VILTROX カメラ

VILTROX AF 56mm F1.7 X-mount レンズレビュー完全版

このページでは「VILTROX AF 56mm F1.7」のレビューを掲載しています。

製品提供

このレビューはPERGEARより無償提供された製品を使用しています。金銭の授受やレビュー内容の指示は一切ないことを最初に明言しておきます。無料であること、購入した製品ではないことに対する無意識のバイアスは否定できませんが、できるだけ客観的な評価を心がけています。

VILTROX AF 56mm F1.7のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 これ以上の廉価品を探すのは難しい
サイズ 比較的コンパクト
重量 非常に軽量
操作性 非常にシンプル
AF性能 適度な速度と精度
解像性能 近距離の絞り開放で低下傾向
ボケ 近距離で柔らかい描写
色収差 軸上色収差の補正がとても良好
歪曲収差 ほぼ無視できる軽微な影響
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 無限遠で非常に目立つ
逆光耐性 まずまず良好な結果
満足度 コスパ抜群の中望遠レンズ

評価:

コスパ抜群の中望遠レンズ

2万円前半と低価格で小型軽量な中望遠レンズ。価格とサイズを考慮すると光学性能は非常に良好で、特に均質性の高い遠景解像や軸上色収差が強み。また、近距離では球面収差の影響で柔らかいボケが得やすい点も強み。低価格の大口径中望遠レンズとしては決定版と言っても良い製品。競合製品は複数あるものの、個人的には一押しのレンズ。

まえがき

VILTROXが2024年4月に正式発表した低価格のAPS-C用中望遠レンズ。これまでVILTROXはやや高価で高性能なレンズを中心にリリースしてきましたが、「VILTROX AF 20mm F2.8」を皮切りに低価格な製品にも着手。本レンズや「VILTROX AF 40mm F2.5」など小型軽量で非常に安価なレンズをリリースしています。日本メーカーの製品が高価格帯へシフトしており、あまり力を入れていない所謂「撒き餌レンズ」のセグメントへ一気に切り込んできたように見えます。

  • オフィシャルストア
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  • 発売日:2024.4.2
  • 初値:¥24,800
  • マウント:X / Z
  • フォーマット:APS-C
  • 焦点距離:56mm
  • レンズ構成:9群11枚
    高屈折率レンズ:3枚
    EDレンズ:4枚
  • 開放絞り:F1.7
  • 最小絞り:F16
  • 絞り羽根:9枚
  • 最短撮影距離:0.55m
  • 最大撮影倍率:0.11倍
  • フィルター径:φ52mm
  • 手ぶれ補正:-
  • テレコン:-
  • コーティング:不明
  • サイズ:φ65×54.7mm
  • 重量:171g
  • 防塵防滴:-
  • AF:STM
  • その他:USB-Cポート
  • 付属品:レンズフード

本レンズはAPS-Cセンサーに対応しており、レンズマウントはニコンZ/富士フイルムXに対応。低価格ながら9群11枚のレンズ構成に複数の低分散ガラスを使用した本格的な光学設計となっています。公式のMTFチャートを見る限りでは、中央から隅まで落ち込みのない良好な結果が得られる模様。
注意点は最短撮影距離が0.55mと長いこと。「XF50mm F2 R WR」や競合する「TTArtisan AF 56mm F1.8」「YN50mm F1.8 DA DSM」よりも長めとなっています。被写体に近寄ったり、クローズアップしたい場合は他の選択肢を検討したほうが良いでしょう。防塵防滴には非対応ですが、価格を考慮すると妥協したいポイント。

価格のチェック

販売価格は2万円前半。日本メーカーと比べると遥かに安く、競合するTTArtisanよりも少し安い。光学性能次第ではコストパフォーマンスの高いレンズとなりそうです。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

ここ最近のVILTROXらしく、白を基調としたデザイン。箱はVILTROX印の封印テープが張ってあり、剥がすと粘着性のある跡が残ります。この状態でカバーを戻すと張り付くので注意。箱の中には本体のほかにポーチやフード、キャップが付属します。

外観

レンズの外装は全体的にプラスチックを使用。ただし、サムヤンTinyシリーズやYONGNUOの古い製品のような安っぽさはなく、日本メーカーのしっかりとしたプラスチック外装に似ています。価格を考慮すると悪い印象はありません。マットブラックの塗装で光沢が少なく、安っぽいプラスチッキーな質感が抑えられています。

 

 

外装のデザインは非常にシンプル。唯一の装飾はレンズのロゴですが、プリントされたもので加工はありません。シリアルなどはシールで張り付けたもの。シンプルで良いと思いますが、富士フイルムのレンズやボディとは相性が悪いかもしれません。競合するTTArtisanと比べると、全長がかなり短いことがわかります。TTArtisanの外装は金属製のしっかりとした作りですが、プラスチック製のVILTROXが極端に見劣るというわけでもありません。

ハンズオン

APS-Cセンサー用の中望遠レンズとしてはコンパクトで軽量。サイズが小さいので持ち運びやすい。

前玉・後玉

防塵防滴には非対応で、前玉のフッ素コーティング処理は不明。ダメージが予想されるシーンでは保護フィルターを装着しておくと良いでしょう。前面にはレンズのロゴやフィルター径などが白字でプリント。白字は光を反射しやすく、フィルター面へ写りこむ可能性があるので個人的に好みではありません。(もう少しグレーが良かった)

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アルミニウム製のレンズマウントは4本のビスで固定されています。防塵防滴非対応のためシーリングはありません。マウント面にはファームウェアアップデート用のUSB-Cポートがあります。レンズ後玉周辺は不要な光の反射を抑えるため、きちんと黒塗り処理が施されています。

フォーカスリング

切込みが入ったプラスチック製の幅広いフォーカスリングを搭載。適度な抵抗感で滑らかに回転しますが、わずかにざらついた感触があります。リニアレスポンスで、フォーカスリングの回転速度では移動量が変化しません。ストロークは約270度で(0.55mの最短撮影距離を考慮すると)長め。近距離でも滑らかに移動し、ピント位置がジャンプするようなギクシャクした動作ではありません。

絞りリング

残念ながら絞りリングは非搭載。価格を考慮すると妥協すべきポイントであり、競合する同価格の製品にも絞りリングはありません。

レンズフード

56mm用としては珍しい、花形のプラスチック製レンズフードが付属します。必要最低限ですが、肉厚なプラスチックで安っぽさは無し。ただし、本体装着時にロックされず緩々でずれやすいのが残念。また、中望遠レンズ用としては非常に浅いフードであり、遮光性が適切とは言えません。
(これは、同社の20mm F2.8や40mm F2.8と共用のフードだからと思われます)

装着例

X-T30に装着。グリップがほとんどないカメラですが、レンズが小型軽量なのでバランスはとりやすい。フォーカスリングの位置は問題ないものの、絞りリングが無いのでカメラ側の操作が必要となります。

 

AF・MF

フォーカススピード

インナーフォーカス式のピント合わせはステッピングモーター駆動で動作。電光石火のAF速度ではありませんが、最短撮影距離から無限遠まで十分な速度で移動します。競合するTTArtisanと比べてそん色ありません。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

僅かに画角の変化があるものの、極端な影響はありません。

精度

X-T30とのくみあわせで問題なし。AF-Cでも良好に追従するため、何か問題があるとしたカメラ側が原因である可能性が高い。

MF

前述したとおり、長めのストロークのフォーカスリングがリニアレスポンスで動作します。特に近距離におけるストロークが長く、細かいピント合わせが可能。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:FUJIFILM X-T30
  • 交換レンズ:VILTROX AF 56mm F1.7
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 160 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

絞り開放付近は球面収差や軸外収差の影響で全体的に低コントラストで解像性能も低め。遠景ではF1.7から良好であることを考慮すると、撮影距離によって収差が変動しやすいレンズのようです。幸いにも、近距離時も絞れば画質が大幅に改善。近距離でもF2.8-4まで絞れば広い範囲でシャープな結果を期待できます。

中央

遠景の撮影で大きな問題はありませんでしたが、至近距離では球面収差が大きくなる模様。ピント面も滲むほどの収差が残っており、コントラストは大幅に低下します。ピントの山は確認できるのでフォーカシングに問題はありません。ただし、開放測距後に絞ることでフォーカスシフトの影響が想定されます。近距離で絞る際はAF-Cを使ったほうが良いかもしれません。

周辺

絞り開放こそややソフトですが、絞ると急速に改善します。F2.8まで絞ってしまえば中央と遜色ないくらいにシャープで、細部までコントラストの高い結果を得ることができます。倍率色収差の影響が若干見られるものの、簡単に補正できるので気にする必要はありません。

四隅

周辺と比べてさらにソフトですが、やはり絞ることで改善が期待できます。F2.8まで絞ってもまだソフトさが残るものの、F4まで絞ると中央や周辺に近い結果を得ることが可能。手頃な価格の中望遠レンズとしては良好な結果と言えるでしょう。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.7 2871 2315 1732
F2.0 3040 2463 1687
F2.8 3338 3389 2636
F4.0 3352 3656 3264
F5.6 3414 3648 3389
F8.0 3621 3564 3364
F11 3175 3239 3228
F16 2865 2672 2710

実写確認

競合製品との比較

最も競合するTTArtisanと比べると、周辺や隅のパフォーマンスに安定感があります。絞り開放の中央は球面収差の増大で低下していますが、そのぶんボケ描写にプラスとなる影響を期待したいところ。

より高価なF1.4クラスのシグマ・VILTROXレンズと見比べてみると、ベストはシグマ56mm F1.4 DC DN。F1.4から一味違う切れ味が得られます。ただ、個人的に至近距離は解像性能よりもボケの滑らかさや滲みを重視しているので、球面収差が残存するVILTTROXのほうが好み。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024.05.22 晴れ 微風
  • カメラ:FUJIFILM X-T30
  • レンズ:VILTROX AF 56mm F1.7
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:絞り優先AE ISO 160
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

テスト結果

近距離の絞り開放は球面収差の影響が目立つものの、遠景では問題なし。F1.7からシャープでコントラストの高い結果を得ることが出来ます。軸上色収差の影響も良く抑えている模様。F4付近で細部の解像性能が1段階向上しているように見えますが、実写ではF1.7から実用的な画質と言えるでしょう。

中央

F1.7から非常に良好で、絞りによる画質の変化はほとんどありません。

周辺

中央と同じくF1.7から非常にシャープ。絞ると細部に残っていたソフトさがなくなり、中央と遜色ない良好な結果を得ることが可能。

四隅

周辺減光が強いものの、解像性能はF1.7から安定。絞っても大きな変化はありませんが、サイズの解像性能が少し改善しているように見えます。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

フレーム隅をよく見ると、倍率色収差がわずかに残存しています。目立たないシーンが多いと思いますが、コントラストの高いシーンでは少し目立つ可能性あり。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

低価格のF1.7レンズとしては驚くほど良好な補正状態です。わずかに残存していますが、大部分のシーンで問題とならない可能性が高い。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

ごく僅かな糸巻き型であり、実写ではそのままでも目立たないシーンが多いはず。修正する場合は現像ソフトのスライダーで簡単に修正が可能。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

部分的に点光源が変形しているようにも見えますが、それはピント外の背景である点に留意してください。ピント無いの点光源については特に大きな問題はありません。

球面収差

少なくとも近距離では球面収差が残存しており、前後のボケ質に変化が発生しています。

近距離ではフォーカスシフトの兆候も見られ、特にF1.7とF2.0の間で顕著。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

滲むようにボケてゆく柔らかい描写。芯が残りにくく、2線ボケの兆候は皆無。色収差によるボケの色づきもなく、非常に使い勝手の良い後ボケとなっています。基本的に後ボケがフレームに入ることが多いと思われ、肯定できるさじ加減の描写。

前ボケ

後ボケとは打って変わって硬調な描写。幸いにも色収差が良く抑えられているため、過度な悪目立ちはしないように見えます。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

玉ボケは滑らかで縁取りが少ない綺麗な描写。倍率色収差と思われる色づきが目立つものの、それ以外は良くまとまっているように見えます。口径食がいくらか発生しており、これはF2.8まで絞るとほぼ解消。

ボケ実写

至近距離

口径食が見られるものの全体的に綺麗で柔らかい描写。ピント面が球面収差の影響が少し滲むため、パンチのある解像感が必要な場合は1~2段絞ると改善します(柔らかい描写もなくなってしまいますが)。

近距離

口径食がさらに強くなるので、状況や好みに応じてF1.7からF2.8までを使い分けるのが良いでしょう。この撮影距離でも球面収差の影響は残っており、ピント面はわずかに滲むような描写。

中距離

このあたりから球面収差の影響は途絶え、開放から見違えたようなシャープネスとコントラストが得られます。後ボケは少し硬調になりますが、それでも悪目立ちしない綺麗な描写。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れるような撮影距離でも、まずまず良好な結果を得ることができます。色収差の影響がほとんどないため、悪目立ちする要素が少ないのもGood。膝上や上半身くらいまで近寄ると、欠点はほとんど目立ちません。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

近距離で強い周辺減光は発生しない模様。修正なしでほぼ問題なし。

無限遠

最短撮影距離から一転して強い減光が発生。絞り開放付近が特に目立ち、F2.8まで絞ると少し改善します。F4~F5.6まで絞って最短撮影距離と同程度。

逆光耐性・光条

中央

光源付近のフレアがゼロではないものの、影響は周辺のみに抑えられています。中国レンズメーカーとしてはかなり良く抑えられているほうですが、TTArtisan 56mm F1.8も同程度の結果が得られています。絞った際の結果はVILTROXがより良好。

絞った際に若干のフレアが発生していますが大きな問題はありません。

光条

分散するタイプの描写ですが、光条の均質性は良好。光条の収束のが遅いので、回折とのバランスをとるのは難しそう。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 手頃な価格
  • 小型軽量
  • 遠景ではF1.7から非常に良好な解像性能
  • 像面湾曲が軽微
  • 倍率色収差が軽微
  • 軸上色収差の補正が非常に良好
  • 歪曲収差が軽微
  • コマ収差が軽微
  • 近距離で柔らかい後ボケ

2万円ちょっとと手頃な価格で小型軽量ながら、全体的に優れた光学性能を発揮。広い範囲の撮影でボケが綺麗で、諸収差が良く補正されているので絞り開放を使いやすいのがGood。

悪かったところ

ココに注意

  • レンズフードが緩い&浅底
  • 接写時に球面収差が強くなる
  • 接写時に周辺画質が低下
  • 接写時にフォーカスシフトあり
  • 無限遠側の周辺減光が強い

致命的な欠点はほとんどなく、敢えて言えば緩々のレンズフードと接写時の球面収差の好みが分かれる可能性があるくらい。とはいえ、価格帯を考慮すると妥協できる範囲内に収まっていると思います。絞りリングはあると良かったですが、やはり価格を考慮すると妥協すべきポイント。

結論

満足度は99点。
価格とサイズを考慮すると優れた光学性能の中望遠レンズ。安いだけではなく、絞り開放からシャープで、ボケも綺麗。絞りリングや防塵防滴こそ非対応ですが、低価格の大口径中望遠レンズとしては決定版と言っても良い製品。競合製品は複数あるものの、個人的には一押し。

 

購入するを悩んでいる人

XF50mm F2 R WR

純正品らしく高価ですが、防塵防滴・金属鏡筒のしっかりとした作り。光学性能は悪くないものの、VILTROX比で価格差ぶんのアドバンテージがあるかというと悩ましいところ。シルバーカラーが欲しいなら唯一無二。

56mm F1.4 DC DN

VILTROXと比べると倍以上の高価なレンズですが、56mm F1.4としては手頃な価格。光学性能は良好で、全体的に無難な選択肢。VILTROXほど柔らかいボケではなく、軸上色収差の影響が少し目立ちます。

TTArtisan AF 56mm F1.8

VILTROXと価格設定やパラメータがよく似ており、最も競合するであろう製品。光学性能はVILTROXよりも中央重視で、近距離における球面収差の変動の少なさが特徴。柔らかい描写ではありませんが、パンチのあるピント面が得られます。

購入早見表

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作例

 

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