DPReviewがニコン「Z 9」を使う写真家へのインタビュー記事を公開。ファインダーやエルゴノミクスについて評価しつつ、メカシャッターレスでLEDフリッカーの問題などついて指摘しています。
DPReview:Interview: Sports photographer Mark Pain on the new Nikon Z 9
プロのスポーツフォトグラファーであるマークペイン氏にZ 9について意見や洞察を伺った。
ニコンシステムでの撮影経験について
- 2008年の北京オリンピックに向けてニコンを使い始めた。
- Z 6やZ 7はが欲しかったものや必要としていたものではなかった。
(ソニー機と比べて違いは顕著)- 現在はD5/D6ユーザー。
- 使用レンズは比較的古いが、FTZアダプター経由でAF速度の低下は見られない。むしろ速くなったくらいだ。
Z 9に何を期待したか?
- 仕事で使うカメラとして、急激な変化は好まない。
- 今までのカメラで99%満足しており、プロとしてカメラを乗り換える理由が無かった。
- しかし、Z 9の新AFシステムには興味がある。α9 IIのAFシステムがニコンで使えるのかどうか見てみたかった。
デジタル一眼レフカメラと比較して、性能面ではどうか?
- 顔検出による3Dトラッキングという点では、革新的だ。D5やD6に比べて圧倒的な進化を遂げている。
- しかし、ラグビーなどような動きの速いスポーツを撮影すると、フレーム内に2?3人の顔しか写っていない場合でも、必ずしも頼りにならないことがわかった。
- 確かに大幅に改善されているが、現役のカメラマンとして一眼レフカメラよりも高い成功率とはならなかった。
- 技術的には驚くべきものがあり、間違いなく役立つだろう。頭部や瞳にピントを合わせる方法はとても素晴らしい。
AFは画面全体をほぼ完全にカバーしている。それは有益か?
- フォトグラファーとして、経験と学習のすべては被写体をフレームの中央に維持することだ。この場合にカバーエリアの拡大は有益とは言えない。フレーム端に被写体がいることは滅多にない。
どのくらいで慣れたか?
- 信じられないほど早く、思っていたよりもずっと早かった。驚くほど簡単に使えて、D5やD6からの移行も最小限だった。
- ファインダーについても何の問題もなく、すぐに慣れた。
- これまで見た中で最高の電子ファインダーであることは間違いない。あらゆる状況で非常に使いやすいものだった。
- 実を言えば、D5やD6と併用すると、光学ファインダーが少し古臭く、少し黄色く感じられた。
- Z 9はまさにニコンだ。
- 再生ボタンの位置は従来通りにボタンカスタマイズした。
- ISO 5000を超えることはあまりないが、画質は少なくともD6と同等の性能だ。
メカニカルシャッターやハイブリッドシャッターではなく、完全電子シャッターを採用している。広告画面の「LEDバンディング」が問題になっているようだが、これについて詳しく
- 現在までに、4つの異なるスポーツ、屋内および屋外でZ 9を使用して約10件のプロの仕事を撮影してきたが、約半数の場所でバンディングに遭遇した。
- LEDボード自体が異なるため、会場によって効果が変わる。
- LEDボードの背景にピントが合っていなくても、画像の柔らかいボケの部分に線を引いたようにバンディングが入る。
- 今やプロスポーツの撮影で、広告板をフレームに入れないことはほとんど無い。背景には必ずLEDボードがあり、多くの屋内スポーツイベントでは、スポンサーのロゴが入ったLEDアーチのようなものを通ってチームが登場する。
- スポンサーのために仕事をしているのであれば、そのロゴがはっきりと映っている必要がある。
- 報道カメラマンの場合でも、例えば政治家の会議では、党首がLEDディスプレイボードの前に立ち、そこにメッセージを表示する。そのメッセージを写真の一部にしたいと思うことがある。
LEDバンディングの問題は、クライアントに写真を販売する際に影響があるか?
- これは、Z 9の購入を検討している99%の人には影響しない問題であることを強調しておきたい。
- 私もフルサイズミラーレスに移行するだろうし、誰もがそうすると思うが、(今のところ)スポンサーから撮影料をもらっているイベントで、LEDボードがあることがわかっている場合は、Z 9と一緒に一眼レフカメラも持っていく。X社のために撮影するのであれば、X社のロゴが完璧に写るようにしたい。
- しかし、現実の世界では、私が撮影した写真を携帯電話やiPadでニュースサイトに掲載したとしても、誰もその問題に気づかないだろう。
- 写真を見せたカメラマン仲間の10人中9人は気にしていなかったということです。
- これは大きな問題ではないが、数ヶ月以内に何らかの修正がなされることを願っている。
バンディングの問題を除いて、Z 9について何か変更や改善を望む点は?
- 私がこれまで撮影してきた他社製品と比べても、圧倒的に使い勝手が良い。
- しかし、プロとして働く私の視点から見ると、ファイルサイズが大きすぎる。スポーツ写真家としては、これほどの画素数は必要ない。
- ほとんどの場合、RAWで撮影しているが、スポーツの世界ではもうあまり一般的ではない。
- 新しい圧縮オプションはカードスペースを節約してくれるが、圧縮モードにかかわらず、Photoshopで開くと130MBとなる。これはまだ巨大な画像サイズで、私のD6のファイルの2倍のサイズだ。これは私のワークフローにとって苦痛だ。
- 現在、出力解像度を下げるには、DXクロップモードで撮影するしかないが、これは必ずしも理想的ではない。Z 9の「ライト」が欲しい。
- 他のすべてが素晴らしい。3D AFトラッキングはセンセーショナルだし、処理能力も向上している。正直なところ、ケチのつけようがない。現代のD3だ。
- 仕事をしているプロとして、明日Z 9を2台買っても、壊れるまで他のカメラを買う必要はないと確信している。
とのこと。
ニコン製ミラーレスカメラとしては非常に優れたパフォーマンスのカメラですが、プロの現場で使うにはいくつか気になる点があるようです。一般的な人工灯のフリッカーには対応しているものの、LEDなど高周波のフリッカーには未対応。既にソニーαシリーズやキヤノンの一部カメラでは高周波フリッカーに対応しています。特にメカニカルシャッターレスで線状のフリッカーを避けられないZ 9にとって重要な機能ですね。ファームウェアアップデートでの実装に期待。
それ以外の評価は非常に高いようですね。プロユースでは高画素のファイルサイズが重すぎると述べていますが、人によっては高画素によるクロップや解像性能が長所となるはず。高効率RAWを使ったとしても、現像ソフトで編集時はファイルサイズの恩恵が無い点には注意が必要かもしれません。また、電子ファインダーの評価は現行のD6ユーザーをも唸らせるものとなっています。他のレビューサイトの評価も高く、ファインダーの出来栄えはかなり良いみたいですね。
オートフォーカスは便利ではあるものの、そもそも中央で被写体を捕捉するスポーツ写真において、広いカバーエリアはあまり強みとはならないようです。また、激しく動く被写体を捉える場合のAF性能には改善の余地がありそう。ただし、同氏は一眼レフ用レンズを組み合わせて使用しているので、ミラーレスに最適化されたZレンズでどのような結果となるのか気になるところ。
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