに活かすにはあと一歩足らないように感じますが、5000万画素程度であれば十分な性能を備えていると思います。大部分は絞っても改善せず、F8で低下し始めるまで一定の水準を維持しています。隅のF1.8はハイレゾショットに耐用できる性能ではないものの、絞ることで徐々に改善し、F5.6でフレーム全体がピークに達します。
競合レンズとの比較
2000万画素
パナソニック「LEICA DG 25mm F1.4 II」と比べて、中央?周辺の解像ピークは劣るものの、隅まで含めた安定感は良好。「LEICA DG 10-25mm F1.7」と比べると絞り開放のパフォーマンスが良く、F4前後まで絞ると性能差はありません。「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4 IS PRO」と比べると比較的良好ですが、顕著な差では無いと思われます。
8000万画素
中央は25mm F1.4 IIとほぼ同等ですが、周辺部の伸びは25mm F1.4 IIが良好。とは言え、絞り開放の安定感は25mm F1.8のほうが良好と言えるでしょう。何を重視するかにもよりますが、25mm F1.8のバランスは良い。
遠景解像力
テスト環境
こんな設定で撮りました
- カメラ:LUMIX G9 PRO 2000万画素
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:Leofoto G4
- 露出:絞り優先AE ISO 200
- 出力:12bit RAW
- 現像:Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
テスト結果
中央
絞り開放のシャープネス・コントラストが少し低いものの、F2.0まで少し絞ると改善。以降は大きな変化がなく、F8まで同じようなパフォーマンスを維持しています。F11以降は回折の影響でパフォーマンスが徐々に低下。F11は許容範囲内ですが、F16?F22は被写界深度や露出の必要性が無い限り避けて通りたい絞り値。
周辺
中央と同程度のシャープネスに見えますが、コントラストはやや低い。ハイライトに軸上色収差の影響があり、場合によっては中央でも問題となる可能性あり。F2.8まで絞るとコントラストがいくらか改善し、F4?F5.6でピークを迎える。F8以降の傾向は中央と同じ。
四隅
パッと見た場合の描写は絞り開放から安定しており、特に甘いという印象は受けない。とは言え、コントラストが低く、フレーム全体の画質を考慮するとF2.8までは絞っておきたい。ピークはF4?F5.6ですが、F2.8との画質差はそう大きくない。F8以降の傾向は他の場所と同じ。
実写で確認
ブログ用に縮小しています。詳細を確認したい場合はFlickrのオリジナルデータをご覧ください。
ハイレゾ
基本的な傾向は通常撮影時と同じ。絞り開放は中央でも僅かにソフトであるため、ハイレゾを活かすのであれば少なくともF2までは絞りたいところ。周辺部まで十分使いたいのであればF2.8を、隅まで活かすつもりならF4?F5.6まで絞るのがおススメ。
ブログ用に縮小しています。詳細を確認したい場合はFlickrのオリジナルデータをご覧ください。
撮影倍率
最短撮影距離は0.25mで、この際の撮影倍率は0.12倍。このクラスの標準単焦点レンズとしては寄りやすく、フルサイズ判換算で0.24倍のクローズアップが可能となるのは便利。この際の解像性能も十分良好。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。
実写で確認
撮影距離が短い場合は周辺部に向かってピントの山が少し近側へズレているように見える。遠景解像テストの結果を考慮すると実写で大きな問題とならない可能性があるものの、近距離の解像力テストは撮影方法によって良くない結果が出る場合あり。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。
実写で確認
絞り開放から良好に補正されている。絞り値全域で特にこれと言った問題は見当たらない。格納されたプロファイル補正を抜いて特に色収差に関する問題は見当たらない。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。
実写で確認
絞り開放ではやや目立つ量の軸上色収差が残っている。高コントラストなシーンでは前景におけるマゼンダの色ずれと、背景におけるグリーンの色ずれが発生する可能性あり。これは絞りにより改善するものの。F2.0?F2.8でも残存する可能性が高い。しっかり抑えたいのであればF4まで絞る必要があるかもしれない。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。
実写で確認
前後のボケ質に目立つ差は無いものの、よく見てみると後ボケのほうが少し柔らかい描写。反対に前ボケは少し硬い。標準単焦点レンズで前ボケを入れる機会は後ボケと比べて少ないと思われるので、このバランスは肯定的に評価したいポイント。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
コンパクトなF1.8レンズとしては口径食が少なく、使い勝手が良い。非球面レンズを2枚使用しているためか、玉ボケの表面は決して滑らかと言えず、少しムラが目立つのは惜しい。また、軸上色収差によりボケの縁取りに色が付いてしまっているので気を付けたい。
口径食はF2.8まで絞ると解消するが、F4まで絞ると7枚の絞り羽根の形状が見え始めるのを絞り過ぎないように注意。
撮影距離によるボケ質の変化
2m
背景をぼかすことは出来るものの、あまり大きなボケとは言えず、質感も最高からは程遠い。特に周辺部や隅が荒れやすいので注意が必要。F2.8まで絞ると周辺部の描写が安定するので、敢えて絞って撮影したほうが良い場合もある。
1m
撮影距離が2mの時よりもボケが大きくなり、中央は滑らかな描写に見え、周辺部の粗っぽさが多少マシになる。それでも周辺部のボケが騒がしいと感じるのであればF2.4?F2.8まで絞るのがおススメ。
50cm
全体的にボケが十分に大きくなり、特に大きな問題は感じない。全体的に描写は滑らかで心地よい。作例のように、絞り開放では軸上色収差が目立つ場合がある。この場合は、やはりF2.8前後まで絞ると収束するので状況に応じて絞りで調整したいところ。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、距離を変えながら撮影したのが以下の通り。
全身ポートレートで十分なボケ量は得られないと考えたほうが良い。膝上、上半身まで近寄ることで十分なボケ量を得ることが可能。出来ることならもう一歩近づいてバストアップまでは近づきたいところ。ただし、バストアップまで近づいても背景との距離によっては周辺部のボケが荒れる可能性あり。全体的に滑らかなボケを得たいのであれば、絞り開放でも顔のクローズアップが必須。
球面収差
前後のボケ質を見比べると描写に僅かな違いを感じるものの、このテストでは良好に補正されているように見える。撮影距離によるのかもしれない。やはり非球面レンズのムラがいくらか目に付く。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
実写で確認
元は極僅かな糸巻き型歪曲で、JPEG出力の段階で過補正気味な樽型歪曲として処理される。このレンズの歪曲収差はレビューサイトによって糸巻き型だったり、樽型と言われているのはこのためか。もしくは撮影距離によって歪曲収差が変化するのかもしれない。
周辺減光
周辺減光とは?
周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。
最短撮影距離
絞り開放付近で僅かに光量落ちの影響が見られるものの、標準F1.8レンズとしては十分良好。
無限遠
最短撮影距離よりも光量落ちが強く、これを改善するためにはF5.6まで絞りたいところ。光量落ちの絶対的な量は少ないものの、絞っても思いのほか光量落ちがしつこく残る印象あり。自動補正で簡単に修正できるものの、高感度使用時はノイズ増の原因となるので出来れば自動補正は避けたいところ。
コマ収差
コマ収差とは?
コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。
実写で確認
完璧な補正状態と言えず、絞り開放付近ではいくらかコマ収差が残存している。画質に致命的な影響を与えるほどではないものの、点光源が多い夜景などでは少し気になる場合あり。ただし、ラージフォーマットで多いガウスタイプの50mmレンズと比べると遥かにマシな補正状態であるのは確か。これを改善するにはF2.8くらいまで絞りたい。
逆光耐性・光条
中央
フレアは良く抑えられているものの、レンズ間の反射と思われるゴーストが複数発生している。絞りによる改善は見られず、絞り値全域でゴーストは発生し続けている。回避するには光源を移動するか、フレームから外れるように移動するしかない。
隅
中央と比べてゴーストは目立ちにくい。レンズフレアも良く抑えられているが、光源の近くにレンズ面の反射と思われるゴーストが発生しているのが惜しい。絞るとゴーストは小さくなるものの、筋状に鋭く伸びる光条がフレームを貫通してしまう。この兆候はPremiumラインの17mm F1.8と同じ。
光条
F5.6から光条ができはじめ。F11?F22で最もシャープな描写となる。F8でも光条が出来ているものの、少し力不足感がある。F11以降で満足のいく鋭い光条となるものの、回折が強くなるので解像感が低下するのはマイナス。絞るにしてもF11までに抑えたいところ。
総評・作例
肯定的見解
ココがおすすめ
- 小型軽量
- 統一感のある46mmフィルター
- レンズフード同梱
- 応答性の良いAF
- ブリージングが目立たない
- フレーム全体・絞り全体で均質性が高い
- 優れた接写性能
- 良好な色収差補正
- ニュートラル寄りの滑らかなボケ
- 光学的に補正された歪曲収差
- 穏やかな周辺減光
全体的にバランス良くまとまった小型軽量レンズ。どれを取っても「抜群のパフォーマンス」とは評価できないものの、癖が少なく扱いやすいのは確か。いわゆる「優等生」的な描写傾向であり、卒が無く、被写体を選ばず撮影しやすい。発色やコントラストもサッパリとしているので、レンズの描写に流されにくく、自分のスタイルで表現しやすい。
批判的見解
ココがダメ
- 同クラスの中では少し高い
- 軸上色収差が目立つ
- 玉ボケに非球面レンズのムラがある
- 撮影距離が長い場合に隅のボケが荒れる
(ただし、同クラスと比較すると健闘) - コマ収差が完璧な補正状態ではない
(ただし、同クラスと比較すると健闘) - 小絞りで逆光が筋状に伸びる場合がある
光学的に些細な欠点が複数あるものの、正直に言えば許容範囲内。最も悩ましいのは競合レンズが多いこと。似たような価格でシグマ「30mm F1.4 DC DN」を入手可能。さらにより手ごろな価格で「LUMIX G 25mm/F1.7 ASPH.」が存在し、少し背伸びしたら防塵防滴の「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.」も控えている。そしてフルマニュアルの中国製レンズを含めるとさらに選択肢が増える。
これらと比べると、M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8は良く言えばバランスが良く、悪く言えば没個性的。数多くの選択肢からこのレンズを選ぶ決定打に欠けるのは確か。
総合評価
小型軽量でバランス良くまとまった優等生レンズ。個性的ではないものの、シーンを選ばず使える薄味の描写で後処理しやすいのがGood。パナソニックの「LEICA DG」レンズほどパンチのある描写ではないので「よくわからんけどグッとくる描写」は得難いかもしれない。言ってしまえば「美味しい素うどん」。
購入早見表
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作例
関連レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
- LUMIX G 25mm/F1.7 ASPH.
- LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.
- LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH.
- 30mm F2.8 DN
- 30mm F1.4 DC DN
- YN25mm F1.7M
- SPEEDMASTER 0.95/25mm MFT
- 7Artisans 25mm F1.8
- PERGEAR 25mm F1.8
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