このページではシグマ製フルサイズミラーレス用交換レンズ「45mm F2.8 DG DN|Contemporary」の外観や操作性・描写性能を細かくチェックしたレビューを掲載しています。
Index
レンズのおさらい
2019年夏に登場したシグマ初のフルサイズ対応ミラーレス専用レンズ。シグマグローバルビジョン(SGV)シリーズの「Contemporary」に属しています。
従来の「Contemporary」レンズは光学性能・重量サイズ・価格のバランスを重視したモデルが多かったです。しかしこのレンズは金属鏡筒・金属フードを採用し、絞りリングを導入するなど既存レンズに無い特徴を持っています。
価格はAPS-Cミラーレス用レンズ「DC DN Contemporary」シリーズより高くなっていますが、「Art」シリーズのレンズほど高価ではありません。金属鏡筒のしっかりとした作りを考えると妥当な価格設定。
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45mm F2.8 DG DN Sony E | |||
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レンズ構成は非球面レンズ2枚を含めた7群8枚構成。前群はプラナーのような構成で、ミラーレスらしく後群に補正レンズと言ったところでしょうか。
前玉に非球面レンズを配置したレンズは広角レンズでたまに見かけるものの、標準レンズでは珍しいですね。
最短撮影距離は24cmで撮影倍率は0.25倍。他の45?50mmのレンズが40?50cmなのでより易いレンズと言うことが出来るでしょう。開放F値はF2.8ですが、しっかりと寄って撮影すればボケ量を稼ぐことが可能です。
レンズ構成枚数 | 7群8枚 |
---|---|
画角(35mm判) | 51.3° |
絞り羽根枚数 | 7枚 (円形絞り) |
最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 24cm |
最大撮影倍率 | 1:4 |
フィルターサイズ | φ55mm |
最大径 × 長さ | φ64.0mm×46.2mm |
質量 | 215g |
45mm F2.8 DG DN|Contemporaryレビュー
箱・同梱品
SGVシリーズらしいシグマの箱。シンプルで良いと思います。
右上の「019」はリリースした年の下3桁を表示しています。2019年なので「019」。
「Contemporary」シリーズらしく「Artシリーズ」で馴染みのレンズケースが付属していません。説明書と保証書のみ。
外観
「45mm F2.8」というスペックらしく、とてもコンパクトで軽量なレンズ。
キヤノンの一眼レフ用レンズ「EF40mmF2.8 STM」と比べると厚みがあるものの、それでもフルサイズ用レンズとしては小さい。特にここ最近はミラーレスでも大きなレンズばかりが登場しているので、このような小型レンズの存在は有難いですね。
金属鏡筒ですが重量は200g程度なので特に重いとは感じません。
フォーカスリング・絞りリング・レンズフード、全て金属製のしっかりとした作り。DC DN Contemporaryシリーズも悪く無いビルドクオリティでしたが、このレンズの質感は一線を画しています。
DG DN Contemporaryシリーズはこの路線で揃えるのでしょうか?是非とも他の焦点距離も展開して欲しいところ。
AF/MF切替スイッチのみプラスチック製となっています。印字は刻印ではなくプリント、さすがに5万円台のレンズに刻印まで求めるのは酷でしょうか。
レンズ構成からも分かるように、前玉は小さく後ろ玉が大きい。
前玉は小さな凸レンズなのでメンテナンスし辛いかも。防汚コートは施されていないので、汚れの付着が嫌なら保護フィルターを装着しておくと良いでしょう。ただし前玉が小さく、反射面積が大きいのでフィルター装着時の逆光耐性低下は注意しておくべき。
簡易防滴仕様のためレンズマウントにガスケットが施されています。このためか、Eマウントへ装着する際はやや硬めで力が必要。
55mm径のフィルターに対応。ソニーEマウントで同じ直径のフィルター対応レンズが少ないのが辛い。
バヨネット式の脱着方式を採用した金属製レンズフードは本体と同じくしっかりとした作り。
外側にはグリップを向上させるための切り込みが施され、内側にも反射を低減させる処理が施されています。このクオリティのレンズフードは他社なら別売りとなっていることも多いはず(オリンパスは別売り5?7千円でした)。
印字は本体と同じく刻印では無くプリントとなっています。
レンズフードは鏡筒に対してかなりタイトな設計となっているので、ガタツキが無い一方でフィルターと干渉しやすい点がマイナス。
枠が厚くなるフィルターやステップアップリングとレンズフードは干渉すると見て間違いないでしょう。
α7 IIIと組み合わせた時のバランスは良好。ソニーEシリーズにはこういうレンズが増えて欲しいのですよねえ。
レンズとカメラの塗装に違和感はなく、自然な外観となっています。
レンズ直径はEマウントの外径とほぼ変わらないのでグリップ-マウント間のクリアランスは問題無し。
操作性
このレンズには
- フォーカスリング
- 絞りリング
- AF/MFスイッチ
の3系統のコントロール部材が備わっています。
金属製のフォーカスリングは幅こそ狭いものの、とても滑らかに動作し程よい抵抗感を持っているので操作しやすい。無限遠から最短撮影距離までは素早く回転しても180度以上の回転角が必要です。精密な操作に問題は無いと言えるでしょう。
金属製の絞りリングは絞り開放「F2.8」から最小絞り値「F22」まで1/3ステップで動作します。動作は程よい抵抗感と滑らかさで気持ちよい操作性。カメラ側での制御を可能とする「A」ポジションはF22からさらに回転させることで設定可能。「F22」と「A」の間隔は広いので誤操作の可能性は低い。
フォーカスリングと絞りリングの間隔は狭いものの、程よい抵抗感のため誤操作する可能性は低い。ただ、厚手のグローブを装着していると少し操作し辛いかも。
AF
電光石火のAFスピードではありませんが、ストレスのたまるAFスピードでもありません。特にスピードを重視していなければ問題無いと言えるでしょう。
小型軽量なインナーフォーカスレンズですが、ブリージングは小さく特に気になりません。同じ45mmの単焦点レンズでもサムヤン「AF45mm F2.8 FE」はブリージングがとても目立ちました。シグマの特性は近距離の被写体にフォーカスする場合に有利となるはず。
解像力テスト
球面収差を敢えて残して後ボケの滑らかさを重視したレンズですが、思っていたよりも開放の解像性能は良好となっています。
確かにピント面における残存収差の滲みはありますが、ピントの芯は分かりやすく、フレーム四隅まで乱れの無い安定した描写。2400万画素のα7 IIIでテスト結果が2500(本)を超えているのであれば良像と言えるレベル。
【中央】絞り開放から3000本に近い良好な数値で、1段絞ると滲みが解消してワンランク解像性能が向上します。以降の絞り値はほぼ同等となり、絞ってもあまり改善しません。α7 IIIの解像限界に突き当たっている感があるので、α7Rシリーズならもう少し伸びるかも。F16付近から回折の影響を受けますが、F22まで絞ってもF2.8より良好。
【周辺部】ほぼ中央と遜色の無い解像性能で、絞り開放から実用的。中央と異なりピークはF8となり、絞ることでF8に向けt徐々にパフォーマンスが向上します。中央と比べると解像性能は2400万画素のα7 IIIで程よい印象。これ以上高画素になると開放付近の甘さが目立つかもしれません。
【四隅】予想していたよりも良好でした。パフォーマンスは周辺部とほぼ同じで、絞り開放から実用的な解像性能を発揮。やはりF8がピークとなり、開放から徐々に改善していきます。
(比較的解像性能が伸びやすい)JPEG出力でテストしたサムヤンAF45mm F2.8 FEと比べてもピークの解像性能は互角。絞り開放のパフォーマンスは安定しているものの、トップスピードはサムヤンAF45mm F1.8 FEの中央領域のほうが良い。
F値 | 中央 | 周辺部 | 四隅 |
F2 | 2975 | 2933 | 2989 |
F4 | 3605 | 3253 | 3296 |
F5.6 | 3508 | 3360 | 3594 |
F8 | 3589 | 3547 | 3646 |
F11 | 3386 | 3493 | 3219 |
F16 | 3304 | 3280 | 2937 |
F22 | 3103 | 2853 | 2758 |
サンプル(F2.8)
接写解像
ほぼ最短撮影距離にてカメラを三脚に固定して撮影。被写体はカメラでピント面をしながら配置しています。
「球面収差を敢えて残してボケ質を改善している」とシグマ自身が述べているように、絞り開放付近ではピント面すら滲む球面収差が確認できます。現代的な単焦点レンズと比べると少し癖のある描写ですね。
残存する球面収差はあるものの、必要以上に甘い描写ではありません。抜群の解像性能ではありませんが、バランスの良さを感じます。
1段絞ると球面収差の影響が無くなり、特に中央領域はスッキリとした解像性能へ変化。フレーム端はまだ非点収差の影響が残っているため、しっかり解像させたいのであればもう1段絞ると良いでしょう。
【中央】F2.8 良好(ただし滲みあり)・F4 良好・F5.6?F16 とても良好・F22 良好
【端】F2.8 少し甘い(滲みあり)・F4 少し甘い・F5.6 まずまず・F8 良好・F11~F16 とても良好・F22 良好
全体的なピークはF8~F16。開けてふんわり・絞ってキリリと変化を楽しめる描写。
下の写真は最短撮影距離にてピント面に被写体を合わせた時のもの。
ご覧の通り中央と比べて端の領域は少し手前にピントが合います。像面湾曲の補正が完璧ではありませんが、この問題が影響するのは最短撮影距離付近のみ。遠景解像で問題は感じませんでした。
遠景解像
定点から三脚で固定したカメラを使用。同じ被写体でフレーミングをずらしながら撮影しました。
接写と異なり球面収差の問題は皆無。滲みはありませんが、僅かにコントラストが低いので1段は絞ったほうが良いかも。軸上色収差による影響は少なく良好な画質だと思います。
予想していたよりもフレーム隅が安定しており、絞り開放から実用的な解像性能を発揮。
全体的に絞ってもあまり改善しませんが、敢えて言えばF5.6~F11あたりがピークとなります。
【中央】F2.8~F4.0 良好・F5.6~F16 とても良好・F22 良好
【周辺部】F2.8~F4.0 良好・F5.6~F16 とても良好・F22 良好
【四隅】F2.8~F4.0 良好・F5.6~F16 とても良好・F22 良好
*今回の作例ではF16のカットがブレてしまったようです
軸上色収差
F2.8とレンズ口径が小さいこともありますが、絞り開放から軸上色収差による問題はありません。
特に後ボケは滲みを伴う柔らかい小ボケ領域を持つのでハイコントラストな状況でも問題無いと思われます。
歪曲収差
標準レンズとしてはやや目立つ糸巻き型歪曲となっているようです。このような小型レンズで妥協すべきポイントと言ったところでしょうか。レンズプロファイルが格納されているのでボディ出力では自動補正可能。しかし、プロファイルを適用できない社外製RAW現像ソフトなどでは注意が必要です。
周辺減光
小型レンズらしく周辺減光は絞り開放のF2.8で目立ちます。絞ることで改善しますが、F5.6までは減光が目に付き、F8以降も僅かに残存します。
カメラ出力やソフトウェアで簡単に補正可能ですが、ノイズ増加は避けられないでしょう。
ボケ
絞り値の影響
シグマが公式で述べているように、球面収差の影響が見られます。
明らかに後景を重視した調整。ピント面すら滲み、後ボケは滲みながら次第に大きくボケるような描写となっています。滲む後ボケは1段絞るとほぼ解消するので、レンズの味を活かすつもりなら絞り開放付近がおススメ。
比較して前ボケはかなり硬めですが、「45mm F2.8」のレンズで前ボケが硬調と感じるシーンはそう無いはず。
参考作例その2
ピント距離の影響
球面収差の影響は撮影距離により変動します。至近距離ではピント面すら滲む描写となりますが、30?40cmほど距離を開けると開放から滲みの少ない描写となります。
その他サンプル
分かりやすいくらい球面収差の影響が残っており、明らかに後ボケ重視の調整が施されています。
前ボケは輪郭が残る騒がしいボケであるのに対し、後ボケは輪郭が綺麗に溶ける滑らかな描写となっています。
後ボケは輪郭が残らない滑らかなボケ質のため、「45mm F2.8」というスペック以上に後ボケが大きいと感じるかもしれません。F2.8のレンズとしては面白い特性の描写ですね。
玉ボケ
口径食と絞り羽根の影響
*玉ボケの大きさは同程度となるようにピント位置を調整しています。
絞り羽根は7枚と少ないですが、円形絞りなので3段ほど絞っても角ばっていない玉ボケを楽しむことが出来ます。
口径食は周辺減光と同じくF2.8で目立つものの、F4~F5.6でほぼ解消します。
ピント面前後の玉ボケ
前述した通り、後ボケ重視の描写となっています。
後ボケは縁取りが滲みを伴う柔らかい描写ですが、前ボケは硬めの縁取りですね。
どちらにせよ非球面レンズの影響は目立たず、かなり綺麗。
光条
光源周囲に現れる赤や緑のフレアはレンズ由来では無く、イメージセンサーの反射が原因です。レンズの問題では無いので注意。
F11からそれらしくなり、F16~F22でしっかりとした光条へと変化。
ただし先細りする鋭い光条とはならず、拡散した形状となってしまいます。
逆光耐性
完璧ではありませんが、まずまず良好な逆光耐性。
強い光源をフレーム四隅や中央に配置しても問題ありませんが、像高5割周辺(APS-Cフレームの端など)に配置するとゴーストが目立つ場合があります。自然に見えるレンズフレアなので特に問題とはならず、味付け程度と感じるかもしれません。
実写作例
Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像していますが露出補正と僅かなハイライト・シャドウの調整のみです。
EXIF付きのオリジナルデータはFlickrにて公開しています。
総評
Pros
- 小型軽量
- 金属製鏡筒・金属製フード
- 使いやすいフォーカスリング・絞りリング
- 程よいスピードのオートフォーカス
- 周辺まで良好な解像性能
- 軸上色収差の問題無し
- 滲みを伴う柔らかいボケ
- まずまず良好な逆光耐性
Cons
- 開放F値がF2.8
- レンズケース無
- フィルターの種類によってフードと干渉する
- 接写時におけるフレーム周辺部の解像性能
- やや目立つ糸巻き型歪曲
- やや目立つ周辺減光
満足度は90点。
絞り開放にオールドレンズのような味付けをしつつ、現代的な光学性能を併せ持ったレンズ。「滲む後ボケ」と言ってもコシナ「NOKTON」シリーズのような癖の強い描写では無いので使いやすい、Contemporaryらしさを残した印象。
質感の高い金蔵鏡筒・レンズフードなので、描写はもう少し癖が強くても良かったような気もしますが、これがシグマの最適解なのでしょう。
絞り開放がF2.8とパッとしないスペックですが、F2.8のレンズでこのように滲むレンズは少ないはず。特に高い光学性能を追い求める最新レンズと比べると趣味性の高い一本。
購入を悩む皆さんへ
AF45mm F1.8 FE
誤解を恐れずに言えば、同じ45mmでもおススメしやすいのはこちら。より安く(4万円台)、より明るく(F1.8)、ケース付き。光学性能(解像・ボケ)もシグマに見劣りしない良好なパフォーマンス。
敢えてシグマを選ぶとしたら、洗練された金属製鏡筒&レンズフードのクオリティや絞り開放付近の滲みを伴うボケ描写、そして接写性能。絞りリングの操作性やフォーカスブリージングの目立たない無いAFなど。特にビルドクオリティと滲む後ボケの違いはかなり大きい。
単純にボケ量やコストパフォーマンスが決め手となるならAF45mm F1.8 FEをチョイス。持つ喜び、使いこなす楽しさ、信頼性を重視するのであれば45mm F2.8 DG DN Contemporaryをチョイスすると良いでしょう。
FE 50mm F1.8
特にこだわりが無いのであれば、ソニーFEで最も安価な選択肢。光学性能やボケ質は価格なりと言った部分があるので、個人的にはサムヤンのほうがおススメ。
Batis 2/40 CF
価格とサイズが全く違うものの、シグマより明るく、高い接写性能を備えた40mm。
正直なところ、45mm F2.8だとボケ量や明るさ(ISO感度が上がりやすい)でフルサイズミラーレスのアドバンテージを活かし切れないと感じることがあります。そう考えると、40mm F2は悪く無い選択肢だと思うのです。シグマより倍ほど高価なレンズですが…。
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