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RF45mm F1.2 STM レンズレビュー完全版

このページではの交換レンズ「RF45mm F1.2 STM」のレビューを掲載しています。

RF45mm F1.2 STMのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 F1.2レンズとしては低価格
サイズ F1.2レンズとしては小型
重量 F1.2レンズとしては軽量
操作性 過不足のないコントロール
AF性能 繰り出し式フォーカスには注意が必要
解像性能 隅がソフトだが中央・周辺は十分
ボケ 癖が強いものの接写時は良好
色収差 軸上色収差がやや目立つ
歪曲収差 50mmとしては珍しく補正が必要
コマ収差・非点収差 非常に目立つので絞る必要あり
周辺減光 やや目立つが補正可能
逆光耐性 ゴーストが目立つ
満足度 手ごろな価格で毎日使えるF1.2レンズ

評価:

ポイント

手ごろな価格で毎日使えるF1.2レンズ

兎にも角にも手頃な価格で入手できる唯一の「フルサイズ対応 F1.2 AFレンズ」。
欠点はいくつもあるものの、フルサイズでF1.2を楽しみたい人にとって最も手頃な選択肢。完璧を求めなければ許容できる光学性能とAFを備え、携帯性もまずまず良好。

キヤノンRFユーザーをレンズ沼へと誘う最初の一本となることでしょう。

In any case, it's the only “full-frame compatible F1.2 AF lens” available at a reasonable price.
While it has several drawbacks, it remains the most affordable option for those wanting to enjoy F1.2 on full-frame. It offers acceptable optical performance and AF if you don't demand perfection, and its portability is reasonably good.
It will likely be the first lens to lure Canon RF users into the lens pit.

まえがき

2025年11月に登場したキヤノンRFマウント用のレンズ。
無印(非Lシリーズ)の製品では珍しい「F1.2」の大口径を採用。大口径ながら全長は75mm、重量は400g未満と小型軽量。おまけに販売価格が6万円台と低価格。光学性能・機能には妥協点があると思われますが、キヤノンRFでは珍しい「癖の強い面白いレンズ」となりそうです。

主な仕様

レンズマウント RF
対応センサー フルサイズ
焦点距離 45mm
レンズ構成 7群9枚
開放絞り F1.2
最小絞り F16
絞り羽根 9枚
最短撮影距離 0.45m
最大撮影倍率 0.13倍
フィルター径 Φ67mm
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング SSC
サイズ Φ約78×75mm
重量 約346g
防塵防滴 -
AF STM
絞りリング -
その他のコントロール コントロールリング
付属品 -

 

価格のチェック

小売店での初値は59,400円。
例えば、ニコンの似たようなコンセプトのレンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.4」が73,260円です。比較してキヤノンは安くて小型軽量。世界情勢や国内での物価上昇を考慮すると驚くほど価格を抑えた大口径レンズ。

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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

キヤノンRFらしい黒を基調とした光沢のあるデザイン。レンズ本体の梱包は製品によって違いがあり、このレンズはプラスチック製の間仕切りを使用せず、段ボールの間仕切りと紙製の包装紙で梱包されています。

レンズ本体の他に前後のキャップと説明書、保証書が付属。
レンズフードは別売りなので、必要であれば追加で購入しておきましょう。ただし、2025年11月現在でレンズフードは重めの供給不足となっている模様。

レンズフード ES-73B
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外観

主にプラスチック製のパーツを使用していますが、マウント部分は金属製。フォーカスリングはゴム製で、コントロールリングはローレット加工の施されたプラスチックパーツを使用。他のRFレンズと比べて質感に遜色はなく、しっかりとした作り。

表面にはキヤノンのロゴがはめ込まれ、焦点距離やピント範囲、シリアルナンバーなどはプリント。CEマークなど消えては困る表示は外装に型で組み込まれています。

ハンズオン

F1.2の大口径レンズとしては驚くほど軽量でコンパクト。「F1.2 L」の重量の半分以下、ニコン「Z F1.4」よりも軽い。いくつか妥協点があるものの、F1.2のロマンをこのサイズで携帯できるのは強み。

最大径 全長 重量
F1.2 78mm 75mm 346g
F1.2 L 89.8mm 108mm 950g
F1.4 L 76.5mm 99.3mm 580g
F1.8 69.2mm 40.5mm 160g
Z F1.4 74.5mm 86.5mm 420g

前玉・後玉

繰り出し式フォーカスで前後する前玉を搭載。電源オフ時は鏡筒より1.5cmほど引っ込んだ場所にあり、使用時に最短撮影距離の設定で先端まで繰り出します。

繰り出し式の内筒が外装から突き出ることが無いので、前面に67mmフィルターを装着することで内部を密閉可能。

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金属製のレンズマウントは4本のネジで固定されています。周囲に防塵防滴用のシーリングはありません。

電子接点付近の黒い部分には「マレーシア製」と印字あり。

フォーカスリング

適度な広さのゴム製フォーカスリングを搭載。滑らかで程よい抵抗感で操作することができます。

MF時のストロークはカメラ側で「リニア(回転量)」「ノンリニア(回転速度)」に切り替え可能。回転量に設定した場合は約270度で最短撮影距離から無限遠まで操作することが出来ます。

コントロールリング

表面はローレット加工で確かなグリップが得られるプラスチック製のコントロールリングを搭載。フォーカスリングと感触が異なるため、簡単に識別することが可能。

スイッチ

AF/MFのシンプルなスイッチのみ搭載。
フォーカスリミッターやFnボタンなどはありません。

装着例

EOS R5 Mark IIに装着。
存在感のある標準単焦点に違いありませんが、RF35mm F1.8やRF24mm F1.8と同程度のサイズ感です。バランスは良好で、APS-Cと組み合わせるのもやぶさかではない感じ。F1.2の大口径レンズながら、普段使い可能な携帯性は魅力的。

AF・MF

フォーカススピード

レンズ繰り出し式フォーカスはステッピングモーター駆動で動作。
お世辞にも高速とは言い難いですが、ステッピングモーターらしく滑らかに動きます。フォーカス速度は近距離の素早い動体追従に使えるものではありませんが、ゆっくり動く被写体であれば問題無く追従できそうです。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

繰り出し式フォーカスらしく、ピント位置によって画角が大きく変化します。近距離では狭く、遠距離では広くなる。

精度

絞り開放での撮影では問題ないものの、少し絞って撮影するとピントの山を外すことがあります。フォーカスシフトの影響なのか、何か別の要素があるのか原因は不明。

絞りプレビューを使ったMFでしっかり合わせることが出来るので、フォーカスリフトの影響である可能性が高い。

MF

絞りプレビューで絞りを閉じつつMF操作をするには設定を変更する必要があります。

「レンズの電子式手動フォーカス」を「可能」に設定することで、常にMF操作が可能。これでプレビューボタンをおしつつ、ピント合わせが可能となります。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R5 Mark II
  • 交換レンズ:RF45mm F1.2 STM
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

AFでピント合わせ

テスト結果

Center Mid Corner
F1.2 2664 3162
F1.4 2599 3340
F2.0 2910 4068 2521
F2.8 2528 4016 3285
F4.0 3183 3990 3464
F5.6 3611 4127 3330
F8.0 3948 3620 3322
F11 4101 3316 2721
F16 3491 3232 2974

通常であれば中央解像の数値が最も高く、F2.8前後でピークの性能に到達します。しかし、このレンズはF2.8まで低迷、その後は徐々に数値が上昇する不思議な傾向。これは「絞りによってピントの山が動く(フォーカスシフト)」「EOS Rは基本的に絞り開放を使ったAF」という2つの要素が影響しています。

キヤノンは絞り開放測距

キヤノンEOS RのAFは「絞り開放」で動作します。AF動作後に設定した絞り値(F値)まで絞りを閉じて撮影。球面収差が良好に補正されたレンズであれば問題ありません(RFレンズの大部分は良好に動作)。

残存収差でピントの山がずれる場合がある

RF45mmは残存収差の影響があり、絞りを閉じた際にピントの山が少しずれてしまうようです(諸収差編で解説)。

競合他社の場合「絞った状態でAFを動作する」機能があるので、収差の影響を内包した状態でAFを利用できます(例えばニコン)。しかし、キヤノンの場合は絞り開放測距しかありません。

解決方法

キヤノン機で問題を解決するには「絞りプレビュー」機能で絞りを閉じた状態を作り、MFでピントを合わせをする必要があります。カメラのいずれかのボタンに絞りプレビューを割り当て、手動でフォーカスを操作します。

拡大中に絞りプレビューを合わせて使いたい場合「電子フォーカスリングの制御」について「常時使用」に設定を変更する必要あり。

以上を踏まえてMFでテストした結果が以下の通り。

MFでピント合わせ

テスト結果

ご覧のように、中央の数値が一般的な弧を描くようになりました。F1.2の絞り開放で数値は低めですが、F4-5.6のピークにむけて急速に改善します。周辺も中央と同程度の結果が得られるものの、四隅は絞っても大幅な改善は期待できないようです。

中央

F1.2の絞り開放でややソフトですが、F2まで絞るとコントラストが改善します。F4-8でさらに伸びしろがあるものの、ピント面をシャープに写したい場合は少なくともF2まで絞っておきたいところ。

F4付近まで絞ると、EOS R5 Mark IIの4500万画素でも満足のいく結果が得られます。

周辺

中央とよく似た結果ですが、倍率色収差の影響が少し残っているようです。基本的にはF2で実用的な解像性能が得られ、F4で非常にシャープな結果。ただし、色収差の影響は消えないので、カメラや現像ソフトでの補正が必要となります。

四隅

中央や周辺と比べるとかなりソフトな結果。これはコマ収差などが影響していると思われます。絞ると改善するので、少なくともF2.8までは絞りたいところ。F4以降でピークの性能ですが、倍率色収差の影響で解像性能の数値が伸び悩んでいます。

数値確認
Center Mid Corner
F1.2 2492 3080
F1.4 3156 3071
F2.0 4082 4152 2721
F2.8 4330 4340 2874
F4.0 4612 4465 3307
F5.6 4653 4101 3374
F8.0 4634 4027 3496
F11 4292 3473 3105
F16 3317 3098 2810

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2025.12.02 くもり 微風
  • カメラ:EOS R5 Mark II
  • 三脚:SIRUI AM324
  • 雲台:アルカスイス Z1+
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Camera RAW
    シャープネスオフ
    ノイズリダクションオフ
    レンズ補正オフ

MFとAFの比較

解像チャートテストで言及したように、このレンズは平面的な撮影で中程度の絞りを使うとフォーカスシフトの影響を受けます。MFの絞りプレビューを使ってピントを合わせた場合と、AFでピントを合わせて撮影した場合を撮り比べた結果が以下の通り。

F1.2で(光環境が若干異なりますが)同程度ですが、F2やF2.8では細部のコントラストやシャープネスに大きな違いがあります。もしも遠景で本レンズを使う場合(そして中程度の絞りを使う場合)は絞りプレビューを併用したMFでのピント合わせがおススメです。

テスト結果(MFでピント合わせ)

中央

絞り開放はコントラストが低めですが、細部は良く解像しています。F1.4では改善が小さいものの、F2まで絞るとコントラストが良好となる。F4-5.6でピークの結果が得られますが、少なくともF2まで絞っておけば満足のいくパフォーマンスが得られるはず。

周辺

中央と似た傾向ですが、絞ってもコントラストの改善が遅い。コマ収差などの影響があると思われ、僅かに像面湾曲も残存しているように見えます。中途半端に絞るよりはF8やF11まで絞ったほうが良いでしょう。

四隅

フレーム隅の端で顕著な画質の乱れがあります。コマ収差の影響と思われ、少なくともF5.6までは不安定な描写が続きます。隅々まで良好な結果を期待する場合、F8以降の使用をおススメします。

RF50mm F1.8 STMとの比較

中央

同じ絞りを使用した場合、有意な違いはありませんでした。敢えて言えば、RF45mmのF2がコントラスト高め。F2.8以降はほぼ同じ。

周辺

F2はRF45mmがやや良好、F2.8ではRF50mmがやや良好、F4まで絞るとほぼ同じ。

RF45mmのフレーム隅は描写が乱れていますが、RF50mmと同じ画角で切り出すと同程度。絞ってもRF45mmの隅は安定するのが遅く、F8くらいまでは絞って使いたいところ。

追記:フォーカスシフト解決方法

「表示シミュレーションを”露出+絞り”に設定すると実絞りで測距できるよ!」と教えていただきました。(ありがとうございます)

実際に、手持ちのEOS R5 Mark IIで試してみたところ、問題なく実絞り測距することができました。一般的なRFレンズではデメリットしかないかもしれませんが、RF45mm F1.2を使うのであれば表示シミュレーションの設定を変えておいたほうが良さそうです。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

  • 左:中央でピント合わせ
  • 右:画面隅でピント合わせ

ピントを合わせる位置を変えても全体の結果に大きな違いはありません。像面湾曲は無視できる程度に抑えられています。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

完璧な補正状態ではなく、フレーム隅に向かって収差が僅かに残存しています。極端に目立つことはありませんが、コントラストの高い領域で影響を受ける可能性あり。カメラ内・現像ソフトでの修正が可能ですが、ボケの色付きは修正できない場合もあります。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り開放でやや目立つ色収差が発生。ただし被写界深度が浅いので、目立つ色収差が発生する領域は限定的(色収差そのものは薄っすらと存在)。絞ると色づきが徐々に改善します。

絞り開放でピント位置を固定した状態で撮影。
F1.2とF2.0/2.8を比べるとピント位置が遠側に移動しているように見えます。これは球面収差が関係するフォーカスシフトと思われ、解像チャートや遠景解像のテストに影響あり。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

上が未補正、下が補正(Adobe Camera RAW)。
未補正の場合、目立つ樽型の歪曲収差が発生します。これを修正するには強めの補正が必要ですが、レンズプロファイルを利用することで簡単に補正することが可能。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

このレンズで最も目立つ弱点の一つ。絞り開放におけるフレーム隅で、点高原が羽を広げたように変形します。これは絞りを閉じることで改善しますが、F4まで絞っても完璧とは言えません。完全に抑えるためにはF8やそれ以降を選ぶ必要があります。遠景解像のパフォーマンスに影響を与えている要素の一つ。

球面収差

理想的な玉ボケとは

別レンズ(高性能なマクロレンズ)で撮影したもの。
前後の玉ボケに違いはほとんどありません。球面収差が良好に補正されている場合、このような玉ボケが得られます。

F1.2

前後の玉ボケを確認すると、質感が異なることが分かります。球面収差は完璧に補正されていません。前後のボケ質に違いが発生したり、フォーカスシフトの原因となります。

F2

絞りをF2まで閉じると球面収差の影響はほぼ抑えることができます。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

少なくとも、近距離におけるピント面直後は少し滲むような質感。軸上色収差による色づきが目障りですが、ボケそのものは滑らかで綺麗。

前ボケ

後ボケと比べるとボケの縁取りが硬い。さらに軸上色収差による色づきも目立つため、全体的に少し騒がしい印象。過度の影響ではないものの、ピント面直前では少し厄介と感じるかもしれません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

F1.2

玉ボケの縁が少し明るく、色収差による色づきがあります。作例の玉ボケはサイズが大きいので目立ちませんが、撮影距離や背景との距離によってはボケが小さくなり、相対的に縁取りや色づきが目立ちやすくなります。

F2

F2まで絞ると玉ボケの描写が安定します。ただし、倍率色収差の影響は抜けず、フレーム隅で影響を受けやすい。

ボケ実写

至近距離

F1.2レンズらしく、被写界深度が浅い。近距離では全体的にボケが大きく、質感を議論するほど細部が目立ちません。ピント面直前に色収差が発生していますが影響は軽微。気になる場合はF2-2.8くらいまで絞ると良いでしょう。

近距離

撮影距離を少し長めにしても、ボケはまだ大きめ。質感の粗さは目立ちません。ただし、口径食が強く、フレーム隅でボケが小さくなる部分については注意が必要です。倍率色収差の影響もあります。

中距離

撮影距離をさらに長くすると、ボケの縁取りが目立つようになります。中央付近は許容範囲内ですが、周辺や隅は騒がしい描写になりがち。F2まで絞ると大部分が落ち着きます。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F1.2)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

45mmながら「F1.2」の大口径で被写体を背景から切り離しやすい。フレームに全身を入れたとしても、背景をぼかすことが出来ます。この際のボケ質は完璧から程遠いですが、ボケが小さいので鑑賞サイズによっては目立たないことも多い。

膝上や上半身まで近寄るとボケが大きくなり、背景が騒がしいと感じる機会が多いかもしれません。ボケの量と相談しながらF2くらいまで絞ると改善します。

バストアップや顔のクローズアップまで近寄ると、収差による粗は目立たなくなります。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

比較的影響が少ない最短撮影距離でもF1.2の絞り開放でやや目立つ周辺減光が発生。F2.8まで絞ればほぼ解消しますが、絞り開放付近でフラットな露出を望む場合は補正が必要となります。

無限遠

最短撮影距離と比べて強めの減光が発生。F2でも部分的に目立ち、F2.8でも隅に薄っすらと残ります。ここまで目立つと「補正必須」と感じるかもしれません。

逆光耐性・光条

国内ではコーティングに関する記述を見つけることができませんが、海外公式を見る限りでは「スーパパースペクトラコーティング」を採用。ASCやSWCなど、高級レンズに採用されているコーティングは含まれていない模様。

中央

テスト基準の露出で撮影したところ、フレアは良く抑えられ、ゴーストも少なめ。許容範囲内ですが、ニコン「NIKKOR Z 50mm f/1.4」ほど良くありません。

光源をフレーム隅に移動すると、絞り開放付近のゴーストは目立たなくなります。絞ると僅かに発生しますが無視できる程度。レンズフード無しでもほとんど問題ありません。

光条

F5.6で既にシャープな光条が得られ、F8でさらに鮮明となる。F11-16まで絞る必要はありません。回折による解像性能低下を避けつつ、綺麗な光条が得られます。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • F1.2レンズとしては非常に安価
  • F12.レンズとしては小型軽量
  • F12.の絞り開放から広い範囲で実用的な画質
  • 近距離で滑らかなボケ
  • 中程度の絞りで綺麗な光条

以下に挙げる様々な欠点を差し置いて、「F1.2レンズが6万円で買える」ことが何よりも強みとなる製品。この価格帯でフルサイズ対応のF1.2 AFレンズを提供しているメーカーはサードパーティを含めて存在しません。

F1.2の画質は完璧から程遠いものの、破綻するほど酷くもありません。広い範囲はF1.2から実用的で、クラシックというよりもモダンな描写。少し絞ればシャープになります。近距離ではボケも滑らかで綺麗。

悪かったところ

ココに注意

  • 防塵防滴非対応
  • レンズフード別売り
  • レンズ繰り出し式フォーカス
    (ただし鏡筒内部で完結)
  • フォーカスシフト
    (表示シミュレーションで補完可能)
  • やや目立つ軸上色収差
  • コマ収差の影響が非常に強い
  • 補正が必要な歪曲収差
  • 縁どりの強い後ボケ

最も気を付けたいのはフォーカス性能。AF速度は許容するとして、ピントの山を外してしまうAF精度には注意が必要。十分な精度で使うためにはカメラの設定を変更する必要があります(表示シミュレーションを「露出+絞り」にする)。この設定に変更しないと、絞って撮影した際に妙な甘さを感じるレンズとなります。

光学性能にはいくつも欠点がありますが、6万円のF1.2レンズに過度の期待は禁物。敢えて言えば、夜景やイルミネーションで使える大口径レンズではありません(コマ収差が気にならないのであれば別ですが…)。

結論

兎にも角にも手頃な価格で入手できる唯一の「フルサイズ対応 F1.2 AFレンズ」。
欠点はいくつもあるものの、フルサイズでF1.2を楽しみたい人にとって最も手頃な選択肢。完璧を求めなければ許容できる光学性能とAFを備え、携帯性もまずまず良好。

キヤノンRFユーザーをレンズ沼へと誘う最初の一本となることでしょう。

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購入を悩んでいる人

RF50mm F1.8

45mm F1.2のほぼ半値で入手できる50mm F1.8 レンズ。
光学性能の傾向はよく似ており、F1.2の大口径が必要なければこちらでOK。なんならアダプター経由でEF50mm F1.8 STMを使うのもアリ(サイズは少し大きくなりますが)。

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RF50mm F1.2 L USM

RFマウントで最も強い50mm。
価格はRF45mm F1.2の約5倍。重量は2倍以上。それだけの価値が詰まった光学性能だと思いますが、これが買えるのであればRF45mm F1.2に悩む必要はないはず。光学性能に関しては未テストのためノーコメント。

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購入早見表

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作例

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