このページではニコン「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G」のレビューを掲載しています。
AF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gのレビュー一覧
- ニコン AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G レンズレビュー 完全版
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + Z 8 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + Z 8 レンズレビューVol.5 諸収差編
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + Z 8 レンズレビューVol.4 ボケ編
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + Z 8 レンズレビューVol.3 遠景解像編
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + Z 8 レンズレビューVol.2 解像チャート編
- AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G + Z 8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 手ごろな撒き餌レンズ | |
サイズ | 比較的小さい | |
重量 | 比較的軽量 | |
操作性 | 最小・MFにバックラッシュ | |
AF性能 | 適度に高速 | |
解像性能 | 絞れば良好 | |
ボケ | 接写時は良好 | |
色収差 | 倍率色収差は良好 | |
歪曲収差 | 穏やかな樽型 | |
コマ収差・非点収差 | 隅でやや目立つ | |
周辺減光 | 無限遠で目立つ | |
逆光耐性 | まずまず良好 | |
満足度 | 手ごろな価格でバランスが良い |
評価:
バランス良好の撒き餌レンズ
10年以上前に発売された一眼レフ用の安価な50mm F1.8。古い設計の手ごろなレンズですが、バランスよくまとまっているのでF1.8から実用的。解像性能・ボケ・諸収差が良好で、初めての単焦点レンズとしてはうってつけ。残念ながらミラーレスカメラに装着する際は不細工なアダプターが必要となるので、外観や携帯性を重視するなら素直にNIKKOR Zをおススメします。
被写体の適正
被写体 | 適正 | 備考 |
人物 | 中距離では隅のボケが荒れる | |
子供・動物 | AFが追い付かない可能性あり | |
風景 | 絞れば十分良好 | |
星景・夜景 | コマ収差と周辺減光が目立つ | |
旅行 | 手ごろな価格・携帯性が強み | |
マクロ | 不適 | |
建築物 | 穏やかな樽型歪曲 |
Index
まえがき
2011年に発売したニコンFマウント用の交換レンズ「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G」をベースとして、アルミ製のシルバーのリングやマニュアルフォーカスレンズのラバーローレットを再現したフォーカスリングを採用。Dfと相性の良い外観となっています。
- 発売日 通常版:2011年6月2日
- 発売日 SE版:2013年11月28日
- 初値:¥21,599
- 公式ウェブサイト
- 公式ウェブサイト SE版
- データベース
- マウント:Nikon F
- フォーマット:フルサイズ
- 焦点距離:50mm
- レンズ構成:6群7枚
- 開放絞り:F1.8
- 最小絞り:F16
- 絞り羽根:7枚
- 最短撮影距離:0.45m
- 最大撮影倍率:0.15倍
- フィルター径:58mm
- 手ぶれ補正:-
- テレコン:-
- コーティング:SIC
- サイズ:72×52.5mm
- 重量:185g
- 防塵防滴:-
- AF:SWM
- その他:-
- 付属品:キャップ・レンズフード
ダブルガウス発展型の6群7枚のレンズ構成に1枚の非球面レンズを採用。キヤノンの「EF50mm F1.8 STM」よりも大きく重く、少し複雑な光学設計となっています。非球面レンズを使用した現代的な光学性能を期待できる一方、最短撮影距離はキヤノンの「0.35m」よりも長い「0.45m」で、当然ながら撮影倍率は低め。MTFを確認してみると、非点収差はよく抑えられているように見えますが、フレーム隅のほうで大きく崩れていることが分かります。比較してミラーレス世代の廉価レンズ「NIKKOR Z 40mm f/2」は隅まで安定感のある描写を維持している模様。
価格のチェック
発売当時は2万円ちょっとでしたが、物価の変動や世界情勢なども影響して現在は3万円前後。SE版は既に生産完了品となっており、新品の在庫を見つけるのは難しくなっています。中古であれば2~3万円で流通しています。
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
ニコンFマウントらしいデザインの箱にレンズの焦点距離が大きくプリントされています。個人的にはZマウントのブラックを基調としたデザインよりも好み。現在はプラスチック包装をできるだけ省略した梱包となっていますが、Fマウント時代のレンズはプラスチック製のカバーに覆われた状態で収納されています。レンズ本体のほかにレンズフードとポーチ、説明書が付属。レンズフードすら付属していないキヤノンEF50mm F1.8 STMと比べると十分なアクセサリと言えるでしょう。
外観
外装は全体的にプラスチックパーツを採用。プラスチックと言っても剛性は十分にあり、光沢を消したマットな塗装で質感は良好。また、金属製のシルバーリングが程よいアクセントとなっています。シルバーリングには被写界深度が示されていますが、実用的とは思えません。
製造国は中国。シリアルナンバーを含めて外装にプリントされています。
ハンズオン
185gとキヤノンよりも重いものの、驚くほどの重量差ではありません。50mm F1.8としては適度な重量であり、大部分のズームレンズよりも軽量。一日中の撮影で苦になる可能性は低い。
前玉・後玉
前玉は外装の内部に隠れており、フォーカシングで前後したとしても外装からはみ出して伸びることはありません。前方の58mmフィルターを装着すると、インナーフォーカスのような状態で使うことが出来ます。
最短撮影距離付近では前玉が前方へ移動。この際はフィルターと前玉の間隔が短くなるため、不要光の反射が写りこむ可能性が高くなるかもしれません。このあたりは逆光耐性のレビュー時に確認予定。
金属製マウントは4本ビスで本体に固定されています。AFはレンズ内SWM駆動のため、Dタイプのような(ボディ側モーター駆動を受ける)スクリューカップリングは無し。ただし、Eタイプと異なり絞りはメカ式となっています。
フォーカスリング
ゴム製のフォーカスリングを搭載。緩すぎず適度な抵抗で回転しますが、ミラーレス用の電子制御リングと比べるとざらついた感触の操作性です。心地よい操作とは言えませんが、接写時でも微調整は可能。操作方向を切り替える際にわずかなバックラッシュがあるので、切替し操作が多いと不快と感じるかもしれません。
鏡筒にはピント距離と被写界深度の指標あり。被写界深度は実用的とは言えませんが、F16まで絞ってパンフォーカスで撮影する際に使うことが出来ます。また、キヤノンで言うところのフルタイムマニュアルに対応。
スイッチ
側面にはフォーカスモードスイッチを搭載。アダプター経由で使用する場合もスイッチ操作が有効です(カメラ側での切替も可能)。
装着例
FTZアダプター経由でミラーレスのZ fに装着。正直に言うと、Z f・FTZ・レンズの外装デザインがちぐはぐで違和感を覚えます。せめてFTZがもう少しZ fよりのデザイン・質感だとバランスが良かったかもしれません。デザイン重視であれば、迷わずZマウントのSEモデルを買うべきでしょう。
ちなみにMonster AdapterのLA-FE2アダプター経由でソニーカメラにも装着可能。AFと絞りが動作し、レンズ情報も記録可能となっています。
AF・MF
フォーカススピード
Z 8にFTZ経由で装着してテスト。最短撮影距離付近から無限遠まで程よい速度で移動します。リニアモーター駆動で動作する最新レンズと比べると物足りなさを感じますが、ストレスが溜まるほど低速ではありません。素早く動く被写体を近距離で撮影する際は力不足と感じる可能性あり。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
繰り出し式フォーカスと言うこともあり、最短撮影距離が長いわりには画角が大きく変化します。実写でこれが問題となるシーンは限られてくると思いますが、低照度でコントラストAFが動作するようなシーンではピントを合わせにくくなるかもしれません(特に周辺部)。
精度
Z 8装着時は中央・隅どちらでも良好な精度で再現性の高いフォーカスが可能でした。ただし、低照度・低コントラスト時に隅でピント合わせをしようとすると合焦に失敗することがあります。
MF
前述したとおり、快適とは言えませんが微調整は可能。ただし、バックラッシュがあるので回転方向を切り替える時に反応がワンテンポ遅れます。これが個体差なのか、レンズの問題なのかは不明。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Nikon Z 8
- 交換レンズ:AF-S NIKKOR 50mm f1.8G SE
- パール光学工業株式会社
「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」 - オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
絞り開放のF1.8からF2.8くらいまでは細部の解像性能がイマイチですが、F4まで絞ると中央は大幅に向上します。周辺や隅もF4から伸びはじめ、F5.6まで絞れば中央に近い結果を得ることが可能。いっぽう、開放付近の周辺や隅は非常にソフトな画質のため、シャープな結果を得るには少なくともF2.8、できればF4まで絞りたいところ。
中央
F1.8からまずまず良好で、Z 40mm F2と比べると球面収差が少なくコントラストが良好。細部の解像性能は伸び悩みますが、F2.8-4で大きく改善します。
周辺
中央と比べると絞り開放付近が低解像・低コントラストのソフトな画質。解析ソフトで検出できないくらいに緩々のため、シャープな結果を得るには少なくともF2.8、できればF4まで絞ると良好な結果を得ることができます。絞りで大幅な改善が期待できるぶん、Z 40mm F2よりも良好。
四隅
周辺部と同じく絞り開放が緩め。ただし、周辺部と比べて過度な落ち込みではなく、F2.8からF4にかけて大幅な改善を期待できます。F4まで絞れば4500万画素のZ8でも良好で、さらにF5.6~F8でより良い結果を得ることが可能。
数値確認
F値 | 中央 | 周辺部 | 四隅 |
F1.8 | 2946 | ||
F2 | 2952 | ||
F2.8 | 3471 | 3122 | 2731 |
F4 | 4665 | 3765 | 3190 |
F5.6 | 4646 | 4284 | 4075 |
F8 | 4212 | 4401 | 4159 |
F11 | 3965 | 3739 | 3924 |
F16 | 3482 | 3399 | 3358 |
実写確認
Z 40mm F2との比較
絞り開放はどちらもソフトで、F4くらいまで絞ると大きく改善します。50mm F1.8GはF8くらいまで絞ると周辺部や隅まで良好となるものの、40mm F2は絞っても周辺部や隅が伸び悩みます。
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2023-12-4 晴れ 無風
- カメラ:Nikon Z 8
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 露出:SUNWAYFOTO GH-PRO II
- RAW:高効率RAW★
- 現像:Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネス オフ
・ノイズリダクションオフ
・レンズ補正オフ
テスト結果
中央から隅に向かって若干の画質低下が見られるものの、まずまず良好な結果が得られているように見え舞うs。フレーム隅はコマ収差の影響がコントラストが低下しており、これを抑え込むには最低でもF4まで絞りたいところ。F4以降はフレーム全体で非常に良好な結果を得ることができます。
中央
F1.8から非常に良好ですが、球面収差や軸上色収差による影響が僅かに残っています。F2.8-4まで絞ると細部の解像性能やコントラストが向上。以降はピークの性能がF8くらいまで続きます。
周辺
中央と比べると若干ソフトな画質で、コマ収差のような影響もわずかに発生しています。F2.8-4まで絞ると大きく改善し、F5.6まで絞ればピークの画質。
四隅
周辺部よりもさらにコントラストが低下しています。これはコマ収差の影響が強いと思われ、絞ると改善が期待できます。倍率色収差の影響は少なめ。コマ収差はF2.8まで絞っても補正不足で、少なくともF4まで絞りたいところ。F4以降はピークの性能がF8まで続きます。
Z 40mm F2と比べて(サンプルは隅のみ掲載)
基本的な傾向はF1.8Gと同じ。F2.8くらいまではコマ収差の影響が残存しており低コントラスト。F4まで絞ると大きく改善し、F8くらいまで良好な結果を得ることができます。遠景の解像性能だけで言えば「どちらでもいい」というのが正直なところです。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
F1.8でも中央から隅まで被写界深度内に収まっているように見えます。目立つ像面湾曲はありません。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
良好な補正状態であり、目に付く色ずれはありません。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
完璧な補正状態ではなく、絞り開放付近で色収差が残存しています。過度な影響ではないものの、コントラストが高い状況では色ずれが目に付く可能性あり。F4~F5.6まで絞ると高輝度でもほぼ解消。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
デジタル補正を外した状態でも、ごくわずかな樽型歪曲に抑えられています。追加補正でゼロに近いところまで修正可能ですが、大部分の撮影は未補正でも問題ないように見えます。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
絞り開放付近で顕著な影響が残っています。F2.8まで絞るとほぼ改善し、F4.0でさらに小さくなる。
球面収差
完璧ではないものの、シンプルな光学系としては良好な補正状態。撮影距離でわずかな変動が見られます。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
実写で確認
少なくとも接写時は後ボケが僅かに滲みを伴う柔らかい描写。前ボケはやや硬調で状況によっては色収差や2線ボケ目に付くかもしれません
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
口径食は目立つものの、非球面レンズの影響はまったく目立ちません。玉ボケの内側は滑らかで綺麗な描写。ボケに縁取りはなく、色収差による色づきはありません。
口径食はF2.8まで絞ればほぼ解消します。F4まで絞ると均質性がさらに高くなるものの、絞り羽根の影響で少し角ばった形状となります。
撮影距離が長くなると球面収差が変動。後ボケの縁取りが強くなり、色収差が少し目立つようになります。このような場合はボケ量を犠牲にしてでも、少し絞って撮影すると影響が緩和します。(個人的にはF2.4-2.8あたりが妥協点)
Z 40mm F2 と比べて
Z 40mm F2も良好な描写であり、口径食は良く抑えられています。縁取りや色収差の描写は50mm F1.8Gのほうが良好となっているので、このあたりは好みが分かれそう。
Z 50mm F1.8 Sと比べて
解像や収差補正に関して高性能な50mm F1.8 Sですが、ボケは必ずしも綺麗とは言えません。非球面レンズを多用しているので(比較的綺麗ですが)影響は皆無と言えず、撮影距離によって口径食の影響が大きく変動します。ボケだけで言えば、個人的には40mm F2や50mm F1.8Gのほうが好みです。
ボケ実写
至近距離
接近時は全体的に滑らかで綺麗な描写。ピント後方は滲みを伴う柔らかいボケ質で、背景への大きなボケへ自然なグラデーションを醸し出しています。玉ボケには口径食が目立つものの、欠点とは感じません。F2.8まで絞ると口径食はほぼ解消しますが、滲みを伴う柔らかいボケも無くなってしまう点に注意。
近距離
接写時と比べると若干硬めですが、それでも綺麗な描写。非球面レンズを1枚使用していますが、玉ねぎボケの兆候はまったくありません。ボケが硬くなることで軸上色収差の影響が僅かに発生(無視できる程度ですが)。
中距離
さらに撮影距離が長くなると球面収差が変動。縁取りが目立ち始めます。周辺部まで許容範囲内の描写ですが、さらに撮影距離が長くなると悪目立ちする機会が多くなりそう。少し気になる場合はF2.5からF2.8まで絞るとことで改善する可能性あり。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。
フレームに全身を入れても背景から分離できる程度のボケを得ることが出来ます。とは言え、この際の後ボケは縁取りが硬く、色収差の影響も目立ちます。状況によっては2線ボケも目に付くので、絞りで調整したいところ。膝上くらいまでの撮影ではボケが荒れる可能性があるものの、上半身やバストアップまで近寄るとF1.8でも良好な結果を得る可能性が高い。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
最短撮影距離
最短撮影距離でもF1.8ではやや目立つ周辺減光が発生します。これが良いという人もいるかもしれませんが、フラットな光量が重要な場合は補正必須。幸いにも絞ると急速に改善します。
無限遠
無限遠側ではかなり目立つ周辺減光が発生します。F2.8まで絞ると大幅に改善しますが、絞り開放付近で撮影する場合は補正が必要と感じる場合が多いかもしれません。
逆光耐性・光条
中央
コーティングはSIC(Super Integrated Coating)を使用しています。ナノクリスタルコートでもARNEOコートでもありませんが、SICもNIKKOR Zレンズで採用する場合もある現役のコーティングです。実写で確認してみると、フレアやゴーストが皆無とはいかないまでも良好な逆光耐性に見えます。光源の周辺以外は良好なコントラストを維持。絞るとカラーフィルター面の反射やゴーストが少し目立ちます。
隅
中央と同じく影響は軽微で無視できる範囲内。NIKKOR Z時代のレンズと比べると見劣りするかもしれませんが、このレンズも十分に良好と言えるでしょう。
光条
F16の最小絞りまで絞ると先細りするシャープな光条が発生します。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 手ごろな価格
- レンズフード同梱
- フォーカシングで鏡筒が伸びない
- 小型軽量
- 適度に高速なAF
- 絞ると均質性の高い解像性能
- 倍率色収差の補正が良好
- 穏やかな樽型歪曲
- 滑らかな後ボケ
- まずまず良好な逆光耐性
- 絞ると綺麗な光条
手ごろな価格の古い一眼レフ用レンズですが、全体的にバランスよくまとまっています。絞り開放から不快と感じる描写(色収差など)が抑えられ、広い範囲で良好な解像性能やボケを得ることが可能。この価格帯の「50mm F1.8」に期待する性能は十分に満たしていると言えるでしょう。
遠景もまずまず良好で、絞ればフレーム隅までシャープな結果。Z 8のような高解像センサーと組み合わせても、過不足のない結果を得ることができます。AFも良好で、フィルターを装着することで実質的にインナーフォーカスとして利用できるのがGood。
悪かったところ
ココに注意
- MFリングにバックラッシュがある
- Zカメラ用のアダプター外観
- フォーカスブリージングが目立つ
- 接写時のF1.8がややソフト
- コマ収差が目立つ
- 軽度の軸上色収差
- ヴィネッティングが少し強い
- 中距離で隅のボケが荒れやすい
- 周辺減光が目立つ
ダブルガウスの発展型らしく、コマ収差が少し目立ちます。また、無限遠側での周辺減光やボケの口径食など、いくつか気を付ける点があります。とは言え、この価格帯のレンズとしては許容範囲内に収まっており、破壊的な描写の乱れはありません、
敢えて言えば、フォーカスリングの操作性や、Zカメラ装着時の見栄えが悪い点がマイナス。一眼レフでAFレンズとして利用する場合は特に気にならないと思います。
総合評価
満足度は90点。
手ごろな価格で十分満足のいくレンズ。このレンズに満足できない場合、大きく重く、高価なレンズを探すしかありません。ミラーレス用の小型軽量・手ごろな価格の「Z 40mm F2」もありますが、解像性能やボケ質という点で大きな改善は期待しないほうが良いでしょう。もしもAF-S 50mm F1.8Gが手元にあるのなら、アダプター経由で使い続けるのも一つの手。
NIKKOR Z 40mm F2と比べて
Zマウント用の小型軽量な標準単焦点レンズです。バックフォーカスが短く、AF-S 50mm F1.8Gよりもコンパクトサイズを実現。光学性能は本レンズと似たり寄ったりですが、接写時の球面収差が大きくなる点には注意が必要。携帯性を重視するならZ 40mm F2で良いし、レンズ資産として50mm F1.8Gがあるあら、それを使い続ければ良いと思います。
EF50mm F1.8 STMと比べて
ニコンよりも手ごろな価格のキヤノンEFマウント用の撒き餌レンズ。よく似たポジションのレンズですが、こちらはレンズフードが別売りとなています。ステッピングモーター駆動で、フォーカスリングはバイワイヤ式と言う点でニコンと大きく異なります。ミラーレスと相性が良いのはキヤノンと言えるかもしれません。肝心の光学性能はニコンのほうが若干良好。絞ると同程度ですが、F1.8使用時の周辺部やボケ質はキヤノンよりも良く見えます。
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作例
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