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LEICA DG Vario-Summilux 10-25mm F1.7 ASPH 交換レンズレビュー 総集編

このページではパナソニックのマイクロフォーサーズ用交換レンズ「LEICA DG Vario-Summilux 10-25mm F1.7 ASPH」を使ったこれまでのレビュー記事をまとめて最終評価を掲載しています。

LEICA DG Vario-Summilux 10-25mm F1.7 ASPHレビュー総集編

総評:使い手を選ぶ異色の大口径ズーム

Good

  • 頑丈な金属製外装
  • F1.7通しの大口径ズームレンズ
  • 優れた操作性
  • 静かで高速なオートフォーカス
    ・ブリージング僅か
    ・バリフォーカルの特性が目立たない
  • マイクロステップ動作の絞り羽根
  • 近接での良好な中央解像性能
  • 絞り値・ズームレンジ全域で良好な遠景解像性能
  • スペックの割に寄りやすい
  • ニュートラルで使いやすいボケ
  • 口径食・周辺減光が小さい
  • 綺麗な光条

Bad

  • 価格設定の割にレンズケースがポーチ
  • マイクロフォーサーズ用レンズとしては大きく重い
  • 内筒が最短となるのは12?14mmの時
  • 絞りリングは無段階調整限定
  • 近接だと伸び悩むフレーム端の解像性能
  • 中間域以外でコマ収差が少し目に付く
  • ソフトウェア補正に依存した歪曲収差
  • そこそこの逆光耐性

イロモノスペックながら、堅実的な光学性能と外装を備えた極めて実用的な大口径ズームレンズ。

描写性能

パナライカらしいコントラストときつ過ぎないシャープネスが特徴的。全体的にそつなくこなし、欠点らしい欠点は特に無し。最短撮影距離以外ではフレーム全域で安定した解像性能を発揮し、ニュートラルなボケは悪目立ちしない。倍率色収差や軸上色収差も良好に補正され、極端なコントラスト領域以外で色ずれは無し。

コマ収差の補正がイマイチで夜景では少し気になるかもしれませんが、四隅に点光源を配置しなければそこまで問題と感じないはず。歪曲収差は完全にデジタル補正前提となっていますが、パナソニックやオリンパスなどレンズ補正が有効なカメラボディなら特に気にする必要はありません。

複雑なレンズ構成のため逆光耐性には妥協が必要。酷くは無いものの、LEICA DG 8-18mm並みかもう少し悪い。とは言え、太陽など強い光源を入れない限り大きな問題とは感じません。

使い勝手

基本的に動画を意識した調整が施されています。ズームリングの大きな回転量や無段階絞りリングは静止画ユーザーだと少し不便と感じるかも。どちらかと言えば静止画ユーザーなので絞りリングはもう少し手前に配置してクリック式に変更できると良かった。個人的に「A」ポジション固定でボディ側で操作したほうが使いやすかったり。

オートフォーカスは他のLEICA DGズームと同じく静かで高速。大口径ズームながらブリージングがとても小さく抑えられ英るので画角変化の無いフォーカス操作が可能となっています。接写性能も高く、広角域でも撮影倍率が高いのはGood。

レンズサイズは巨大とは言いませんが、マイクロフォーサーズの中で大きなレンズであることは間違いない。オリンパス12-100mm F4 IS PROに近い全長とさらに太い直径となっているので装着ボディの相性は要検討。

大きなレンズですが、レンズ交換が難しいシチュエーションで超広角?標準領域でF1.7を使い回せるのは便利。風景・夜景・屋内・人物・植物・などなど幅広いシチュエーションに対し、様々なアプローチを試みることが出来るのはこのレンズの強み。

価格

単焦点レンズを4?5本まとめることができると考えると現在の価格設定は妥当。

総評

満足度は85点。

スペックを考慮すると画質に全く問題を感じませんが、単焦点レンズと比べると物足りなさを感じるのも確か。例えば接写や絞った時の解像性能、点光源のサジタルコマフレア、逆光耐性など。しかし利便性にウェイトを置いたズームレンズで単焦点レンズと同等の画質を求めるのは酷というもの。最小限の妥協でそれ以上の恩恵を感じることが出来るレンズに仕上がっていると感じます。

正直に言うと、単焦点をとっかえひっかえ交換しながら写真を撮る楽しみは捨てきれないし、撮影時の携帯性は単焦点のほうが圧倒的に良好。ここまで大きいとカメラバッグへの出し入れも少し面倒くさい。その一方で、レンズ交換出来ないようなシチュエーションにおいて、このズームレンジと明るさは大正義。

複数の単焦点か高級大口径ズームか…どちらを取るかは、自身の撮影スタイル次第。

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購入を迷っている人へ

競合する大口径ズームは無いので、このスペックが必要であれば迷わず突撃がよろしいかと。価格に見合う光学性能と外装の作りであるのは確か。

単焦点レンズからの乗り換え、単焦点複数とズームどちらを買おうか悩んでいる人は要検討。12?25mmのマイクロフォーサーズ用単焦点は選択肢が多い上、光学性能の割に安いレンズが多いです。レンズ交換の手間や防塵防滴仕様を重視しないのであれば個人的に単焦点がおススメ。

ただし、「10mm F1.7」「11mm F1.7」と言ったスペックのAFレンズはマイクロフォーサーズに存在しません。このような画角と明るさが必要な場合は検討してみるべき。

外観・操作性

箱・同梱品

Leica DGシリーズではお馴染みの黒い箱。特筆すべき項目はありませんが、マイクロフォーサーズ用レンズの中では大きな箱となっているので保管したい人は留意しておくと良いでしょう。箱の中にはレンズ本体の他に、レンズフード、ソフトケース、説明書、保証書が同梱しています。このレンズの価格を考慮するともう少し頑丈なレンズケースを付属して欲しかったところ。

外装

レンズ本体の外観は他のLEICA DGズームと基本的に同じ。全ての操作リングと外装が金属製のしっかりとした作り。価格を考慮すると妥当な堅牢性と言えるでしょう。これで殴られたら痛そうです。ちなみに製造国は中国。

重量は約690g。総金属鏡筒に加えて10-25mmのF1.7超大口径ズームと考えると想像していたより軽い。確かにマイクロフォーサーズ用レンズの中では重く大きな部類のレンズですが、LUMIX G9やE-M1Xなど適切なサイズのカメラグリップがあれば悪く無い操作性かと思います。

ズーム動作・ズームリング

スライドショーには JavaScript が必要です。

ズーミングで内筒が伸び縮みするタイプのレンズです。一般的に広角端で内筒が最も短くなりますが、このレンズは12?14mmの間で内筒が最も短くなります。この特性はM.ZUKO 12-40mm F2.8 PROと似ていますね。使い始めは気持ち悪さがあるものの、慣れてくると特に違和感は感じません。10mm側では僅かに伸び、25mm時に最も内筒が伸びます。

ズームリングの回転角は約90度であり、2.5倍ズームとしてはやや大きめ。素早いズーム操作には適していませんが、動画撮影時に緩やかなズーム操作をするなら便利と感じることでしょう。全体的に滑らかな操作が可能ですが、ズームレンジ両端に到達する際の抵抗量が少し大きい。

レンズフード

レンズフードはプラスチック製の花形で、側面に一か所ロック機構があります。内側に植毛はされておらず、反射防止用の切り込みが施されているのみ。

レンズフードの脱着で特にこれと言った問題点は無し。逆さ付け可能ですが、絞りリングの操作と干渉するので使用時は順付けか取り外してしまうのがおススメ。

M.ZUIKO 12-100mm F4 IS PROとの比較

レンズ直径は12-100RROと比べて明らかに大きいものの、レンズ全長は似ています。このため、収納性や携帯性は同じ感覚で使うことが可能。

前玉・後玉

マイクロフォーサーズ用レンズとしては最も大きい77mmフィルターを使用。これは「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」や「LEICA DG ELMARIT 200mm/F2.8/POWER O.I.S.」と同様ですが、他のレンズと比べるとかなり大きなフィルター径です(他は大きくても72mmや67mm)。

撥水撥油の特性を持つフッ素コーティングの使用は明記されていないので、この特性が必要であればプロテクトフィルターを用意しておくと良いでしょう。

後玉はマウント面に固定され動きません。レンズマウント周囲は防塵防滴用のガスケットが施されています。

フォーカスリング

他のレンズと同じくバイワイヤ式の電子制御ですが、フォーカスリングを手前にスライドすると表示されたピント距離に連動するリニアな操作性のマニュアルフォーカスを利用可能です。この際の回転角(近接?無限遠)は約90度。接写性能を考慮すると回転角は小さめですが、微調整が必要な場合はクラッチを前にスライドし、カメラ側からMFモードへ移行することで加速度に対応したマニュアルフォーカスを利用可能。

フォーカスリングは前後のクラッチに関わらず、適切な抵抗量で滑らかに回転します。最高の操作性と言うには少し滑らかさが足りないように感じますが、誤操作は少ないかと思います。

絞りリング

他のLEICA DGレンズと異なり、無段階の絞りリングを搭載。動画を想定した操作性となっており、静止画用途としては少し違和感を覚えるかもしれません。

静止画用としては、絞りリングのサイズ・配置・操作性がイマイチで手持ち撮影で小まめに操作したいデザインとは感じません。正直に言うとLUMIX G9のような大型ボディならば、ボディ側で操作した方が楽です。LUMIX GFやGMなど、カメラ側で絞り操作が面倒な場合はアリかなと思います。

LUMIX G9 PROとの組み合わせ

マイクロフォーサーズの中でも大きなボディであるLUMIX G9 PROと組み合わせてもレンズが大きいと感じます。レンズ直径が太く、カメラ底面より下に飛び出してしまう点は気を付けるべき(ロングプレートなどに固定する際は干渉するかもしれません)。

見た目に反してハンドリングは良好。前述したようにM.ZUIKO 12-100mm F4 IS PROと組み合わせた際と大きく変わらない操作性です。

雑感

見た目に反して良好なハンドリングなので、適切なグリップサイズのボディで使えば他のズームレンズと同じ感覚で使うことが可能。

スペック、操作性、そして公式ウェブサイトでも記述があるように、動画を強く意識した外観・操作性。もちろん静止画でも全く問題を感じませんが、このレンズデザインの恩恵を最大限享受できるのは動画撮影のはず。

AF・絞り羽根

静止画

超高速と言うには少し遅いものの、F1.7の大口径レンズと考えれば十分速いと言えるかもしれません。接写性能が非常に高く、最短撮影距離から無限遠まで移動するには時間がかかりますが、実写で使うようなピント距離の移動であれば一瞬で移動します。ストレスフリー。

動作は滑らかで特に違和感はありません。駆動音もごく僅か。

フォーカスブリージングは接写性能(35mm判換算で0.28倍)・F1.7の大口径レンズと考えると目立たない部類のレンズかなと思います。

動画

言うのが遅れましたが、最新ファームウェアを適用したLUMIX G9を使用しています。AFの滑らかさはカメラに依るところが大きいので割愛。

前述した目立たないフォーカスブリージングにより、かなり自然なピント移動が行えると思います。

バリフォーカル

ピント位置を固定してズーミングした際、ピント位置に大きな変動が無いかをチェック。

実際に試してみたところ、特にピント位置の大きな変動もなくズーム操作が可能となっているようです。10mmから25mmへ移動すると、被写界深度が浅くなるため、10mmから25mmへズームすると僅かにピントがズレた様に感じる場合もあります。逆に、25mmから10mmへズームアウトすると特に問題は感じません。

絞り羽根のマイクロステップ動作

このレンズはマイクロステップ制御に対応しており、絞り羽根を非常に細かく調整することが出来ます。静止画でここまでの微調整が必要な人は少ないかもしれませんが、動画撮影で滑らかな露出変化や被写界深度の変化をさせたいのであれば便利な機能と言えるでしょう。

絞リングはマイクロステップ制御に合わせてクリック感の無い滑らかな操作性となっています。静止画メインの人は違和感を覚えるでしょうが、動画撮影では使いやすいと感じると思います。

絞り値 露出変化

マニュアル露出の動画モードでISOとシャッタースピードを固定して絞り羽根を操作。すると以下の動画のようにじわりじわりと推移する露出変化を得ることが出来ます。(まあ、動画で露出を調整するのはISOの役割だと思いますが…)

絞り値 被写界深度の変化

今度は絞り優先動画モードで適正露出を維持しながら絞りリングを操作。やはり滑らか被写界深度の推移が可能となっています。

雑感

ハイブリッドカメラのLUMIXらしく、静止画でも動画でも便利なレンズとなっているようです。これまでのレンズを考えると少し動画寄りのレンズと言っても過言では無いかもしれませんね。(デクリック仕様の絞りリングとか)

開放F値がF1.7固定の超大口径ズームとしてはブリージングやバリフォーカルの特性が良く抑えられているように感じます。

解像力チャート

10mm

このレンズで最も弱いポイント。広角レンズほど解像力チャートを接写する必要があるので四隅の解像力が落ちてしまうのは確か。実写に則した数値が出ていない可能性があるので、この焦点距離は遠景テストの結果も併せてチェックして欲しいところ(後日実施します)。

近接+超広角というデメリットを考慮しても中央領域はF1.7から非常に高い解像性能を発揮。さらにF2.8まで絞るとことでE-M1Xの解像限界に近いパフォーマンスまで到達します。

近接10mmにおいて、周辺部や四隅が改善するのは非常に遅く、F8前後まで絞る必要があります。

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 2880 1828 1593
F2.0 2971 1600 1667
F2.8 3453 2039 1716
F4 3389 2102 1987
F5.6 3503 2282 2012
F8 3069 2614 2185
F11 2946 2407 1942
F16 2452 2080 1667

12mm

10mmと比べるとワンランク上の解像性能を発揮。中央はF1.7からほぼトップスピードを維持し、回折による低下が始まるまでパフォーマンスを維持しています。周辺部や四隅もF1.7から「42.5mm F1.7」のような並みの単焦点レンズ以上の解像性能を発揮しています。

その反面、絞っても周辺部や四隅はあまり改善しません。程よく解像しますが、「カリカリシャープ」というのはあと一息足りない印象。

定評のあるM.ZUIKO 12-100mm F4 IS PROのテスト結果と見比べると、中央解像はほぼ互角で四隅が若干甘いかな、と言ったところ。

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 3504 2683 2332
F2.0 3983 2737 2224
F2.8 3610 2440 2096
F4 3664 2656 2251
F5.6 3252 2683 2467
F8 2989 2818 2521
F11 2832 2492 2494
F16 2438 2278 2035

14mm

広角側ほど中央解像は高くありませんが、周辺部や四隅はより良好となっています。やはり絞り値による改善は小さく、程よく解像している印象。

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 3156 2725 2331
F2.0 3069 2848 2421
F2.8 3241 2855 2257
F4 3536 2862 2408
F5.6 3413 2880 2635
F8 3044 2755 2711
F11 2719 2506 2456
F16 2427 2332 2105

18mm

10?14mmと比べて周辺部や四隅がさらに安定します。フレーム全域で均質的な画質となるので風景撮影などに適した性能と言えるでしょう。

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 3411 2845 2758
F2.0 3425 2899 2710
F2.8 3425 3034 2825
F4 3371 3034 2971
F5.6 3384 3007 3061
F8 3303 3007 2865
F11 3007 2737 2629
F16 2413 2305 2224

25mm

中央解像は最も悪いものの、フレーム全体で最も均質的であり、F4まで絞ることでとてもシャープな画質となります。F4まで絞った時のパフォーマンスは「M.ZUIKO 12-100mm F4 IS PRO」よりも良い。

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 2582 2759 2615
F2.0 2926 2784 3032
F2.8 3482 3106 3229
F4 3594 3540 3411
F5.6 3454 3135 3313
F8 2919 3135 3004
F11 2751 2846 2793
F16 2526 2325 2206

焦点距離別 中央領域の解像性能比較

F値 10mm 12mm 14mm 18mm 25mm
F1.7 2880 3504 3156 3411 2582
F2.0 2971 3983 3069 3425 2926
F2.8 3453 3610 3241 3425 3482
F4 3389 3664 3536 3371 3594
F5.6 3503 3252 3413 3384 3454
F8 3069 2989 3044 3303 2919
F11 2946 2832 2719 3007 2751
F16 2452 2438 2427 2413 2526

焦点距離別 周辺領域の解像性能比較

F値 10mm 12mm 14mm 18mm 25mm
F1.7 1828 2683 2725 2845 2759
F2.0 1600 2737 2848 2899 2784
F2.8 2039 2440 2855 3034 3106
F4 2102 2656 2862 3034 3540
F5.6 2282 2683 2880 3007 3135
F8 2614 2818 2755 3007 3135
F11 2407 2492 2506 2737 2846
F16 2080 2278 2332 2305 2325

焦点距離別 四隅領域の解像性能比較

F値 10mm 12mm 14mm 18mm 25mm
F1.7 1593 2332 2331 2758 2615
F2.0 1667 2224 2421 2710 3032
F2.8 1716 2096 2257 2825 3229
F4 1987 2251 2408 2971 3411
F5.6 2012 2467 2635 3061 3313
F8 2185 2521 2711 2865 3004
F11 1942 2494 2456 2629 2793
F16 1667 2035 2105 2224 2206

ハイレゾ

10mm

10mmの周辺部や四隅は甘すぎるためハイレゾショットで合成したイメージが上手く処理できませんでした。

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 3767 測定不能
F2.0 4151
F2.8 4409
F4 4349 2629
F5.6 4434 2752 2463
F8 4139 2985 2076
18mm

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 4302 3546 3108
F2.0 4696 3483 3061
F2.8 4723 3762 3794
F4 4723 3900 3592
F5.6 4709 4142 3708
F8 4179 3954 3605
25mm

F値 中央 周辺部 四隅
F1.7 3341 3048 3096
F2.0 3721 2987 3125
F2.8 4313 3906 3475
F4 4466 3762 3951
F5.6 4551 4191 3941
F8 4044 3974 3766

雑感

グラフで見ると中央と比べて四隅が甘く見えるものの、これは中央領域の解像性能が高すぎて四隅が付いていけないだけ。他のレンズのテスト結果と見比べても(10mm以外は)F1.7の絞り開放から健闘していると思います。

単焦点と見比べても遜色のない解像性能ですが、絞った時の伸びしろは単焦点レンズのほうが大きい。まあ、F1.7やその周辺の絞り値を使いたくてこのレンズを購入する人が多いはず。そう言った意味では「単焦点並み」と感じるレンズです。

遠景解像

撮影環境

  • LUMIX G9 PRO
  • Leofoto LS-283CM
  • セルフタイマー
  • 絞り優先・ISO 200固定
  • RAW出力でAdobe Lightroom CCCからの現像(調整無)

10mm

接写の解像力チャートでは開放付近で残存収差が目立ったものの、遠景では絞り開放から特に問題無さそうです。後日記事にしますが、歪曲収差をカメラ側で補正しているので中央と比べると四隅の解像性能はやや低い。

等倍で確認しないと分かりませんが、絞り開放だと僅かにマイクロコントラストが弱いです。半段、F2.8まで絞ることでコントラストは改善します。その後は絞ってもあまり変化しませんが、四隅のピークはF4~F5.6あたり。

F8以降は回折の影響があるものの、影響の度合いは小さく、個人的にはF16まで問題なく使えそうな画質と感じます。

12mm

基本的には10mmと同じ傾向。F2.8~F5.6付近がピークとなり、四隅を考慮するとやはりF4~F5.6がスウィートスポット。

14mm

基本的に10mm・12mmと同様ですが、F2.8まで絞ると四隅の改善が早いと感じます。

18mm

近接解像チャートではこのあたりから周辺・四隅の解像性能が改善傾向でしたが…、遠景でも絞り開放からまずまず解像しているように見えます。F2.8まで絞るとコントラストが改善しますが、F1.7?F2でも十分良好と言えるパフォーマンス。

25mm

解像チャートと同じくフレーム全域で最も均質的な焦点距離。開放はコントラストが若干低いものの、F2まで絞るとやや改善し、F4?F5.6に至るまで徐々に解像性能が向上します。

雑感

珍しい焦点距離の超大口径ズームレンズですが遠景解像は絞り開放からきちんとしたパフォーマンスを得ることが出来ます。近接の解像力チャートと比べてズームレンジ全域で安定したパフォーマンスなのは間違いない。解像チャートの結果と同じく、やはり望遠側のほうが均質的ではあるものの、F5.6~F8まで絞ると広角側や中間域でも安定。

「20万円のレンズとしてどうよ?」と言うと、遠景で中程度の絞り値を使うのであれば他の安価な選択肢のほうがパフォーマンス良好。(例えばオリンパス12-100mm F4 IS PROとか12-40mm F2.8 PROとか)

その一方で大口径ズームを活かしてF1.7~F2.8を活かした遠景を撮影するのであれば優秀な一本だと感じることでしょう。例えば光量の少ない遠方の夕景・夜景、屋内の広い空間などなど。絞り開放はコントラストが若干低いので、個人的にはF2.0?F2.8がおススメ。

接写解像

各焦点距離での撮影倍率

最短撮影距離は0.28m、最大撮影倍率は0.14倍(35mmフルサイズ判換算で0.28倍)とマイクロフォーサーズ用広角ズームとしては一般的な接写性能を有しています。特にF1.7の大口径ズームレンズとしては接写性能が高く、健闘しているなと感じます。

最も倍率が高くなるのは望遠端の25mm。よほど小さな被写体をクローズアップしない限り十分な撮影倍率と言えるでしょう。

10mm

中央はF1.7から良好ですが、フレーム端は像の流れが目立ちます。被写体を四隅に配置するのであれば少なくともF5.6まで絞りたいところ。さらに倍率色収差による色ずれも絞り値に関わらず目に付きます。この描写の甘さが原因となり、周辺測距点を使った接写のAFは精度がイマイチ安定しません。接写性能の高い10mmですが、開放付近を使うなら被写体を中央に配置するのがおススメ。

中央
F1.7-F5.6 -
F8-F11 -
F16 F5.6-F11
- F1.7-F4,F16

18mm

10mmと比べとフレーム端の安定感は段違い。絞り開放から問題の無いパフォーマンスを発揮しています。倍率色収差もほぼ皆無に近い。中央と比べると僅かに非点収差のような像の流れを感じますが、実写ではそこまで目立たないはず。

中央
F2.0-F5.6 -
F1.7,F8 F1.7-F8
F16 F11-F16
- -

25mm

解像力テストの時と同じく絞り開放付近における中央解像は他と比べて僅かに甘め。ただし、F2.8まで絞ればほぼ同程度まで改善します。解像チャートでは最も良好だった25mmのフレーム端は最短撮影距離だと伸び悩む模様。絞れば悪くないものの、キレがあるとは言い難いなと。

中央
F2.8-F11 -
F1.7-F2.0,F16 F8-F16
- F1.7-F5.6
-

雑感

完璧とは言い難いものの、中央はズームレンジ全域で良好なパフォーマンスを発揮しています。フレーム周辺部は中間域以外で少し甘めですが、実写で特に甘いと感じるのは10mmだけのはず。

全体的に10-25mm F1.7というスペックを考えると高い接写性能であり、描写も実用的な画質を保っているように見えます。

ボケ

前後のボケ 球面収差と非球面レンズの影響

前後に大きなムラなく、球面収差は良好に補正されているようです。非球面レンズの目だった影響もない良好なボケ描写。特にこれと言った個性はありませんが、使いやすそうな印象。滲むボケでは無いので、輝度差がありコントラストの高い背景だと少し騒がしく感じるかもしれません。

軸上色収差の補正があと一息完璧とは言えず、僅かに色ずれが発生しています(玉ボケの縁に発生する緑・紫の色ずれ)。

前後のボケ

上の玉ボケ描写から分かるように前後に差の無いニュートラルなボケ描写です。コントラストが高いと僅かに後ボケのほうが騒がしく感じるかも。ズームレンズとしては滑らかで良好なボケ描写だと感じます。

玉ボケ・口径食の影響

F1.7の大口径ズームと考えると、良好なパフォーマンスと言えそうです。特に10?14mmは四隅まで円形に近い形状を維持しており、18mmでもまだ良好。比較して25mmは変形の度合いが大きく、影響のある範囲が広いように見えます。

雑感

ズームレンズとしてはかなり良好なボケ描写。マイクロフォーサーズで20万円前後のF1.7ズームは伊達じゃなかった。特に絞る必要性を感じないのでF1.7から心地よい画質を楽しめます。

LEICA DGシリーズ全般に言えることですが、絞り開放からコントラストは高め。ボケの量と背景のコントラスト次第で少し騒がしく感じるかもしれません。その場合はボケ量を調整するか、背景を少しずらすと良いでしょう。

コマ収差

10mm

おそらく、このレンズにおいて最も目に付く収差がコレ。四隅の領域でコマ収差の影響が強く、1.5段絞っても以前としてコマ収差の影響が残っています。F4まで絞ると収まりますが、明るいレンズの意味が無くなってしまします。10mmは特にコマ収差の影響を受ける範囲が広く、像高5割から外側が目に付きます。

12mm

基本的に10mmと同じ傾向を示し、F1.7の四隅では目立つコマ収差が発生します。F4まで絞ってもまだ残存収差が見られるので、完璧に補正するためにはF5.6まで絞る必要があります。10mmほど広範囲で変形は見られず、およそ像高7割から外側で目に付く印象。

14mm

このレンズで最もコマ収差が目立たなくなるポイント。それでもパーフェクトとは言い難いですが、夜景で絞り開放を使うのであれば14mmがおススメ。

18mm

再びコマ収差が目立ち始めます。広角側のような三角形では無く、どちらかと言えばイチョウのような形状。やはりF2.8まで絞っても残存するので、完璧に抑えたいのであればF4まで絞るべき。F5.6まで絞ると光条が発生し始めるのでさじ加減が難しいところ。12mmと同じく影響を受けるのは像高7?8割以降。

25mm

傾向としては18mmと同じですが、こちらはやや弱め。

雑感

明るい広角寄りの標準ズームと言うことで天体撮影や夜景に活用したいと思っている人も多いはず。魅力的なレンズですが、今回掲載したように四隅までバッチリのコマ収差補正では無いので注意が必要。フレーム全域の良好な補正を求めなければ12?25mmは絞り開放から問題無く使えそう(10mmは影響を受ける範囲が広いので少し絞りたい)。

歪曲収差

10mm

レンズプロファイル無しのRAWファイルは巨大な樽型歪曲。ミラーレスの超広角レンズはこのように歪曲補正をソフトウェアに依存するレンズが多く、元の歪曲収差は(他社と比べて)驚くほど大きなものではありません。

格納されたレンズプロファイルでボディ出力や純正ソフト、Lightroom CCなどでは自動的に歪曲補正が適用されます。自動補正されないソフトウェアでも補正し易い歪曲収差の形状です。

12mm

10mmと比べると小さいものの、まだまだ目立つ樽型歪曲に違いありません。しかし、ソフトウェアでも補正しきれていなかった10mmと比べて綺麗に補正されています。

14mm

さらに樽型歪曲の影響は小さくなります。この画角としては…まあこんなもんでしょう、というレベル。

18mm

極僅かな糸巻き型ですが、レンズプロファイルなしでもほぼ直線的な被写体となっています。解像性能が最も安定しているポイントであり、歪曲収差で無理が掛かっていない事が分かります。

25mm

18mmと比較して大きな糸巻き型歪曲。標準単焦点と比べるとやや目に付く収差の量ですが、広角側と比べるとほぼ問題無しと言っても良いレベル。

雑感

個人的に逆光耐性は気にならないレベルですが、F1.7の明るさを活かしたライブ、イルミネーション、夜景などで強い光源がフレームインする場合は注意が必要。開放付近では大きな問題となりませんが、絞ると細かいゴーストが増え、光条も場合によって騒がしく感じます。

歪曲収差は基本的にレンズ補正でなんとかなるので気にしません。しかし、10?14mmにける大きな歪曲収差は補正時の負担が大きく、四隅の解像性能が伸び悩む一因となっているように思えます。フレーム隅の解像性能を考えるとベストは18-25mm。

逆光耐性

10mm

全体的なフレア耐性は良好と感じるものの、点在するゴーストはやや多め。体感ではLEICA DG 8-18mm F2.8-4よりもやや多い印象。

おそらく強烈な逆光、強い光源をフレームインすることで画質に影響を及ぼすことはゼロではないと思います。ただし、実写で問題を感じたシーンは少ないです。絞り開放がF1.7と言うこともあり、F4まで絞ると光条が出来始めます。F8で既にシャープな光条が出来るので描写は好みが分れるかも。

スライドショーには JavaScript が必要です。

25mm

10mmと同様ですが、画角が狭い分、同じ光源をフレームインすると光条が大きく発生します。

スライドショーには JavaScript が必要です。

歪曲収差

今回使用した機材

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