PCmagがOMデジタル「OM SYSTEM OM-5」のレビューを公開。E-M5 Mark IIIをアップグレードして手持ち撮影が強化された耐候性の高いカメラと評価しつつ、いくつか点が陳腐化していると指摘。
ビルド・外観:
- 初代OM-D E-M5は2012年初頭に発売され大きな賞賛を受けた。PCMagのレビューでは最高点を獲得し、そのレトロな外観もさることながら、機能が豊富で、防塵防滴仕様のマグネシウムフ合金レームに収めた点を高く評価した。
- 数年後に登場したMark IIは、マイクロフォーサーズ機として初めてピクセルシフトマルチショットモードを搭載するなど、革新的な機能を搭載し続けていた。
- E-M5の最終モデルである2020年のMark III(訳注:国内では2019年です)では、金属ボディからプラスチックに変更されたが、このデザインはOM-5にも受け継がれている。
- OM-5は耐候性に優れているが、他のセミプロやマニアをターゲットにしたカメラボディほど頑丈ではない。プラスチック製のボディはE-M5 Mark IIIから受け継いだもので、三脚ソケットに取り付けるストラップやその他の携帯方法を使用する場合は、心配になるかもしれない。
バッテリー:
- E-M5 Mark IIIと同じBLS-50バッテリーを使用する。E-PL PENシリーズやE-M10の旧モデルで採用されているものだ。
- CIPA規格の試験方法で、1回の充電で約310枚の撮影が可能だ。一般的な使用ではかなり良い性能だと思う。
- 朝のハイキングにOM-5を持ち出し、約170枚の写真と10分間の4K動画を撮影したところ、フル充電のバッテリーが半分に減った。
- カメラ内のUSB充電に対応している。ACアダプタとマイクロUSBケーブルは同梱されているが、外部充電クレードルは同梱されていない。
インターフェース:
- 旧型のマイクロUSBポートは先進性と現実的な機能性の両方において弱点となります。前者は充電ポートをUSB-Cに統一しようとするEUの最近の動きに逆行している。後者については、マイクロUSBはUSB-Cほど電力供給に関して堅牢なコネクタではないので、電源が入っているとOM-5は充電できない。
- もちろんケーブルは対称ではないので、正しい向きを確認する必要がある。
- 外部ビデオレコーダーを使用するためのマイクロHDMI端子も搭載。ただし、この小さなHDMI端子は壊れやすいという評判もあり、機材を乱暴に扱うクリエイターにとっては気になるポイントだ。
- 音声は、3.5mmマイク入力を装備しているが、ヘッドホン端子はない。
- OM-5ではボディ内フラッシュが省略されており、E-M5 Mark IIIのようにホットシュー用の外部ユニットが同梱されていない。
- 底板には、オプションの追加ハンドグリップに対応するための電子接点がある。
- E-M5 Mark IIIと同じECG-5グリップを利用可能だ。
- スマートフォン接続用のBluetoothとWi-Fiを搭載。
- 有線リモコンが必要な場合は、2.5mm端子で接続できる。
- ストレージには高速なUHS-IIに対応したSDXCカードスロットを1基搭載している。
携帯性:
- 記載なし。
グリップ:
- 追加グリップECG-5を装着することで、300mm F4 PROのような大きなレンズを安定して保持することが出来る。
操作性:
- 外観は70年代のフィルムカメラ風だが、操作系は同じようなコンセプトのFUJIFILM X-T30 IIやNikon Z fcのようなレトロスタイルではない。
- 露出モードは標準的なPASMダイヤルで設定し、シャッターや絞りなどを調整するためのコマンドダイヤルを前後に装備している。
- トッププレートはかなり上手なレイアウトだ。モードダイヤルは前後のコマンドダイヤルの邪魔にならないし、左側のドライブ/セルフタイマーボタンも嬉しい。
- 露出補正ボタンが隅っこに窮屈に収まっているが、触ればすぐに見つかる。
- ほとんどのボタンがカスタマイズ可能で、自由度が高いのもうれしい。
- 背面の操作系、特に方向キーはあまり好きではない。ニット手袋を着用していると、「OK」ボタンを押すことができず、方向キーを同時に押し続けてしまう。
- この価格帯のカメラとしては、全般的に少し時代遅れな操作感だ。
- ジョイスティックを搭載していないのは残念だ。
- OM-1に搭載されていた被写体認識フォーカスシステムがないので、マニュアルでフォーカスエリアを設定する必要性が高い。
- ジョイスティックは、かつてハイエンドカメラにしか搭載されていなかったが、EOS R10を筆頭にミドルエントリー機にも搭載され始めている。
手ぶれ補正:
- 記載なし。
ファインダー:
- 0.68倍の倍率と260万ドットのEVFは数年前までは最先端だったが、特に1000ドル以上の価格帯のEVFは向上し続けており、陳腐化してしまった。
- 露出のプレビューと低コントラストのOVFシミュレーションのどちらかを選ぶことができ、60fpsのリフレッシュレートは多くの種類の写真撮影に適している。
- OVFシミュレーションは、キヤノンEOS R3のHDRビューファインダーほど印象的ではないが、シャドーを開放するのに適した機能だ。下草の中にいる鳥を見つけるときや、強い逆光に対処するときに、この機能は非常に有効だと感じた。
- OM-5が6,000ドルのR3と同じファインダーテクノロジーを持っているとは思っていないが、X-T4やEOS R7といったより直接的なライバルに近い品質であってほしいと願っている。
これらのカメラはいずれも、より高い画素数、より大きな倍率、より高速なリフレッシュレートのEVFを使用している。モニター:
- 背面のバリアングル液晶もE-M5 Mark IIIから受け継いでいる。
- 解像度(104万ドット)、視野角、輝度調整など、非常に優れた画面だ。
- タッチ入力はうまく機能する。
- 唯一の不満は、メニューがタッチ操作に対応していないことだ。
- EOS R7ほど高解像なモニターではないが、弱点と考える必要はない。
メニューシステム:
- ライブビュー上に表示されるオーバーレイのメニュー(訳注:スーパーコンパネのことだと思います)は、カメラの設定を調整するのに便利なツールだ。
- しかし、物理的な操作と同様に、このメニューも少し古くなっている。機能をタップして選択することはできるが、実際に設定を変更するには、カメラのボタンを使用する必要があるなど、タッチ入力との一貫性にやや欠ける。
- また、アクセスできる操作系は充実しているが、メニューをカスタマイズする方法がない。例えば、画面の明るさを調整する機能をパネルに追加することができればと思う。
- メインメニューも少し時代遅れだ。E-M5 Mark IIIと同じインターフェースを採用しており、今年初めに登場したOM-1のリフレッシュ版ではない。
- OM-1は、フォントが大きく、色分けされ、トップタブで構成された画面が追加されたので、見やすさとナビゲーションで間違いなく勝っている。
- OM-5のメニューは単色のサイドナビゲーションで、初めて使うユーザーには少し戸惑うかもしれない。しかし、長年オリンパスのシステムを利用してきたユーザーにはなじみのあるものだ。
フォーカスシステム:
- E-M5 Mark IIIのオートフォーカスシステムはOM-5にも受け継がれており、OM-1の動物や乗り物の被写体認識機能はない。
- 顔や瞳にフォーカスを合わせることはできる。
- AFは高速だ。像面位相差方式を採用し、高速なAFと被写体追従を実現している。
- カバー範囲はセンサーの大部分に及ぶが、フレームの外側の境界は省略されている。
- OM-5は、一瞬のチャンスに小鳥へ問題なくピントを合わせたが、Lightroomで写真を見直すと、カメラは小鳥の目ではなくカメラに少し近づいている尾に焦点を合わせていることに気がついた。小型の被写体には、被写体認識フォーカスが威力を発揮するだろう。
連写性能:
- スピード面でかなり優秀だ。
- ?1/8,000秒のメカニカルシャッターは、ピント固定で10コマ/秒、撮影ごとにピントを確認する場合(AF-C)は6コマ/秒と遅い。
- 完全電子シャッターでは、ピント固定で30コマ/秒、追従AFで10コマ/秒と、より高速な撮影が可能である。
- 電子シャッターでは、14枚のプリ連写機能であるプロキャプチャーを使用することも可能だ。
- OM-5のバッファはそこそこ大きく、10コマ/秒でRAWなら150枚近く取り込みが可能だ。30fpsではバッファに負担がかかるが、速度が遅くなる前に20枚程度のRaw写真を撮ることができる。
解像性能:
- 画質面ではE-M5 Mark IIIと遜色ない。5軸手ブレ補正を搭載した2000万画素4/3センサーを共有している。
- より新しいTruePic画像処理プロセッサを採用しているが、JPEG画質に違いは見られない。
- このプロセッサは前モデルにはなかったいくつかの機能を追加している。手で持って撮影できる50MPハイレゾショットや、NDレンズフィルターを使用せずに長時間露光画像を撮影できるライブNDなどだ。
高感度ISOノイズ:
- ラボテストでは低感度域(ISO200-800)から素晴らしいパフォーマンスを発揮する。
- ISO1600では、コントラストの低下と細かいディテールのにじみが見られるが、ISO3200までは非常に良好な結果が得られる。
- ISO 6400でぼやけ始め、最高設定(ISO 12800-25600)ではディテールが本当に損なわれる。
- RAWを選択することは、高ISOでの編集時に価値がある。ISO 3200以上でより良い結果を得ることが可能だ。ISO12800や25600はまだ画質が粗いが、JPGよりも見栄えが良い。
ダイナミックレンジ:
- 記載なし。
画質・仕上がり機能:
- 記載なし。
動画:
- 動画機能は、シネマ向けほどではないが、Vloggerや家族旅行にはかなり優秀だ。
- 長所は4K 24、25、30fpsで美しく撮影でき、1080pでは音声付きで最大60fps、無音スローモーションで120fpsに対応している。
- 5軸手ぶれ補正は効果的で、ジンバルを使わずに手持ちで撮影することも可能だ。
- カラーグレーディング用にフラットプロファイルやOM-Log400プロファイルなど、クリエイティブなルックを選択することも可能だ。
- しかし、考慮すべき制限もある。
X-T4やEOS R7のような10bit カメラと比較すると、色や露出を編集する余地がかなり少なくなっている。- また、ヘッドホン端子がないので、録音時のレベルチェックは目視のオーディオモニターに頼る必要がある。
- 4K 60pを搭載していないことも大きな欠点だ。
- マイクロフォーサーズシステムをお持ちの方で、動画に興味がある方はGH5 IIをお勧めする。価格は1ランクアップするが、10bit 4K 60pを実現し、外部レコーダーに接続できるフルサイズのHDMIポートを備え、ヘッドフォンにも対応している。
総評
OM-D E-M5 Mark IIIは少し期待はずれなカメラだと評価した(価格ほど高級感はない)。OM-5は完全新作ではなく、Mark IIIのアップグレード版といったところだ。画像処理機能がより強力になり、いくつかの演算機能が追加されたほか、連続撮影用のバッファがより大きくなっていることが特筆すべき変更点だ。
E-M5 Mark IIIと同じ点が強みとなる。荒天時に持ち出すことができ、三脚なしで使用することができる。手持ち撮影用の50MPハイレゾショットやライブNDが追加されたことで、その地位はさらに強化された。ファインダーはGH5 IIのような高級機種はもちろん、Z 50のような手頃なカメラと同じレベルではない。また、マイクロUSBにこだわった2022年モデルを支持するのは気が引けるし、メニューシステムがOM-1にマッチしていないのも残念だ。
キヤノンEOS R10は、手ぶれ補正や堅牢な耐候性はないが、オートフォーカスシステムと操作性はOM-5をはるかに超えている。富士フイルム X-S10は手ぶれ補正を搭載して優れたオールラウンド性能を備えている。
我々は本格的なミラーレスを検討している人のために、キヤノン EOS R7を引き続きエディターズチョイスとして推薦する。レンズなしで1,500ドルと少し高価だが、オートフォーカスが非常に優れており、解像度が高く、手ぶれ補正機能付きで10bit動画にも対応している。まだシステムを構築していないのであればAPS-Cがおススメだ。
すでにマイクロフォーサーズシステムを導入しているのであれば、コンパクトで全天候型のカメラとしてOM-5は魅力的だ。また、キットレンズの12-45mmは特に優秀で、新しい標準ズームを手に入れたいフォトグラファーにも魅力的となるだろう。
E-M5 Mark IIIは、少なくとも在庫がある間は、コストパフォーマンスを重視する場合により良い選択肢となる。現在、大幅な値引き中だが、我々が指摘したように、OM-5との間にはそれほどの差がない。
予算が厳しくない場合、パナソニックGH5 IIがより良い総合的な買い物になると考えている。動画機能がよく評価されているが、DFDコントラストAFを搭載し、より頑丈に作られた、非常に高性能なスチルカメラでもある。
OM SYSTEMにこだわるのであれば、高価ではあるがOM-1は優れたカメラであり、その価値はあると思う。
- 長所:
・軽量で運搬が簡単
・5軸手ぶれ補正
・IP53の防塵防滴
・十分なバッファ
・手持ちハイレゾショット
・ライブND
・環境にやさしい包装- 短所:
・ジョイスティックがない
・ファインダーのスペック
・競合他社ほどではないAF
・6fpsの追従連続撮影速度
・8bit限定の4K 30p
・ヘッドホンジャックなし
・Micro USB
とのこと。
元E-M5 Mark IIIユーザー、現OM-1ユーザーの私としても頷ける部分が多いレビューとなっています。この価格帯のカメラとしては確かに強力な防塵防滴と手ぶれ補正(+それを活かす機能)が魅力的と感じますが、その他の部分がかなり陳腐化してしまっているように見えます。
(上の画像はE-M5 Mark IIIですが、外装はOM-5とほとんど同じはずです)
今では一般的となったUSB-Cポートを採用しておらず、マイクロUSBポートでスマートフォンとは別に専用のケーブルが必要となるのは厄介ですね。旅行やアウトドアでケーブル一本を追加で持ち歩くのは不便と感じます。また、星空AFなど便利な機能をE-M1 Mark IIIから継承していますが、モバイルバッテリーからの給電動作に対応しておらず、長時間の撮影ではどこかのタイミングでバッテリー交換の必要性が高いのがマイナスポイント。2022年のアウトドア向けカメラとしては、ちぐはぐ感を否めません。
OM-1で採用した新しいメニューシステムではなく、従来通りの古いメニューシステムを採用しているのも悩ましいところ。PCmagが指摘しているように、OM-1ユーザーがサブカメラとして購入するには厳しい仕様となっています。
フォーカス性能は言うほど悪くないと思います(少なくとも第四世代の富士フイルムよりは使いやすいと感じています)。レンズ側の性能次第ですが、応答性が高く、近距離での素早い被写体にも対応できるパフォーマンスを備えています。
ただし、ミラーレスらしい追尾AFはアテにならず、ターゲットAF(他社で言うところのゾーンAFやグループAF)で狙いたいAFエリアを指定する必要があります。PCmagでも指摘しているように、細かい調整が必要となるシーンではジョイスティックの必要性を感じます。また、競合他社では精度の高いトラッキングAFや被写体検出機能を搭載していること、そしてジョイスティック搭載カメラが増えていることを考えると総合的に見て不利と感じる場合は多いかもしれません。
OM-5と比べて、値下がりしているE-M5 Mark IIIを購入するのも一つの選択肢ですが、個人的には同程度の価格で入手が可能となっているE-M1 Mark IIIがおススメ。金属パーツを使用した堅牢な外装、AFジョイスティック、倍率が高いファインダー(液晶ですが)、遥かに大きなバッファとデュアルカードスロットを搭載しています。いつまで在庫があるか不明ですが、おぎさくの新品アウトレットでは132,000円でE-M1 Mark IIIが入手可能となっています。
それでも小型軽量と防塵防滴、そして強力な手ぶれ補正と特殊な撮影機能を重視する場合はOM-5が良い選択肢になると思います。OM-5のボディサイズで手持ちハイレゾショットやライブNDが利用できるのはやはり魅力的だと思うのですよね。USB-Cや新メニューを採用しているだけでも印象がもう少し良かったと思うだけに惜しい。
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