LenstipがVenus Optics「LAOWA 9mm f/5.6 FF RL」のレビューを掲載しています。抜群の性能ではありませんが、個性的なパラメータのレンズとしては高く評価できる仕上がりとなっている模様。
Lenstip:Venus Optics LAOWA 9 mm f/5.6 FF RL
紹介
- 何度も強調してきたが、私はLAOWAのアプローチが好きだ。古典的なパラメータにこだわらず、大部分は個性的なレンズに仕上がっている。もし一般的な焦点距離だっとしても、撮影距離や撮影倍率で傑出した個性を持たせている。
- この9mm F5.6も例外では無い。135度と非常に印象的な画角をカバーし、コシナ「Voigtländer HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical」を上回っている。
ビルドクオリティ
- 我々のデータベースにこのような画角の広角レンズは存在しない。それにも関わらず、競合レンズと比べて最小・最軽量のレンズサイズである。最短撮影距離も見事だ。
- その一方、サムヤン「XP10mm F3.5」やIrix「Irix 11mm F4」は画角が狭いものの、明るいレンズである。
- レンズは中国製だ。
- レンズマウントは金属製である。カメラと情報のやりとりをする電子接点は存在しない。
- 後玉は無限遠でレンズマウントに最も近い位置まで下がる。
- 被写界深度指標はF5.6-F8-F11-F16-F22が表示されている。
- 24mm幅の金属製フォーカスリングはきちんとした抵抗量で滑らかに動作する。回転量は約100度と十分な角度が確保されている。
- 細い絞りリングも1段ごとに滑らかな動作だ。
- 出目金レンズのため円形フィルターを使うことは出来ない。
- レンズは10群14枚、2枚の低分散レンズと2枚の非球面レンズ、そして1枚の高屈折率レンズを使用している。
- 絞り羽根は5枚構成でF22まで絞ることが可能だ。
解像性能
- α7R IIのRAWファイルに基づいてテストしている。
- 良像の基準値は39-41lpmmだ。
- 最高の単焦点レンズで70lpmmを超える可能性がある。
- これまでのところ「Voigtländer MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」の78.5lpmmがレコードホルダーだ。
- このセンサーでのピークはF2.8-4の絞り値で達成されている。このため、開放F値が5.6の本レンズでレコードに達するのは不可能だ。可能性があったとして、70-72lpmmだろう。とは言え、このように極端なレンズでこれらのパフォーマンスを得るのは難しい。
- このレンズは絞り開放で中央が57-59lpmmの解像度となる。恥ずかしい数値では無く、非常に良好な水準と言うことが出来る。
- このように広い画角のレンズとしてはフルサイズ端の画質も問題は無い。絞り開放こそ実用的では無いが、F8-F11まで絞ると実用レベルに達し、フレーム全体で納得のいく画質となるはずだ。それ以上を求めるのは愚かなことである。
- 9mm F5.6のパラメータを考慮すると期待に応えたレンズだと思う。
色収差・球面収差
- 被写界深度が深いため、軸上色収差についてチェックするのは難しい。絞り開放の状態を確認してみると、僅かに色づきが発生しているのが分かる。EDレンズを2枚使用しているが、完璧には補正できていないようだ。
- 倍率色収差は奇妙な傾向だ。中央領域から外れたところで色収差が急増し、フルサイズ四隅にかけて低下する。
- 球面収差のテストはこのレンズのパラメータでは不可能だ。
歪曲収差
- APS-C領域で既に顕著な樽型歪曲だ(-3.95%)。APS-C用9mm F2.8が-1.80%だったことを考えると悪い知らせだ。
- APS-Cで増加した原因は、樽型歪曲をある程度抑え込むため、陣笠状歪曲を容認したことだ。その結果、フルサイズでの収差量は-6.65%の結果となっている。
- このレンズは「ZERO-D」と謳われていないが、個人的な見解としてはもう少し良好な補正結果を得られたのでは無いかと思う。
コマ収差・非点収差・ボケ
- コマ収差はAPS-C領域まで非常に良好な補正状態だ。フルサイズ四隅は影響が大きくなるものの、大きな問題は見られない。
- 非点収差は平均20.8%だ。コマ収差より画質に影響を与える。
- ボケのチェックは難しい。センセーショナルでも大きな問題でもない。
周辺減光
- APS-Cの絞り開放で-1.14EVとなり、ハッキリと見える。F8まで絞ると-1.06EVまで低下する。
- フルサイズの絞り開放は-3.68EVと顕著だ。レンズサイズとテレセントリック性が関係しているものと思われる。
- 絞ることで改善するが、急速に向上することはない。F16まで絞っても非常に目立つ減光が残っている。
ゴースト・フレア
- 光源の種類によってフレアの色が変化する。
- 出目金レンズに優れた逆光耐性は期待していなかったので、残念とは感じていない。
フォーカス
- 最短撮影距離を活用しないのであれば、0.5mから無限遠は絞り開放でもピントが合う。
- それでもVenus Opticsはこのレンズに被写界深度指標を付けることに決めたようだ。使い道は0.12?0.5mでの撮影時だ。
まとめ
長所:頑丈な金属鏡筒・非常に良好な中央画質・良好なAPS-C領域の画質・実用的なフルサイズ端の画質・きちんとしたコマ収差補正・個性的なパラメータ
短所:APS-C領域で顕著な倍率色収差・大きな周辺減光・目立つ非点収差・逆光耐性
金属製の小さな鏡筒に収められた、よく考えられた設計の個性的なパラメータのレンズだ。絞り開放からとてもシャープな中央画質を実現しており、F8~F11まで絞ればフレーム全域で実用的な画質となる。うまくやってのけたレンズと評価していいと思う。
多くの欠点もあるが、革新的なレンズメーカーとしてさらに評価されることだろう。このレンズテストをとても楽しむことが出来た。
とのこと。
9mmと類を見ない広い画角のレンズですが、4200万画素のα7R IIと組み合わせても、F8まで絞ればフレーム全域で実用的な画質を覚悟できるのは凄いですね。周辺減光と歪曲収差を考慮すると、後処理は必要かもしれませんが…。
フルマニュアルレンズで10万円と安く無い価格設定ですが、競合レンズ皆無な状況を考慮すると面白い選択肢と言えそう。使いこなすのは難しそうですが…。
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