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FE 100mm F2.8 Macro GM OSS レンズレビュー完全版

このページではソニー「FE 100mm F2.8 Macro GM OSS」のレビューを掲載しています。

FE 100mm F2.8 Macro GM OSSのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 高機能だがやや高め
サイズ 一般的なサイズ
重量 一般的なサイズ
操作性 高機能だが誤操作に注意
AF性能 マクロとしては快適
解像性能 万能
ボケ 口径食以外問題無し
色収差 完璧
歪曲収差 穏やかな糸巻き型
コマ収差・非点収差 問題無し
周辺減光 無限遠でやや目立つ
逆光耐性 テレコン装着時に目立つ
満足度 全部盛りの本格マクロレンズ

評価:

ポイント

全部盛りの本格マクロレンズ

G Masterシリーズのマクロらしい優れた光学性能と操作性、ビルドクオリティのレンズ。「全部盛り」の高機能で贅沢な仕様は競合他社を見渡しても見つからない唯一無二の存在。

販売価格は高めですが、本格的なマクロ撮影でこれ以上の選択肢は他にありません。機能過多で少し高すぎると感じる場合は、下の競合製品を検討してみると良いでしょう。

A lens boasting the G Master series' signature macro-grade optical performance, operability, and build quality. Its all-inclusive, high-performance, luxurious specifications make it a truly unique offering unmatched by any competitor.
While the price is on the higher side, there's simply no better choice for serious macro photography. If you find it slightly overpriced due to its abundance of features, you might want to consider the competing products listed below.

まえがき

2025年11月発売のG Masterシリーズ初となるマクロレンズ。
FE 90mm F2.8 Macroの操作系を継承しつつ、絞りリングなどを追加。フォーカスはフローティング方式のXDリニアモーター駆動となり、(キヤノンRFと同じく)最大撮影倍率「×1.4」に対応。さらにミラーレス用のマクロレンズとしては珍しいテレコンバージョンレンズ対応を実現。

販売価格はやや高価ですが、「全部入り」の本格マクロレンズとしては適正価格に見えます。
参考:ニコンやキヤノン、パナソニックより高く、シグマ、タムロンよりもかなり高い)

  • 発売日:2025年11月21日
  • 予約開始日:2025年10月7日(火)10時
  • 希望小売価格:オープン価格
  • ソニーストア:199,500 
  • カメラのキタムラ:179,550円
  • データベース
  • 管理人のFlickr

主な仕様

レンズマウント E
対応センサー フルサイズ
焦点距離 100mm
レンズ構成 13群17枚
開放絞り F2.8
最小絞り F22
絞り羽根 11枚
最短撮影距離 0.26m
最大撮影倍率 ×1.4
フィルター径 67mm
手振れ補正 搭載
テレコン 対応
コーティング Nano AR II
フッ素
サイズ φ81×148mm
重量 646g
防塵防滴 対応
AF XDリニア×4
絞りリング 搭載
IRIS LOCK対応
IRIS CLICK対応
その他のコントロール AF/MF
AFLボタン
フォーカスリミッター
フルタイムDMF
OSSスイッチ

価格のチェック

初動の販売価格は約18万円。これはキヤノンよりも高く、100mmマクロAFレンズとしては最高値。ニコンやパナソニックよりもかなり高く、シグマと比べると遥かに高価。

しかし「全部入り」のマクロレンズとしては他に選択肢がありません。拡張性が必要なければシグマやタムロンで問題ないと思いますが、長く使うのであればFE 100mm F2.8 GMを選ぶのが良いかと思います。

FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
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1.4X テレコンバーター SEL14TC
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2X テレコンバーター SEL20TC
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

いつも通りのデザイン。ブラックを基調として、インターナショナルオレンジの目立つカラーリングを1面のみ採用。箱にはレンズ名や対応フォーマット、レンズの仕様などが記載。カメラの箱と同じくサステナブルデザインを採用、中の梱包にも紙素材を多用しています。

レンズ本体は緩衝材のかわりに付属のキャリングケースに収納。レンズフードやケース用のストラップもこの中に入っています。

レンズ本体のほか、フード、キャリングケース、ストラップ、説明書、保証書が付属。この価格帯のレンズにしっかりとしたケースが付属するのはソニーとシグマくらい(シグマは新デザインでケース省略してしまった模様)。G Masterらしい高級感のある付属品だと思います。

外観

外装は全体的にプラスチック製で、質感が異なるのはゴム製フォーカスリングのみ。G Masterらしい実用性を重視したデザインで、金属外装を採用したZAシリーズと比べると質感は劣ります。とは言え、堅牢さに不安はなく、しっかりとした作り。

G Masterのバッジとレンズロゴは凹凸のあるしっかりとした加工。他の表示は全て加工なしのプリントです。シリアルナンバーもシールではなくプリント。製造国はタイ。

ハンズオン

1.4倍の高い撮影倍率、テレコンバージョンレンズ対応、防塵防滴、豊富なコントロールなどを考慮すると、小型軽量にまとまっています。ソニー90Gと比べて重量差が小さく、タムロン90と同程度。全長は1cmほど長いものの、テレコン対応を考慮すると許容範囲内でしょうか。

サイズ 重量
ソニーGM φ81×148mm 646g
ソニーG φ79×130.5mm 602g
シグマ φ74×135.6mm 710g
タムロン φ79.2×126.5mm 630g

前玉・後玉

レンズ前面はフッ素コーティングに対応。水滴や油汚れに強く、メンテナンスが容易。物理的なダメージが想定される場合は保護フィルターを装着すべきですが、水滴程度であれば装着する必要性は低そう。フィルター径は50mm F1.4としてはコンパクトな67mmを採用。このフィルター径に対応するレンズは数多く、C-PL・NDなどを揃えると使いやすくなりそう。

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金属製レンズマウントは4本のビスで固定。周囲は防塵防滴用のシーリングあり。カメラへの装着はきつ過ぎず、緩すぎず。最後尾のレンズはマウント付近で固定されているように見えます

最後尾のレンズはマウントから奥に配置され、テレコンバージョンレンズに対応する空間を確保しています。周辺は不要な反射を避けるため、光沢を抑える黒塗りが施されています。

フォーカスリング

ゴム製の幅広いフォーカスリングを搭載。表面は通常のテクスチャではなく、グリップを良くするためか横方向にも切込みがあります。感触はFE 90mm F2.8 Gのローレットに似ているかもしれません。(90mmを使ったことがないのでハッキリと言及はできませんが…)

FE 90mm F2.8 Gと同じく、フォーカスリングを前後にスライドすることでフォーカスモードを切り替えることが出来ます。

前方にスライドすると、AFモードか一般的なMFモードを利用可能。
手前にスライドすると、距離指標を使ったMFモードに切り替わります。

通常のMFモードは回転量に応じて移動量が決まるリニアレスポンス。全域を360度の回転量で操作することが出来ます。距離指標を使ったMFモードでは、180°弱の回転量で操作可能。

いずれも正確なMFに十分な回転量と抵抗感を備え、快適なピント合わせが可能です。

絞りリング

マウント付近にはプラスチック製の絞りリングを搭載。フォーカスリングと異なり抵抗が強く誤操作の可能性は低い。回転には少し力が必要ですが、しっかりとグリップすることができるので回しづらいと感じることはありません。

左下にはAポジションのロック、右側面にはクリックを解除するスイッチがあります。AポジションからF22までの操作が重めで、Aロックは必要性をあまり感じません。

スイッチ類

側面にはAF/MFスイッチと2か所のAFLボタンを搭載。操作性は従来通りで、特に問題はありません。

後方にはフルタイムDFM・フォーカスリミッター・OSSスイッチを搭載。スイッチに感触の違いはないので、配置を覚えて操作する必要があります。

上2つのスイッチは中間ポジションがありますが、適切に操作することができます。
(操作性が悪いと、中間に設定し辛い)

右側面には絞りリングのクリック・デクリックを設定できるスイッチを搭載。

レンズフード

プラスチック製の円筒型レンズフードが付属。先端には滑り止め用のゴムコーティングが施され、内面には反射防止用のマットブラックで塗装されています。レンズ本体に装着すると自動的に固定され、外す場合は側面のリリースボタンを操作する必要あり。

逆さに装着しても、フォーカスリングを操作することが可能。

装着例

α7R IVに装着。100mm F2.8 マクロレンズとしては適度なサイズ・重量。過度なフロントヘビーとならずバランスは良好です。片手での操作もなんとか可能。

テレコン

×1.4・×2.0テレコンバージョンレンズに対応。白色のテレコンを間に挟むと奇妙な外観ですが、撮影に支障はありません。×2.0装着時は焦点距離が200mmとなり、開放F値がF5.6まで上昇します。

AF・MF

フォーカススピード

4基のXDリニアモーターを使用したAFに対応。
AF-Sではマクロ側にAFが迷うことがあるものの、AF-Cではとても快適なAF速度で動作します。カメラ側の追従性能に問題無ければ、近距離でも動体を追従しながら撮影できそうです。AF-Cで迷う場合はフォーカスリミッターを使用することで改善する可能性あり。

×2.0テレコンを装着した状態でも、明るい環境であればAFは快適に動作します。
特にAF-Cはほぼ一瞬で被写体に合焦。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・0.3m・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

マクロレンズらしく、ピント距離によって画角が大きく変化します。

精度

α7R Vと組み合わせた限りで大きな問題は無し。AF-S・AF-Cともに問題無く動作します。

MF

前述のように、2系統のMFモードを状況に応じて使い分けることができます。距離指標のMFモードをマクロ側に設定しておくことで、スライド操作で瞬間的にピント位置をマクロ域に移動させることも可能。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:ILCE-7RM5
  • 交換レンズ:FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央は絞り開放から解像チャートテストで測定できる上限値。周辺や隅もF4まで絞ると上限値に到達する優れた解像性能を発揮します。他社の100mmマクロも優れた製品が多いので「ソニーが優秀」と断言はできませんが、他社と同様に解像性能に優れたレンズに違いはありません。

F8付近まで上限値いっぱいの結果が得られ、F11以降は回折の影響で数値が低下します。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 4661 4520 4210
F4.0 4664 4642 4620
F5.6 4597 4642 4585
F8.0 4615 4703 4642
F11 4548 4356 4520
F16 3764 3824 3551
F22 2976 2976 2717

SEL20TC装着時

2倍テレコン装着時は絞り開放F5.6で性能低下。F8まで絞ると改善しますが、チャートテストの上限値には至りません。それでも中央から隅まで一貫性の高い画質を維持し、特に中央は良好な結果を得ることができました。ピークの性能はF8-F11の間。

遠景のテストでは細部のコントラストの低下が目につくものの、状況によっては画質低下があまり気にならないかもしれません。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.6 3890 3366 3215
F8.0 4438 4140 3768
F11 4389 3881 4056
F16 3713 3757 3757
F22 2937 2949 2937
F32 2278 2244 2292

遠景解像力

テスト環境

  • 2025.11.22:くもり 無風
  • カメラ:α7R V
  • 三脚:SIRUI AM324
  • 雲台:アルカスイスZ1+
  • 露出:絞り優先AE ISO 100
  • RAW:Adobe Camera RAW
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

中央

F2.8の絞り開放から非常にシャープでコントラストは良好。絞りを閉じることによる画質の改善はほとんどありません。コントラストが少し強くなったかどうか。

周辺

F5.6まで絞ると、細部の表現が少し良くなっているように見えます。ただし、等倍でじっくり見比べてなんとか違いが分かる程度の差。絞り開放から非常に良好な結果に違いありません。

四隅

(周辺減光の影響を除くと)絞り開放から良好な結果。絞りによる変化はほとんどありません。

2.0テレコン中央

素の状態と比べると、コントラストが少し低下しています。低コントラストな被写体の場合、精彩に欠く可能性あり。F8まで絞ると少し改善します。F11まで絞ってしまうと回折の影響が強くなるため、ベストな結果を得るにはF8がおススメ。

2.0テレコン周辺

絞り開放から画質の極端な低下はありません。若干ソフトな画質ですが、1段絞ると改善します。

2.0テレコン四隅

色収差の影響が目立ちますが、細部に画質の大きな低下はありません。F8まで絞れば均質性の高い安定した結果が得られます。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り開放から全体的にピントを合わせることができます。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り全域で倍率色収差は良く補正されています。2倍テレコンバージョンレンズを装着しても目立ちませんが、非装着の状態よりも収差が大きくなります。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

F2.8の絞り開放から色収差は全くありません。APOと言っても過言ではない補正状態です。

テレコン装着時

2倍テレコンを装着しても全く問題ありません。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

補正無しの場合に僅かな糸巻き型歪曲。このままでも目立ちませんが、手動補正かレンズプロファイルによる修正でほぼ完璧に補正することができます。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

F2.8において、フレーム隅で軽微な影響。ほぼ無視できる状態です。

球面収差

ピント前後の玉ボケに大きな違いはありません。球面収差は良好に補正されています。

テレコン装着

非装着と比べて大きな違いはありません。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

滲むような柔らかいボケではないものの、ボケの縁取りが目立たず、色収差による色付きも皆無。悪目立ちする要素がなく、綺麗な描写のボケ。

前ボケ

球面収差が良好に補正されているので、前ボケも後ボケとほぼ同じ。ニュートラルなボケなので、前後どちらにピントを合わせても使いやすい結果が得られます。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

F2.8の絞り開放で口径食がやや強めですが、F4.0まで絞るとほぼ解消します。

玉ボケは縁取りが無く、色収差による色づきも皆無。玉ねぎボケの兆候もなく、非常に綺麗な描写です。

ボケ実写

至近距離

至近距離ではボケが多きく、質感を議論するほど細部が目立ちません。

近距離

ボケが小さくなると口径食の影響がやや目立ちます。しかし、玉ボケそのものは滑らかで綺麗。悪目立ちする要素はなく、快適に利用できます。

中距離

さらに撮影距離が伸びたとしても、ボケ質は同じ傾向が続きます。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

撮影距離がとても長い場合でも、色収差の影響が全く見当たりません。ボケの縁取りも硬くなく、ポートレートレンズとしても扱いやすい描写。やはり口径食が目立ち、四隅のボケが少し変形してしまう点には注意が必要です。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

絞り開放から周辺減光は皆無です。

無限遠

遠景の絞り開放で目立つ周辺減光が発生します。F4まで絞っても薄っすらと残り、F5.6でほぼ解消。

風景撮影などでは絞るので問題ありませんが、ポートレートなどでは減光がやや目立つと感じるかもしれません。

逆光耐性・光条

中央

光源付近にフレアとゴーストが発生するものの、広い範囲に影響を及ぼすものではありません。ただし、絞ると隠れていたフレアが収束し、やや目立つゴーストが複数発生します。

光源をフレーム隅に移動した場合も同様、絞るとやや目立つゴーストが発生します。

テレコン 中央

通常とは打って変わり、テレコン装着時は逆光耐性が大幅に低下します。絞り開放でもゴーストが非常に多く、絞ると収束したゴーストが多くて目立ちます。

テレコン 隅

光源を隅に移動してもフレアが目立ちます。ゴーストは適度に抑えられているものの、絞ると全体的に影響あり。

光条

F8からシャープな結果が得られますが、より明瞭となるのはF11以降。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • しっかりとしたレンズケース付属
  • 防塵防滴/フッ素コーティング仕様
  • クラッチ構造のMF切り替え機能
  • クリック切替機能付きの絞りリング
  • 制御スイッチが豊富
  • テレコンバージョンレンズ対応
  • 快適なAF性能
  • 近距離から遠距離まで全域で高解像
  • 像面湾曲の問題無し
  • 色収差の問題無し
  • 穏やかな糸巻き型歪曲
  • 無視できる程度のコマ収差
  • 球面収差の問題無し
  • 滑らかで綺麗なボケ
  • 絞った際の光条が綺麗

マクロレンズらしく、優れた解像性能と諸収差の補正状態。これと言った欠点はほとんど見当たらず、非常に良好な光学性能のレンズです。マクロや近距離のみならず、中景・遠景でも快適に利用することが可能。

光学手振れ補正を搭載しているので、ボディ側に非搭載のAPS-Cカメラでも使いやすく、機能的なフォーカスリングやスイッチ群でコントロールを補うことができます。

テレコンバージョンレンズに対応するミラーレス用のマクロレンズは数が少なく、特に「×1.4」に対応する等倍以上のフルサイズ用マクロレンズとしては唯一無二の存在。最大で2.8倍の撮影倍率を利用できる面白いレンズです。

悪かったところ

ココに注意

  • クラッチ式フォーカスリングの誤操作に注意
  • スイッチが多いので誤操作に注意
  • 玉ボケに口径食が目立つ
  • 遠景の絞り開放で周辺減光が目立つ
  • テレコン装着時の逆光時にゴーストが目立つ

敢えて言えば、機能的なフォーカスリングやスイッチ群は誤操作の可能性があります。特にスライド式のフォーカスリングは元に戻さないとMFモード固定となるので注意。

口径食や周辺減光は他のマクロレンズでも目に付く問題であり、このレンズ特有のものではありません。テレコン対応は本レンズの長所ですが、逆光時のフレアやゴーストが目立ちやすくなるので注意が必要です。

結論

G Masterシリーズのマクロらしい優れた光学性能と操作性、ビルドクオリティのレンズ。「全部盛り」の高機能で贅沢な仕様は競合他社を見渡しても見つからない唯一無二の存在。

販売価格は高めですが、本格的なマクロ撮影でこれ以上の選択肢は他にありません。機能過多で少し高すぎると感じる場合は、下の競合製品を検討してみると良いでしょう。

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競合製品について

FE 90mm F2.8 Macro G OSS

使用経験がないのでノーコメント。
GMと同じくフォーカスクラッチ構造を搭載し、手振れ補正にも対応しています。テレコンバージョンや1.4倍の撮影倍率には非対応。

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90mm F/2.8 Di III MACRO VXD

手振れ補正やフォーカスクラッチは非搭載ですが、VXD駆動による高速AFに対応。解像性能や諸収差の補正状態は全体的良好でこれと言った欠点はありません。実勢価格は9万円を切っており、マクロレンズとしてはコストパフォーマンスは非常に高い。

特にこだわりがなく、気軽にマクロ撮影を体験してみたいのであれば検討すべきレンズの一つ。

90mm F/2.8 Di III MACRO VXD Sony E
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90mm F/2.8 Di III MACRO VXD Nikon Z
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105mm F2.8 DG DN MACRO

タムロンに負けず劣らず高性能で低価格のマクロレンズ。HSM駆動を採用しており、VXDやXDリニアのタムロンやソニーと比べるとAF速度が少し遅め。

105mm F2.8 DG DN MACRO LeicaL
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105mm F2.8 DG DN MACRO SonyE
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購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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