岩石星「AstrHori 50mm F1.4」のレビュー第一弾を公開。今回はカメラの外観や操作性、携帯性、MFの使い勝手などをチェックしています。癖は強いものの素早く操作できるティルト撮影が個性的。
おことわり
今回は2ndFocusより無償貸与の「AstrHori 50mm F1.4」を使用してレビューしています。提供にあたりレビュー内容の指示や報酬の受け取りはありません。従来通りのレビューを心がけますが、無意識にバイアスがかかることは否定できません。そのあたりをご理解のうえで以下を読み進めてください。
AstrHori 50mm F1.4のレビュー一覧
- 岩石星 AstrHori 50mm F1.4 レンズレビュー 完全版
- 岩石星 AstrHori 50mm F1.4 レンズレビューVol.6 遠景解像編
- 岩石星 AstrHori 50mm F1.4 レンズレビューVol.5 諸収差編
- 岩石星 AstrHori 50mm F1.4 レンズレビューVol.4 周辺減光・逆光編
- 岩石星 AstrHori 50mm F1.4 レンズレビューVol.3 ボケ編
- 岩石星 AstrHori 50mm F1.4 レンズレビューVol.2 近距離解像編
- 岩石星 AstrHori 50mm F1.4 レンズレビューVol.1 外観・操作編
Index
まえがき
ティルト撮影に対応した珍しい大口径レンズ。一般的なティルトレンズとは異なり、自由雲台のようなハーフボールを操作して角度や方向を自由に調整することが出来ます。ティルト部分の構造はレンズベビーのコンポーザープロとよく似ていますが、光学系はより本格的な構成の大口径レンズとなっています。
- 公式ウェブサイト
- 管理人のFlickr
- 販売価格:¥39,220
- フォーマット:フルサイズ
- マウント:RF / E / L / Z / X / MFT
- 焦点距離:50mm
- 絞り値:F1.4 ~ F16
- 絞り羽根:12枚
- レンズ構成:6群7枚
- 最短撮影距離:0.5m
- 最大撮影倍率:1:7.5
- フィルター径:46mm
- サイズ:φ53×70mm
- 重量:320g
- 防塵防滴:-
- AF:MF限定
- 手ぶれ補正:-
- 特徴:
・電子接点なし
・ティルト機能
6群7枚構成の50mm F1.4。レンズ構成は不明ですが、テスト中に分かった特性からするとダブルガウスタイプのレンズじゃないのかなと予想。対応するフォーマットはフルサイズですが、APS-C用のXマウントや4/3型センサーのマイクロフォーサーズ用もラインアップされています。
価格のチェック
販売価格は2ndFocusのAmazon店で
外観・操作性
箱・付属品
黒を基調とした非常にシンプルなデザインで、外観からはどのような製品なのか全くわかりません。箱の隅に「岩石星」とブランド名がプリントされているのみ。付属品は前後のレンズキャップのみ。
外観
全体的に金属パーツを使用した頑丈な作り。絞りとフォーカスリング、ティルトロックリングはそれぞれ同じ意匠のローレット加工が施されています。外装にはピント距離指標や絞り値のほか、前面にフィルター径と「50/1.4」の記載あり。
「AstrHori」を示すブランドのロゴは無し。ただし、「Rockstar(岩石星)」の頭文字である「R」が前面にプリントされています。
レンズのフォーカスは全群繰り出し式。無限遠側で全長が最も短くなり、最短撮影距離の「0.5m」に合わせると内筒が少し伸びます。
ハンズオン
ティルト撮影に対応した50mm F1.4としては比較的コンパクト。ただし、金属製の外装であるため、重量感はそれなり。軽いレンズではありませんが、金属とガラスの塊感があり、安っぽさは無し。
前玉・後玉
46mm径のねじ込み式フィルターに対応。フルサイズ用レンズとしては小さな径となっています。フッ素コーティングなどは施されていないため、前面へのダメージ(傷・汚れ)などが想定される場合は保護フィルターを装着するのがおススメ。
低価格ながら絞り羽根は12枚と多め。このため、絞り全域で円形を維持しており、玉ボケが角ばりにくい構造となっています。金属製レンズマウントは3本のビスで固定されています。当然ながら電子接点はありません。鏡筒内部は不要な光の反射を防止するために黒塗りされ、さらに切込み加工まで施されています。
フォーカスリング
ローレット加工が施された金属製フォーカスリングを搭載。ピント全域のストロークは90度を少し超える程度で、素早い操作と正確な操作のバランスが取れています。滑らかに回転しますが、個人的な好みよりも少し緩め。感触が絞りリングと同じと言うこともあり、誤操作することが多かったです。
絞りリング
フォーカスリングと同じローレット加工が施された金属製絞りリングを搭載。F1.4からF16まで無段階で操作可能。クリック付きの操作に切り替えることはできません。
ティルトロックリング
レンズマウント付近のローレット加工は意匠ではなく、ティルト部分の構造を固定したり緩めたりするリングとなっています。完全に緩めるとレンズの自重でティルト部分が自由に動きますが、完全に締めると”ほぼ”動かなくなります(力を入れて操作すると動かないこともない)。
自由雲台と同じく、狙った角度にピタッと合わせる調整には不向きですが、スナップ撮影などで素早くティルトを取り込みたい場合には便利な構造と言えるでしょう。
ティルト部分の可動範囲は広めで、競合するTTArtisan Tilt 50mm F1.4よりも大きく傾けることが可能(つまり±8度以上)。ティルト撮影をしない場合、ハーフボールにプリントされた白いラインに合わせて固定します。ただし、完全にフラットな像面を得るのは難しく、微妙に傾いた状態となってしまう可能性が高い。絞れば問題ありませんが……。
ケラレ耐性
大きく傾けることができるティルト構造ですが、イメージサークルはそれに対応していません。ケラレを気にしながらティルトを微調整するのは難しいので、APS-Cクロップを利用するか、撮影後にクロップする前提でフレーミングするのがおススメです。
装着例
α7R Vに装着。TTArtisanの競合レンズと比べるとコンパクトで取り回しやすく、バランスは良好。ティルトレンズながら操作するのは絞り・フォーカス・ティルトロックの3種類のみとシンプルで、取っつきやすいのもGood。ただし、前述したように微調整には不向きなデザインです。
TTArtisanTilt 50mm F1.4は方向が固定されたティルト軸と、向きを変える場合に使うリボルビング軸の可動に対応。AstrHoriの方式と比べると手間ですが、角度や向きの微調整は遥かに簡単。
フォーカス
フォーカススピード
90度ちょっとストロークを持ち、素早く操作することが可能。滑らかで正確な操作が可能となるものの、少し緩めで誤操作によるピントのズレが発生しやすいのが悩ましいところ。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
全群繰り出し式フォーカスらしく、ピント位置によって画角が大きく変化します。
まとめ
3万円台でフルサイズ対応の「50mm F1.4」と「ティルト撮影」が手に入ると思うとお手頃な価格なレンズです。ティルト撮影の操作性には癖があり、ティルトを使わない場合にフラットへ戻すのが難しいとう点を理解して購入すると面白い使い勝手のレンズとなるはず。ティルト撮影ありきで購入する場合、間違いなく操作性が問題と感じると思うので要検討。特に狙ったポイントにピント面を合わせる微調整をするには不向きな操作性です。その一方で、素早く角度と向きを変えることができるため、不意に訪れるシャッターチャンスに素早くティルトを操作できるのが強み。ピント面を合わせる操作ではなく、あくまでもティルト撮影っぽさのあるボケを得たい場合に適した操作性です。
前述したように、ティルト撮影時に大きく傾けることができるものの、イメージサークルはフルサイズに対応していません。このため、画角に問題が無ければAPS-CクロップやAPS-Cセンサーで使うのがおススメです。一般的な撮影における光学性能は思っていたよりも良好で、特に近距離では良好なシャープネスが得られている印象あり。逆光耐性も良く、使い勝手は良好。このあたりの感覚はTTArtisanよりも良好で、海外の評判通りと言ったところ。