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Mr.Ding Noxlux DG 50mm F1.1 E58 II レンズレビュー 完全版

このページではMr.Ding Studio「Noxlux DG 50mm F1.1 E58 II」のレビューを掲載しています。

Noxlux DG 50mm F1.1 E58 IIのレビュー一覧

おことわり

今回は2ndFocusより無償貸与の「Mr.Ding Noxlux DG 50mm F1.1 E58 II」を使用してレビューしています。提供にあたりレビュー内容の指示や報酬の受け取りはありません。従来通りのレビューを心がけますが、無意識にバイアスがかかることは否定できません。そのあたりをご理解のうえで以下を読み進めてください。

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 安くも高くもない
サイズ 大口径レンズとしては手ごろ
重量 大口径レンズとしては手ごろ
操作性 フォーカスリングは良好
解像性能 絞れば広い範囲で良好
ボケ 近距離で非常に滑らかで柔らかい
色収差 大口径レンズとしては良好
歪曲収差 問題とはならない
コマ収差・非点収差 開放付近で顕著
周辺減光 開放付近で顕著
逆光耐性 フレーム周辺部の光源に弱い
満足度 ボケ特化の大口径レンズ

評価:

ボケに特化したF1.1大口径レンズ

適度に残った収差で後ボケがとても柔らかい描写のレンズ。夜景や天体向けではないものの、F1.1の夢のようなボケを体験してみたいのなら検討する価値のある一本。安いレンズではないのでネット上のサンプルをよく確認して、描写に惚れ込んだら間違いないはず。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 近距離で素晴らしい描写
子供・動物 MFレンズでF1.1を活かすのは難しい
風景 絞れば使えないこともない
星景・夜景 明るいがコマ収差と周辺減光の影響大
旅行 写真メインであればアリ
マクロ 接写時は強い球面収差
建築物 絞っても均質性は高まらない

まえがき

2022年に「SYOPTIC 50mm F1.1」として登場し、その後に改良・リブランドされた「Noxlux DG 50mm F1.1 E58 II」が2023年末にリリース。今年に入って、国内代理店の2ndFocusが取り扱いを始めたレンズです。初期型は絞りリングの回転方向がフォクトレンダーとは逆でしたが、II型では同じ回転方向で操作することが可能。

  • 公式ウェブサイト
  • 正規代理店:2ndFocus
  • 発売日:2024.2.2
  • 初値:
  • マウント:Leica M
  • フォーマット:フルサイズ
  • 焦点距離:50mm
  • レンズ構成:6群8枚
  • 開放絞り:F1.1
  • 最小絞り:F16
  • 絞り羽根:11枚 円形絞り
  • 最短撮影距離:0.7m
  • 最大撮影倍率:不明
  • フィルター径:58mm
  • 手ぶれ補正:-
  • テレコン:-
  • コーティング:不明
  • サイズ:63×64mm
  • 重量:390g
  • 防塵防滴:-
  • AF:MF限定
  • 付属品:レンズフード・キャップ

ダブルガウスタイプの発展型となる6群8枚のレンズ構成を採用。構成中には1枚の低分散ガラスと4枚のランタノイド光学ガラスを使用しているとのこと。MTF曲線から高解像レンズとは言えないものの、フレームの広い範囲で安定した結果が得られているように見えます。

価格のチェック

国内での販売価格は7.7万円。主な競合製品は「NOKTON 50mm F1.1」「7Artisans 50mm F1.1」あたりでしょうか。NOKTONよりも安く、7Artisansよりも高い。謎のブランドの50mm F1.1に7万円は躊躇してしまうものの、このクラスとしては珍しく低分散レンズを使用。結果として、どのような描写が得られるのかは今後のレビューで確認していきたいと思います。

Mr.Ding Noxlux DG 50mm F1.1 E58 II
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レンズレビュー

外観・操作性

外観

レンズは総金属製のしっかりとした作り。表面はアルマイト処理が施されているので傷がつきにくくなっています。ピント位置や絞り値の表示はプリントではなく、エッチング加工の上で塗装されています。長期的な使用で表示が消えてしまう可能性は低い。

プラスチック製の外装を採用したレンズと比べると重めですが、高級感が得られる適度な重厚感と捉えることもできます。重いと言っても390gですので、一日中の撮影でも苦になることはありませんでした。

レンズには同じ種類の加工が施されたフォーカスリング・絞りリング・滑り止めを備えています。一見すると区別が難しいようですが、実際に触ってみると、凹凸やリングの幅が異なるため、触感で識別が可能。

ハンズオン

前述したように、(ミラーレス用レンズと比べると)50mm F1.1としてはコンパクト。重さも390gと適度で、過度に重たさは感じません。

前玉・後玉

凸形状の前玉を加工用に58mmフィルターソケットを配置。前玉が突出しているので、クローズアップフィルターなど特殊形状のフィルターを装着する際は接触しなように注意したほうが良いでしょう。レンズに関して、どのような種類のコーティングが施してあるのか不明。フッ素コーティングの記述も無いので、水や汚れの付着が想定される場合は保護フィルターの装着がおススメ。

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金属製のレンズマウントは4本のビスで本体に固定されています。

フォーカスリング

金属製のフォーカスリングは「0.7m ~ ∞」のピント位置を約90°のストロークで操作可能。NOKTONと比べて遜色のない抵抗・滑らかさで回転します。小さな力での繊細な微調整も可能。

絞りリング

金属製の絞りリングを搭載。F1.1からF16まで、ほぼ1EV刻みでクリック付きの操作が可能(F11は省略されています)。絞り表示の間で固定することもできますが、クリックを解除することはできません。

レンズフード

58mmフィルターソケットの外側にねじ込み式のレンズフードが付属。この状態でも一般的なフィルターであれば装着可能ですが、外側に枠が膨らむフィルターの場合は干渉する可能性があります。

装着例

M型ライカがないのでアダプター経由でライカLマウントカメラに装着。フルサイズ対応の50mm F1.1としては小型軽量で、一眼レフ用の50mm F1.4と同程度か小さいくらい。従来通り、最短撮影距離が0.7mと長めですが、ヘリコイド搭載アダプターであれば撮影距離を短縮することが可能。

MF

フォーカススピード

適度なトルクとストロークで滑らかに回転するので、MFレンズとしては快適なほう。とは言え、F1.1の薄い被写界深度を使ったピント合わせには苦労します。また絞り開放は球面収差や軸上色収差の影響が残っているので、ピントの山が少し分かりにくくなっています。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

繰り出し式フォーカスということもあり、0.7mの最短撮影距離ながら目に付く画角変化が発生。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 8
  • 交換レンズ:Mr.Ding Noxlux DG 50mm F1.1 E58 II
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

数値が測定できるようになるのはF2.0以降ですが、これは球面収差が強烈でコントラストが低いため。実写を確認してみると(下部参照)、低コントラストながらも全体的にまずまず良好な結果が得られていることが分かります。F2まで絞ると中央のコントラストが改善し、F2.8~F4で周辺や隅も良好。F8まで絞れば良像と言えるくらいまで向上します。

中央(「F4.0」はF2.8の間違い)

F1.1~F1.4は強い球面収差でコントラストが低め。しかし細部はシャープ。F2.0で大幅に改善し、F2.8でヌケの良い描写へと変化。以降に大きな変化はなく、最小絞りで回折の影響を若干受ける程度。

周辺(「F4.0」はF2.8の間違い)

中央よりも細部の解像性能が低めですが、大きく乱れてはいないように見えます。F2.8~F4.0で安定し、F8まで絞ると細部までシャープな結果。絞っても軸外収差の影響が僅かに残っていますが、パッと見は許容範囲内。

四隅(「F4.0」はF2.8の間違い)

周辺よりもさらにソフトな画質ですが、極端な低下ではありません。F5.6からF8まで絞ると安定します。F2.0-2.8で中途半端に絞るくらいなら、F1.1-F1.4で球面収差を残しておいたほうが見栄えが良いかもしれません。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.1
F1.4
F2.0 3644
F2.8 3894 2208
F4.0 4665 3027 1820
F5.6 4665 3726 3341
F8.0 4400 4000 3467
F16 3928 3561 3359

実写確認

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024年1月15日 曇り 微風
  • カメラ:Nikon Z 8
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC 現像
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・色収差補正オフ

テスト結果

残念ながらF2.8のデータは大部分が破損。原因は不明ですが、社外製の電子接点付きAFレンズ・アダプター装着時の高効率RAWに多い印象あり。少なくともF1.1の絞り開放から中央は良好な結果が得られています。隅に向かって画質が急速に低下するため、フレーム全体で満足する結果を得るにはF8まで絞る必要あり。

中央

F1.1からピントの芯がわかる程度には良好。F2まで絞ると球面収差が収束してコントラストが向上。F4まで絞ると軸上色収差も解消してピークの結果が得られているように見えます。結果はF5.6-8まで維持され、F16で僅かに低下。

周辺

F1.1からF2.0くらいまではソフトな画質で実用的とは言えません。F4まで絞ると非常にシャープとなり、ほぼピークの性能に到達。F5.6-8で性能が維持され、F16もほぼ同じ結果を得ることが出来ます。

四隅

周辺部よりもさらにソフトな画質で、良像を得るにはF8くらいまで絞る必要あり。絞ると安定しますが、良好と言うには少し惜しい画質。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ダブルガウス発展型らしく、像面湾曲は良く抑えられているように見えます。とは言え、他の収差や周辺減光の影響が強いため、実用的ではありません。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り値全域で良好な補正状態です。ゼロではありませんが、問題視するほどの影響でもありません。補正が簡単な収差ですが、絞り開放付近は色ずれが滲むので修正できない可能性あり。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

色収差の影響は間違いなく残っていますが、大口径レンズとしては良好な補正状態です。コントラストが高いシーンでは目立つかもしれませんが、それ以外の状況では問題とならないかもしれません。もしも気になる場合は、F2まで絞るとほぼ解消します。

(球面収差の話ですが)注意点として、絞るとピントの山が遠側へ移動するフォーカスシフトが発生しています。特に顕著となるのがF2とF2.8の間で、このあたりを使う場合は絞ってからピント合わせをしたほうが良いでしょう。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

わずかな糸巻き型の歪曲収差。直線的な被写体をフレーム端に配置しない限りは目立たないと思いますが、そのような場合はLightroomで「-1」の手動修正すると良いでしょう。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

コマ収差の影響は間違いなく発生しており、ほぼ完全に抑え込むためにはF4まで絞る必要があります。それでもフレーム隅の領域では強い影響が残ります。コマ収差が気になる場合、少しトリミングできるように、余白を作るフレーミングがおススメです。

球面収差

F1.1

近距離でのテストでは、F1.1の絞り開放で前後のボケ質に大きな差異が見られます。滲むような柔らかい後ボケ、2線ボケの前ボケ、ピント面のコントラスト低下、フォーカスシフトなどは大きな球面収差が影響しています。

F2.0

絞り開放では癖の強い残存収差が残っていますが、F2まで絞ると収差が綺麗に抑えられています。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

前ボケ

球面収差により滲むようにボケていきます。縁取りのない柔らかなボケですが、輪郭がなくなるまでの(ピント位置からの)距離は少し長め。この滲むボケにより、F1.1におけるピント合わせの難しさは緩和しているように感じます。(解像度が高くボケも硬い場合、ピントが外れるのが分かりやすいため)

後ボケ

後ボケとは打って変わって非常に硬いボケ質。2線ボケの兆候が見られ、残像のように背景の情報が残ります。前ボケがフレームに多く入る場合はF2くらいまで絞るのがおススメです。(収差編で解説)

玉ボケ

口径食(ヴィネッティング)・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

玉ボケが大きい場合は滑らかで綺麗。ヴィネッティングは隅で目立ちますが、像高7割くらいは許容範囲内の形状を維持しているように見えます。色収差の補正状態は完璧と言えないものの、悪目立ちしない程度に抑えられています。ヴィネッティングはF2.8まで絞るとほぼ改善。絞り羽根が多く、しっかりと絞っても円形を維持しています。撮影距離が長くなる場合、収差の変動で縁取りがやや硬くなり、ヴィネッティングはより目立つ。ただ、この価格帯のF1.1レンズとしては健闘しているように見えます。

ボケ実写

至近距離

接写時の絞り開放は球面収差の影響もあり、後ボケが滲むように柔らかい描写。ここまで滲む必要はないと感じたら少し絞るのがおススメです。F1.4まで絞ってもあまり変わりませんが、F2まで絞ると球面収差を抑えることが出来ます。この状態でも多少の滲みがあり、柔らかい後ボケを得ることが可能。

近距離

撮影距離が長くなると、自然と球面収差が抑えられます。F1.1から十分なコントラストと言えるでしょう。それでいて滲むように柔らかく、線が溶ける後ボケが非常に綺麗。

中距離

さらに撮影距離が長くなるとボケ質はニュートラルに近づきます。滲みを伴う質感ではないものの、滑らかで綺麗な描写は健在。ヴィネッティングが目立つ場合はF2.8まで絞ると改善しますが、後ボケは少し硬めの描写となります。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れるような撮影距離では球面収差が変動して2線ボケの兆候が見られます。状況によっては絞りで収差を抑えたほうが良いでしょう。上半身くらいまで近寄っても硬めですが、質感は若干改善。上半身やバストアップくらいまで近寄ると、打って変わって溶けるように柔らかい描写を得ることができます。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

無限遠

逆光耐性・光条

中央

光条

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 総金属製の良好なビルドクオリティ
  • F1.1レンズとしてはコンパクト
  • 滑らかで適度なストロークのフォーカスリング
  • F1.1からピントの芯が分かりやすい
  • 絞ると広い部分でシャープな結果
  • 像面湾曲の影響が少ない
  • 軽微な倍率色収差
  • F1.1としては軸上色収差が目立たない
  • 近距離で非常に柔らかい後ボケ
  • 絞っても玉ボケが円形を維持している
  • 綺麗な光条

特徴は何と言ってもF1.1の醍醐味である大きなボケ。単にボケが大きいのみならず、残存する球面収差により柔らかい後ボケが得られるのが強み。一般的な撮影距離では、ソフトフォーカスほどの低コントラストではなく、味付け程度に抑えられています。シャープなピント面と柔らかい後ボケの絶妙なバランスが上品な描写を醸し出しているように見えます。また、ダブルガウスらしく、絞ればフレームの広い範囲でシャープな結果を得ることが可能。フレーム隅の画質も極端な低下がありません。寄っても引いても、開けても絞っても面白いレンズ。

悪かったところ

ココに注意

  • 絞リングが1段刻みのクリック
  • フォーカスブリージングが目立つ
  • 絞り開放付近で細部が低コントラスト
  • フレーム隅の画質は大きく絞る必要あり
  • コマ収差が目立つ
  • フォーカスシフトが目立つ
  • 前ボケが硬調
  • 絞り開放付近で周辺減光が目立つ
  • フレーム周辺部にある光源に弱い

光学性能で最も悪影響があるのは逆光耐性。問題とならないシーンも多いですが、光源がフレーム周辺部にある場合は広い領域に影響を与えるフレアが発生します。また、ダブルガウスらしくコマ収差の補正状態が完璧ではなく、点光源を変形させないためには絞る必要あり。撮影体験で気になったのは1段刻みの絞りリングと、F2.8前後で顕著なフォーカスシフト。このあたりは慣れで回避可能。

総合評価

満足度は95点。
決して完璧なレンズではありませんが、F1.1のボケを楽しみたいのであれば面白い選択肢。ピント面から柔らかくボケはじめ、芯の残らない滑らかな後ボケは必見。また、残存する球面収差によりピント面が滲み、予想していたよりもピント合わせが簡単。操作性は一長一短ありますが、撮影体験の足を引っ張るように厄介と感じる問題はありません。F1.1のハイスピードレンズとして購入する場合、夜景や天体で使う場合は補正不足のコマ収差や強めの周辺減光が厄介と感じる可能性あり。そのような場合は高解像の大口径レンズを検討したほうが良いでしょう。基本的には、ボケに特化したレンズと考えて購入するのがおススメ。

購入早見表

Mr.Ding Noxlux DG 50mm F1.1 E58 II
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作例

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