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20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary レンズレビュー完全版

このページでは「20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary」のレビューを掲載しています。

20-200mm F3.5-6.3 DGのレビュー一覧

レンズの評価

ポイント 評価 コメント
価格 安くはないが妥当
サイズ スペックを考慮すると健闘
重量 スペックを考慮すると健闘
操作性 ズームリングが硬め
AF性能 HLA方式で非常に高速
解像性能 ズーム両端以外でとても良好
ボケ 滑らかな描写
色収差 広角端で倍率色収差が目立つ
歪曲収差 補正必須
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 補正必須
逆光耐性 完璧ではないが良好
満足度 真のオールインワンレンズ

評価:

ポイント

真のオールインワンレンズ

「手振れ補正非搭載」「開放F値の上昇が速い」点を許容できれば、万人におススメしやすい高倍率ズームレンズ。20mmの超広角を利用でき、広角から中望遠のハーフマクロを撮影でき、レンズプロファイルを利用できれば光学性能は十分以上に良好。おまけにAFが非常に高速。

ソニーEマウント・ライカLマウントどちらのユーザーにとってもおススメできる。真のオールインワンレンズ。

If you can accept the lack of image stabilization and the rapid increase in maximum aperture, this is a high-power zoom lens I can easily recommend to anyone. It offers a 20mm ultra-wide angle, shoots from wide-angle to medium telephoto with half-macro capability, and delivers more than sufficient optical performance when using lens profiles. Plus, its AF is extremely fast.
I can recommend it to users of both Sony E-mount and Leica L-mount systems. A true all-in-one lens.

まえがき

2025年9月に登場したフルサイズミラーレス対応の高倍率ズームレンズ。
このクラスとしては初となる「20mm」始まりを実現しつつ、標準ズームのレンジで1:2のハーフマクロに対応。光学手振れ補正が非搭載であるものの、それを補って余りある利便性を実現しています。

対応マウントはソニーEとライカLの2種類。ニコンZやキヤノンRF版はありません。

主な仕様

レンズマウント E / L
対応センサー フルサイズ
焦点距離 20-200mm
レンズ構成 14群18枚
開放絞り F3.5-6.3
最小絞り F22-40
絞り羽根 9枚(円形絞り)
最短撮影距離 16.5cm
(焦点距離28mm時)
25cm(W) - 65cm(T)
最大撮影倍率 1:2
(焦点距離28-85mm時)
フィルター径 φ72mm
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング 撥水防汚コート
サイズ φ77.2mm x 115.5mm
重量 550g
防塵防滴 防塵防滴構造
AF HLA
絞りリング -
その他のコントロール ズームロックスイッチ
付属品 ・ポーチ
・レンズフード(LH756-02)
・フロントキャップ(LCF-72 IV)
・リアキャップ(LCR III)

広角20mm始まりの高倍率ズームレンズですが、他社の競合製品と比べて大きくも重くもありません。光学手振れ補正を搭載していない点が有利に働いていることは間違いないですが、ボディ側で補正しやすい焦点距離であることを考慮すると欠点とは言えません。

フォーカス駆動には最近のシグマ製品と同じくHLAを使用。静粛で高速なフォーカスを期待できそうです。

価格のチェック

  • 予約開始日:9月11日(木)10時
  • 希望小売価格:オープンプライス
  • シグマオンラインショップ:143,000円
  • カメラのキタムラ:128,700円

200mm高倍率ズームとしてはやや高めですが、キヤノンやニコン、ソニーの純正レンズの価格を考慮すると同程度。適正価格で、さらに20mmを利用できるのは魅力的。

20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary Leica L
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20-200mm F3.5-6.3 DG|Contemporary Sony E
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

2025年2月、シグマは10年以上続いていたSGVシリーズ(Sigma Global Vision)のVI(ビジュアルアイデンティティ)を刷新しました。

これに伴い、箱も従来の白を基調としたデザインから一新。環境に配慮して簡素化した箱ですが、緑を少し加えたカラーリング。フォントも新しいものに置き換わっています。

箱の中の仕切りや梱包は紙素材が中心。紙素材ながら、購入体験を演出する凝った梱包となっています。

 

レンズ本体の他に、レンズフード、説明書、保証書が付属。ポーチが付属。

外観

箱のデザインは大幅に変わりましたが、レンズ筐体は従来通り。Contemporaryラインらしく、頑丈なプラスチック製の外装を採用。幅広いズームリングはゴム、先端のフォーカスリングはプラスチックで触感を区別している模様。

デザインは従来通りですが、スイッチをやや前方に配置している点で特殊なコントロールレイアウトのレンズ。

箱と同じく、レンズ名などロゴのフォントが切り替わっています。

I Seriesと異なり、意匠は必要最低限。ロゴの他には「Contemporary」を示すシルバーのバッジを備えているのみ。マウント付近には「2025」を示すエディションナンバーがプリントされています。

ズーム時に伸びる内筒は多段式ではなく、1段階で大きく伸びるタイプ。防塵防滴の観点から、(ゴミの侵入経路が増えてしまう)多段式より好み。

ハンズオン

サイズ 重量
SIGMA φ77.2×115.5mm 550g
LUMIX φ77.3×93.4mm 413g
SONY φ80.5×118.5mm 780g
Canon φ80.4×122.5mm 750g
Nikon φ76.5×114.0mm 570g
TAMRON φ74.0×117.0mm 575g

パナソニックほど小型軽量ではないものの、20mmをカバーしつつも(比較的)小さく軽いレンズのようです。光学手振れ補正を搭載していない点を理解しておく必要があるものの、超広角をカバーする携帯性が強みの高倍率ズームと言えるでしょう。

*手振れ補正非搭載はシグマとタムロン(F2.8-5.6)のみ。

ズーム時の変化

20mmから200mmにかけて、内筒が徐々に伸びます。大きく伸びるのは35mm以降で、広角側は控え目。最大(200mm時)で約7.5cm伸びます。

F値の変動は以下の通り。20mmからズームインすることで開放F値が急速に上昇、83mmまでにF6.3となります。

タムロンの28-200mm F2.8-5.6 が79mmまで「F4.0」の開放F値を維持していたことを考慮すると1段ほど差があります。低照度での画質差(ISO感度の上がりやすさ)に直結するので気を付けたいところ。

焦点距離 開放F値
20-21mm F3.5
22-28mm F4
29-37mm F4.5
38-49mm F5.0
50-82mm F5.6
83-200mm F6.3

前玉・後玉

広角20mmをF3.5でカバーしつつも、フィルター径は72mmとコンパクト。ソニーやキヤノンと同じサイズです。ニコンやタムロン、パナソニックと比べると少し大きい(67mm径)。

前玉には撥水防汚コートを採用しているので、水滴や軽い汚れであればメンテナンスしやすい。とは言え、傷や重めの汚れが想定される場合はプロテクトフィルターを装着しておくのがおススメ。

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金属製マウント部は4本のネジで本体に固定。マウント部の周囲は防塵防滴用のシーリングが施されています。従来のContemporaryラインは「簡易防塵防滴構造」でしたが、本レンズは「防塵防滴構造」と記載。

最後尾のレンズはマウント付近にありますが、ズーム時は前方へ移動します。

フォーカスリング

レンズ先端には1.7cm幅のフォーカスリングを搭載。やや軽めの抵抗感で滑らかに回転します。レンズフードを逆さ付けすると部分的に隠れてしまいますが、そのまま操作可能。

フォーカスリングのレスポンスは回転速度に依存します。素早く回転した場合、ピント全域のストロークは約180度。ゆっくり回転した場合は約360度。広角端でも望遠端でもストロークはほぼ同じ。

ズームリング

約5cm幅の幅広いゴム製ズームリングを搭載。20mmの広角端から200mmの望遠端まで約90度の角度で操作可能。手首をひねることで一度にズーム全域を操作することができます。

フォーカスリングと比べるとリングの操作が硬め。特に20mm付近の操作には少し力が必要です。動画撮影で滑らかなズーム操作は難しい。

スイッチ

シグマのレンズでは一般的なデザインのAF/MFスイッチですが、珍しく前方に配置されています。レンズを左手で添える時、自然と親指で操作できる場所にあるので使いやすい。

AF/MFスイッチの下部に、ズームリングを固定するためのスイッチを搭載。従来通り、ロックしたままでもズームリングを(少し力を入れて)操作することでロック解除が可能。よくできています。

レンズフード

広角域をカバーするレンズらしく、浅めの花形フードに対応。遮光性は最低限。

装着例

α7R Vに装着。
この種の高倍率ズームレンズとしては一般的か、少し小さいくらいのサイズ感。特に筐体が細く、グリップのレンズの間の空間に余裕があります。

決して軽いと感じる組み合わせではありませんが、長時間の手持ち撮影で苦にならない程度。バランスは良好で、フロントヘビーとは感じません。

AF・MF

フォーカススピード

(参考動画は近いうちに公開予定)

HLA駆動で高速かつ静粛な動作。ステッピングモーターのレンズと比べると初速が速く、特にAF-Cモード時に電光石火の合焦速度。広い範囲で開放F値が「F6.3」の暗いレンズですが、低照度でもストレスを感じない速度で動作します。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・0.5倍(0.33m)・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

全体的にピント位置による画角の変化は良く抑えられています。

精度

α7R Vとの組み合わせで問題はありませんでした。

MF

前述したように、180-360度のストロークで操作可能。素早く、細かく調整できるストローク。

マクロ

以下は各焦点距離でAF-Cが動作する最短距離で撮影したもの。仕様通り、28mmから85mmの間で非常に高い撮影倍率を備えていることが分かります。像面湾曲の影響が少なく、全体的に実用的な画質を維持。

望遠域で撮影倍率が低下するものの、それでも適度な倍率での撮影が可能。気を付けるとしたら、20mmで被写体に近寄りにくいくらい。

解像力チャート

撮影環境

  • カメラボディ:ILCE-7RM5
  • 交換レンズ:20-200mm F3.5-6.3 DG
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズ補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

20mm

20mmで定型チャートを標準域や望遠域と同じサイズで撮影するには接写に近い状態まで近づく必要があります。この際は球面収差の増大、周辺や隅のパフォーマンスが低下しやすい点に留意してください。

テストでは接写でも絞り開放から優れた中央解像を発揮。周辺はF5.6まで絞ると中央に近い結果が得られ、隅は絞っても中央や周辺に追い付きません。

実写作例を見る限り顕著な画質の乱れはなく、全体像からすると無視できる範囲内の画質差。しかしF5.6くらいまで絞ると良いでしょう。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F3.5 4197 2853
F4.0 4475 2717 2004
F5.6 4461 3594 2688
F8.0 4429 3622 2764
F11 4353 3830 3093
F16 3727 3438 2958
F22 3128 2875 3058

28mm

引き続き中央は絞り開放から優れた性能を発揮。

周辺や隅は出遅れるものの、F5.6まで絞ると急速に改善します。20mmと比べると中央との画質差が小さく、均質性は高い。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.0 4560 3069 2751
F5.6 4510 3826 3774
F8.0 4573 4096 4099
F11 4134 3821 3872
F16 3183 2805 2580
F22 2961 2751 2324

35mm

20mmや28mmと比べると、中央と周辺の画質差がほとんど無くなります。隅が僅かにソフトですが、F5.6まで絞ると改善。全体的に良好な結果。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.5 4502 3848 3030
F5.6 4703 4406 3957
F8.0 4587 4525 3790
F11 4719 4216 4017
F16 3878 3769 3674
F22 3267 2853 2725
F25 2443 2596 2143

50mm

このズームレンズでピークの性能。F5.6の絞り開放から、フレーム全体で優れたパフォーマンスを発揮。絞ってもほとんど改善しません。

開放F値が「F5.6」ということもありますが、絞る必要性を感じないのも確か。立派な性能。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.6 4700 4096 3707
F8.0 4767 4711 4243
F11 4423 4492 4193
F16 3757 3911 3505
F22 3190 3002 2955
F25 2581 2528 2853

85mm

50mmと同じく、中央から隅まで優れた性能を発揮。

開放F値が「F6.3」となるため、回折が発生し始めるまでのF値が狭い。F8以降で徐々にパフォーマンスが低下し始めています。ピークの性能はF10くらい、許容範囲はF16と言ったところ。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 4792 4254 3479
F8.0 4777 4474 3760
F11 4316 4220 4069
F16 3697 3993 3365
F22 3062 3097 2695
F36 2087 2079 2063

135mm

引き続き中央解像は健闘していますが、標準から中望遠域と比べると、周辺と隅のパフォーマンスが低下しています。絞っても画質の改善は期待できません。

しかし、全体的に良好な結果。高倍率ズームとしては文句ありません。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 4947 4096 3621
F8.0 4803 4096 3431
F11 4379 4058 3541
F16 3558 3740 3452
F22 2987 3086 2861
F32 2423 2306 2045
F40 2171 1979 1868

200mm

全体的にパフォーマンスが低下傾向ですが、それでも隅まで良像を維持。絞りによる改善効果は期待できないものの、絞り開放から問題はありません。高倍率ズームの望遠端としては良好な結果。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 4189 3120 2982
F8.0 4078 4040 2894
F11 4222 3740 3113
F16 3965 3416 3131
F22 3103 2661 2468
F32 2164 2324 2264
F40 1847

LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S. との比較

テスト機のメーカーや解像性能が異なるので参考までに。LUMIXはハイレゾモードでのテスト結果を参照しています。

全体的にシグマがより良好な結果が得られています。特にLUMIXは50mm以降の絞り開放でコントラストが低下しやすく、中央のパフォーマンスが低下している点に注意する必要があります。ボケ質の観点から、開放の性能低下が短所と言い切れませんが、解像性能を重視する場合はシグマが好適。

FE 20-70mm F4 G との比較

  • ソニーGの20mm隅のテスト結果が無いのは、歪曲が強すぎて測定ソフトが機能しなかったため。歪曲収差の補正は必須ですが、ソニーGはより良好な結果を期待できます。
  • 28mmはシグマも悪くない結果がですが、ソニーGがやや有利。
  • 35mmになると、ソニーGの周辺・隅が低下傾向。F値を揃えてみると互角。
  • 50mmではシグマの均質性が高く、開放F値を加味しても全体的に良好。
  • 中望遠域での一貫性はシグマがより良好。

シグマは開放F値に妥協が必要ですが、高倍率ズームながら優れたパフォーマンスを発揮しています。

FE 70-200mm F4 MACRO G OSS II との比較

  • 中望遠域はほぼ同じ結果。ソニーはF4を利用できるぶん、自由度が高い。
  • 135mmになると、シグマは周辺や隅で少し見劣る結果。開放F値に1段以上の差があるため、絞りの自由度が低い。
  • 200mmまでピークの性能を維持しているソニーGと比べると、シグマは周辺や隅が低下傾向。

20mm始まりの高倍率ズームの望遠側としては優れた結果。F4ズームクラスに匹敵するとは言えないものの、望遠端以外は健闘。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2025.9.26 晴れ 微風
  • カメラ:α7R V
  • 三脚:SIRUI AM324
  • 雲台:アルカスイス Z1+
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:圧縮RAW
  • 現像:Adobe Lightroom Classic
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

20mm

中央はF3.5の絞り開放から非常にシャープでコントラストも良好。絞りによる改善効果はなく、回折の影響が発生するまでピークの状態が続きます。

周辺部は中央と比べるとややソフトですが、絞ると少し改善します。絞っても中央に追い付くことはありませんが、良像と言える範囲内で問題無し。

隅に向かって極端な低下はなく、周辺部と同程度の画質を維持。ディテールがややソフトですが、絞ることで少し改善します。近距離の解像チャートとよく似た傾向。

中央

周辺

四隅

28mm

中央は20mmに引き続き、絞り開放からとてもシャープ。回折の影響が強くなるまで画質に変化はありません。

周辺部は中央ほどではないものの、絞り開放から良像。絞りによる変化はありません。

隅も周辺部と同程度の画質。絞りによる変化はないものの、欠点と呼ぶべき領域はありません。

中央

周辺

四隅

35mm

広角側と同じく、絞り開放から中央はシャープな結果。

周辺部は中央に近い結果が得られています。広角側と比べると、画質の均質性が向上。絞りによる改善効果はありません。

隅は周辺部より画質が少し低下するものの、それでも良像と呼べる範囲内。絞りによる改善効果はなし。

中央

周辺

四隅

50mm

中央は依然として絞り開放からシャープ。絞りによる変化はありません。

周辺部は中央とほぼ同じ結果。見分けることが難しいくらいには均質な結果が得られています。

隅は周辺ほどではないものの良好。絞ると細部のコントラストが僅かに改善します。

中央

周辺

四隅

85mm

中央の画質が低下する傾向はありません。ただし、開放絞りがF6.3となり、回折が強くなるまでの絞りの自由度が低い。

周辺部は中央とほぼ同じ画質です。隅はコントラストが少し低いものの、遜色のない結果。絞ると少し改善します。

中央

周辺

四隅

135mm

広角や標準域と比べると、細部の再現は低下しているように見えます。しかし、コントラストは依然として良好で、解像感は高い。絞りによる変化はほとんどありません。

周辺は中央とほぼ同じ結果ですが、ハイライト周辺に倍率色収差の影響あり。隅も周辺の結果とよく似ています。

中央

周辺

四隅

200mm

中央は他の焦点距離と比べるとコントラストが少し低め。F8まで絞ると改善します。

周辺は中央とよく似た結果ですが、色収差が残存しているぶん、絞ってもコントラストの改善が穏やか。隅も似たような性能です。

中央

周辺

四隅

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

20mm

絞り全域で目立ちます。簡単に補正できますが、ボケの色付きや広範囲に影響を及ぼす場合は補正しきれない場合あり。

50mm

20mmや広角側と比べると、ほとんど目立ちません。

200mm

ズーム中間域ほど良好な補正状態ではないものの、無視できる程度の収差に抑えられています。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

20mm

完璧ではないものの影響は軽微。

50mm

絞り開放から完璧な補正状態です。

200mm

絞り開放から完璧な補正状態です。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

20mm

非線形の複雑で目立つ歪曲収差が残存。口ひげ状・陣笠状の歪曲収差は手動での補正が難しい。レンズプロファイルは必須。カメラ出力のJPEGでほぼ修正されますが、フレーム隅に若干の樽型歪曲が残存します。

28mm

20mmと比べると遥かに穏やかな陣笠状の歪曲。無補正でも無視できる程度ですが、直線的な被写体がフレーム端部にあると不自然な歪みが目につきます。

35mm

28mm付近を境目として糸巻き型歪曲に変化。35mmではまだ目立ちません。

50mm

35mmと比べると強めの糸巻き型歪曲。状況によってはレンズプロファイルによる修正が必要。

135mm

50mmと同じか、さらに強めの糸巻き型歪曲。レンズプロファイルによる修正が必須と感じるかもしれません。

200mm

135mmと同じく、目立つ糸巻き型歪曲が発生します。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

広角から中望遠のズーム域で軽度の収差が見られます。

球面収差

全体的に球面収差は良好に補正されています。

28mm

50mm

135mm

200mm

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

パナソニック28-200mmのように、残存する収差で滲むようなボケ描写ではありません。しかし、高倍率ズームとしては粗が目立たずきれいな描写。

前ボケ

収差が綺麗に補正されているので前後のボケ質の大きな差はありません。味のある描写ではないものの高倍率ズームにそれを求めている人は少ないことでしょう。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

20mm

複雑なレンズ構成の玉ボケとしては特に大きな問題はありません。玉ねぎボケもよく抑えられています。ただし、口径食の影響が強く、フレーム隅に向かって玉ボケが変形しています。2段絞ると改善しますが、ボケはかなり小さくなってしまいます。

35mm

最短撮影距離が短いため、状況によっては玉ボケを大きく作ることが可能。広角端と異なり、口径食の影響が少ない。絞り開放から良好な描写。

85mm

引き続き最短撮影距離は短く、焦点距離が長いことからボケを大きく作りやすい。ボケの描写はとても良好でフレーム隅までなめらかな描写が続く。

200mm

引き続きボケ質そのものは良好ですが、広角側と同じく口径食が強い。絞ってもあまり改善しないので、割り切って絞り開放を使うことをお勧めします。

ボケ実写

20mm

接写時は広い範囲で滑らかなボケが得られます。撮影距離が長くなるとフレーム端部において口径食が目立つ。幸いにも収差が良好に補正されているため、悪目立ちする要素は少なめ。

50mm

変則的な高倍率ズームとしては欠点少なめのボケ描写。撮影距離が長くなると、ボケの縁取りが強くなるものの、極端に荒れることはありません。ただし、「50mm F5.6」と絞り開放が暗いため、ポートレートなどでボケが得やすいレンズではありません。画角は狭くなりますが、100mm以上を使うことをおススメします。

135mm

開放F値が「F6.3」と大きめながら、長い焦点距離を使うことで背景ボケを大きくすることが出来ます。全体的に滑らかで綺麗な描写。撮影距離が長い場合でも欠点はあまり目立ちません。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

20mm

最短撮影距離

隅に目立つ光量低下が発生しており、これは絞っても改善しません。ただし、歪曲収差を補正することで、暗い部分はトリミングされます。

無限遠

撮影距離が長い場合でも同じ傾向。基本的に歪曲収差の補正が前提。

50mm

最短撮影距離

広角端とは打って変わってズーム中間域は問題無し。

無限遠

撮影距離が長い場合、隅に僅かな減光が発生するものの目立つ影響はありません。

200mm

最短撮影距離

広角端ほどではないものの、絞り開放付近で穏やかな減光効果が発生。望遠側は歪曲収差の補正でトリミングが発生しないため、これは絞りかレンズ補正で修正する必要があります。

絞れば改善するものの、数段絞るとF11-16までF値が高くなる点に注意。

無限遠

近距離よりも減光効果の影響が強くなる。絞っても影響が残るので、レンズ補正は常時適用がおススメ。

逆光耐性・光条

20mm

絞り全域でフレアを良好に抑えています。絞るとゴーストがやや目立つものの、複雑な光学設計のレンズとしては許容範囲内。光源がフレーム隅に移動しても、目立つコントラスト低下はありません。

50mm

ズーム中間域では絞った際に発生するゴーストの数が減少します。

200mm

望遠端でもフレアを良好に抑制。絞った際のゴーストも少なく、全体的に良好。

光条

最小絞り付近まで絞ると良好な結果が得られますが、回折の影響が強め。解像性能とのバランスをとるのが難しい。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 20mm始まりの高倍率ズームレンズ
  • 防塵防滴仕様
  • 28-85mmで0.5倍の高い撮影倍率
  • HLA方式の高速AF
  • ズーム中間域で優れた解像性能
  • 点像再現性が許容範囲内
  • 球面収差を良好に補正
  • このクラスとしては滑らかなボケ

20mm始まりが強みとなるのは明らかとして、28-85mmの間で0.5倍の高い撮影倍率がとても便利。本格的なマクロ撮影以外であれば、広角・標準・中望遠マクロ撮影に対応可能。さらにHLA方式のフォーカス駆動を採用しているので、C-AFを利用すると非常に高速なAFで撮影が快適。

肝心の光学性能も特殊なズームレンジを考慮すると十分以上の結果が得られました。特にズーム中間域はソニーG標準ズームと比べて遜色のない結果。

悪かったところ

ココに注意

  • ズームリングの回転が部分的に重い(広角側)
  • 開放F値がやや暗め(83mmでF6.3に到達)
  • 望遠端でコントラスト低下
  • 未補正で倍率色収差が目立つ
  • 未補正で歪曲収差が目立つ
  • 未補正で強めの周辺減光(広角端)
  • 光学手振れ補正は非搭載

ズームリングの操作が部分的に重く、滑らかなズーミングが難しいのは気を付けたいところ。使い続けていると回しやすくなったような気がしますが、それでも抵抗感にムラがあります。

また、開放F値の上昇が速く、85mmの時点でF6.3となります。タムロンの「F2.8-5.6」高倍率ズームと比べると標準域は1段くらいの差があると考えておいたほうが良いでしょう。特に低照度での撮影時はカメラの高ISOを使う頻度が高くなると思います。

手振れ補正が重要となる場合も多いですが、レンズ側は非搭載。カメラ側の性能に依存します。出来れば(手振れ補正が強力な)最新モデルを利用したいところ。

光学性能は高倍率ズームであることを考えると許容範囲以上。敢えて言えば、未補正RAWに強めの歪曲収差や倍率色収差、周辺減光が発生しています。これらはレンズプロファイルを利用することで綺麗に修正することができますが、プロファイルに対応していない古めの現像ソフトやレンズアダプター経由での使用時は手動での修正が必要となります。

結論

「手振れ補正非搭載」「開放F値の上昇が速い」点を許容できれば、万人におススメしやすい高倍率ズームレンズ。20mmの超広角を利用でき、広角から中望遠のハーフマクロを撮影でき、レンズプロファイルを利用できれば光学性能は十分以上に良好。おまけにAFが非常に高速。

ソニーEマウント・ライカLマウントどちらのユーザーにとってもおススメできる。真のオールインワンレンズ。

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購入するを悩んでいる人

LUMIX S 28-200mm F4-7.1 Macro O.I.S.

フルサイズの高倍率ズームとは思えないほど小型軽量なレンズ。開放F値がやや暗めですが、収納性・携帯性が圧倒的に良好。シグマと比べると絞り開放がやや低コントラストですが、そのぶんボケが柔らかく、見栄えの良い描写となっています。

万能ズームを求めているならシグマ、携帯性かボケ質重視ならパナソニックと言ったところ。甲乙つけがたい。

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28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD

28mmでF2.8、80mmでもF4.5、150mmまでF5.0を維持。シグマと比べると、全体的に開放F値が小さく、光量を確保しやすいレンズ。

シグマの20mmやハーフマクロ性能を犠牲として開放F値を取るか悩ましいところ。明るさが必要なければシグマがおススメ。

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25-200mm F/2.8-5.6 Di III VXD G2

シグマ20-200mmの登場から間髪おかずにリリースしたタムロン最新モデル。開放F値はそのままに、広角端が25mmまで拡張、フォーカス駆動がVXD駆動、最短撮影距離や撮影倍率の改善を実現しています。まだ未知数な部分も多いので、近いうちに試してみる予定。

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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