岩石星「AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X」のレビュー第一弾 外観・操作編を公開。頑丈でしっかりとした作りですが、2倍マクロレンズとしてはフォーカスリングのストロークが短く、ややフロントヘビーとなる鏡筒に注意。
おことわり
今回は2ndFocusより無償貸与の「AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X」を使用してレビューしています。提供にあたりレビュー内容の指示や報酬の受け取りはありません。従来通りのレビューを心がけますが、無意識にバイアスがかかることは否定できません。そのあたりをご理解のうえで以下を読み進めてください。
This time, we are reviewing the “AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X” lens, which was provided free of charge by 2ndFocus. We received no instructions on the content of the review or any compensation for providing it. We will continue to provide reviews as we have done in the past, but we cannot deny that unconscious bias may be present. Please read the following with this in mind.
今回の簡単なまとめ
2倍マクロとしては珍しい「120mm F2.8」のMFレンズ。ワーキングディスタンスを長めに取る必要があり、一眼レフでも使いたいのであれば面白い選択肢となることでしょう。レンズの作りはしっかりとしており、フォーカスリングや絞りリングの操作性は悪くありません。
いくつか注意点があり、最も気を付けたいのはフォーカスリングのストローク。2倍マクロレンズながら、180度も回転せず、特に1m以上の撮影距離はストロークがほとんどありません。滑らかなフォーカスリングと言えど、これはちょっと短すぎ。そのぶん等倍から2倍までのストロークはTTArtisanよりも長く、細かいピント調整に適しています。MTFからも分かるように、あくまでも等倍以上のマクロをメインとする撮影に最適化されています。
さらに鏡筒が非常に重いので重心が前方へ移動しがち。特にマクロ撮影時に光学系が前方へ移動するため、しっかりと固定できる雲台が必要となります。フォーカスリングでピント合わせが必要となるため、リング操作時でもぶれない程度の固定力が欲しいところ。
This is a MF lens with a focal length of 120mm and an aperture of F2.8, which is unusual for a 2x macro lens. If you need to have a long working distance and want to use it with a single-lens reflex camera, this could be an interesting option. The lens is well-made, and the focus and aperture rings are not difficult to operate.
There are a few things to be aware of, and the most important thing to be careful of is the focus ring's stroke. Even though it is a 2x macro lens, it does not rotate 180 degrees, and in particular, the stroke is almost non-existent at shooting distances of 1m or more. Even though it has a smooth focus ring, this is a little too short. The stroke from 1x to 2x is longer than the TTArtisan, making it suitable for fine focus adjustment. As you can see from the MTF, it is optimized for shooting mainly macro photography at 1x or more.
Furthermore, the lens barrel is very heavy, so the center of gravity tends to shift forward. In particular, when shooting macro, the optical system shifts forward, so you need a tripod head that can be firmly fixed in place. Since you need to adjust the focus with the focus ring, you want a tripod head that has enough fixing power to prevent it from shaking even when you are operating the ring.
AstrHori 120mm F2.8 Macro 2Xのレビュー一覧
- AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X レンズレビュー完全版
- AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X レンズレビューVol.4 諸収差編
- AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X レンズレビューVol.3 ボケ編
- AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X レンズレビューVol.2 解像チャート編
- AstrHori 120mm F2.8 Macro 2X レンズレビューVol.1 外観・操作編
Index
まえがき
2024年夏に発売したAstrHori製の望遠マクロレンズ。中国レンズメーカーのマクロレンズとしては焦点距離が比較的長めで、ワーキングディスタンスを長めに取りつつ高い倍率の撮影が可能となっています。フルサイズミラーレス4マウントに対応するほか、一眼レフのEFマウント用のラインアップあり。電子接点のないフルマニュアルのレンズですが、三脚に搭載した状態でのマクロ撮影ならば気にならないかもしれません。
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- フォーマット:フルサイズ
- マウント:E / RF / Z / L / EF
- 焦点距離:120mm
- 絞り値:F2.8-F22
- 絞り羽根:13枚
- レンズ構成:9群14枚
- 最短撮影距離:0.3m
- 最大撮影倍率:2倍
- フィルター径:72mm
- サイズ:φ77×165mm
- 重量:930g
- MF限定
- アクセサリ用ネジ穴
9群14枚のレンズ構成には4枚のEDレンズと3枚の高屈折率レンズを使用。手頃な価格の120mmマクロレンズとしてはEDレンズの使用数が多く、良好な光学性能を期待したいところ。MTFを見る限りではマクロの撮影距離を重視した光学設計となっており、特に2倍マクロ時に高いパフォーマンスを発揮するように設計しているように見えます。
価格のチェック
国内での販売価格は6万円前後。電子接点無しのレンズとしては安くない価格設定ですが、フルサイズ用の2倍マクロレンズとしては手頃な価格。競合レンズは銘匠光学「TTArtisan 100mm F2.8 MACRO 2X」で、焦点距離が異なるものの、同じ価格帯で2倍マクロに対応しています。
また、LマウントやEマウントではシグマ「105mm F2.8 DG DN MACRO」を8万円台で入手可能。AstrHoriは2倍マクロや120mmの焦点距離を必要としない限り苦しい戦いとなりそうです。ただ、キヤノンEFマウントは競合製品が少なく(TTArtisanくらい)、貴重な存在となるはず。
外観・操作性
箱・付属品
黒を基調とした箱にレンズの焦点距離やF値、レンズの図面がプリントされています。レンズ本体は発泡素材に包まれた状態で収納。
説明書など書類を除くと、レンズ本体と前後キャップのみ。レンズポーチやフードはありません。
外観
鏡筒は全体的に金属パーツを使用した頑丈な作り。930gと重いのが悩ましいところですが、しっかりとした作りに違いありません。とはいえ、三脚座がないため、カメラ側の三脚ネジ穴で固定するとフロントヘビーとなる可能性あり。
ピント距離指標や被写界深度の表示は白字でプリント。AstrHoriのロゴの一部や焦点距離、撮影倍率の表示は加工された上から赤色の塗装が施されています。フォーカスリングや絞りリングも金属製で、表面はゴムカバーではなくローレット加工でグリップを強化。
レンズ先端にはTTArtisanと同じくコールドシューアダプターを装着可能と思われるネジ穴があります。ただし、レンズにアダプターは付属していません。
ハンズオン
ライカLマウント用のため、絞りリングからレンズマウントまでが(EFマウント用と比較して)長め。500mlのペットボトルサイズですが、AFや手振れ補正に非対応のためか細く長い鏡筒となっています。ただし、金属製外装でやや重め。レンズの直径はマウント側から先端までほぼ一貫しており、すっきりとした外観となっています。
前玉・後玉
レンズ最前面は鏡筒先端付近に固定されています。これが保護ガラスなのか、光学系の一部なのか不明おそらく保護ガラスだと思いますが、気軽に交換できるものではありません。フッ素コーティング処理の記載はないため、ダメージが想定されるシーンでは保護フィルターを装着しておいたほうが良いでしょう。レンズは72mm径の円形フィルターに対応しています。
フォーカスリングを無限遠側に設定すると、光学系が全体的にレンズ中央へ移動します。内部は反射を抑えるためにマットブラックの塗装。
レンズマウントは3本のビスで固定。通信用の接点や防塵防滴のシーリングはありません。光学系最後尾のレンズはフォーカシングによって前後へ移動します。
フォーカスリング
金属製の幅広いフォーカスリングを搭載。適度な抵抗感で滑らかに回転しますが、最短撮影距離から無限遠までのストロークが約135度と短め。その大部分は2倍から等倍までの撮影距離をカバーしており、等倍から無限遠までのストロークは45度くらいしかありません。さらに1mから無限遠までが非常に短く、(被写界深度の浅い)120mmの焦点距離を考慮すると快適なフォーカシングからは程遠いと言わざるを得ません。
絞りリング
1段刻みでクリックストップのある金属製絞りリングを搭載。TTArtisanと比べるとクリック時の抵抗感が小さく、クリックレスに近い感覚で操作可能。クリックレスへの切り替えには対応していません。絞り値の中間でも固定可能。
装着例
LLUMIX S5IIに装着。ミラーレスカメラとしては中程度のボディサイズですが、120mmマクロレンズを装着するとボディが小さく見えます。バランスが悪いとまでは言いませんが、良くはありません。特にパナソニックは非常にコンパクトな「LUMIX S 100mm F2.8 Macro」があるため、携帯性や取り回しを重視する際はAstrHoriを選ぶ必然性は手頃な価格と2倍マクロくらい。
三脚搭載時はフロントヘビー不可避で、重量を支えることができる頑丈な雲台が必要となるでしょう。無限遠時は光学系がボディ寄りとなるものの、2倍マクロ時は光学系が移動し、重心が前方へシフトします。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・等倍・1m・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
マクロレンズらしく、ピント位置によって画角が大幅に変化します。
まとめ
2倍マクロとしては珍しい「120mm F2.8」のMFレンズ。ワーキングディスタンスを長めに取る必要があり、一眼レフでも使いたいのであれば面白い選択肢となることでしょう。レンズの作りはしっかりとしており、フォーカスリングや絞りリングの操作性は悪くありません。いくつか注意点があり、最も気を付けたいのはフォーカスリングのストローク。2倍マクロレンズながら、180度も回転せず、特に1m以上の撮影距離はストロークがほとんどありません。滑らかなフォーカスリングと言えど、これはちょっと短すぎ。そのぶん等倍から2倍までのストロークはTTArtisanよりも長く、細かいピント調整に適しています。MTFからも分かるように、あくまでも等倍以上のマクロをメインとする撮影に最適化されています。さらに鏡筒が非常に重いので重心が前方へ移動しがち。特にマクロ撮影時に光学系が前方へ移動するため、しっかりと固定できる雲台が必要となります。フォーカスリングでピント合わせが必要となるため、リング操作時でもぶれない程度の固定力が欲しいところ。悩ましいことに、Lマウント版はフォーカスリングの無限遠でピントが遠景まで届きません(せいぜい10~20m程度)。初期不良の可能性もありますが、取り寄せた2個目の個体でも同じ傾向が見られます。設計上の不具合なのか、初期不良なのか今のところ不明。F11-16くらいまで絞ると遠景も被写界深度に入るように見えます。光学性能に関しては現在チェック中。マクロ域で良好な結果が得られているように見えますが、まだ断言はできません。ポートレートのような撮影距離では球面収差が少し残存しているためか、柔らかいボケを得ることができます。
購入早見表
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作例
関連レンズ
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