タムロン「90mm F/2.8 Di III MACRO VXD」のレビュー第四弾 ボケ編を公開。スペシャルなボケではないものの、悪目立ちする要素がほとんど無い「綺麗なボケ」となっています。撮影距離による変動も少なめ。
今回のまとめ
全体的に見て、これまでレビューしてきたレンズの中でもトップクラスに使いやすいボケ質のレンズ。ニュートラルで偏りのない質感、諸収差による悪影響がほぼ無い、12枚羽根の絞り、非球面レンズ未使用により研磨ムラが無い、などなど。
価格を考慮すると、コストパフォーマンスの高い描写。口径食の影響がやや強めのため、そのあたりが気になる場合は作例を要確認。
Overall, this is a top-class lens with a bokeh quality that is easy to use, even among the lenses we have reviewed so far. It has a neutral, unbiased texture, there is almost no adverse effect from various aberrations, it has a 12-blade aperture, and it does not use aspherical lenses, so there is no unevenness in the polishing.
Considering the price, this is a highly cost-effective depiction. The vignetting effect is a little strong, so if you are concerned about this, please check the sample images.
90mm F/2.8 Di III MACRO VXDのレビュー一覧
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.5 諸収差編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.4 ボケ編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.3 解像チャート編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.2 遠景解像編
- 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
球面収差を良く補正したニュートラルなボケ質。滲むように柔らかい描写ではないものの、色収差は完璧に補正され、悪目立ちする要素がありません。
前ボケ
後ボケとほぼ同じ。質感に大きな違いはありません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
非球面レンズ未使用のため、玉ボケの内側は滑らかで綺麗。ボケの縁取りはほとんどなく、口径食以外に指摘するポイントは無し。倍率色収差も良く補正されているため、フレーム周辺部におけるボケの色づきも目立ちません。
タムロンとしては珍しい12枚絞りを採用。2段絞ってもボケは円形を維持しており、さらに絞ってもほとんど角ばりません。マクロ域で大幅に絞った撮影でも綺麗な玉ボケを得ることが出来そうです。
近距離における口径食は弱いものの、中距離では影響が強い。後述しますが、絞っても綺麗なボケを維持しているため、口径食が気になる場合は積極的に絞ればいいと思います。
ボケ実写
至近距離
柔らかいとは言えませんが、滑らかで綺麗なボケです。ピント面のシャープネスとコントラストと見事に両立。文句なしに綺麗。マクロレンズ、タムキューの真骨頂を見ているようです。
F11まで絞っても玉ボケに不快な描写はありません。
近距離
撮影距離が長くなると口径食が少し強めに影響します。2段絞ることでほぼ解消。滑らかで綺麗な描写は接写時と同様。
中距離
さらに撮影距離が長い場合でも、背景のボケは滑らかで綺麗。柔らかくはありませんが、悪目立ちする要素が一切なく、強いコントラストでも主張しすぎない背景となっています。
この撮影距離で絞っても、小さな玉ボケが悪目立ちしないのは凄い。(F8)
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れるような撮影距離でも、大部分は滑らかで綺麗なボケ。(NIKKOR Zと同様に)四隅は口径食の影響があるため、状況によっては少し絞ったほうが良い場合があります。とはいえ細かいことを抜きにして言えば、ポートレートレンズとしても普通に使うことが出来そうな描写。
まとめ
とても綺麗なボケが得られるレンズ。球面収差が残った個性的な描写ではありませんが、徹底的に収差を補正することで、悪目立ちする要素が良く抑えられています。撮影距離による変動がほとんど無く、安定した結果。
接写時のボケは特に柔らかく、魔法がかかったような描写となるうことがあります(たまに煌めくことがある)。あまり抽象的なことは言いたくないのですが、ちょっと他に言いようがありません。素晴らしいボケのレンズは数多いものの、このレンズのボケはスペシャル。
また、絞ってもボケの縁取りが極端に目立つことはなく、被写界深度や口径食の調整で積極的に絞ることが出来ます。
唯一の欠点が口径食ですが、近距離の撮影が多いのであれば問題ない程度に抑えられています。ポートレートの撮影距離では少し気になるかもしれません。
全体的に見て、これまでレビューしてきたレンズの中でもトップクラスに使いやすいボケ質のレンズ。ニュートラルで偏りのない質感、諸収差による悪影響がほぼ無い、12枚羽根の絞り、非球面レンズ未使用により研磨ムラが無い、などなど。価格を考慮すると、コストパフォーマンスの高い描写と言えそうです。
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作例
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