このページではパナソニック「LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3」のレビューを掲載しています。
LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3のレビュー一覧
- パナソニック LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビュー完全版
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.5 ボケ編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.4 諸収差編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.3 解像チャート編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.2 遠景解像編
- LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 適度な価格 | |
サイズ | 最小 | |
重量 | 最軽量 | |
操作性 | 必要最低限 | |
AF性能 | カメラ側のボトルネック感 | |
解像性能 | サイズ・価格としては高性能 | |
ボケ | 前後のボケは滑らかだが玉ボケが見苦しい | |
色収差 | 良好な補正状態 | |
歪曲収差 | 広角側で目立つ | |
コマ収差・非点収差 | ズーム全域で開放の隅に発生 | |
周辺減光 | 許容範囲内 | |
逆光耐性 | 絞った際にゴーストが発生 | |
満足度 | 小型化邁進2024の集大成 |
評価:
小型化邁進2024の集大成
驚くほどの小型化を実現した2024年の総決算的レンズ。
ポケットサイズの広角ズームが欲しければ他に選択肢はありません。
2024年のLUMIX S シリーズレンズは憑りつかれたように小型軽量化に邁進し、その総仕上げがS 18-40mm F4.5-6.3に見えます。LUMIX S9と組み合わせるために世に出てきたと言っても過言ではない。
S9以外のボディではレンズサイズの強みが薄れ、SIGMA fpと組み合わせた場合は手振れ補正に非対応である点が厄介となります。S9と組み合わせることで、小型軽量で機能的な広角ズームレンズとして活かすことが可能。惜しい点があるとすれば、これをLUMIX S9と同時に購入したかった(発売のタイミングがずれた)。
The lens that achieved a surprising level of miniaturization in 2024.
If you want a pocket-sized wide-angle zoom, there is no other choice.
The LUMIX S series lenses of 2024 have been obsessed with making them smaller and lighter, and the S 18-40mm F4.5-6.3 appears to be the culmination of this. It is not an exaggeration to say that it was created to be used with the LUMIX S9.
The advantages of the lens size are diminished when used with a body other than the S9, and the fact that it is not compatible with image stabilization when used with the SIGMA fp is a problem. By using it with the S9, it is possible to make the most of it as a compact, lightweight, and functional wide-angle zoom lens. If there is one thing that is regrettable, it is that I wanted to buy this at the same time as the LUMIX S9 (the timing of the release was off).
Index
LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3のおさらい
正式発表がやや遅れたものの、LUMIX S9と共にお披露目されたコンパクトなフルサイズ対応ズームレンズ。珍しいズーム域のレンズですが、カテゴリとしては「広角」に属しています(参考 公式ウェブサイト)。一眼レフでは一般的な「16-35mm」の焦点距離が少し望遠側へシフトしたと考えると良いかもしれません。
広角18mmから標準40mmまでをカバーしつつ、沈胴構造により全長41mmの世界最小・最軽量の収納サイズを実現。LUMIX S9と組み合わせることでフルサイズミラーレスらしからぬ携帯性のカメラとなります。
発売日 | 2024年10月25日 |
初値 | 71,280円 |
レンズマウント | ライカL |
対応センサー | フルサイズ |
焦点距離 | 18-40mm |
レンズ構成 | 7群8枚 |
開放絞り | F4.5-6.3 |
最小絞り | F22-32 |
絞り羽根 | 7枚 |
最短撮影距離 | 0.15m |
最大撮影倍率 | 0.28倍 |
フィルター径 | 62mm |
手振れ補正 | - |
テレコン | - |
コーティング | 不明 |
サイズ | φ68×41mm |
重量 | 155g |
防塵防滴 | 対応 |
AF | STM |
絞りリング | - |
その他のコントロール | AF/MFスイッチ |
レンズ構成は7群8枚と少なく、ミラーレス用レンズとしては後群のレンズが小さめ。
ただし、構成には非球面レンズ3枚やEDレンズ2枚、UHRレンズ1枚を使用。これでどのような結果が得られるのか、今後のテストでチェックしていきたいと思います。少なくともMTFを見る限りでは優れた中央解像で、周辺部も隅以外の広い範囲は良好な状態を維持しているようです。フレーム周辺部は広角側の高周波でメリジオナル成分とサジタル成分が分離しています。
縮長は「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」の半分以下。これで20-60mmよりも広い画角をカバーしているというのだから驚き。望遠端は40mmと短めですが、主に広角側を利用する人にとって便利なレンズ。沈胴構造のため使用時はレンズを展開する必要があるものの、小さなカメラバッグにも収納できるのは非常に便利。旅行などと相性が良さそう。
価格のチェック
売り出し価格は71,280円。「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」とよく似た価格設定となっており、レンズサイズを重視するか、光学性能や汎用性を重視するか悩ましいところ。
レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
広角ズームレンズとしては非常にコンパクト。
元箱のデザインはLUMIX Sシリーズらしく、黒を基調として赤色のラインが入ったシンプルなデザイン。「S PRO」ラインではないため、「S」のロゴは灰色。中身の緩衝材はプラスチック素材少なめで、主に紙素材で構成。
レンズ本体のほか、前後のキャップが付属。書類は説明書と保証書が付属します。
レンズフードは付属しておらず、対応するフードの販売もありません。必要であれば、互換性がありそうなねじ込み式フードを自分で探さなければなりません。
外観
外装はプラスチック製でフォーカスリング・ズームリングも同様。LUMIX Sシリーズらしい素材・塗装・デザイン。しっかりとした作りですが、販売価格を考慮すると少し安っぽく感じるかもしれません。個人的には、ゴム製のズームリングが良かった。
焦点距離やレンズロゴなどは基本的にプリントですが、大きく表示された焦点距離「18-40mm」の部分は刻印のうえから塗装されています。
ズームによるレンズの伸び方
沈胴構造のため、使用時は内筒を繰り出す必要があります。この際は全長が2倍に伸び、18mmで最も長く、望遠側に向かって縮んだり伸びたりします。
開放F値の変動
広角端から望遠端まで、開放F値が徐々に大きくなっています。変動に偏りはなく、焦点距離に応じてF値が0.1刻みで大きくなっていきます。参考までに主要な焦点距離における開放F値を以下に掲載。(実際には0.1刻みでF値が変化します)
- 18mm:F4.5
- 20mm:F4.6
- 24mm:F5.0
- 28mm:F5.4
- 35mm:F6.0
- 40mm:F6.3
ハンズオン
サイズ | φ68×41mm |
重量 | 155g |
質感は価格を考慮すると少し安っぽいですが、防塵防滴・フッ素コーティングなど耐候性に不満はありません。
前玉・後玉
レンズ前面にはフッ素コーティングが施されているので、水滴や油汚れの付着時にメンテナンスがしやすくなっています。とはいえ、傷や粉じんなどのダメージが予想できる環境であれば、プロテクトフィルターを装着するのがおすすめ。
フィルター径は62mmと珍しく、LUMIX Sシリーズでは本レンズのみ。前面にはレンズ名がプリントされていますが、反射を抑えたダークグレーのカラーリングでフィルター面への写りこみを抑制。
金属製のレンズマウントは4本のビスで本体に固定されています。マウントの周囲には防塵防滴用のシーリングがあります。後玉はズーム操作で前後に移動する模様。ちなみにレンズの製造国は中国と表示。
フォーカスリング
レンズ先端にはプラスチック製フォーカスリングを搭載。競合他社の純正レンズよりも回転操作が重めですが、滑らかに回転します。ソニーのようなゆるゆるの操作性ではなく、キヤノンやニコンよりも使いやすい印象あり。
ズームリング
フォーカスリングと同じくプラスチック製のズームリングを搭載。LUMIX Sシリーズのズームレンズとしては操作性がイマイチで、弱い力で操作する際に滑らかな操作が難しい。
装着例
LUMIX S9に装着。
S9用に開発されたレンズと言っても過言ではない携帯性。これをカメラと同時にリリースできなかったのが悔やまれる。
手振れ補正搭載のフルサイズミラーレスとしては非常にコンパクトなS9と、最小・最軽量の広角ズームレンズの組み合わせは当然のようにコンパクト。中口径の標準単焦点を装着したような感覚で広角ズームを利用することが出来ます。
AF・MF
フォーカススピード
ステッピングモーター駆動で動作。高速とは言えませんが、一般的な撮影で十分な速度。近距離で素早く動く被写体を追いかけるには不向きですが、LUMIXカメラボディ側の性能も原因の一つとなっている印象あり。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
全体的にフォーカスブリージングがゼロと言えないものの、全域でまずまず良好に抑えられています。
18mm
24mm
40mm
精度
低照度・低コントラストでカメラ側の性能が足を引っ張らない限り、レンズ側のAF精度は良好。
MF
小さなフォーカスリングですが、適度な滑らかさとストロークで良好な操作性を実現しています。リングのレスポンスは良好で、ストロークはカメラ側で調整可能。
撮影倍率
最短撮影距離 | 0.15m |
最大撮影倍率 | 0.28倍 |
広角側で最も寄りやすく、撮影倍率が高い。望遠側へズームするほど撮影倍率が小さくなり、最短撮影距離が長くなります。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:LUMIX S9
- 交換レンズ:LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
- パール光学工業株式会社
「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」 - オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- 通常 / ハイレゾモード(クロップの実写作例で使用)
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・レンズ補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
18mm
この種のコンパクトなズームレンズは小さいわりに高性能であることが多く、本レンズも例にもれず良好な結果。もちろん単焦点レンズのような性能を期待できるわけでは無いものの、少なくとも中央では非常に良好な結果が得られています。広角域は定型チャートと相性が悪いものの、それでもフレーム隅まで測定可能な結果。
中央
絞り開放からシャープな結果。良好なコントラストで、絞りによる変化が目立ちません。LUMIX S9のクロップズームやハイレゾモードからの中央クロップにも余裕で耐えられる性能。
周辺
周辺部に向かって画質が低下。18mmの接写時と考えると悪くない結果ですが、絞っても大幅な向上は期待できません。
四隅
周辺部と同じ傾向でさらに画質低下。絞り開放付近のソフトさに起因している収差は大きく絞ることで改善可能。中央と同等にはなりませんが、周辺部くらいの画質まで改善します。
数値確認
中央 | 周辺 | 隅 | |
F4.5 | 3231 | 2727 | 2165 |
F5.6 | 3268 | 3161 | 2191 |
F8.0 | 4062 | 2908 | 2332 |
F11 | 3880 | 2789 | 2598 |
F16 | 3374 | 2882 | 2600 |
F22 | 2953 | 2696 | 2187 |
ハイレゾ
ハイレゾモードでは隅の画質がソフトで測定不可。ただし、中央は絞り開放から非常にシャープで、周辺もF5.6まで絞るとまずまずの結果が得られました。4500万画素や6100万画素でも十分に楽しめるレンズだとおもいます。
中央 | 周辺 | 隅 | |
F4.5 | 4653 | 3353 | |
F5.6 | 4765 | 3919 | |
F8.0 | 4805 | 3888 | |
F11 | 4720 | 3768 | 3742 |
20mm
18mmとほぼ同じ傾向。良好な中央画質と、18mmよりも少し改善傾向の周辺・隅の画質が得られます。引き続き隅のパフォーマンスが伸び悩むものの、周辺は絞ることでシャープな結果。
中央
18mmと同じく非常にシャープ。F4.7の開放F値は暗いと言わざるを得ませんが、開放でも十分な性能。
周辺
18mmと同じく開放がややソフトですがF8-F11、まで絞ると非常に良好な結果。
四隅
倍率色収差の影響で測定値は伸び悩むものの、実写では良好な結果が得られているように見えます。コントラストが低下していますが、レンズ補正次第では気にならない程度の影響。
数値確認
中央 | 周辺 | 隅 | |
F4.7 | 3179 | 2273 | 2375 |
F5.6 | 3537 | 2779 | 2602 |
F8.0 | 3493 | 3166 | 2360 |
F11 | 3464 | 2994 | 2346 |
F16 | 3137 | 2601 | 2287 |
F22 | 2847 | 2482 | 2235 |
ハイレゾ
少なくとも中央から周辺までは絞ることでハイレゾモードを活かす結果が得られます。
中央 | 周辺 | 隅 | |
F4.7 | 4347 | 2901 | 2998 |
F5.6 | 4563 | 3836 | 3172 |
F8.0 | 4711 | 4261 | 3920 |
F11 | 4716 | 4069 | 2751 |
24mm
引き続き中央は優れた結果。周辺や隅は伸び悩みますが、実写作例を見る限りではコントラストに改善あり。
中央
ズーム中間域でも性能の低下はありません。絞り開放からシャープ。
周辺
超広角域と比べると絞り開放から良好な結果。絞ることでさらに改善します。作例における色づきはレンズ由来の色収差ではなく、センサー由来の偽色と思われます。
四隅
周辺と同じく良好な画質。倍率色収差の影響も少なく、絞り開放から快適に利用できます。
数値確認
中央 | 周辺 | 隅 | |
F5.0 | 3594 | 2701 | 2772 |
F5.6 | 3516 | 2815 | 2654 |
F8.0 | 3750 | 3038 | 2621 |
F11 | 3542 | 2853 | 2859 |
F16 | 3296 | 3038 | 2654 |
F22 | 2681 | 2455 | 2370 |
ハイレゾ
ハイレゾモードにおける周辺や隅の数値が超広角域よりも良好であることが分かります。中央は引き続き非常に良好。
中央 | 周辺 | 隅 | |
F5.0 | 4638 | 3489 | 3785 |
F5.6 | 4623 | 3730 | 3801 |
F8.0 | 4687 | 4665 | 3756 |
F11 | 4760 | 4042 | 4027 |
28mm
中央の絞り開放に数値の低下が見られるものの、絞ることでフレーム全体の画質向上が期待できます。
中央
数値上はいくらかの低下が見られるものの、実写作例ではほとんど影響ないように見えます。
周辺
中央ほどではないものの、隅も実用的な画質。F8まで絞ると中央に近い高水準な結果。
四隅
絞っても改善しなかった隅も、この焦点距離ではいくらか改善が見られます、
数値確認
中央 | 周辺 | 隅 | |
F5.4 | 3049 | 2697 | 2479 |
F5.6 | 3179 | 2947 | 2533 |
F8.0 | 3412 | 3194 | 2827 |
F11 | 3620 | 2810 | 2886 |
F16 | 3049 | 3030 | 2562 |
F22 | 2763 | 2564 | 2216 |
ハイレゾ
中央 | 周辺 | 隅 | |
F5.4 | 4255 | 3687 | 3098 |
F5.6 | 4467 | 3970 | 3487 |
F8.0 | 4742 | 3950 | 3724 |
F11 | 4622 | 4095 | 3783 |
35mm
中央の画質は低下傾向ですが、全体の均質性が向上。さらに、絞ると全体的な画質向上を期待できます。
中央
広角側と比べると絞り開放のコントラストが少し低下。F8まで絞ると改善しますが、僅かに色収差の影響が残存しています。
周辺
中央と同程度の画質で均質性は良好。絞りによる改善も期待できます。
四隅
中央や周辺と比べると少しソフト。それでも細部までよく解像しています。
数値確認
中央 | 周辺 | 隅 | |
F6.0 | 3067 | 2827 | 2578 |
F8.0 | 3268 | 2960 | 2847 |
F11 | 3479 | 3227 | 3360 |
F16 | 2847 | 3200 | 3005 |
F22 | 2637 | 2452 | 2584 |
ハイレゾ
ハイレゾモードでは絞ることで性能が向上。F11まで絞ると全体的にピークの結果が得られます。
中央 | 周辺 | 隅 | |
F6.0 | 4024 | 3494 | 3197 |
F8.0 | 4400 | 4440 | 3755 |
F11 | 4757 | 4548 | 3880 |
40mm
絞り開放は若干ソフトですが、フレーム全体の均質性がとても良く、絞れば改善します。これと言って大きな欠点はありません。
中央
開放がややソフトですが、絞りや現像処理でどうにかなる水準。特に心配する要素はありません。
周辺
中央とほぼ同じ画質。
四隅
倍率色収差の影響が僅かにある以外は中央とよく似ています。
数値確認
中央 | 周辺 | 隅 | |
F6.3 | 2724 | 2427 | 2271 |
F8.0 | 3265 | 3227 | 3110 |
F11 | 3319 | 3227 | 2926 |
F16 | 3184 | 2827 | 2711 |
F22 | 2859 | 2693 | 2242 |
ハイレゾ
絞り開放の数値が伸び悩むものの、絞った際は周辺や隅まで大きく伸びる。
中央 | 周辺 | 隅 | |
F6.3 | 3523 | 3213 | 2695 |
F8.0 | 4661 | 4130 | 3890 |
F11 | 4742 | 4765 | 4089 |
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2024.10.25 風やや強め(ストーンバッグで対応)
- カメラ:LUMIX S9
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
- 露出:ISO 100 絞り優先AE 通常/ハイレゾモード
- RAW:Adobe Lightroom Classic CC現像
・シャープネスオフ
・ノイズリダクション オフ
・レンズ補正オフ - 以下のクロップした作例はハイレゾモードの結果を掲載しています。
(部分的に合成処理にしっぱいしている場合があります)
18mm
中央
F4から非常にシャープな結果。F5.6まで絞るとコントラストが少し改善しますが、F4.5の絞り開放から良像。
周辺
中央と比べると倍率色収差の影響が僅かに発生しています。ただし、目立つ影響ではなく、シャープでコントラストの高い結果。
四隅
極端な画質の低下はなく、細部までシャープな結果が得られています。
20mm
中央
18mmと同じく、絞り開放から非常にシャープ。絞る必要性はほとんどありません。
周辺
周辺部も良好な結果で問題ありません。
絞るとコントラストが僅かに改善する程度。
四隅
18mmと同じく良好な結果。小型軽量なレンズサイズを考慮すると健闘しています。
24mm
中央
コントラストが少し低下したようにも見えますが、解像性能は引き続き良好。F8まで絞ると細部までシャープな結果が得られます。
周辺
大きな問題はありませんが、非点収差のような若干の流れがあります。F5.6-8まで絞ることで改善。
四隅
絞り開放付近でコントラストの低下あり。解像性能に問題はなく、F8まで絞れば非常に良好な結果が得られます。
28mm
中央
絞り開放の細部がやや緩くなっています。コントラストが低く、細部の解像度も低め。おそらく、残存する球面収差が影響。F8まで絞ると大幅に改善します。
周辺
大きな問題はありません。細部のコントラストを最大にしたいときはF8まで絞るのがおススメ。
四隅
コマ収差と倍率色収差の影響があるのか、コントラストが低く、色ずれが多少目立ちます。F8まで絞ると少し改善します。
35mm
中央
開放からシャープで問題ありません。
周辺
中央と同じく、絞り開放からシャープな描写。
四隅
中央や周辺と比べるとソフトですが、大きな乱れはありません。少なくとも2400万画素では何の問題もないはず。
40mm
中央
9600万画素を活かせるとは言えないものの、小型軽量なズームレンズとしては十分な解像性能。
周辺
中央と同じく良好な画質。
四隅
おそらく画質が最も低下するポイントの一つですが、これと言って問題はないように見えます。
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
18mm
絞り開放から全域で被写界深度内に収まっています。像面湾曲の目立つ影響はありません。
24mm
広角端と同じく、ズーム中間域も問題無し。
40mm
望遠端でも問題ありません。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
18mm
絞り全域で倍率色収差は良く抑えられています。完全ではありませんが、残存する収差はカメラや現像ソフトで補正可能。
24mm
18mmと同程度。
40mm
広角や中間域よりも良好な補正状態です。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
18mm
絞り開放から問題無し。
24mm
細部を確認しても色ずれはありません。
40mm
ピント面前後に極わずかな色収差が発生しているものの、実写でこれが問題となるシーンは非常に限られています。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
18mm
小型軽量な広角ズームレンズとして過度ではないものの、陣笠状の複雑な樽型歪曲。これを手動で補正するのは難しいため、レンズプロファイルによる細かな修正が必要。歪曲が問題とならない場合、通常よりも少し画角の広い結果を得ることが出来ます。
20mm
18mmと同じく、強めの樽型歪曲。
24mm
広角側と比べると穏やかな収差ですが、それでも修正時に四隅の引き延ばしあり。
28mm
これまでと比べると非常に穏やかな収差。補正無しでも問題ありませんが、よく見ると陣笠状の歪曲あり。
40mm
若干の糸巻き型。特に大きな問題はありません。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
焦点距離全域で外向性のコマ収差が発生。これを抑えるためには2段ほど絞る必要があります。絞り開放F値が大きいことを考慮すると夜景・イルミネーション向けのレンズとは言えません。
球面収差
完璧な補正状態ではないものの、実写で目立つ影響はありません。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
開放F値が大きく、焦点距離が短いのでボケを大きくできるレンズではありません。しかし(少なくとも40mmは)細部を確認してみると意外と滑らかで綺麗。
前ボケ
後ボケが滑らかななら前ボケは硬めだろうと予想したものの、驚いたことに前ボケも滑らかで綺麗な描写。少なくとも40mmの接写時で中央は心地よいボケが得られます。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
縁取りが強く、若干の口径食と目立つ倍率色収差の影響があります。玉ねぎボケの効果は薄いものの、積極的に得たいと思う描写ではありません。このレンズでこのような玉ボケを得る機会は少ないと思うので、過度に心配する必要は無し。
ボケ実写
18mm
玉ボケのテストと同じく、フレーム周辺の色づきが発生。過度ではないものの、状況によっては少し目立つかもしれません。中央と周辺は「酷くはない」という程度ですが、ピント面の直前直後は思いのほか良好。
28mm
広角側と同傾向ですが、フレーム周辺の色収差が緩和。玉ボケの強い縁取りを除けば悪目立ちしません。
40mm
他の焦点距離と同じく、明るい玉ボケが騒がしくなりがち。それ以外は特に問題あありません。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。全体的に、全身をフレームに入れた状態で後ボケを得ることは出来ません。バストアップから顔のクローズアップまで近寄る必要があります。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
18mm
絞り開放における最短撮影距離と無限遠の結果。ピント位置に関わらず、F4.5の絞り開放で周辺減光が少し発生しています。1段絞ると改善し、2段絞ると解消。
28mm
広角端と比べると影響は軽微。絞り開放からほとんど目立ちません。
40mm
望遠端ではさらに影響が少なく、F6.3の絞り開放からほぼ完璧。
逆光耐性・光条
18mm
フレアは良く抑えられていますが、絞り値に関わらずゴーストが発生。過度の影響ではないものの、強い光源をフレームに入れる場合は注意が必要。また、絞ると癖の強い光条が目立ちます。
40mm
基本的には広角端と同じですが、さらにゴーストが目立ちやすい。
光条
光条を得るには回折の影響が強くなるF22付近まで絞る必要があり、シャープな結果を得るにはF32が必要となる場合あり。光条が得意なレンズとは言えません。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 驚くほど小型軽量
- 防塵防滴仕様
- フィルター径が小さくて経済的
- 安定した解像性能
- 色収差の補正状態が良好
- 前後のボケ質が滑らか
このレンズの強みは兎にも角にも携帯性。
フルサイズ対応の広角ズームレンズとしては驚くほど小さくて軽い。コンパクトな単焦点レンズを装着しているような感覚で18mmから40mmまでを利用可能。さらに防塵防滴仕様となっているため、突然の悪天候でも慌てずに対処できる安心感を備えています。
光学性能は抜群と言えないものの、極端な欠点は無く、思っていたよりも良好。特にコンパクトな広角ズームレンズとしては良くまとまっています。光学手振れ補正は非搭載ですが、LUMIX Sシリーズであれば全機種がボディ内手振れ補正を搭載しているので問題とならないはず。(一部の動画向けボックススタイルカメラを除く)
悪かったところ
ココに注意
- 沈胴構造のため使用前にひと手間あり
- レンズフード非対応
- 広角側の歪曲収差が目立つ
- ズーム全域でコマ収差がやや目立つ
- 玉ボケの縁取りが目立つ
- かなり絞らないと光条が発生しない
小型軽量の代償として、鏡筒が沈胴構造となっています。使用時には展開する必要があり、撮影前にひと手間かかる点は理解しておく必要があります。また、レンズフード非対応と小型軽量化にパラメータを全振りである点に注意が必要。
光学設計も歪曲収差がカメラ側での補正を前提としています。後処理で問題なく修正できるので心配する必要はないものの、RAW現像時にプロファイルを利用できないソフトでは歪曲収差の修正に手間取る可能性あり。
結論
驚くほどの小型化を実現した2024年の総決算的レンズ。
ポケットサイズの広角ズームが欲しければ他に選択肢はありません。
2024年のLUMIX S シリーズレンズは憑りつかれたように小型軽量化に邁進し、その総仕上げがS 18-40mm F4.5-6.3に見えます。LUMIX S9と組み合わせるために世に出てきたと言っても過言ではない。
S9以外のボディではレンズサイズの強みが薄れ、SIGMA fpと組み合わせた場合は手振れ補正に非対応である点が厄介となります。S9と組み合わせることで、小型軽量で機能的な広角ズームレンズとして活かすことが可能。惜しい点があるとすれば、これをLUMIX S9と同時に購入したかった(発売のタイミングがずれた)。
これまで述べてきたように、小型軽量で沈胴構造の広角ズームレンズとしては光学性能がまとも。歪曲収差は確かに目立ちますが、それでもキヤノンの一部レンズと比べると光学的に良く補正されています。販売価格は少し高めと感じるものの、唯一無二のレンズ特性を考えると適切な値付け。
万人におススメできるレンズではありませんが、LUMIX S9ユーザーならばおススメの一本。
購入するを悩んでいる人
LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
本レンズよりも標準ズーム寄りのレンジをカバーした20mm始まりのズームレンズ。販売価格は似ているものの、レンズサイズは圧倒的な差があります。開放F値が全体的に少し小さく、低照度における撮影で有利。光学性能のアドバンテージを思っていたよりも小さい。キットレンズにもなっているため、安価で状態のいい中古品が得られるのも強み。
17mm F4 DG DN
ズームレンズではないものの、コンパクトな広角レンズを探しているのであれば要検討の一本。18-40mmの沈胴時と同程度のサイズで「17mm F4」を利用可能。寄りやすいうえ、接写時の光学性能も良好。
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