ソニーα7 IIIを使い始めて約1年(間3か月のブランクあり)、ニコンZ 7・キヤノンEOS Rを使い始めて約半年。ある程度使い込んだので腰を据えてじっくり比較レビュー。全てを1ページに詰め込むと凄まじい量となるため、細分化して徐々に掲載していこうと思います。
第3回はメディアスロットや接続端子などインターフェースについて。今回は機種によってかなり差があるポイントなのでじっくり見比べていきましょう。
Index
徹底比較 インターフェース編
メディアカードスロット
EOS R | Z 7 | α7 III | |
対応メディア | SD/HC/XC UHS-II | XQD/CFexpress(予定) | SD/HC/XC UHS-I/II |
スロット数 | 1 | 1 | 2 |
各モデルで良いところ悪いところがあるのでそれぞれ見ていきましょう。
EOS R 最もシンプル
シングルSDカードスロットですが、UHS-IIに対応しているので書き込み速度に問題はありません。
日ごろからSDカードのバックアップを取らず、連写撮影やタイムラプスで(カード容量的に)切替スロットの必要性が無ければEOS Rのシングルスロットで全く問題無いと言えるでしょう。
逆に言えば、バックアップ必須だったり、連写でカード容量があっと言う間に一杯となってしまう人にとってシングルカードスロット仕様は辛い。
カードスロットの防塵防滴処理はZ 7程ではないものの、部分的に施されている。
Nikon Z 7 XQD一本槍
まさかのXQDスロットのみ。
SDカードを切り捨てた潔い仕様となっていますが、2019年現在で(SDカードと比べ)流通量が少なく、やや高価で正直なところ取っ付きにくい。
さらに現在XQDを採用しているのはD5/D500/D850/Z 7/Z 6のニコン5モデルとパナソニックLUMIX S1/S1Rの2モデルのみ。互換性のあるCFexpressの登場で対応機種は増えていくと思われますが、今のところ汎用性が低いと言わざるを得ません。おまけにカードリーダーの種類も少なく、シンプルな機能のリーダーでも若干高いのも気になるところ。
しかし、次世代メディアらしく書き込み速度と読み出し速度は文句ナシ。4500万画素のNikon Z 7のRAWですらスイスイとデータ転送やRAW現像が出来てしまう。
シングルスロットに関するデメリットはEOS Rと同じなので省略。ただし、デュアルスロット機と比べてドアが小さく防塵防滴処理がバッチリなので耐候性は3機種で最も高いはず。
α7 III デュアルカードスロット
スロット1はUHS-IIに対応し、スロット2はUHS-Iに対応するデュアルSDカードスロットとなっています。デュアルスロットでバックアップや記録領域の大容量化が必須の人は迷うことなくα7 IIIをチョイスしたいところ。
ちなみに初期設定では「自動メディア切替」がオフとなっているので勝手にスロットが切り替わりません。いざという時に機能しないと困るので確認必須。
個人的に気になるのが「SDカードの差し込み方向が普通とは逆」「スロット1が下でスロット2が上」の2点。慣れれば特に問題無いものの、出来れば他と合わせて欲しかったなぁと感じます。
デュアルカードスロットでアクセサリードアは広め。それでいてこれと言った防塵防滴処理が見当たりません。カメラを手で握っていれば水の侵入が少ないデザインとは言え…多少不安が残る。
バッテリースロット・グリップ用端子
EOS R | Z 7 | α7 III | |
バッテリー | LP-E6N | EN-EL15b | NP-FZ100 |
追加グリップ | BG-E22 | 開発中 | VG-C3EM |
USB充電 | 対応(RはUSB-PDのみ) | ||
USB給電 | - | - | 対応 |
撮影可能枚数 | 370コマ | 310コマ | 610コマ |
EOS Rとα7 IIIはバッテリーグリップに対応するためアクセサリードアが外れる仕組みとなっています。蓋はロックを外すとバネで自動的に展開するのでらくちん。
Nikon Z 7はバネ無しでドアは外れません。ただし、防塵防滴処理は最もしっかり施されています。
α7 IIIは効果的なZバッテリー
α7 IIまでの小型で非力な「NP-FW50」から一転、ミラーレスながら持続能力の高いZ型のバッテリー「NP-FZ100」を採用。
スペックシート上ではNikon Z 7と比べてほぼ倍となる非常にパフォーマンスの高いバッテリー性能となっていますね。
ただし、「ファインダー編」で紹介した「画質表示【高画質】」などカメラ設定によってはバッテリーライフの差を大きく感じないかもしれません。
Nikon Z 7はバッテリーグリップ非対応
グリップ用端子はEOS Rがカメラ底面、α7 IIIはバッテリースロット内部に格納されています。
問題はZ 7。
そもそもバッテリー1つあたりの連続撮影枚数が最も少ないにも関わらず、Z用の追加バッテリーグリップは用意されていません。そして、対応する仕組みもカメラに存在しません。
追加グリップは一応開発中らしいですが(追加バッテリー対応のみ)、半年以上経った今でも音沙汰は全くなし。ただでさえバッテリー消費の激しいミラーレスで、予備バッテリーを格納できない上にUSB給電に非対応(後述)とか洒落になっていない仕様。
安価なモデルならまだしも「売り出し40万円のZ 7でこの仕様は無いでしょ?」と小一時間問い詰めたい。
マイク・ヘッドホン端子
各カメラそれぞれ配置は異なるものの、マイク端子とヘッドホン端子を備えています。
「マイク・ヘッドホン端子をワンセット」でカバーしているEOS R・Nikon Z 7とマイク端子は別で「ヘッドホン端子とHDMI端子をワンセット」でカバーしているα7 IIIは設計思想の違いでしょうか。ちなみにハイブリッドカメラとして有名なLUMIXは「マイク・ヘッドホン端子のセット」。
HDMI端子
? | EOS R | Z 7 | α7 III |
端子 | C端子 | C端子 | D端子 |
外部出力 | 4K 4:2:2 10bit | 4K 4:2:2 10bit Prores RAW(予定) |
4:2:2 8bit |
将来性有望なNikon Z 7のHDMI出力
EOS RとNikon Z 7がC端子を使い、α7 IIIがやや小型のD端子を使用。
出力はEOS RとNikon Z 7が4:2:2 10bitに対応し、α7 IIIが4:2:2 8bitとなっています。将来的にNikon ZシリーズはAtomosによるProRes RAW記録に対応予定となっているので一歩抜きん出た仕様と言えるでしょうか。
とは言え、Prores RAWを扱うNikon Z 7ユーザーがどれだけいることか…。
USB端子
EOS R | Z 7 | α7 III | |
デジタル端子 | USB 3.1 Type-C |
USB 3.0 Type-C |
USB 3.1 Micro B Type-C |
α7 III USB-CとMicroBを兼ね備える
3機種全てがUSB-C端子を採用し、さらにα7 IIIはUSB Micro-B端子も備えているのが凄い。さらにUSB-PDによる充電のみのEOS RとNikon Z 7と比べ、USB給電まで出来ちゃうのだから便利。
USB-Cで給電しながら、Micro-Bにリモートレリーズを繋げて使うことも可能。特に長時間の連続撮影が必要となってくるタイムラプスなどでは重宝する仕様と言えそうです。
Z 7はUSB端子の位置が悪い上に給電非対応
USB充電で多用したいUSB端子が端子カバーをガッツリ開けないとアクセスできない場所にあるのはいささか不便です。
個人的にUSB端子の配置はα7 IIIと同じような場所が良かったなと思っています。
さらにZ 7はバッテリーグリップが無い上にUSB給電非対応。バッテリーライフが短く予備バッテリーを追加できないZ7で給電も出来ないのは痛恨の極み。
つまり稼働時間を拡張する方法はACアダプターを差すしかありません。これではタイムラプスや長時間の動画撮影などで使う理想的なカメラとは言えません。(4K動画や8Kタイムラプスを謳っているにも関わらず)
この仕様でカメラ選択候補から除外せざるを得ないというユーザーもいるはず。
レリーズ端子・ワイヤレス
EOS R | Z 7 | α7 III | |
リモコン端子 | E3 (特殊端子) |
MC-DC2 (特殊端子) |
RM-VPR1 (MicroB) |
ワイヤレス | BR-E1 (Bluetooth) |
WR-10 (特殊端子) WR-1 (特殊端子) |
RMT-P1BT (Bluetooth) RMT-VP1K (MicroB) RMT-DSLR2 (赤外線) |
豊富なワイヤレスアイテムを揃えるα7 III
最も選択肢が豊富なカメラはα7 III。MicroBを使ったリモートケーブルやワイヤレスレリーズに対応している他、内蔵Bluetoothを利用したワイヤレスリモコンに加え、グリップ部の赤外線受光部で赤外線リモコンにも対応しています(ただしカメラ背面に受光部は無いので注意)。
EOS Rは赤外線受光部が無いのでワイヤレスの選択肢はBluetoothのみ。遅延や万が一の動作不良が心配であればE3端子経由のレリーズケーブルを使ったほうが良いでしょう。
Nikon Z 7はBluetoothを内蔵しているものの、今のところ対応ワイヤレスリモコンは無し。スマートフォン用アプリから一応使えるには使えますが…。また、特種端子経由でWR-1やWR-10を使ったワイヤレスレリーズが可能。ただしWR-10はHDMIケーブルと干渉必至なので注意が必要です。
通信機能
EOS R | Z 7 | α7 III | |
WiFi | 802.11b/g/n | 802.11b/g/n/a/ac | 802.11b/g/n |
Bluetooth | 4.1 | 4.2 | 4.1 |
NFC | - | - | 対応 |
スマートフォン側アプリまで話を絡めるとボリュームが大きくなりすぎるので今回は仕様とざっくりとした使い勝手のみおさらい。
安定感抜群のEOS R
ニコンのようにBluetoothを使った自動転送が無ければ、ソニーのようにNFCを使った接続方法もありません。しかし、通信接続の安定感と機能性は両社を圧倒。まぁ使いやすい。
特にBluetoothペアリングからのWiFi通信への切り替えは他のカメラメーカーと比べてかなり安定して切替できる。また、電源オフ時もBluetoothによる常時接続が継続し、スマホ側から電源をオンにして画像転送が可能。(Z 7も可能ですが、WiFi接続までたどり着かない場合も多い)
Bluetooth自動転送が光るZ 7
ニコンはD850までWiFiの対応規格「802.11b/g」のみと時代遅れ感が強かったのに対し、Zシリーズで一気に5GHz帯まで対応しました。Bluetoothはカメラの電源オフ中でも常時接続され、SnapBridgeで2MPのイメージが自動転送される便利機能付き。これはおススメ機能(転送開始までが少し不安定ですけども)。
まだまだ改善が必要なα7 III用アプリ
WiFi規格やBluetoothはミドルスペックのカメラとしてはごく普通な仕様。ソニーらしくNFCを搭載しているのが特徴的ですね。とは言え、Bluetoothとのペアリングが一般的となってきている2019年においてNFCは不要となってきている感があります。
「Playmemories Mobile」から「Imaging Edge Mobile」に名称が変更、部分的に機能が強化されています。α9であれば、撮影中の自動転送機能やFTPバックグラウンド転送に対応していますが、α7 IIIは残念ながら非対応。
今のところスマホアプリとして最低限の機能しか持ち合わせていません。
無味無臭なEOS R・粗削り過ぎるZ 7・拡張性高いα7 III
EOS Rは「20万円台のキヤノンEOSボディとしては至って普通のインターフェース」という印象。特に酷いという印象も凄いという印象も無し。良くも悪くも無味無臭。押さえるべきところは押さえて、余分な機能は付けない。スマートフォンアプリは使いやすく、やるべきことはやっている感じ。敢えて言えばUSB給電に対応していると良かったかなと。
一方でNikon Z 7はハッキリ言ってお粗末。追加グリップ非対応しかり、USBやレリーズ端子の配置しかり、XQDシングルスロットしかり。これ開発時にプロからフィードバック受け取ったの?価格設定・拡張性・機能性のバランスが取れておらず、誰をターゲットにしているの?と感じてしまう部分が多々あります。特にバッテリー周りのお粗末さは残念と感じている人が少なく無いはず。
α7 IIIは要改善のスマホアプリを除き、全体的に高バランスの拡張性を備えた1台。この小さいボディでデュアルカードスロット、USB端子を2カ所配置して給電充電に対応、基本となるバッテリー性能も良く、マイク・ヘッドホン端子も完備。技術のソニーらしさを垣間見た気がします。
今回使用した機材
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