Digital Camera Worldがシグマ「fp L」のレビューを公開。像面位相差AFや高解像センサーを評価しつつ、動画AFや大型レンズとのバランスを指摘。それでも、全体的に見て魅力的な価格に仕上がっていると述べています。
Digital Camera World:Sigma fp L review
カメラの紹介:
- 奇妙なコンセプトのカメラだが、同時に興味深いカメラでもある。モジュール式のカメラであり、ファインダーは外付けだ。
- fpとの主な違いは像面位相差AFに対応したことと、6100万画素の高画素センサーを搭載していることだ。
ビルド・外観:
- 使用している6100万画素センサーは、ソニーα7R IVと並んでフルサイズ用としては最高解像度であり、検討する価値がある。
- 興味深いことに、シグマはトレンドに逆らいローパスフィルターを搭載している。理論上、ディテールが少しソフトになる可能性があるものの、モアレの影響を防ぐことが出来る。
- USB充電のみならず、給電動作にも対応している。これにより動画配信に最適だ。さらに、追加ハードウェア無しでWebカメラとしても利用可能である。
- カメラの左右と底面の3カ所にネジ穴がある。それぞれグリップやファインダー、プレートなどを装着可能だ。
- モジュールカメラのため柔軟性は高いが汎用性が高いわけではない。何を撮影するかでカメラのセットアップを考える必要がある。
携帯性:
- 最小のフルサイズミラーレスだが、グリップやファインダーが無い点に気を付ける必要がある。さらにボディ内手ぶれ補正を搭載しておらず、背面モニタは固定式だ。
- 大きなレンズとの相性は良くない。
グリップ:
- カメラにグリップは存在しないが、2種類の追加グリップを購入可能だ。
操作性:
- ユーザーインターフェースはシンプルで明快な傑作である。最初こそ静止画/動画スイッチと電源スイッチを混同しやすいが、これらを素早く操作できるのは素晴らしい。
手ぶれ補正:
- ボディ内手ぶれ補正は搭載していないが電子手ぶれ補正を利用可能だ。この際は1.24倍のクロップが発生する。
- DJI RSC 2 / RS 2、ZHIYUN Crane 2S、Weebill Sなどのジンバルがカメラ制御に対応している。
ファインダー:
- EVF-11 電子ファインダーを装着可能だ。
- 0.5型 268万ドットで上方向に90度チルト可能である。
- fpでもEVF-11は利用可能だが、ファームウェアアップデート待ちである。
- ファインダー装着時はHDMIポートのカバーを取り外し、USBポートカバーを折り返す必要がある。コツを掴めば難しくないが、撮影中になんどもやりたくなるものではない。
- USBパススルーを搭載しているが、充電に対応していると明記されていない。充電ランプが隠れてしまうのが厄介だ。
(訳注:公式サイトで確認する限り、EVF-11経由でのUSB充電・給電には対応していません)- HDMIポートは無いので、HDMI出力の場合はEVF-11を使用することが出来ない。
- ヘッドホン出力が必要な場合はEVF-11が必須となる。fp L本体には無い機能だ。
モニター:
- 背面モニタが固定式のため、競合他社と比べると不利だ。
メニューシステム:
- 動画モードにはコンテンツクリエーター向けのSTILLスタイルなデザインと、プロの映像制作者向けのCineディスプレイに対応している。
- メニューは明瞭で簡潔だ。依存度は高いものの、他のカメラと比べると使いやすい。
オートフォーカス:
- fpのコントラストベースのAFはとても良好だったので、fp Lで位相差AFに対応したことは歓迎できる。
- 位相差AFに対応したことで、キビキビとポジティブで信頼性の高いものに仕上がっている。少なくとも静止画の撮影で大きなデメリットは見られない。
- 顔・瞳検出に対応している。
ドライブ:
- シャッターは電子式でメカニカルには対応していない。
- フラッシュ同調速度が1/15秒と非常に遅く、センサーの読み出し速度がそれほど速くないことが分かる。このため、動きの速い被写体を撮影する場合は歪みが生じるリスクが高い。
- 10コマ秒の連写速度に対応しているが、スポーツやアクション用のカメラではない。
画質:
- 物理的に小さいカメラだが、解像度は異常に高い。
- ローパスフィルター搭載モデルだが、6100万画素であまり気にする必要は無いだろう。ラボテストではα7R IVとの解像性能差が発生する。それでも4700万画素のLeica SL2よりも良好だ。
- シャープでクリアな画質だ。静止画の画質に妥協はない。
- 新しいカラーモード「パウダーブルー」と「デュオトーン」が追加され、合計15種から選択可能だ。
高感度ISOノイズ:
- SL2やZ 7II、α7R IVと似たようなノイズ耐性である。低感度時に少しノイズが多いものの、これが目立つことは無いだろう。
ダイナミックレンジ:
- トップクラスのダイナミックレンジ性能を備えている。特にISO感度が高い場合に有利だ。
動画:
- fpと同じく4K 30pまで利用可能だ。ただし、fp Lはクロップズームに対応しており、解像度を低下することなく4Kで2.5倍、FHDで5倍のズーム機能を利用可能だ。
- Cinema DNG 8bitの内部記録が可能だ。外部SSD利用時は12bitのCinema DNGを利用できる。また、ProRes RAWやBRAWにも対応している。
- ログモードは無いが、RAW動画でより効果的な編集が可能だ。
- 位相差AFは問題なく機能するが、動画における追従AFでは信頼性が非常に低い。
- フォーカスインジケーターが無いので、どこにピントが合っているのか分かりづらい。可視化するとしたらピーキングを使うしかない。
- シングルAFポイントが最も効果的だ。
- ボディ内手ぶれ補正は搭載していないが、電子式手ぶれ補正を利用できる。しかし、ドリフトが発生しやすく、正確なフレーミングは難しい。それにAFが不安定なので、三脚やジンバルを使う必要がある。
- 4K撮影中にピンチイン・ピンチアウトで解像度を変えずにズーム可能なクロップズーム機能を搭載している。
総評
SIGMA fp Lは、超高精細な静止画撮影と本格的なシネマカメラの両方を、技術的に妥協することなく実現した、一風変わった好感の持てるカメラだ。しかし、操作性や性能面ではいくつか問題がある。外付けEVFは安っぽく扱いにくく、大きなズームレンズを装着するとバランスが悪い。
しかし、Sigma fp Lはただのカメラではない。静止画と動画の機能を、他にはない真面目さとバランスで融合させ、それを非常に魅力的な価格で提供している。小型のレンズであれば手持ちでも効果的に扱うことができるが、三脚やジンバルを使ったり、きちんとしたビデオリグと組み合わせて使うべきカメラであることは間違いない。Vlogカメラのサイズだが、実際にはシネマカメラであり、デザイン通りの結果を得るためには、シネマカメラとしての注意と配慮(そしてアクセサリー)が必要だ。
fp Lの小さなボディは、ハンドリングに問題があり、オプションのEVFをはじめとした外部アクセサリーに頼る部分が多い。
また、新開発の位相差AFシステムは、静止画では優れた性能を発揮するが、動画のAFはまだ遅く、信頼性に欠ける。とは言え、このカメラで出来ることを考えると、静止画・動画でこの価格は驚くべきことだ。
- 長所:
・小型
・良好な価格設定
・静止画/動画モード
・6100万画素- 短所:
・大きなレンズとの相性
・動画時のAF
・背面モニタが固定
とのこと。
fpと同じ小型軽量ボディに6100万画素の超高解像センサーを搭載したミラーレスカメラですね。Lマウント最小・最軽量ボディながら、Lマウント最高の解像性能を持つ面白いスペック。ただし、ミニマムなデザインを活用するには注意点を理解しておく必要がありそうです。(グリップやファインダーが無い、ヘッドホン出力がない等)
α7R IVと似たような解像性能ですが、比較してダイナミックレンジ性能が優れている興味深いテスト結果となった模様。(DCWのテスト結果ではα7R IVが伸び悩んでいるのが気になるところですが)
静止画におけるAFの評価は高いですが、他のレビューサイトでは辛口の評価もあったりすので要注意。購入前に実機で動作を確認しておくのが良さそうですね。
6100万画素の解像性能を考慮すると静止画向けかと思いきや、ローパスフィルター・クロップズームなどの機能を見るに、やはりシネマカメラと見るべきなのか迷うところ。
購入早見表
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