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PERGEAR 10mm F5.6 Fisheye 徹底レビュー

このページではPERGEAR「10mm F5.6 Fisheye」のレビューを掲載しています。

管理人の評価

評価:

ポイント

「F5.6」固定で被写界深度や画質、光量の調整が出来ないものの、1万円未満の魚眼レンズとしては良好な光学性能を備えている。完璧を求めなければ気軽に魚眼を楽しめるレンズとなるはず。ただし、初期不良(偏心など)には注意が必要。

ポイント 評価 コメント
価格 性能比で安い
サイズ とても小さい
重量 とても軽い
操作性 MFの回転角が小さい
AF性能 非対応
解像性能 まずまず良好
ボケ 騒がしい
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 魚眼らしい効果
コマ収差・非点収差 隅で目立ち改善不可
周辺減光 良好
逆光耐性 良好
満足度 コスパ良好の魚眼レンズ

おことわり

今回のレンズはPERGEARより無償提供された個体を使用しています。
レビュー内容に関する干渉は一切なく、いつも通りの価値観でレンズをチェック。無意識にバイアスがかかっている可能性は否定できませんが、基本的には従来通りレンズテストを楽しみながらレビューしています。

まえがき

2021年10月に登場したPERGEAR製の魚眼レンズ。APS-Cフォーマットのセンサーに対応しており、画角は172°と非常に広い。同社の「PERGEAR 10mm F8 Fisheye」の画角150°と比べると、圧倒的に魚眼らしい歪み効果が得られるレンズに仕上がっている。

概要
レンズの仕様
マウント X/E/MFT 最短撮影距離 15cm
フォーマット APS-C 最大撮影倍率 不明
焦点距離 10mm フィルター径 -
レンズ構成 5群6枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F5.6 テレコン -
最小絞り F5.6 コーティング 不明
絞り羽根 -
サイズ・重量など
サイズ φ50×32mm 防塵防滴 -
重量 120g AF MF限定
その他
付属品
レンズキャップ・ポーチ

絞りはF5.6固定で、当然ながら絞り羽根や絞りリングは存在しない。レンズで操作するのはフォーカスリングのみであり、絞りによる被写界深度や光量の調整が出来ない。非常にシンプルにレンズを扱うことが可能で、絞りがないぶん手ごろな価格を実現しているように見える。

価格のチェック

PERGEAR直営店やAmazonで購入することが可能。いずれにしても1万円未満で購入することができ、魚眼レンズとしてはリーズナブルな価格設定を実現している。

PERGEAR 10mm F5.6 Fisheye
PERGEAR直営店
楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

PERGEARは基本的に外箱にこだわりが無いらしく、どのレンズを購入しても写真のようなデザインの箱で届く。中身の判断は箱に張り付けられているシールで識別可能。今回は中国 深センから直送のため、ご覧のようにボコボコの状態で到着した。これでも比較的良好。

箱の中にはレンズ本体と金属製のレンズキャップ、レンズポートが付属する。必要最低限だが、非常に安い価格設定を考慮するとポートが付属するだけでもありがたい。

外観

レンズは総金属製のしっかりとした作り。PERGEARのロゴやピント距離の表示は刻印ではなくプリントされている。長期的な使用でプリントが剥がれてくると、ゾーンフォーカスが厄介となるかもしれない。

前玉・後玉

F値が暗いためか、10mm魚眼レンズながら前玉は小さめ。フッ素コーティングが施されているとは記載が無いので、水滴をはじめ、汚れが付着しやすい環境では注意が必要。当然ながらフロントフィルターを装着することが出来ないので、汚れたら早めにメンテナンスしておきたいところ。

レンズマウント付近も金属パーツで構成されている。後玉も比較的小さく、マウントから1cmほど奥まったところで固定。最後尾のレンズはフォーカシングによって前後に移動しない。
ご覧のように電子接点には非対応で、完全なMFレンズ。ただし、絞りが無いので操作するのはフォーカスリングのみ。ボディ側に手ぶれ補正を搭載している場合は、カメラ側で焦点距離を調節する必要がある。

フォーカスリング

小さな金属製フォーカスリングは滑らかに回転する。このレンズが魚眼レンズであることを考えると、個人的にはもう少し抵抗の強いリング操作が好みだった。
フォーカスリングのストロークはピント全域(0.15m~∞)で約90°。そのうち0.15m~0.5mまでがストロークの大半を占めており、0.5m~∞のストロークは10°くらいしかない。このため、無限遠でピントの山に合わせるのは難しい。

装着例

今回はソニーEマウント用をアダプター経由でZ fcに装着。非常にコンパクトレンズで、APS-Cボディに装着してもバランスを崩すことはまずない。ただし、画角の広いレンズなので、カメラのグリップサイズによってはグリップやグリップした右手が写りこんでしまう可能性あり。グリップのないZ fcのようなカメラで使うのが理想的。

フォーカシング

フォーカススピード

前述したように、ピント全域のストロークは90°。至近距離から無限遠まで素早い操作が可能となっている。ただし、遠景で使用するストロークが非常に短く、ピントの山を掴むのが難しい。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

ご覧のように、最短撮影距離で画角は少し狭くなり、無限遠では画角が広くなる。極端な影響度合いでは無いので、基本的には無視してOKのはず。

精度

少なくとも私の個体ではフォーカスリングのピント位置が当てにならない。遠景でピントの山を掴めるのは距離表示の「1m」くらいで、無限遠に設定すると明らかにオーバーインフとなる。購入後、撮影する前にピント距離表示と実際のピント位置は確認しておいたほうが良いと思う。

解像性能

いつもの撮影地点から遠景にピントを合わせて撮影。絞り開放ながら全体的にまずまず良好。ただし、像高8割から外側の四隅は場合によってかなり甘く、色収差やコマ収差の影響が僅かにある。
手ごろな価格の魚眼レンズとしては許容範囲内であり、ダイナミックな画角と魚眼効果で遊ぶには十分な解像性能を備えているように見える。少なくとも1万円未満の魚眼レンズとしてはコストパフォーマンスが高い。

敢えて言えば、手持ちの個体は右上の解像性能が低く、偏心の影響があると思われる。全体のパフォーマンスやコストを考慮すると許容範囲内だが、偏心の程度によっては新品交換も必要だと思う。偏心が気になる、または返品交換などのリスク・手間を許容できない場合は、品質管理で信頼できるメーカーの魚眼レンズを検討するのがおススメ。

撮影倍率

撮影倍率についてスペックシートで明示されていない。しかし、最短撮影距離0.15mまで近寄ることが可能。これは他の魚眼レンズと同程度の撮影距離である。十分近寄ることができ、これ以上寄れたとしても影が写りこむので現実的な撮影距離とは言えない。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

とある写真の左上隅をクロップしたもの。コントラストが強いシーンでも倍率色収差は良く抑えられている。場合によっては現像ソフトで簡単に補正することも可能。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

倍率色収差と同じく、大部分の状況で良好な補正状態だと感じる。極端なシチュエーション(例えば水面の照り返し)で僅かに色づきを確認できる程度。特に心配する必要は無い。

ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

10mm F5.6のレンズでボケを得るのは難しい。0.15mのピント位置を利用したとしても、得られるボケは僅か。ボケ量は少ないが、口径食の影響は小さく、隅まで極端な変形が見られないのはGood。

ボケ質はお世辞にも良好とは言えず、玉ボケには強い縁取りが発生している。しかし、この騒がしいボケが目立つほど大きなボケを得ることは出来ない。基本的にボケ質を心配する必要は無いと思う。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

魚眼レンズらしく、強烈な樽型歪曲が発生している。歪曲は同社の10mm F8よりも明らかに強く、より魚眼らしい効果が得られているように見える。そのぶん、隅に向かって歪みやすく、魚眼に慣れないと使い辛く感じてしまうかもしれない。

同じ魚眼レンズでも撮り方によっては魚眼効果が薄れ、超広角レンズのような使い方が出来る。言語化するのは難しいものの、体感としては消失点がフレーム中央から離れるほど魚眼効果が目立つような気がする。(もしくはパースラインがフレーム対角線から大きく外れる場合?)

また、直線的なパースラインを形成しにくい自然風景でも魚眼効果が薄まる場合がある。この辺りは実際に魚眼レンズを振りまわしながら確認してみるのが面白いと思う。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

実写で確認

「F5.6」固定のレンズで、絞りによる改善効果を得ることは出来ない。しかし、F5.6の状態で周辺減光はほとんど発生しておらず、ほぼ無修正で快適に使用することが出来る。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

中央から像高5割くらいまでは良好だが、周辺部・隅は点像再現性が低下している。絞りで改善することは出来ないが、影響は軽微で問題視するほどではない。イルミネーションや夜景のみならず、木漏れ日などの点光源にも影響が見られる。

逆光耐性・光条

一般的な撮影シーンであれば、強い逆光でも大きな問題は見られない。「良好な逆光耐性」と言っていい水準だと思う。逆光シーンでもコントラストは良好で、目障りなフレアが発生する兆候は見られない。

良好な逆光耐性と言えども、極端なシーンではフレアの影響を受ける。と言っても、このようなシーンでゴーストやフレアを抑えて、良好なコントラストを維持しているレンズは少ない。
ちなみに絞りが無いので光条は発生しない。広角レンズで綺麗な光条を期待する人はいると思うので、この点は要注意。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 小型軽量
  • 金属製鏡筒
  • 172°の広い画角
  • フレームの大部分で良好な解像性能
  • 軸上色収差の補正状態が良好
  • 倍率色収差の補正状態が良好
  • 周辺減光が穏やか
  • 逆光耐性が良好

1万円未満の魚眼レンズとしてはしっかりとした光学性能を備えている。完璧を求めなければ十分良好な解像性能を備え、実写で問題とならない程度に色収差が抑えられ、逆光に強く、周辺減光は穏やかである。手ごろな価格のフルマニュアルレンズは数あれど、1万円未満でこの描写が手に入るのは大きい。

悪かったところ

ココに注意

  • フォーカスリングのストロークが短い
  • 電子接点非対応
  • F値が「F5.6」で固定(=絞り羽根が無い)
  • テストした個体ではピント距離表示と実際の撮影距離が合っていない
  • テストした個体では偏心が見られた
  • フレーム隅の解像性能が大きく低下する
  • ボケが騒がしい
  • コマ収差・非点収差が目立つ
  • 光条を作ることが出来ない

最も注意すべきは「絞り羽根」が無いこと。これにより「周辺解像」「諸収差」など光学性能の改善が不可能で、さらに光条を発生させることも出来ない。絞り開放から良好な光学性能だけに惜しいポイント。とは言え、絞り羽根を排除することでコストダウンしている側面はあると思う。絞りが必要な場合は倍の価格で「7artisans 7.5mm F2.8 II」などを検討する必要あり。
また、品質管理はお世辞にも良いとは言えず、PERGEARブランドのレンズは無限遠が出なかったり、ピント距離表示がずれている可能性がある。購入後は初期不良が無いか確認する必要があり、場合によっては交換対応の手間が発生するかもしれない。

総合評価

満足度は80点。
絞りにまつわる欠点を妥協できるのであればコストパフォーマンスの高い魚眼レンズだと思う。良好な光学性能・ビルドクオリティで1万円未満は魅力的。画角は170°と非常に広く、本格的な魚眼効果を楽しめるレンズに仕上がっている。

特に仰角や俯角の撮影で面白い効果が得られる場合が多いので、携帯性の良いミラーレスと組み合わせて様々な角度から撮影を試みると面白い発見があるかもしれない。縦位置でも撮影しやすいバリアングルモニタ搭載機との組み合わせがおススメ。「Z fc」や「X-S10」などのカメラと相性が良いと思う。

購入早見表

PERGEAR 10mm F5.6 Fisheye
PERGEAR直営店
楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo

作例

Flickrにてオリジナルデータを公開

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